(アンソロジー)

犯罪文学傑作選



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    ミステリ→

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    初公開日(参考)1977年05月
    分類

    アンソロジー

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    犯罪文学傑作選 (創元推理文庫 104-25)

    1977年05月13日 犯罪文学傑作選 (創元推理文庫 104-25)

    スタインベック、フォークナー、パール・バック、ディケンズ、ハックスレー……ほとんどすべての世界的に有名な作家は犯罪文学に貢献してきました。つまり著名な作家、当代えりぬきの巨匠たちは、だれもがミステリ作家なのであります。そのことを二十一回も繰り返して証明するためにエラリー・クイーンがあなたに贈る短編集。(「BOOK」データベースより)




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    No.1:
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    読みにくいのが難

    いわゆる文豪と云われる非ミステリ作家たちの手になる犯罪を扱った作品を集めたアンソロジー。
    1951年に編まれた本書は現在日本で北村薫氏らによって日本の文豪らの手による作品集が編まれ、文化として継承されている。

    その初頭を飾るのはノーベル文学賞も受賞したシンクレア・ルイスの「死人に口なし」だ。
    在野の詩人の未発表の傑作詩を手に入れた駆け出しの教授とくれば、すぐさま自身の作品として発表し、富と名声を勝ち取るという展開を予想するが、本作ではその在野の詩人の研究者としてどちらが第一人者であるかを競うことがテーマになっているのがなんとも健全と云えよう。主人公わたしが手に入れた在野の詩人の情報を悉く覆す著名な教授のニュースソースを突き止めるのが本書の謎なのだが、最後の結末は冗談話に過ぎないと思うのは私だけだろうか。

    次もノーベル文学賞作家の手によるもの。パール・バックによる「身代金」はアメリカの中流家庭に起きた誘拐事件を扱った作品だ。
    非ミステリ作家による誘拐物とはなんと捻りのないことか。
    本書で書きたかったのはミステリとしての意外な犯人・身代金の手渡し方法・誘拐の意図などではなく、誘拐事件が被害者に及ぼす周囲への疑心暗鬼や不安な日々といった心理面と近所の誰もが容易に犯人になれるというアメリカ社会への警鐘なのだろう。

    すでにミステリ作品を物にしているW・サマセット・モームの「園遊会まえ」は実に変わった味わいの物語。華やかな催し事に出席するそれぞれの人々にはそれまでに何か厄介事を抱えているものだ、もしくはどんな厄介事が持ち込まれても人は皆パーティには出席するものだというモームなりの皮肉なのだろうか。

    エドナ・セント・ヴィンセント・ミレーの「『シャ・キ・ペーシュ』亭の殺人」も純文学作家らしい奇妙な作品。
    モームの作品「園遊会まえ」と封印された殺人が明かされるという意味では同趣向の作品と云えるだろう。

    次はまたしてもノーベル賞作家の登場。ジョン・ゴールズワージーの「陪審員」は題名からしてミステリど真ん中の作品と思えるが、やはりそんな予想を覆す物語である。裁判の陪審員として裁判に立会い、妻と離れなければならないことを悲しんで自殺を図る陸軍兵士の被告人に同情して、尊大な義勇軍大佐である主人公が妻への愛を再確認するという、なんだか焼けぼっくいに火が着いたみたいな作品。
    男尊女卑として妻に追従を求めるだけだった男がその存在の大切さに気付くというのはいいが、やはりそんな男は不器用で思ったようには上手く思いを表現できないところはリアルといえばリアルだが。

    作品を読んだことが無くてもその名前は知っているジョン・スタインベックの作品はその名もずばり「殺人」。こちらの感想はネタバレにて。

    ルイス・ブロムフィールドの「男ざかり」もまた語られる主人公ホーマー・ディルワースがなぜ犯罪に至ったかを記した作品だ。
    非常に純文学的な内容。妻に尻を敷かれ続けた男に急に訪れたモテ期。そして今よりも若く肉感的な女性と恋の逃避行をし、挙句の果てにその相手を喪うことを恐れて、女性を追ってきた男共々殺してしまう。1900年前半の時代では48歳といえばもはや男としては人生の黄昏時とも云うべき時期で男ざかりの時が訪れた男の動向が本書の読み応えなのだろうが、現代ではまだまだこの年ならば現役だろう。

    さて出てくるべくして出てきた文豪チャールズ・ディケンズは保険金詐欺師を扱った「追いつめられて」が収録されている。
    生命保険をかけては被保険者が死に、その利益で生きてきた男を陥れる復讐譚とも云うべき作品。色んな仕掛けが施されており、最後に明かされる男の仕返しはそれまでで最もミステリらしい。犯罪小説ならぬミステリも文豪は書けるのだというのを証明したような作品だが、いささか摑みどころがない作品でもあるのが残念。

    本書にはノーベル文学賞受賞者だけでなく、ピューリッツァー賞受賞者の作品も数多く収録されているがこのウィラ・キャザーもその1人。
    彼女の作品「ポールのばあい」はその容貌と仕草、そして言動から同級生、先生に忌み嫌われている男の物語。彼がそんな境遇で過ごした町をあるきっかけで出て行き、ニューヨークの一角で自分の居場所を見つけ出すというもの。
    本書に登場する主人公ポールのように、生理的に風貌が受け付けられない、悪気はないのは解っているがその不躾な言動が非常に気に障るといった輩は確かにいる。そんな彼が抱いていた「ここではないどこか」への思い。そして辿り着いたのがニューヨークの地。彼はそのエキゾチックな地では彼もただ1人の人間だったのだ。
    本書で語られる犯罪は横領罪だがもちろんそれが主眼ではない。ここではポールという異端児の人生がテーマなのだ。文体は全然違うがなんだかアイリッシュとの近視感を覚えた。

    『トム・ソーヤの冒険』で有名なマーク・トウェインがミステリを書いていたのは有名な話だが、本書では数ある作品のうち、「盗まれた白象」が収録された。
    知る人は知っているがマーク・トウェインは実はかなり捻くれた作家である。本書はシャム国からイギリスに贈呈された白象が盗まれ、それを警察が追う話だが、ターゲットである白象は逃げる先々で沢山の公共物や建物を破壊し、また沢山の食料や飲料を消費し、そして沢山の死体の山を築き上げ、助け出す存在が災厄の元凶になっているのが面白い。特に白象について作中、人を食べるだの聖書を食べるだのと、いい加減極まりない記述はトウェイン独自のユーモアであり、そこからもこの作品が笑劇であると宣言しているのが判る。

    オールダス・ハックスレーは「モナ・リザの微笑」で妻殺しと冤罪をテーマに扱っている。
    やたらともてる優男とそれを取り巻く女達の執着を描いた作品、というほどにはドロドロしていなく、寧ろ最後にサプライズがあるあたり、作者はミステリとして本作を著したように思える。本書では題名にもなっているモナ・リザの微笑を持つ女ジャネットをファム・ファタールとして配したようだが、それほど印象に残る人物として描かれていないのが残念だ。

    ホーンブロアーシリーズで有名なC・S・フォレスターによる「証拠の手紙」はその題名の通り、証拠物件である手紙のみで構成された作品である。
    そこには事業家の妻がその部下と次第に親密になり、暴君振りを発揮する邪魔な夫を殺害するに至るまでが描かれている。書かれている内容は非常にオーソドックスだが書かれたのが1900年代前半ということを考えると非常に斬新な作品だったと思え、歴史的価値の高い作品と云えよう。

    リング・ラードナーの「散髪」は床屋の主人と思しき語り部が町の悪戯好きの男が死に至った顛末を語るというもの。
    床屋の主人の一人語りで語られる形式を取った物語はたった20ページの作品ながら出てくる登場人物は個性に溢れ、町の空気や匂いがわかるほどの筆致は実に素晴らしい。謎めいた結末―つまりジムは殺されたのか事故だったのか、そしてそれは誰の企みだったのか―も敢えて曖昧にすることで物語の雰囲気を醸し出している。けっこう好きな作品だ。

    ウォルター・デ・ラ・メアの「すばらしい技巧家」は独特の雰囲気を持った作品だ。
    物語の発端から非常に状況が解りにくく、最初はハツカネズミが主人公の話かと思ったくらいだ。やがて発覚する故意の殺人を自殺に見せかけようと企むあたりでストーリーが見えてくるが、最後はまた幻想めいた形で終わる。文学的ではあるが、好みではない。

    ジェイムズ・サーバー「安楽椅子(キャットバード・シート)の男」は最近入社した同僚を抹殺しようとする男の話。
    完全犯罪を企む男の話と思いながら読むと、物語は実に意外な方向に向かう。いやはや邪魔者を消すというのはこういう方法もあるのかと思い知らされた次第。
    予想の斜め上を行くこの展開は素直に脱帽。サーバーの着想の妙を褒め称えたい。

    『宝島』で有名なロバート・ルイス・スティーヴンソンの「マークハイム」は哲学的な内容の作品だ。
    叔父の骨董品を売っては遊び、悪事にも手を出し、決して堅実な人生とは云えない道程を辿ってきた男が殺人を犯して、窃盗を働いていた最中に出逢ったこの世の存在とは思えない男とは一体何だったのか?最初マークハイムが云うように彼の犯罪の幇助をするその男は悪魔だと思ったが、最後にマークハイムが見せた一握りの良心に反応したその男の表情の優しさは彼の良心そのものだったのかもしれない。
    しかしそれよりも冒頭に書かれているクイーンの作者紹介でまさかかのスティーヴンソンが闘病生活の中で執筆活動を続けていたという事実に一番驚いた。

    次の作品も巨匠の物だ。数多くの傑作を残したH・G・ウェルズは「ブリシャー氏の宝」が収録された。
    うだつの上がらなさそうな男が語る過去。それは婚約者と結婚しなかったのが宝物を手に入れたからだという理由だった。
    そんな魅力的な導入部からどんどん引っ張られるように物語に入っていくのだが、最後のオチは捻りすぎてなんだか訳が判らなくなった。

    聞き慣れない作家デイモン・ラニヨン。しかし彼の「ユーモア感」という作品は現代にも通じる軽快な筆致と意外性を持っていた。
    マフィア映画の一編を切り取ったような内容。街の雰囲気とジョーカー・ジョーを筆頭にキャラクターが立っている。たった16ページの作品だが、一気に作品世界に引き込まれるし、最後の痛烈なオチも効いている。本書でのベスト。

    またも聞き慣れない作家フランク・スウィナトンの「評決」は3人の女性達の茶飲み話を通じてある女性の裁判の顛末が語られるというもの。
    有閑マダム達の茶飲み話という形式で裁判の顛末が語られるというスタイルは今でも斬新だといえよう。ただ夫に無罪判決が下った時に見せた妻の青ざめた表情というのはなかなか面白いのだが、ちょっとパンチに欠けるか。

    ファニー・ハーストの「アン・エリザベスの死」は奇妙な味わいを残す。
    いわゆるマタニティー・ブルーを扱った作品だが、主役を務めるジェット夫妻のエマ・ジェット夫人の狂気ともいえる情緒不安定さは一種のホラーを思わせる。
    魚屋を経営する夫ヘンリー・ジェット氏は仕事柄魚の臭いが染み付いており、妻のために事前に臭いを消す処置を施している。しかし妻はそんな夫の気遣いを不憫に思い、その臭いを気にしないようにしているというおしどり夫婦なのだが、妊娠中にエマは夫を巨大な魚のように幻視し、忌み嫌う。その狂乱振りは戦慄を覚えるほど。
    なんともやり切れない作品だ。一種カフカの『変身』のような不条理小説の趣も感じた。

    締めの作品はノーベル賞作家ウィリアム・フォークナーによる「修道士(マンク)」。
    知的障害ゆえに善悪の区別がわからず、望み望まれるまま犯行を犯した男の話。マンクの人生が幸せだったのかどうか、それは彼自身しか判らない。


    なぜ本書が『ミステリ傑作選』ではなく「犯罪文学」と題しているのか?それはここに収められた諸作が犯罪を扱いつつも、ミステリのロジックやトリックなど、サプライズを主眼にした物ではなく、あくまで犯罪を介入することで人々の感情の機微や心境の変化、隠された記憶や振舞いなど、心理面を扱った作品だからだ。

    確かにここに挙げられている作品にはそれぞれ犯罪が含まれている。誘拐、殺人、命令違反、現金横領、保険金詐欺、盗難、偽装工作、強盗、窃盗、悪戯。

    そして考えなければならないのがクイーンがこのようなアンソロジーを編んだ動機だ。
    本書の刊行は1951年。つまりクイーンの作品はすでにライツヴィルシリーズの『ダブル・ダブル』を書き上げた時期だ。その後ライツヴィルはクイーン作品で出てくるものの、添え物に過ぎない。したがってこの時期のクイーンはライツヴィルに実質的に区切りをつけたような心境だったと思われる。
    つまり後期クイーン問題のさなか、このアンソロジーは編まれた訳だ。クイーンにとってこの頃ミステリはロジックを扱いながらもパズル的要素に特化した作品ではなく、犯罪が介在することで及ぼす人々の心の変容だとか人間関係の綾、そして罪を暴くことの意義に関心は移っていたことは周知の事実。そんな時期だからこそ世の文豪が物した犯罪小説とはいかな物なのかと収集したのではないだろうか。
    いや収集家のクイーンのこと、それらの作品は後期クイーン問題に差し掛かる前にすでに手元にあったのかもしれない。しかし単なる個人的趣味の範疇から逸脱し、それらを編纂し世に出したことに大変な意味を感じる。そしてここに収められた作品の数々は犯罪そのものへの興味よりも前に述べたように犯罪に纏わる人々の心理や及ぼした影響に焦点が当てられている。つまりこれらはクイーンにとってこれから自分達が書く作品とこのような趣向の作品になるのだと宣言するために、出すべきアンソロジーであったのではないだろうか。この推察については今後未読のクイーン作品を読むことで確認したいと思う。

    さて全21編中、個人的ベストはウィキペディアにも載っていない作家デイモン・ラニヨンの「ユーモア感」。
    その他にはトウェインの「盗まれた白象」、フォレスターの「証拠の手紙」、ラードナーの「散髪」、サーバーの「安楽椅子の男」、スティーヴンソンの「マークハイム」、ハーストの「アン・エリザベスの死」が印象に残った。
    これらは犯罪を皮肉ったものや一読考えさせられる内容を持っていたり、また現代でも通じる語り口に工夫が見られるものだ。例えば「マークハイム」や「アン・エリザベスの死」は幻想小説としての趣もあり、犯罪を扱いながらもジャンルを跨った作品になっている。特に後者は家族殺しという犯罪の真相が歪な味わいを残し、被告人の心の傷はちょっと想像がつかないほど痛ましい。

    しかし一読して思ったのは押し並べて非常に読みにくいこと。見開き2ページに文字がぎっしり詰まっているのは別段気にはならないものの、訳が悪いのか古いせいか判らないが、非常に頭に浸透するのに時間がかかる。恐らく1ページ1分以上掛かっていることだろう。
    復刊してくれたのは嬉しいが、その際は訳も見直して欲しいものだ。


    ▼以下、ネタバレ感想

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    No.1:
    (4pt)

    高級文学推理短編集

    当時有名だった文学者のクライムミステリを集めた物
    よくこんなに作品を知っている物だと感心します
    純粋なミステリは少ないです
    犯罪文学傑作選 (創元推理文庫 104-25)Amazon書評・レビュー:犯罪文学傑作選 (創元推理文庫 104-25)より
    4488104258



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