ミステリの感想 新着順

新着レビューを50件づつ、3ヵ月前まで表示

全166件 1〜50 1/4ページ
6pt
9pt
8pt
8pt

期待が高まる新シリーズが始まった

  ()

日本では「警部ヴィスティング」シリーズで知られるノルウェーの人気作家ホルストが新たに若い作家と組んで発表した新シリーズの幕開け作。犯罪関連のポッドキャスターが15年前の少女失踪の謎を解くP.I.ミステリーである。ノルウェーの田舎町でポッドキャスト番組「クライムキャスト」を聞いていた地元紙の臨時記者・マチルデは、15年前に7歳の少女が行方不明になった事件に興味を引かれた。少女の死体は発見されなかったのだが、父親が逮捕され、服役中に自殺したという。番組は「次回の予告」を最後に更新されておらず、気になったマチルデは番組ホストのマルクスに問い合わせたのだが相手にされなかった。めげないマチルデは独自に調査を始め、判明したことをしつこくマルクスに報告して来た。煩わしく感じていたマルクスだったが、マチルデ山で遭難死したのをきっかけに自分でも調査を再開する。そこで情報を頼ったのが、3人を殺害した罪で服役中の実父・フランクだった…。警察ではない、ただのポッドキャスターが粘り強く関係者に聞き込みを続け真相に辿り着くまでがリアルで熱い。さらに父親の食ないキャラクターが、単なる探偵ものではない彩りを添えて味わい深い。謎解きの展開は論理的で分かりやすく、スイスイ読み進められる。事件は解決するのだが、主人公のマルクス、父親のフランクにまつわる謎は残されたままで、次回をお楽しみに。未解決事件に挑戦するのは「警部ヴィスティング」シリーズ同様だが、またひと味違うテイストで楽しめる。ヴィスティングのファンをはじめ、北欧ミステリーのファンにオススメする。

7pt
9pt
6pt
8pt

一作目よりテンポもよく、キャラに好感が持てて良かった

  ()

ドイツの人気警察ミステリー「トム・バビロン刑事」シリーズの第二作。国際映画祭のオープニングで上映されたスナッフ・フィルムにまつわる深い闇を手探りで解明するノワール・ミステリーである。ベルリン国際映画祭の開会式場で、若い女性が殺されるスナッフ・フィルムが上映された。しかも殺されたのは女優を目指すベルリン市長の娘であることが判明した。フィルムは目出し帽の男が持ち込み、映写技師を脅迫して上映させたという。誰が、何のために上映させたのか? さらに、関係者の娘が誘拐される事件も発生し、捜査は混迷を深めて行く…。捜査を担当するのは、前作で相棒となったトムと臨床心理士のジータ。まだギクシャクしたところは残るものの、前回よりは息が合ったコンビとなり、バディものとして完成度が高くなっている。事件の謎を解く鍵はフィルムに写っていた19という数字で、そこにはジータの古傷に繋がる18年前の出来事が絡んでいたという、前作を彷彿させる構成だが、事件の背景も犯行動機も複雑かつ精緻になり、前作の数倍読み応えがあった。トムとジータだけでなく同僚のヨー・モルテン、上司のブルックマンもキャラがくっきりして存在感を発揮しているのも高評価できる。事件は解決しても、トムとジータの過去にまつわる謎は残されたままで、次作が待ち遠しい。警察ミステリーファンには絶対のオススメだ。

8pt
5pt
8pt
2pt
5pt
3pt
6pt
9pt

探偵小石は恋しないの感想

  ()

かなり好みのミステリでした。作者のミステリ好きも伝わってきます。読後感もかなりよくて楽しい読書でした。物語の舞台は、殺人事件や密室殺人を扱いたいのに、舞い込んでくる依頼は浮気や不倫の調査ばかりという探偵事務所。探偵事務所あるあるネタから始まる、浮気調査の連作短編集です。ただ、それだけでは終わらず、幕間では何やら別の事件が進んでいるような不穏な気配が漂う……という流れ。文章や雰囲気はライトミステリ寄りで気軽に読めますが、謎の作り方には本格ミステリへの愛があふれていて、ところどころでニヤリとさせられます。ユーモアに満ちたセリフ回しや、物語の展開、構成も見事です。タイトルにある通り、「恋」を用いたミステリとしてさまざまな要素が盛り込まれており、かなり満足度の高い作品でした。ちょっと注意点として宣伝コピーにあるような「トリック」や「騙されること」を期待すると、少し方向性が違うかもしれません。個人的には、こうした過剰な宣伝コピーはあまり好みではありませんでした。本書は、「恋」を謎解きの道具として突き詰めたミステリの代表作になり得る作品だと感じます。表紙の絵柄もよく、キャラクター性も好み。表紙に描かれた探偵小石と、バディとなる探偵事務所勤務の蓮杖のコンビも魅力的で、今後のシリーズ展開にも期待したいです。話の終わり方もとても好み。楽しい読書でした。

5pt
5pt
8pt

現役判事にして連続殺人犯? 驚きの犯人に圧倒される

  ()

法廷サスペンスの第一人者・グリシャムの新作(2021年。翻訳版は2026年)。司法審査会調査官という大した捜査権限がない職員が、現役判事が連続殺人として告発された事件の謎を解く、新趣向のミステリー・サスペンスである。フロリダ州司法審査会のベテラン調査官・レイシーは匿名電話を受け、仕方なく面会した女性ににわかには信じがたい告発を告げられる。ジェリと名乗った女性は大学教授で、22年前に父親を殺害されたのだが、その犯人を突き止めたという。しかも犯人は父親以外にも複数の殺人を犯しながら、捜査の網をかい潜って逃げおおせているという。まさかの話に仰天したレイシーだが、ジェリの熱意と推しの強さに降参し、持てる範囲の権限を使った調査に乗り出さざるを得なくなった。逮捕権すらない身分で狡猾で用意周到な犯人を追い詰めることができるのか?なんといっても、判事がシリアルキラーという度肝を抜く設定だけでミステリー・サスペンスとしては成功したと言える。さらに20年以上を掛けて犯人を探し出した告発者・ジェリの狂気とも言える熱意が恐ろしい。犯人のキャラクターが圧倒的で、他の要素は全て付け足しに思えた。ノワール、サイコ・サスペンスとP.I.的調査ミステリーの両方を備えた一級品のエンタメ作品であり、多くの人を満足させること間違いなし! オススメする。

7pt
8pt
8pt
10pt
9pt
8pt

どんどんカッコよくなってきた、ろくでなし刑事たち

  ()

ナポリを舞台にした人気警察シリーズの第5作。パン屋殺害事件と奇妙なストーカー事件を「ろくでなし刑事」たちが素晴らしい捜査力で解決する警察集団捜査小説である。街の住民から愛されている実直なパン職人のグラナートが店の裏で射殺された。現場に駆けつけたP分署のロヤコーノとロマーノはろくに捜査が出来ないうちに、スター検察官・ブッファルディ率いるマフィア対策班に主導権を奪われてしまった。最近、グラナートがマフィアの犯罪を目撃した証言を撤回するという因縁があり、マフィアが口封じしたというのがブッファルディの主張だった。しかし、現場の状況からマフィアの犯行ではないと確信するロヤコーノはマフィア対策班に対抗し、独自の捜査を決意する…。パン屋殺しをメインに、サブとして冴えない外見の若いカップルが訴えてきた奇妙なストーカー事件が並行して展開される。二つの事案に対するP分署の面々の鋭い捜査、息のあったチームワークは、まるで87分署を見るようで一作ごとに成長するメンバーが有能な頼もしい警察官に見えてくる。同時に、各人が抱える人生のあれこれもさまざまな変化をみせ、人間ドラマとして味わい深くなっているのもシリーズならでは読みどころだ。本国では11作目まで刊行され、連続テレビドラマ放送も始まったという。次作が待ち遠しい。

7pt
5pt
7pt
6pt
9pt
6pt
8pt

ドイツ・ミステリーの新たな注目シリーズが始まった

  ()

ドイツ・ミステリー界の新星、マルク・ラーべの日本デビュー作。ドイツでベストセラーになった全4部作の第1作で、組織からはみ出した刑事がサイコパスを追い詰める警察ミステリーである。ベルリン大聖堂の丸天井から女性牧師が吊り下げられていた。捜査に臨場したベルリン州刑事局刑事のトムは死体の首にかけられた鍵に衝撃を受ける。それは19年前、トムが少年時代に川で発見した死体のそばにあった、17という数字が刻まれた鍵と同じものに見えた。その鍵は当時10歳だった妹のヴィオーラが行方不明になった時に持ち出したままで、それがなぜ、今頃出現したのか? 鍵の謎を追うトムの捜査は19年前から続いている深い闇に迷い込んでしまうのだった。主人公のトムは組織になじまない一匹狼でルールも倫理も無視してひたすらターゲットを追い詰める猟犬タイプ。相棒となる臨床心理士のジータは冷静沈着、度胸十分なクールビューティ。警察ミステリーにはよくあるタイプのバディものである。犯行の動機、犯罪の構成要素はサイコ・キラー色が濃く、しかも刑事・トム自体が常に妹の幻影を纏っているサイコ気質とあって、ストーリー展開を把握するのに時間がかかる。事件の舞台は壁崩壊前後のベルリンで、東ドイツ時代の組織が登場するのも味がある。警察ミステリーの宝庫、ドイツ・ミステリーの中でも出色の快作。残りのシリーズ3作が気になる新シリーズの登場である。

8pt
6pt
2pt
4pt

設定に少し無理がある

  ()

マリアと漣シリーズ3作目。前作を読んでからしばらく間がありましたが楽しく読めました。シリーズならでは、過去作のキーワードが出たりしていて、ファンサービスが感じられます。一種奇妙な少女と男性との出会い、直後の爆発の描写から始まります。少女は言葉足らずで世間のことを知らない様子で、興味を湧かせる始まりで好印象でした。そこから日は流れ、マリアと漣の捜査官コンビが富豪・ヒューの所有する高層タワーを訪れます。容疑は稀少動物を購入したというもので、二人は別行動しながら情報を求めていきます。一方、ヒューに招かれた男女が建物に囚われ、一人ずつ殺されていく描写。大きく分けて二つのシーンが交互に展開されていにます。それから重要なのはキーワード・グラスバード。ヒューのコレクションであるグラスバードを目の当たりにした人は、皆心を奪われます。犯人が誰であるかを推理すると同時に、人々を魅了するグラスバードの正体を探るのが物語のメインとなります。かなり好印象な内容に感じられました。前述したファンサービス、命を狙われるという恐怖心の描写、とあるミスリード、、、。ところが解決パートはいただけなかったです。結果として本書における死亡者は激増し、極めつけはラスト。登場人物の死亡をみすみす許したマリアと漣の無力っぷりに呆れ果ててしまいました。事件の解明パートも強引に感じられマイナス評価でした。もう一つのミスリード(こちらはグラスバードの正体に関係します)も、薄々察することができます。ミステリ小説に目の肥えていなくても大半の方は容易に推測できるでしょう。いかにも地頭の良い人が書いたという内容で、少し小難しいきらいがあったのもあり☆4としました。内容は忘れましたが前作よりはおもしろかった印象です。

8pt

主役をつとめるエリンボルクが良い。

  ()

アイスランドの捜査官「エーレンデュル」シリーズの第7作。エーレンデュルは登場せず、いつもは脇役の女性警官・エリンボルクが主役になった謎解き警察ミステリーである。レイプ・ドラッグを飲ませて自宅に連れ込んで強姦を繰り返していた若い男・ルノルフルが自宅で殺害された。鋭い刃物で喉を掻き切られ床を血染めにして倒れた男は女性のTシャツを身につけ、その口には大量のレイプ・ドラッグが詰め込まれていた。現場に残されていたスカーフには微かにインド料理のスパイスの香りが残っていた。エーレンデュル不在で捜査の中心を担うエリンボルクは数少ない証言を拾い集め、関係者に尋問を重ね、ルノルフルの人間像を明らかにしていく。そして辿り着いた真相は…。ずっと脇役を通してきたエリンボルクが主役で、これまでさほど言及されなかった彼女の家庭が取り上げられ、その家族生活が描写されるのが面白かった。もちろん事件の謎解きはオーソドックスで破綻がなく、納得できる結末を迎える。シリーズ愛読者には新鮮なインパクトがあり、未読の方が読んでも違和感がなく、どなたにも安心してオススメできる警察ミステリーの傑作である。

9pt

今回も期待以上の熱い作品だった。

  ()

大人気警察小説「オリヴァー&ピア」シリーズ第11作。少女誘拐殺害と犬を使ったリンチ殺人の二つの事件の裏に潜む組織犯罪を解き明かす、フーダニット、ワイダニットの傑作ミステリーである。クリスマスを控えた日、16歳のラリッサが行方不明になり、翌朝、雪に埋もれた遺体で発見された。DNA検査で浮かび上がったのが前科があり、移民申請中のアフガニスタン人の青年・マハムーディで、ラリッサが行方不明になる直前に一緒にいるところを目撃されていた。警察は重要参考人として事情聴取しようとしたのだが、マハムーディが姿を消してしまった。しかも、容疑者が移民申請中の前科持ちであるとの情報が漏れ、事件は政治問題化し、世間に反移民・ヘイトの嵐が巻き起こった。数日後、森から飛び出した男性が車に撥ねられて死亡する事故がり奇妙なことに被害者は真冬に裸足で、首には大型動物に噛まれた跡があった…。少女誘拐、リンチ殺人だけでも立派な物語になりそうだが、二つの事件の捜査が重なり、絡み合ったところから物語は極めて複雑に展開し、政治と社会を揺るがしただけでなく、結束が固いオリヴァーのチームや警察にも深刻なダメージを与えることになる。いつも通り、捜査のプロセスに説得力があるので長いストーリーも読み進めやすい。やたらと多い登場人物もキャラの書き分けがしっかりしているので混乱することが少ない。最後の真相解明がちょっと「何、これ?」ではあるものの、まあ納得できる。さらにシリーズならではのいつものメンバーのやり取り、それぞれの家庭の事情などに大きな変化があり、これまたシリーズ読者を喜ばせる。本作も期待以上の素晴らしいミステリーであり、警察小説、現代社会ミステリーのファンならどなたにもオススメしたい。

8pt

誰も幸せには生きていない、ディープ・サウスの町の悲劇

  ()

デビュー作でありながら、2024年度のMWA賞最優秀新人賞を受賞した作品。バージニア州の忘れられた田舎町で起きた殺人・放火事件を巡るドロドロの人間関係を描いたノワール警察小説である。バージニア州の大都会リッチモンドから10年ぶりに故郷に戻り保安官補になったウィルは火災現場に遭遇し、焼け跡から旧友のトムの焼死体を発見した。その場で、現場から逃げようとした古い知り合いのジークを逮捕した。しかし、解剖によりトムが刺殺された後で証拠隠滅のために放火されたことが判明し、旧知のジークの仕業とは考えられなかったのだが、ミルズ保安官はジーク犯人説を譲らなかった。ジークの妻ばかりかトムの母親もジークの犯行を信じず、私立探偵のベニコに調査を依頼した。ジークを信じるウィルも保安官に逆らい、ベニコと共に独自の捜査を進めることにした…。近代化が進むバージニア州で見捨てられたような町に住む人々は、町を覆う閉塞感に苛まれ息苦しい人生を送っていて、その矛盾や葛藤が事件として噴出したのである。この設定、舞台装置は南部ノワールの基本型で目新しくはないが、主役を勤めるウィルとベニコの設定が上手い。二人は互いに話したくない過去を引きずり、重苦しく、出口がないような町でドロドロの人間関係を悩み、傷つき、それでも何とか正義感を持ち続けようとする。暴力の力とそれでは解決されない人の苦悩が、本書の読みどころである。ノワール、警察小説のファンにオススメする。

5pt
3pt
9pt
10pt
10pt
8pt

怪奇ホラーの手前で踏みとどまっているのが良い。

  ()

デイリーミラー紙の新人賞とCWA新人賞で最終候補になり、いくつかの賞を受賞したイギリス女性作家のデビュー作。犯罪史や生物学、解剖学に没頭する13歳の少女が同級生の死体を発見したことから街を震撼させた猟奇殺人の謎を解くダーククライム・ミステリーである。交通事故で死んだ動物を収集した死体置き場を作り、死がもたらす変化を冷静に観察・記録するエイヴァが見つけたのは同級生でいじめっ子のミッキーの死体だった。放置して置けないと思ったエイヴァは大人の声色を使って警察に通報する。デライエ刑事部長が指揮するチームが捜査に乗り出したのだが、ほどなく行方不明だった少年の死体が見つかった。さらに奇妙なことに、どちらの死体にも首に深い咬み傷がつけられていた。その後も同様の事件が発生し連続猟奇殺人事件の様相を呈してきた。さらに街では人間とも獣ともつかぬ怪物の目撃情報が相次ぎ…。自分の知識だけを武器に真相解明に乗り出すエイヴァの存在が際立つ。従順な親友のジョンを助手に独自の調査と推理を展開し、ときにデライエ刑事部長に的確なアドバイスを送るだけでなく、いざとなると自ら渦中に飛び込んでいく。それでいながら、時折は思春期の少女らしさも垣間見せる。これまでのミステリーにはなかった特異なキャラクターで強烈な印象を残す。さらに怪物としか言えない犯人の性格が形作られる過程の解明も、また考えさせられるものがあった。怪奇ホラーに堕することなく、社会派ミステリーの味わいもあるエンタメ作品として、自信を持ってオススメしたい。

5pt
7pt
8pt
9pt
7pt