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本好き! さんのレビュー一覧
本好き!さんのページへレビュー数178件
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「同調圧力」をテーマに、表向きは田舎町を安全安心な町にするためと言いながら、裏では自分たちの都合の悪い部分は包み隠していくどこかの悪徳政治家のような町の役員たち。少数の正しい意見が、多数の間違った考えに包み込まれてしまう恐ろしさを本作で感じた。現実にあっても不思議ではない、いやありそうな話。いい意味で読後感のよくない傑作だったと思います。
第三者的に見れば、少数の正しい意見を言う立場に立つだろうけど、実際自分がこんな町に住んだとすれば、上の指示におとなしく従ってしまうんだろうなぁ。 |
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人気馬・ステイゴールドをモデルにした、馬を愛する者たちの感動巨編。競馬用語の解説もさり気なく盛り込まれ、競馬初心者にも優しい小説です。
著者は犬のみならず、馬小説でも感動させてくれることがわかったし、どの場面をとっても情景が今見ているかのようにわかる。競馬に詳しければモデルとなった馬や人がわかって、より楽しめます。 ヤクザとのカラミや濡れ場などがとやかく言われているが、それほど気にはならない。むしろ気分転換、閑話休題的要素。 本作を読んで競馬に、競走馬生産の現状に興味をもってもらえれば最高でしょう。 |
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岬洋介シリーズの中でもトップクラスに面白かった。全盲のピアニストは実在するし、全聾の音楽家のふりをした詐欺師も実際にいたが、それを意識させながら、演奏シーンでは主人公・榊場隆平の超絶ぶりをしっかり描いている。演奏シーンはこのシリーズの最も特徴的で個人的にも好きな場面です。
肝心の岬洋介は後半になってやっと登場してくるところが何とももどかしいけど、彼の個性は健在です。 このシリーズ、まだまだ続くようなので楽しみは限りがない。次はどんな天才ぶりを見せてくれるのかな? |
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女児誘拐殺害事件がベースになっているが、さすが元記者だけあって、新聞記者と警察との心理戦は読者を引き寄せるには十分な筆力で、グイグイ来るものがある。全編に渡って漂う緊迫感は、記者経験がもたらしてくれるものだろう。
ミステリであると同時に、「新聞記者のお仕事小説」の様相もあった。 わかりやすい文体もその一助となっている。本城氏の野球小説でも言えることだが、現場(ここでは事件現場)より、それを取材する記者の行動が中心に描かれ、他のミステリとは一線を画し、本城作品ならではの特徴を表している。 少々分厚めの本でも、あっという間に読破できるほどのめりこんで読めたのも、この辺にあって本城氏のウマさにあると思う。 でも結局は本城氏の作品は野球小説(もしくは競馬小説)がお気に入りなので、そちらを中心に読んでいくことにしようと思う。 |
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著者の警察ミステリを読んでいれば、その表現力たるや右に出るものなしと言えると思うが、医療ミステリでも遺憾なく発揮されている。その緻密さは一読瞭然。直木賞候補も頷ける。
ただし西條は「孤狼の血」のガミさんや日岡、佐方貞人に比べるとやや魅力に劣るか。西條と航の交流は心温まるものがあったけど。 |
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最近の乱歩賞受賞作の中では楽しく読めた。初応募で初受賞ということだが、女性作家ならではの丁寧さと、初応募とは思えないほどの巧みさが窺える。産業翻訳家としての技量がモノを言っているか。選評では文章が下手とか読みにくいとか言われていたけど、さほど気にならなかった。次回作以降はテーマしだいでリピーターになるかも。
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なるほど〜!と感嘆詞がもれるほど仕掛けが見事な小説です。禁止シリーズならではの仕掛けに騙された、というか見事にハマリました。ここに出てくる「伝承」が実際にあっても不思議ではない、ある意味実際にあってほしいとまで思ってしまいました。確かに二度読みしたくなるというのもわかります。ここまで来たら次の禁止シリーズはどうなるのか。恐ろしいです。人の命と恨み・哀しみについて考えさせられもしました。
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2004年の球界再編問題も記憶に新しい中、その上をいく日米球界合併問題。国内の再編問題も収束したわけではなく、いつ再燃してもおかしくない昨今、実際に起きてもおかしくない騒動を見事に描いてくれました。この小説どおりになって、野球界が人気を吹き返すかはわからないが、着眼点がいいし、登場人物には東都新聞の京極や牛島をはじめ、いけ好かないヤツらが彩を添えて一気に読ませてくれました。(俊太郎はカッコいいし、岩城の人間性はバツグンだし、、、球団や選手だけでなく、審判員も同様に不安を抱えているところを描くなどは抜かりないなと感服)
未だ反対論も多いCSや、メジャー流出など懸案絶えない中、日本球界の今後が明るいものであってほしいとの願いをこめて本作を読み進めると作者のメッセージが色濃く感じ取れるのではないでしょうか。 |
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JR貨物による輸送を題材にするあたり、真保さんらしさがよく出てる。鉄ヲタが喜びそうなテーマと原発問題を絡めたシリアスなサスペンス。確かに映像的には地味だろうが、社会派ミステリとしては、政治家の心の奥をまさぐる読み応えのある作品だった。現実にあってもおかしくないリアリティさを前面に、地味でいいから心にグッと楔を打つような重厚感あふれる作品を今後も期待したい。
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麻薬密売や臓器売買といえばミステリには今や定番化しているだろうが、佐藤氏の手にかかれば一筋縄ではいかない重厚な物語になる。
残虐なシーンがたびたび現れるが、独特な文体で淡々と進んでいくとページをめくる手が止まらないというのもわかる気がする。 登場人物が人間的なようでいて、なんだか残虐なだけの殺戮マシンになっているようで、怖さが募る。でもかといって残念さはない。 特に印象に残っているのは、コシモのいろんな意味での異常さと、リベルタのやさしさかな。 本作を読んでいる最中に直木賞受賞の朗報。とにもかくにも、いろいろ意見が取りざたされているようですが、受賞おめでとうございます。 初ノミネートで受賞も勲章です。 |
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昭和を代表する社会派ミステリの金字塔ともいうべき、傑作。といえるのは、昭和30年代にこれだけのミステリ作品が描かれ、今なお読み継がれる傑作となっていること。
今西刑事の執念の捜査、方言学、音響学、政界のウラ側までも上手く取り入れて、読み応え十分の作品に仕上げられたこと。上下巻に分かれる超長編になったのは、それだけ現実的には世の中簡単じゃないよ、と紆余曲折を繰り返す捜査やそれを攪乱する犯人のやり口を細かく描いた結果なのでしょう。採用されているトリックがどうのこうのと取りざたされることもあるようだけど、別に気にならなかった。 松本氏を代表する作品であるだけに、何度もドラマ化・映画化されているが、そのどれもが到底及ばない原作の力をよくわからせてくれた”昭和の社会派ミステリの最高峰”なのです。 追伸:「男の爆発」には笑いました(笑) |
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野球や競馬のミステリを読んできた本城氏の新境地か、ミュージシャンの世界を見事に描いた人間ドラマに仕上がっている。仲違いやドラッグなど、ミュージシャンあるあるな部分もあり、実際のミュージシャンたちも味わっている部分もあるのでは?とリアリティも窺える。
音楽を奏でるシーンも堂に入ってるんじゃないかな。歌詞もドラマチックな仕上がりですよ。音楽好きな私にも納得。 でもやはり本城氏の作品はスポーツモノがいいな、というのもホントのところ。 |
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直木賞受賞作「少年と犬」のステップとなったとも言える作品。犬好きな必読、女子中学生・雨音を取り巻く伯父・道夫や高校生の正樹が彼女の成長に手助けし、そして忘れてはいけないバーニーズマウンテンドッグのワルテルから大切なものを教わり自分自身を見つめて将来の姿を見出していくという、感動的な小説となっている。山岳小説の要素もあるが、犬小説としてのある種のパターンもあって、これはこれでひとつの小説ジャンルととらえる。道夫さんや正樹の言動、きれいな山岳・森のシーン、そしてラストは涙なしでは…
ひとつ気になったのは、ストーリーには関係ないけど、中高生にビールやワインを飲ませるところ。別に変な意図はないんだろうけどね。 |
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現実に起きた事件がもととなった作品であり、時代もあっただろうが協会側の狡猾さと、当時の日本の警察力の弱さを見事に描いた快作。
人物名や団体名は変えられており、多分にフィクションも交えているだろうけど、教会側の巧みな策略には警察のみならず、私も舌を巻かれる思い。 全編にわたり、作者の事件に対する思いが張り巡されている、最後まで気を抜けない物語だった。また、第1部の教会編、第2部の捜査編に分かれて 事件の書き方も作者のうまさが光っていると思う。 これが全くのフィクションだったらよかったのにとも思った。 警察のふがいなさに歯噛みすることしきりだったが、現代の未解決事件も同じようなことが起きているのではないかとも感じさせてくれた。 |
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これまでの「戦場のコックたち」や「ベルリンは晴れているか」等とは全く異なる作風で、まさにジブリ映画を思わせる幻想的ファンタジー。本の世界に入り込むというリアリティとは真逆の世界を体験する少女がとても健気で好感度↑↑。
元来、私自身はこういった作品はやや守備範囲外だけど、いつしか物語世界にどっぷりハマって、自分も”本”の世界に入り込んでしまっているのに気づくことも。 基本的には普段の読書にリアリティを求める私ですが、たまにはこういう幻想空間を体験するのもいい、と感じさせてくれた。 しかし、ひるね伯母ちゃんは気持ち悪いな。。。 |
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巷では猫ブームとやらで猫番組も多いが、やはり犬好きには犬小説。前作「ソウルメイト」と比して「命」に重きをおいたお話が多いです。
特に障碍をもった犬をテーマにしたものは、かつて私も脚の不自由な犬を飼っていたので感傷に浸っていました。 最後の章では、そんな彼らに逢ってみたくなる作品。あっちの世界で元気に走り回ってるかな。 |
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落語にはサゲが大事。破楽師匠が教えてくれたとおりに、見事に最後が決まっています。創作落語の「千歳飴」や刑務所の慰問など読みどころ満載で、まさに名人芸を堪能した気分。電撃文庫大賞の奨励賞を受賞したのも頷けます。「猫の恩返し」で涙腺崩壊です。
弟子入り志願する願もさることながら、破楽師匠の生き様に拍手! |
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認知症を題材にした前半、テロリストの暗躍の中盤、そして警察組織の闇をえぐった終盤。
この展開はミステリとして迫力あり。乱歩賞作としてはレベル高い。地味な前半から派手な中盤〜後半の様変わりには読み応えがあった。 選考委員が指摘するように、警察組織を勘違いしているには同意するが、フィクションだからいいか。 |
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生産者の立場から見た競馬を、リアリティ豊かに描いた感動作。さすがは元スポーツ紙記者、どこをとっても臨場感豊かに読ませてもらえた。生産者のみならず、調教師、騎手、馬主も実際こういうやり取りをしているんだろうなと思わせるし、結末はわかりながらも、感動に誘ってくれるのは競馬ファンならずとも納得の作品です。
帯に「ダービーのスタンドがファンで埋め尽くされる日が戻りますように」とあるように、1日も早く大勢のファンが生のレース観戦ができるようになるよう心から願っています。 |
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輪廻転生を題材にしたものは数々あれど、本作は著者のセンスのよさと読みやすさで感動的な一作。前世の記憶があるということがこれほどまでに不幸なことなのか、というのが全体に漂い、純愛ミステリといった風合いで、なるほど直木賞を獲ったのも頷けると感じた。輪廻転生は肯定も否定もしないがきっとそういう子供は実際いるのだろう、ただ上手く人に伝えられないまま大人になるにつれて忘れていくんだろうな、と思ったしだいです。
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