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悲劇のクラブ プロゴルファー リーの事件スコア 5



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悲劇のクラブ プロゴルファー リーの事件スコア 5の評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 -ランク
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

最終作で見せたエルキンズの本格スピリッツに乾杯!

女子プロゴルファー、リー・オフステッドシリーズ第5作にして最終巻。
グレアムとリーの関係が前作で急接近し、さらに前作の国対抗のゴルフ大会で大活躍したリーも有名になったことでまさに大団円に向けての最後の1作となった。

前作のエンディングで述べられていたグレアムとの結婚式を兼ねたハワイでのゴルフイベントの参加が本書の物語。
つまりリーはスチュワート・カップで起きた殺人事件に続いてすぐのイベントで殺人事件に巻き込まれたことになる。一介のプロゴルファーが訪れる先々でこんなに頻繁に殺人事件に出くわすなんて、いやあ、これは何でも無理があるでしょ。
とはいえこんなのはシリーズ物には付き物の設定。そこら辺は気にせず読むのが吉。

さて前述したように今回はいつものようにツアーではなくゴルフイベントが舞台となっている。歴史あるハワイのロイヤル・マウナケア・ゴルフ&カントリー・クラブの記念すべき百年祭のイベントの手伝いを任される。そこで行われるイベントがまた実に興味深い。

屋内パット大会はなんとクラブハウス内の廊下やバーなどをパットゴルフの会場に見立てて行われるというもの。それもただ単純にボールを所定の位置からカップへ運べばいいわけではなく、例えば燭台を当てなければならないとか足乗せの下をくぐって箱時計に当てなければならなければ点数が低いとか面白いルールが施されている。特にリーの親友のペグが最初は奇矯なパットゴルフの内容に面喰いながらも大会当日には完璧にルールを理解して参加者に説明している件は実に面白い。

さらにホースレースは33人の女性が全員一度にショットしてカップまで誰が一番に入れることが出来るかを競い、“プロをやっつけよう”大会は参加者全員とプロゴルファーが対戦して4つの基準でプロより少ない打数を競うもの。“ぴかぴかボール”は光るゴルフボールをみんなで追いかけるゲーム。
ロイヤル・マウナケア・ゴルフ&カントリー・クラブは恐らく例によってエルキンズの創作だろうが、上に述べたおかしなイベントはどこかに実在するに違いない。

さてそんないつものエルキンズのユーモア溢れる舞台設定の中に織り込まれた謎はクラブの会長ハミッシュの殺人事件の真相とその犯人捜しに加え、クラブに伝わる誓いの詞の意味、そして“母なる火山の女神ペレの平和会”(<フイ・マル・マクアヒネ・ペレ>)なる団体が探しているカンバーランド・メモリアル・カップの在処だ。しかも誓いの詞がメモリアル・カップの在処を示す暗号になっているという宝探しの趣向が織り込まれている。

この暗号解読の過程はなかなかに面白い。単なる伝統あるクラブの古式ゆかしい呪文のような詩かと思いきや、きちんと意味が通じる暗号になっているのには驚いた。

ところで今回のタイトルは『悲劇のクラブ』なのに読中、なかなかゴルフクラブについて言及されないなぁと思っていたら実は道具のゴルフクラブではなく、カントリークラブの“クラブ”だったのかと3/4を過ぎたあたりで気付いた。これもある意味叙述トリックかも。

そして残念なのは愛すべきサブキャラクターのリーの相棒キャディのルー・サピオが締めくくりの本作に出てこないことだ。
エルキンズの有名シリーズのスケルトン探偵でも名サブキャラクターのFBI捜査官のジョン・ロウの登場が少なくなったりと、魅力あるキャラクター作りに長けているのに、エルキンズはそれを上手く活用できていない感じがする。

しかしたった280ページの作品の分量にミステリ興趣をくすぐるネタをふんだんに盛り込んでいる。
その読みやすさと親しみやすいキャラクターゆえにコージーミステリと軽んじられているエルキンズだが、そのミステリマインドと本格スピリットは筋金入りだ。

どうやら未訳の短編も数あるようだし、いつかまた新作を読めることを期待したい。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
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