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新・本格推理01 モルグ街の住人たち



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初公開日(参考)2001年03月
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新・本格推理〈01〉モルグ街の住人たち (光文社文庫―文庫の雑誌)

2001年03月01日 新・本格推理〈01〉モルグ街の住人たち (光文社文庫―文庫の雑誌)

空前絶後の本格推理を求む!新編集長・二階堂黎人の呼びかけに150編以上(!)の力作が寄せられた。優秀作に選ばれたのは、密室あり、時刻表あり、首吊り死体の謎あり、絵画消失あり…の都合8編。いずれも規定枚数をフルに活かした、読み応え充分な作品ばかりだ。「モルグ街の殺人」から始まった本格推理の歴史は、世紀をまたぎ、彼らに受け継がれる。(「BOOK」データベースより)




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No.1:
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新生本格推理はまずは天晴な出来栄え

鮎川哲也氏が編集していた一般公募の『本格推理』シリーズを編者を二階堂黎人氏に交代してリニューアルしたのがこの『新・本格推理』シリーズ。前シリーズは鮎川氏が全て読み、その時の気分で作品を選んでいたような玉石混交のアンソロジーの様相を呈したが、今回は他の新人賞のように予め複数の審査員が下読みをし、その1次予選を突破したものを二階堂氏が読んで選考するというスタイルに変わった。また、制限枚数が50枚から100枚へと倍になった。
結論から云えば、このことはかなり大きく作品の質を向上させた。選考スタイルの変更は作品の出来のバラツキが少なくなり、かなりレベルが高くなっているし、枚数の倍増は物語がパズルゲーム一辺倒になりがちだった作品群が中心となるトリック・ロジックを肉付けする物語性を高め、推理「小説」として立派に成り立っている。

そんな様変わりを経た中で選ばれた8編の中でも特に印象に残ったのは「水曜日の子供」、「暗号名『マトリョーシュカ』」、次点で「風変わりな料理店」とであった。

特に「水曜日の子供」はこれが本格ミステリなのかと思わせるほどの文章力に圧倒された。キャリアウーマンである妻との無味乾燥な生活に嫌気をさしたしがない推理小説家の妻殺しの一部始終を倒叙形式で語った作品。
何しろ文体が非常に格調高く、凡百のプロを凌駕する出来。訥々と男が犯罪を如何に成したかを一種の諦観と力の抜いたユーモアを交え、ゆったりと語っていく手法は気持ちよく物語世界に没入できたし、それが故に最後の怒涛の謎解きから物語のスピードが一気に加速するので脳内速度がシフトチェンジするのに戸惑ったが、至極簡単に解き明かしてくれるので理解も出来た。ジャズのエピソードなど物語にセピア調の彩りを備える辺り、只者ではない。

そして「暗号名『マトリョーシュカ』」。これは恐らく現在本格ミステリ作家として活動する加賀美雅之氏の公募時代の作品だろう。前回の『わが師アンリ』もカーのアンリ・バンコランを扱ったものだし、オマージュとした海外作品・作家は無いものの今回も外国を舞台にし、非常に濃密な作品世界を繰り広げている。
日露戦争の真っ只中、ロシアではウリャーノフ率いるレジスタンスの動向が気になっていた。数年前からスパイとして送り込んでいた「マトリョーシュカ」にウリャーノフの暗殺命令が下る。ウリャーノフを取り囲むメンバーの中にそのスパイがいるとの情報が伝わってきており、つい最近仲間入りしたアバズレスという男がその正体ではないかと云われていた。そんな折、窓から焼死体が飛び降りるという怪事が起きた。果たしてこれはマトリョーシュカの仕業なのか?
日露戦争時代を舞台に、ロシア革命を織り込んだ物語の創り方が「水曜日の子供」同様、本当にプロも真っ青な凝ったストーリーで、時代背景を実によく調べ上げている。カーばりの本格ミステリが好きな人らしく、大掛かりなトリックには苦笑いするところもあったが(はっきり云ってこのトリックを看破する人はいないだろう)、実在人物をストーリーに絡め、前回入選作も取り込むという懲りよう。常々素人作品のシリーズ探偵物には辟易していたがこれはその嫌味がない。正にプロ級の力作。

次点の「風変わりな料理店」も前半は格調高い物語世界、落ち着いた文体など非常に酔わせる書き手だと思った。鳥取の片田舎の温泉宿に逗留に来た推理作家が元刑事の老人から小説のネタにと、過去のある事件の顛末を聞き、その真相を暴くという安楽椅子探偵物。
フランス料理店のシェフが一万人目サービスとして肉料理を振舞う偶然に遭遇した刑事二人はその店が他の客にも一万人目サービスとして無料で料理を振舞っていることに気付いた。しかしその料理には女性の髪の毛や爪の一部が混入されていたり、不審な点があった。同僚の刑事である久瀬からは実はあのシェフがたびたび妻に暴力を振り、警察に助けを求められているという情報もあった。果たしてこの料理に供されている肉の正体とは・・・といった奇妙な味を思わせる作風。
ミスディレクションなど本格ミステリの醍醐味を十二分に味わさせてくれる、と思ったのだが、真相解明の説明にご都合主義が見られるのが非常に残念だった。
あと唐突に探偵小説に関するマニアックな知識が挿入されるのに違和感を覚えた。恐らく作者自身の本格ミステリ愛をアピールしたいが故の行動なのだろうが。

その他の5編も悪くない。というよりも以前のシリーズの中では1,2位を争うものばかりだろう。
二・二六事件を上手く推理の因子として扱った「竹と死体と」は竹を曲げて首を吊る事の必然性が判らないし、途中で挿入される自己紹介、安楽椅子探偵物に対する作者の考えを述べるのはリズムが悪く、同人誌を読まされている感じがした。
「ガリアの地を遠く離れて」は第一次大戦中のフランスを舞台にしたアイリッシュの『幻の女』を想起させる物語。耽美な文体・物語世界は上手いと感じはしたが、全編に作者の陶酔感が漂っているようであいにく私の好みには合わなかった。

その他カーの「B13号船室」をモチーフにした、題名の意味が未だに判らない「白虎の径」、同じく島田荘司の『眩暈』を大いに意識したと思われる「東京不思議DAY」は若干不満が残るものの、やはり面白くは読めた。
一番異色な「時刻表のロンド」はこんな作品がこの硬派にリニューアルしたシリーズに選ばれたこと自体が嬉しい。友達から送られた時刻表トリックを題材にした作品を解き明かす趣向のこの作品。奇想というに相応しい発想を買う。あまりに奇抜すぎて他の作品と同列に評価するのを憚られるが、私個人的には許容範囲。この稚気もまたミステリの醍醐味だと思った。

このシリーズに至り、ようやく最近新勢力の本格ミステリ作家の作風、趣向、原点が見えてきた。光文社は二階堂黎人氏を編者にしたことで幸せな結婚をしたと思う。


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