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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数374件
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図書館を舞台としたミステリ。
ミステリ要素となるのは、図書館で起きた火災事件と、その焼け跡から発見された焼死体、そして遺体が見つかった地下書庫における密室要素です。図書館関係者への聞き込みを主人公の刑事が担当するという王道の構成であり、正統派のミステリとして楽しめました。さらに現代では珍しくなった「読者への挑戦」付きの推理小説なのが好感でした。これがあるだけで、手がかりや推理がしっかり考えられて作っていることが伝わってきて、作者の意気込みを感じます。 本作は単なる謎解きだけでなく、「図書館」という場所に関わる人々の思いや姿が描かれていたのが印象的です。不登校の生徒の居場所となっていたり、地域の交流の場となっていたりと、利用者の視点だけでなく、運営側や司書、職場環境に至るまで、図書館を軸にした多面的な描写がなされていました。 事件やトリックに派手さはなく、やや地味に感じる面もありましたが、図書館という舞台とミステリ要素がしっかり結びついており、全体としてきちんとまとまった作品だと感じました。推理小説を読みたいけど古い作品が苦手という方や、ミステリ初心者にオススメしやすい作品です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学園を舞台とした理系の「日常の謎」の物語。ミステリー要素は控えめで、科学を取り入れた青春小説です。
ミステリーの要素は控えめでしたが、作品全体に漂う心地よさや、物語の魅力がとても好みに合いました。高校生や学園ものが好きな方には、おすすめな一冊です。 まず、登場人物に嫌なキャラクターがいないのが良かったです。基本的に皆いいやつで、読んでいて気持ちがよい。理系の高校が舞台ということで、科学や数学に関する会話が登場しますが、その雰囲気も楽しく味わえました。物語は4月の入学から始まり、新入生と先輩たちの出会い、部活の勧誘といった、学園ものの王道の展開をたどります。そこに、理系ならではの「日常の謎」が加わり、独自の魅力を放つ作品となっています。 本書は『理学部ノート1』というタイトルからシリーズ化を見据えた作品のようですが、内容自体は本書単体でしっかり完結しています。あらすじ冒頭で高校生活のある結末を描いてますので完結している状態です。勝手な想像ですが、完成後に作品の出来が良かったため、出版社がシリーズ化を決めたのではないかと思うほどです。それほど本書単体でも満足感のある素敵な物語でした。またイラストも綺麗で可愛らしく作品の雰囲気にぴったりで、大事なシーンがより印象的に映りました。なかなか力の入ったシリーズになりそうな気配。次作も楽しみです。 |
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2024年度の鮎川哲也賞受賞作品。
物語は救急医の元に搬送された溺死体が主人公に瓜二つであった事から始まる。彼は何者なのか? なぜ同じ顔をしているのか?ミステリとしての謎が魅力的であり、文章も読みやすく没入感がある作品でした。 作者は現役の女性医師である方。その為か医療現場の雰囲気や描写が専門的で面白く刺激になりました。特に救急現場のシーンは臨場感があって引き込まれました。そして作者が女性医師というのは、本書の評価において重要な要素の一つになっていると感じます。世のレビューにも多くみられますが、ミステリーとしての物語を作る為か、倫理感が独特だったり、嫌悪されるであろう要素がいくつか見られます。でもこの作者なら、理解した上で書いているのだと納得できる為です。一般的な男性作家だったら非難を受けていたかもしれません。予備知識がない方が楽しめる作品なので、どういう要素なのかはネタバレ側で後述しますが、小説というフィクションだから描ける社会問題を内包した作品です。 タイトルの作り方が巧みで、意味合いや印象も抜群でした。事件の結末や探偵役のキャラクターも魅力的で好みでした。後味は好みが分かれるかもしれませんが、強く印象に残るのは大きな魅力。シリーズ化されるなら次作も読んでみたいと思わせる作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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興味が湧くタイトルが一品。それを実現させる作品作りの意気込みが好感です。
ただ難点は期待値が高すぎるものになる為、「思っていたのと違った」と感じ、世の中の評判は控えめになってしまうのは避けられないかなと思いました。個人的には、こうしたテーマを持って作られている作品は好きです。 物語は過去の事件の再調査もの。 過去の事件現場を模した場所に集められた7名。「犯人以外は毒ガスで殺される」というデスゲームに巻き込まれる流れ。生き残るためには「自分が犯人だと認められなければならない」というひねりの効いた設定が面白い作品です。 自分が犯人になるために、事件のトリックや背景を自供する。しかし、その主張に対して他者が探偵役となり、矛盾を突いて反論していく。そんな巧妙な構造が展開される物語です。タイトルに偽りなく、変わったミステリーとしての面白さがありました。 一方で悩ましかったのは、真実か嘘なのかに関係なく「犯人にされるためのエピソード」が語られるため、内容の把握が難しく興味を持ちにくかった点です。後で覆されるかもしれない嘘の物語を、ちゃんと把握して読もうとは無意識で思えなかったからです。何か印象に残るトリックやキャラクターなど魅力が欲しかったのが正直な気持ち。内容ではなくタイトルが一番目立ってしまったのが残念に感じました。 似ている雰囲気のアニメやミステリー系のゲームやマーダーミステリーなどが思いあたるのですが、それらは強烈な個性のキャラやイラストで彩られ、面白く引き立てているなと改めて感じました。ライト系なら何でもアリな設定が誤魔化せますし。本作はリアル寄りのミステリに作者が挑んだという結果として意気込みは好感なのですが、やや地味に終わってしまったのが惜しく感じました。 |
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シリーズ3作目。単体では楽しめないのでシリーズを読んできた人向けです。
本作は、通常のミステリでは扱いづらい非現実的な密室トリックを次々と繰り出す作品です。 作中では登場人物のセリフを通じて、読者の心情を代弁するような呆れた反応も示されており、それも作者の計算のうちでしょう。 細かい現実性にとらわれず、純粋に奇想天外なトリックを楽しむ作品です。 そうした視点で読めば、堪能できます。 トリック以外の要素には特に重きが置かれていません。 登場人物の名前も分かりやすく記号的で、ストーリーや舞台もあくまでトリックを引き立てるためのもの。 物語として何か深く感じ取るような内容ではなく、純粋に仕掛けを楽しむ作品です。 内容とは別に、2作目から急に値段が上がっている点が残念でした。ファンなら購入することを見越した価格設定ですし、それ自体は理解できます。ただ本作はトリック重視でストーリーの面白さを求める作品ではないため、価格に対してやや割高に感じてしまうのも否めません。とはいえ、不思議と次回作も手に取ってしまう魅力があるシリーズなのが悩ましいところです。 |
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コロナ禍を背景に、他人の転落人生を描いた作品です。
複数の視点で展開される群像劇となっており、場面が適度に切り替わるため、テンポよく読めて最後まで飽きることなく楽しめました。 群像劇の構成は、仕掛けミステリーを狙ったものというより、読者がスムーズに読み進められるよう工夫されたものです。なおミステリー要素はあまりありません。 転落人生や不幸を描いた作品なので、あまり気持ちの良い読書ではないです。なのでそういうのが苦手な方は事前にご注意を。 個人的に本書で感じた感想は、コロナ禍で孤立した人々への救済物語です。 コロナ禍で人との接触が減り、一人で孤独や不幸を感じていた人に、他人の強烈な不幸を描いた物語を届けることで、共感や「自分はまだマシ」と感じたり、少しでも前向きに生きるきっかけを与えたい。そんな思いも込められているように感じました。 さらに、不幸に陥る人物たちのパターンや、浅はかな思考が描かれる様子は、ある意味で半面教師的な教訓としても受け取れる部分があります。そのため、若いうちに読んでもらいたい作品とも思えました。 |
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ネットでの出会い系トラブルを題材とした現代ホラー作品です。
インターネットが一般に普及し始めた2001年の作品であり、当時の時代背景を巧みに取り入れた作品だと感じます。 ネットや出会い系といった要素や設定自体は特に特別なものではありませんが、読ませる文章に引き込まれた読書でした。 今読んでも古臭さを感じさせない面白さには驚きました。携帯やネット環境などの話は昔のものですし、ネットトラブルを用いた作品は世に沢山あり見慣れてしまっているのですが、古臭さを感じず惹き付けられます。なんといいますか、変に奇を衒わない王道のホラーとして無駄のない話構成で高い完成度を感じた次第。主人公やリカの人物像も現実にいそうなリアルさがあり、身近で現実的な怖さをジワジワ感じる魅力的な作品でした。 幻冬舎文庫版では、ラストに結末が追加された完全版となっています。この追加エピソードが、物語の結末をさらに際立たせており、ホラー作品としてよい後味でした。 シリーズ化されていますが、本作内に無理にシリーズ化を狙ったような伏線はなく、この一作目だけで無駄なく完結している点に好感です。 |
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作者買いしている一人なので、新刊が出たことが素直に嬉しいです。点数には好み補正が入っています。
今回は「小説とは何か?」そして「読者」がテーマとなっている作品です。 作者はこれまでもテーマ性のある作品を多く手がけており、『know』では「知る」とは何か、『タイタン』では「働く」とは何かを描いてきました。本作では『小説』というタイトルで「読者」をテーマとして描かれています。『アムリタ』から『2』の頃は「創作」に関する作り手側の視点を描いていましたが、本作ではそれを受け取る側に焦点を当てた作品だと感じます。 本を読むことが好きな人ほど、心に刺さる言葉があるのではないでしょうか。 「そんなに本が好きなら自分で作らないの?」から受けるネガティブとか、「読むだけじゃ駄目なのか」という問いは、読み手側の心情を代弁しており、かつその問いに対して野﨑まど流の哲学的な考えが展開される物語です。今回も「解法」や「解放」となる考え方に触れることができとてもよかったです。小説に対する見え方が変わる一作でした。 |
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あまり期待せずに手に取った為か、予想以上にミステリーとして巧みに仕上がった物語に驚かされました。※誤解しないように言うと驚き系ではないです。
本作はシリーズ第2作目ですが、単体でも十分に楽しめます。1作目はYoutubeネタでミステリーとして小粒な感じでしたが、本書はミステリとしてしっかりとした読み応えがあります。 不動産ミステリーというユニークなコンセプトのもと、間取りを題材にした謎解きと推理が見事でした。間取りの不自然な違和感を手掛かりに、そこに隠された意図をホラーやドキュメンタリーの雰囲気で描き出しています。解釈がやや強引な部分もありますが、ホラー調の緊張感が物語に深く引き込んでくれるので、読書中は不自然なく読めました。 本作は短編集の形式で、11編の物語から構成されています。 どの物語も適度な長さで、謎解きと推理がテンポよく進むため、間延びすることなく最後まで飽きずに楽しめました。 そして間取りを用いた図解ベースの構成になっているため、普段読書をしない人にも楽しみやすい構造になっているのが作品の大きな魅力だと感じました。サクサク読める面白さがあります。 さらに、あらすじや帯に書かれている通り、11の物語を読むと、それぞれの繋がりが見えてくる構造が一品。 「実はこういう話なのではないか」、「あれとあれが繋がって……」と、最終章がなければ、深読み・考察系の小説としてネットで話題になれることでしょう。本書は最後にその構造の真相が丁寧に明かされるため、読後感も非常にすっきりします。 多くの伏線も然ることながら、『間取り』という題材を見事に昇華したミステリーが素晴らしかったです。 期待値としてはパズラー寄りの内容で、ストーリーの面白さよりも、間取りを活用した各物語の繋がりや伏線を楽しんだ作品でした。 一般読者を多く生み出した話題作になるのも頷ける作品でした。 |
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今年の横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈読者賞〉受賞作。
ホラーとミステリが巧みに組み合わされた、まさに賞の趣旨にふさわしい作品でした。 文章や扱われる言葉がオカルトや民俗・伝承の要素を取り入れた雰囲気のあるもので、とても魅力的でした。髪の毛を題材にした怪異的なホラー小説として存分に楽しめた一方で、単なる怪異ホラーにとどまらず、密室や死体の入れ替わりといった要素を取り入れた本格ミステリ寄りの構成も見事でした。 怪異的なホラー小説というジャンルが現代でどれほど通用するのか気になるところではありますが、本作においては、閉ざされた富豪の屋敷という舞台設定が非常によく考えられていると感じました。広大な屋敷内で展開される物語だからこそ、多様な条件や空間の存在に説得力が生まれており、納得感のある作品に仕上がっていると感じます。少し気になった点を挙げると、終盤の展開で事件の全容がやや分かりづらく、スッキリとした読後感が得られない部分もありました。ただ、これは私自身の読解力の問題かもしれません。 ホラー×ミステリー作品として雰囲気もライトで読みやすい作品でした。シリーズ化するなら次作も読んでみたいと思います。 |
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奇想の物語による特殊設定ミステリ。
ミステリの為の物語ともいえるし、物語の為のミステリともいえる一作です。複雑な構成なのですが、新しい物語の体験として心に残る印象的な作品でした。 物語は古来より存在していた人間に寄生する生命体『蛇』の物語。 『蛇』は無敵の存在。人に寄生し、その人の記憶を継承して人間に成りすまして生活している。宇宙生物的な感覚で捉えるとイメージしやすいです。 そしてこの蛇は死なない蛇。死んでも蘇る。ただし死んだり消滅する時にはそれなりのデメリットがある。現代では5匹存在しており、その5匹の「衣装変え」という名の人間の寄生先を変えるイベントで事件が発生するという展開です。 正直なところ「ミステリの謎を解く事を楽しみにする」という視点で読むには向かない作品です。 その理由は、物語があまりにも奇抜で現実的に考えられないからです。ただし、訳が分からないから楽しめないのかというとそうではなく、複雑で難解な内容ながらも、読んでいると不思議と面白いのが不思議な味。人間を殺したり乗っ取ったりと倫理感に欠ける部分もありますが、どこか青春ミステリーのような味わいがある奇妙な味わいでした。 特殊設定ミステリとしても適当な特殊性なのではなく、この物語の設定だから可能とするミステリが見事でした。 発想は物語が先なのかミステリの仕掛けが先なのかわかりませんが、絡み合った構造が非常に巧妙でした。 前半の1章・2章ぐらいまでは内容が把握しやすく楽しめたのですが、3章からはかなり複雑な事件模様となり、理解するのが難しくなりました。 ミステリの内容については「整合性がとれているのか」や「他に可能性がないのか」といった点を気にするのはやめ、あまり考えず物語の雰囲気を楽しむ読書となりました。 普通のミステリは読み慣れてしまっていて、新しい変わった特殊設定もの作品を求める方にオススメです。 |
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心温まる物語で楽しめました。
500年の時を経て現代に目覚めた呪いの人形・お梅。呪いで人を殺そうと奮闘するものの、思うようにはいかず……。むしろ、お梅に関わる人々は人生の転機を迎えることに――そんなお話です。 作者の人柄が感じられ、読者を楽しませながら笑顔にさせる物語作りがとても巧みです。心地よい気持ちで読み進められ、思わず一気読みでした。 帯には『伏線回収』とありますが、ミステリー的な要素は弱いので、気軽に楽しめるハートフルストーリーとして手に取ると良いと思います。 |
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謎解きを主軸にしたパズラー小説。
本書はミステリの物語における登場人物たちの感情や背景、深刻さが排除されており、設定や要素が純粋に謎解きの為に活用されています。前作同様に気軽に読めて楽しめるミステリの為、純粋に謎解き堪能しました。 やはり『ワトソン力』という設定が発明もので面白いです。『ワトソン力』は周囲の人物に対して推理能力を飛躍的に高めて発言したくなる能力を付与します。発生した事件に対して色んな可能性の推理を登場人物達が皆で言い合う推理合戦が見どころです。 個人的には『服のない男』が好み。パズラー小説なのでリアルさや感情は抜きで考えた時、行われた理由や背景などがユーモアあふれる謎解き作品として決まっていると感じました。 |
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読書前は400ページ上下2段組みという密度に躊躇しましたが、今年の推理作家協会賞受賞作という事で手に取りました。
結果、濃密な読書体験を得られた嬉しい読書でした。ページ数が気にならないというか、この世界観にずっと浸って楽しみたい感覚。 要素はSFのサイバーパンクもの。人体改造、アクション、警察、スパイ、などなど近未来での描き方が豊富。でも物語中の時代設定は第二次世界大戦後という不思議な設定であり、我々のいる世界とは異なるパラレルワードを堪能できます。 個人的にサイバーパンクの小説をあまり読んだ事がなかったので、より一層新鮮な読書でした。 ゲームの『サイバーパンク2077』が好きなので、そのイメージもあったと思うのですが、読書中は体験したことのない世界観なのに、まるで画が浮かんでくるような魅力的なシーンと描写の数々に圧倒されました。 表紙の装丁も素敵。面白かったです。おすすめ。 |
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かなり個性的な作品で新鮮な読書体験でした。あまり経験していない部類の作品で、とても好み。
世の中には、登場人物になりきって事件を体験する「マーダー・ミステリー」というゲームがあります。本作はそれを富裕層の娯楽として実際に殺人が行われる「リアル・マーダー・ミステリー」を舞台に描いた作品です。物語は2つの視点で構成されており、1つ目は、この娯楽に巻き込まれた役割不明の主人公視点。もう1つは運営側の視点で倒叙ミステリ模様です。 娯楽としての「マーダー・ミステリー」を取り入れることで、密室トリックや見立てに対しての「何故それを行うのか?」という疑問が不要になり、すべてが演出として楽しむためという形で成立しているのが斬新で発明ものです。おかげで、お約束のミステリー要素を純粋に味わえる構造になっています。 読者がマーダー・ミステリーのゲームを体験した事がある場合、それぞれのキャラクターが持つ情報や役割の感覚がゲームで体験していると思うので馴染みやすく、楽しめる作品だと思います。一方、ゲームを体験していない読者にとっては、役割のキャラが不自然で「何でこんな行動をするのだろう?」と違和感を覚えるかもしれません。そのあたりの事情を、本作は巧みにコミカルかつユーモラスに描いているのが面白いポイントです。作品全体の雰囲気は主人公視点だと深刻ですが、運営者視点ではあえてユーモアが強調されており、これが本作の味の1つだと感じました。実際の殺人を行うという不謹慎なゲームが舞台でありながら、嫌にならないで楽しめる雰囲気が絶妙です。 話のネタが分っても、最後までどうなるのか楽しめるのも良い。結末はちょっと物切れ感ありますが、物語の着地点は好みでした。 |
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1作目で完結していた物語に、まさかの2作目が登場。とても嬉しい読書でした。
本作は前作のファンに向けたボーナス的な作品で、いわばおまけストーリーです。ミステリーを用いた要素はありますが、冒険ファンジー寄りの小説となります。 設定自体はどこかで見たようなエピソードが並びますが、何故か読書中はすごく面白い。登場人物たちの熱い想いがとても心に響いてくるのが不思議。これは著者の表現力や文章力によるものでしょう。優しさ溢れる作風が好み。キャラクターの魅力や、読後感の良さもまた心地よいです。 前作が素晴らしかったため、蛇足にならないかと懸念していましたが、見事に物語が繋がっていて驚かされました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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新鮮な読書体験でした。奇抜な設定による古代エジプトを舞台としたミステリー。面白かったです。
主人公は蘇ったミイラというのがまず面白い。古代エジプトの死生観が活用されており、ミイラとして保存された肉体は死者の魂が戻るとされている。なので、主人公が蘇っても普通に村になじんでいる奇妙さが印象的です。 ミステリーとしても、主人公の心臓が欠けている謎や、ピラミッドからのミイラ消失など、あまり目にしたことがない珍しい設定に惹き込まれ、興味津々で読み進めました。 登場人物が全員カタカナなので、最初は少し取っつきにくかったものの、物語が分かりやすく登場人物の配置も整っているので、すぐに慣れることができました。 あまり多くは語れないのですが、要素要素の設定が実はそうだったのかという驚きもあり、かなり満足のミステリーでした。物語としても読後感が良かった点が好みのポイントです。 他思う所として小言になりますが、タイトルに"密室"と書かれているので密室ネタに期待してしまう次第ですが、その密室については物足りなかったです。ミステリー好きに興味をもってもらうタイトルとしてはアリなのかな。応募作時点のタイトル『欠けのある心臓(イブ)』の方が好み。 本書をミステリーとして期待すると物足りなさが出てしまうかも。ただし古代エジプトを舞台とした物語を楽しみ、ちょっとミステリー要素があるぐらいの感覚で読むと楽しめると思います。個人的には物語の面白さを楽しみました。 そして装丁については、表紙絵がナイス。そしてタイトルや見返しに金の装飾を使ったり等、こだわりを感じる内容でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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2024年度のメフィスト賞受賞作。
読書前にあらすじを読んだ印象では、転生もので、転生先がスピーカーという面白い設定だな~、ぐらいの気持ちでした。しかし読み終えてみるとラノベによくある転生ものとは違い、奥深いテーマを持った作品だと感じました。個人的に感じたテーマは「思春期の悩み」、そして「生」と「死」についてでした。 ミステリー要素はほんの少しですが、男子高校生の学校生活を舞台とした青春小説となります。そのぐらいの気持ちで手に取ると良いです。 小説の傾向としては、文学小説に近い印象です。 男子高校生たちのノリが面白く、下ネタやくだらない話、そしてテンション高めの会話が絶妙に味を出しています。ここは好みが分かれる部分かもしれませんが、個人的には大いに楽しめました。彼らがバカをやっている姿が日常パートとしての平和であり、毎日の普通が「生」であるという事をワザとバカバカしく描いていると感じました。声だけの山田視点による同級生達とのやり取り、独り言のラジオパート、描き方が文学的で普段読むことが多いミステリーとは違う文章で面白かったです。 本書、実は昔からよくある「幽霊もの」の作品だと感じました。スピーカーへの転生や、男子高校生たちの会話が今風の雰囲気を醸し出していますが、昔からある地縛霊による幽霊もの作品のジャンルであります。 山田はすでに死んでいる為、学校を舞台にすると、卒業などを通じて必然的に「別れ」が訪れます。幽霊作品における別れの描き方。ここをどうするのだろうと読書の序盤から気になっていたのですが、その演出や構成、そしてテーマを文学的なタッチで見事に表現していた作品でした。 読後に著者を調べたところ、純文学を志している方だと知り、非常に納得しました。 下ネタもばかばかしいノリも狙い通り。その後に訪れる「死」というテーマとのギャップが強い印象を与え、効果的に心に響きます。高校生達との「仲間」と「生」に対する、スピーカー山田の「孤独」と「死」。その間に若者の喜怒哀楽の叫びが盛り込まれている感覚です。いろいろな側面から深く考えさせられる読書体験でした。読後感としては、少し気持ちが沈む部分もありますが、だからこそこの作品が読者の心に深く残る、独特の魅力を持っているのだと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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前作の続編がまさかの登場。
世界観が前作の延長にあるため、爆弾事件後の物語が描かれています。前作を読んでおくことを強くおすすめします。 爆弾魔かつ愉快犯の「スズキタゴサク」という人物設定がかなり魅力的であり、今作も良い味を出していました。いわゆる「無敵の人」である知能犯。相手を不愉快にさせる言動や行動は今作も健在。特徴的なセリフ回しが、キャラクターを際立たせています。前作を楽しんだ方や、この犯人に興味を持った方は、今作も間違いなく楽しめるでしょう。 裁判所を舞台とした立てこもり事件。100名近い人質をコントールしているという事に納得できる文章の緊迫した雰囲気が見事でした。この手の作品では、文章が軽いとどうしても現実味が薄れたり、無理のある展開に感じてしまうことが多いですが、本作はそうした不安を感じさせない圧倒的な緊張感で引き込まれます。 犯人が明かされているミステリーながら、犯行理由や目的が謎に包まれており、その点が非常に興味を引きます。キャラクター造形や警察ものとしての要素も楽しめる作品でした。 ミステリーの仕掛けや社会的テーマが現代的な要素に巧みに絡んでおり、まさに今の時代にふさわしいミステリー作品だと感じました。"スズキタゴサク"の今後の展開が非常に楽しみです。 余談ですが、この爆弾シリーズの装丁が好みでした。表紙画像だとわからないですが、実物はモノトーンの写真にツルツルした加工の飛沫が施されており、その触り心地が面白い。こだわりを感じる表紙でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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今年の江戸川乱歩賞受賞作。
本作は乱歩賞作品の中では、新人賞とは思えないぐらい大変読み易い文章であり、明るい雰囲気で楽しめる作品でした。 物語はアイドルがたった3カ月間のトレーニングでボディビル大会で上位入賞を果たすのですが、「そんな短期間ではあの筋肉ができるわけがない」とドーピング疑惑でSNS炎上する始まり。 SNSの炎上から始まる展開が現代的で面白いです。本書は新人記者がその疑惑を調査するため、アイドルが運営するパーソナルジムに潜入するという、潜入調査ものの作品です。 乱歩賞作品に対する個人的なイメージは社会派で難しい印象だったのですが、本書は気軽に楽しめる雰囲気で、その点に驚きました。 「筋肉は本物なのか?」というわかりやすい謎かけ。潜入調査ものながら、内容は大変コミカルで、主人公の行動には思わずクスッとさせられます。コツコツ筋トレして努力は人を裏切らない的な、成長小説にも感じる作品であり、読後感がとても良い作品でした。欲を言えば成長性をより感じさせる為に、失敗や苦難も描いてほしかったかな。トントン拍子で進むのでちょっと物足りなかったです。ただその分スピード感を優先したのかもですね。 一方で、雰囲気や読みやすさは抜群ですが、ミステリとしての要素、特に謎解きや社会派のテーマといった従来の乱歩賞作品をイメージする部分においては、物足りなさを感じるかもしれません。ミステリに対する正直な感想としまして、何か驚きやテーマを感じさせて欲しかったです。仕掛けの面でもやや弱さを感じ、提示された謎に対する解答にも少し問題があるように思いました。この点については、ネタバレ側で記載します。 個人的には、乱歩賞作品というよりも「メフィスト賞」や「このミステリーがすごい!大賞」の印象を受けました。ユーモアミステリではなくライトミステリの部類かと思います。しかし、ポジティブに考えますと、乱歩賞の苦手な部分のイメージが払拭でき、気軽に楽しめる万人向けなミステリーとして、多くの読者を獲得できる可能性がある作品だと感じました。 読みやすく、楽しめる作品であることは間違いありません。また、作者はこれまでに何度か乱歩賞に応募している方なので、今後の作品にも期待です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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