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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数247

全247件 121~140 7/13ページ

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No.127: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

最後にして最初のアイドルの感想

表紙で驚かれるが星雲賞受賞作。ハヤカワからの出版作品。かなり癖があるが読んだら納得の個性が光る作品でした。
Amazonの電子書籍で話題になり、SNSで拡散され大いに注目された作品。内容もアイドル・アニメ・ソシャゲ・声優といった現代のオタク文化をベースにSFの広大な世界へ悪乗りしながら融合させ、想像しえない飛んでもない結末へ物語を展開させていきます。
現代的な内容・ネット拡散が巧く働いた作品ともいえ、今風なSF作品が世に出るきっかけを感じました。

何だか話題になっているという情報を得て、予備知識なしの読書。
アイドル活動から始まるが、20~30Pからまさかの急展開。ネタばれ控えて言えませんが、ん?これホラー?グロ?化学もの?え、SF?あ、跳躍系?ん?どこへいくのこの話?っていう感覚で跳んでいきます。予備知識なかったので、この本が何なのか不思議な読書体験でした。
なんだか読みながら、そもそもSFってなんだろう。なんて考えていました。科学技術や生物学やら宇宙やら環境がそうさせるのか。用語が難しかったらSFを感じるのか。ジャンルの定義の曖昧さを感じながら、物語は駆け抜けていきました。
ま、内容のベースはオタクネタなんです。本書は短編3作ある作品集なのですが、『ラブライブ』や『けものフレンズ』や『マクロス』とかそういうのを感じる中で、SFネタを融合させていきます。で、文章のテンポが非常に良いので、何だかおかしい気がするけれど、その変な所を考えさせないように、どんどんネタを投下して場面転換する剛腕が凄く巧いのです。

この本の楽しみ方は、SFは知らないでよく、アニメネタが好きで2次創作で突き抜けてしまった本書を一人で読んで刺激を受け、他に読んだ人がいればその人と、変だけど凄いよね。と共有して仲間を見つける、そんな体験本です。面白い漫画やアニメや映画やゲームを体験したけど、ちょっと人には言えない、だけど同じ人と出会えた時に嬉しくなる。そんな感覚の作品。
アニメネタに全く興味がなければ、SFネタだけ映し出され、それだと過去のハードSFであるような結末じゃん。という結論で終わってしまいます。まったく関係なさそうなアニメネタを過大解釈してSFと融合させる物語作りを楽しむ本かと思いました。
また、先に書きましたが、ジャンルについては広義のSFやら広義のミステリやらで、現代の出版作品は他ジャンルの融合で壁はなく、面白いかどうか、そして今の時代で売れるか。という事が昔からですが改めて感じさせる。そんな事を思いました。

3作品それぞれの点数は
『最初にして最後のアイドル』☆8。
『エヴォリューションがーるず』☆6。
『暗黒声優』☆4。
という感じでした。
最後にして最初のアイドル (ハヤカワ文庫JA)
草野原々最後にして最初のアイドル についてのレビュー
No.126:
(6pt)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 業火のワイダニットの感想

閻魔堂沙羅の推理奇譚の第3弾。
相変わらず面白いのですが今回は厳しめでこの点数にします。

まずミステリとしての感想ですが、すべての手がかりが提示されてはいるのですが、主人公達の突飛な発想を前提とした論理展開である為、納得し辛いものとなっています。1巻では、読者と主人公の頭の中の手がかりの準備と、その手がかりを元にした推理展開がとてもシンクロしていたのですが、本作は読者置いてけぼりで推理している事を感じます。読んでいて一緒に考えるのではなく、解答を眺める物語となっています。作品と読者の距離感がとても離れていると感じました。突飛な発想とはいえ、神の視点となる沙羅に正解が与えられればそういう物語なので納得せざるを得ないのですが、スッキリしません。複雑な謎を作り上げようとした気がしますが、これじゃない感がとても感じる物語でした。

ドラマの内容について。著者の思想がとても強くでています。登場するキャラクター達に政治や社会の考えを代弁させたセリフが多すぎます。2巻の『負け犬たちの密室』で登場した浦田も同じ傾向でしたが、このキャラクターは世間を見下した自己が確立した人物だったので、社会へのメッセージや思想多きセリフも浦田の改心へ繋がる物語として役割を果たしていて意味を感じましたが、本作の場合はただの著者の想いの発散の為、謎解きのノイズに感じました。必須ではない文章が多くカットしても問題ない所が多いです。1巻のように些細な会話が解決の手がかりとなるような無駄のない文章で謎を解き明かす品質を望みます。

本作品集の中では最初の『外園聖蘭』の章が面白く読めました。表題含めた他の作品は煮詰まってなくて複雑で長い物語に感じてしまいました。
2巻から続けて作品を書き続けているのでしょうね。物語の文章の流れの傾向から筆がのっている感じはとてもします。
何だかんだ不満を溢しましたが、総じては面白いので次回作も楽しみです。
閻魔堂沙羅の推理奇譚 業火のワイダニット (講談社タイガ)
No.125: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

毎年、記憶を失う彼女の救いかたの感想

2017年のメフィスト賞受賞作。
毎年記憶を無くしてしまう女性の元に現れた謎の男性からゲームを持ち掛けられる話。

恋愛ミステリとしてのキャッチフレーズの本書。ミステリ仕掛けを多少期待するわけですが中身は終始恋愛小説でした。
正直な所、記憶喪失モノの恋愛小説としてみた時、世の中たくさんあるこの手の中で本書の特徴的な要素は見当たりませんでした。小説や映画やゲーム等で思い浮かぶ先行作品を超える点がないので、結末も予想の範囲内で収まりました。たまにある講談社系ミステリの帯コピーって、タイトルと帯とジャンルから結末が読めちゃう下手さがありますね。売る為の帯文句なのはわかりますが、読んだらそのままだったという刺激がないです。売れるかもしれないですが、読者へ印象が残りづらいので、作品の評価が上がり辛い勿体なさを感じます。
一応良いと思う点としては文章が非常に軽いライトな小説です。小説を普段読まない読者層が手に取るには丁度良いかと思います。内容も分かりやすく読みやすいのは好感でした。
余談ですが、メフィスト賞の出版が講談社ノベルスではなく講談社タイガへ移っているので若者向けへ傾向を変えているのを感じました。
毎年、記憶を失う彼女の救いかた (講談社タイガ)
No.124:
(6pt)

断片のアリスの感想

ログアウト不能のVR空間。仮想空間には存在しないはずの痛覚が発生し、閉じ込められた館内で殺人事件が発生。
現実世界は災害により退廃し、仮想空間内で暮らす近未来のSF模様。ログアウト不能により状況の手掛かりを得る為に館まで向かう話は冒険ファンタジー。たどり着いた館内での事件はデスゲーム+ミステリ。と言った具合に色んなジャンルが展開します。
ここは好みの分かれ所だと思う点で、多ジャンルが読めて好きという人もいれば削って内容を濃くした方が良いと思う人もいるはず。私は後者。館まで向かう前半は必要ないのでは?制作途中で物語の方向転換をしたのかなという印象を受けました。設定が繋がっておらずバラバラな印象です。
VR空間内のルールが不明なのでミステリとして読むのも難しい。殺人で返り血を浴びたとしてもアバターの着せ替え機能でクリーンニングできる為犯人が特定できないなど仮想空間を利用した設定は面白いが、こういったゲーム感覚を知らない人はチンプンカンプンかと思う。場面の想像がし辛い文章なので個人的になんとなく『ソードアートオンライン』『不思議の国のアリス』、その他デスゲーム、バトルロワイヤル系の作品の景色を頭に浮かべながらの読書でした。

300P台の本中、200P過ぎるまでしっくり来ない作品でした。ですが終盤の結末は見事。この結末を最初に構想してから本作を描いたのかなと思うぐらいよく出来てます。SFやゲーム作品で結構見慣れておりますが、終わりよければ印象良しという作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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断片のアリス (新潮文庫nex)
伽古屋圭市断片のアリス についてのレビュー
No.123: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

博識な深水黎一郎作品と、お茶目な深水黎一郎作品の2編が納められた中編集。

1作目『ドン・キホーテ・アラベスク』はあらすじ通りバレエを舞台とした作品。過去作の芸術ミステリ同様に、得意のフランス語を含めたバレエの知識を得ながら楽しめた作品でした。著者の勉強にもなるミステリは毎回面白い。シリーズキャラクターも交えて良い感じ。明かされた真相も気分の良いもので好み。短編作品+バレエ知識で中編ボリュームの作品です。
2作目は前知識なしで読んでもらいたいので、あらすじは割愛。

ふと、1作目と2作目、どちらのネタを先に思いついたんだろうと思う。2作目かな。中編集と言えどこの2作は2つで意味を成す体裁を得ている。それぞれ単体で見ると、そこまで際立ったネタではないと思う。ただ、2つ合わせる事で効果的に活用されている。こういう意味のある使い方は本当に巧いと思う。

ま、後は好みのお話なので、個人的には楽しめたけど、読みたい気分の内容とは違った作品だった次第。
バカミスは好きなんですけど、本格ミステリを読みたいと思って手に取るのと、バカミスを読みたいと思って手に取るのでは印象が異なる。今回はタイミングが悪かった模様。面白くて良い意味でくだらないwって感じなんですけどね。
と、なんだかんだ言っても質が高いのは流石です。

あと、著者はとてもお茶目で楽しい人なんだろうなっていう印象が本作ではとても感じました。ある種、本作はテーマをもった作品ではあるのですが、それよりも著者の人柄をよく表している作品であると感じました。勝手な想像ですが、自己紹介本の感覚で、どんな作品を書く人ですか?と尋ねられたら、本書を渡して、真面目な所とお茶目な所を感じてもらうような作品。そんな事を思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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虚像のアラベスク
深水黎一郎虚像のアラベスク についてのレビュー
No.122:
(6pt)

僕と彼女の左手の感想

これはとてもピュアな青春恋愛小説。なんというか眩しい。悪意がまったくない作品でした。
登場人物は主に男女2名のみ。過去のトラウマで医者の道を諦め悩む医学生の男性と、右手麻痺で左手だけでピアノを演奏する女性の恋物語。

著者の本は初読書。『このミス』大賞出身作家さんで、同賞のピアノを題材した作品群より、浅倉卓弥『四日間の奇蹟』や中山七里『さよならドビュッシー』を深層心理で感じながらの読書でした。読み終われば、これらとは違う位置づけにある作品であり、内容は「恋愛要素8:ミステリ2」ぐらいで、音楽+恋愛小説を求めている方にはアリな作品です。

序盤の率直な感想としては恋模様の展開が早すぎ!出会って直ぐにあれよあれよとデートして心惹かれてと純情過ぎる事に違和感。急展開に感じるのは、女性の行動力に対して主人公の反応が冷静過ぎて読者と気持ちがリンクし辛い為、話の先行だけが目立ちました。
主人公も女性の行動に驚いて読者と共感すれば違和感ないのですが、彼も驚いたりする事なく『翻弄されてばかりだな…… 』と冷静に呟いて、この展開が普通な世界なのかと話の先行が目立ちました。
ただ、終盤でのまとまりは巧くて納得するので、そこまでの道をもう少し違和感なく進むと良かったのにと思いました。

話は綺麗に終わるので、1つの恋愛物語として楽しめた作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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僕と彼女の左手 (単行本)
辻堂ゆめ僕と彼女の左手 についてのレビュー
No.121:
(6pt)

設定や主人公達の想いは好みなので次作に期待

死ぬ人が分かる少女と、その能力を参考に人を死なせないように行動する僕のお話。
コンセプトとなっている"人を死なせないようにする"という作品が珍しいかというと、ループ物作品にて多くあるのでこの設定自体は真新しいものではないのですが、能力設定は面白い。人が死に近づくにつれて顔にモザイクが濃くなっていくというのはミステリ仕掛けを色々期待できます。今すぐは殺される心配はないとか。直ぐに助けなくてはいけないとか。活用方法は多いでしょう。ただ本作については期待する仕掛けの作品という趣向ではなく、設定や人物紹介の割合が多い為、ミステリとして読む本ではなく青春小説という印象を受けました。
過去に起きた学園での転落事件の検証も推理というより、関わっていた人達の心理を告白し受け止めるようなお話です。ハヤカワ出版なのでもっとミステリした物を期待してしまった気持ちでした。死なないミステリである為か全体的に緩い雰囲気ですが、次作にて、死までのタイムリミットの緊張感や、舞台の性質を活かしたり、事件の真相も推理により導かれるような作品を読みたいと思いました。志緒と僕のキャラクターは好きなので、このコンビによる次作の活躍を期待します。
誰も死なないミステリーを君に (ハヤカワ文庫JA)
井上悠宇誰も死なないミステリーを君に についてのレビュー
No.120:
(4pt)

空ろの箱と零のマリアの感想

学園ループもの。シリーズ作品ですが続巻へ続く事なく本書単品で楽しめる作品です。
本作の特長はSFではなくファンタジー寄りのループ作品。
何でも願い事を叶えてくれる『箱』が存在する世界で、誰かがループ世界を実行している。表紙に描かれている転校生の音無彩矢が転校してくる日に閉じ込められた生徒の物語で、序盤は何故ループしているのか?何が起点と終点となっているのか?の謎を感じつつ、ループの世界に閉じ込められ何をしてもうまくいかない定番の失意を味わいながら物語は進行します。
世界の枠組みの謎がキーとなりますが、正直な所そのネタを楽しむ為には複雑過ぎるというか、理解し辛いのが難点でした。『箱』の存在が何でもありに感じられるとルールは意味がなくなる為、没入感は消えてどうでもよくなったような気持でした。

▼以下、ネタバレ感想
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空ろの箱と零のマリア (電撃文庫)
御影瑛路空ろの箱と零のマリア についてのレビュー
No.119: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

真実が不明な深読み系小説

面白い試みの小説だと思いました。

本書は、作者の長江俊和がある事情から出版できなくなったルポルタージュの原稿を入手し、これは世に埋もれさせてはならないと感じ出版した本です。
※というのは、まぁ設定で、個人的にはノンフィクションを装った作品かと思います。
現実にあってもおかしくない内容なので、読者に「これって本当の事?」と思わせる物語のバランスがとても巧いです。

届けられた原稿は2002年に起きたある男女の心中事件のもの。心中は未遂で終わり、生き残った女性を取材したインタビューが記載されています。

小説として現代の"心中"を扱う場合は、一昔前のサスペンスドラマにて多くの男女のもつれによる殺人や偽装の作品が世にでた為、読者はこれってこういう話なんじゃない?と疑った見方をしてしまう難点があります。 本書の巧い所は、現実にあった事件の取材原稿としている為、読者へ事件内容を疑わず史実として受け入れさせている所。さらに物語ではないので、取材に漏れがあるかもしれないですし、作者の考察が正しいとは限らないといった地の文の正確さの保証が無い小説となります。 この点が好みの分かれ所でして、ミステリとして読むか、こういう作品として認められるのかという心構えで評価は大きく異なるでしょう。

個人的な感想ですが、正直な所読んでいてまったく興味をそそられなかったのですよね。ミステリなら仕掛けを期待しますが史実設定なので他人の男女の死に興味が沸かないというスタンスでした。 ただ最後の閉じ方は印象に残りました。 表向きの考察と解答は作者の考えとして示されますが、それが真実とは限らず、もっと他の真相があるのでは?と読者に含みを与えて悩ませる深読み系作品ですね。なので読後感はモヤモヤしました。

読後にネットで著者を調べたら、放送作家の方で似たような番組を作られていたのですね。 これは非常に納得で、読者を虜にする仕掛けが巧いと思いました。
考察サイトを巡回しましたが、考察者は作者のアイディアや仕掛けを見つけ出す事を楽しんでおります。この動きを狙った商品として考えると非常に巧い仕掛け本だと感じました。

▼以下、ネタバレ感想
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出版禁止 (新潮文庫)
長江俊和出版禁止 についてのレビュー
No.118:
(4pt)

川の深さはの感想

元マル暴で現在警備員、警察組織との折り合いがつかず抜けてから3年、辞めた時にバツイチとなり孤独に自堕落な生活を過ごす日々。そんな主人公が警備業務中にヤクザに追われていると思われる2人の男女を助けた事から陰謀に巻き込まれつつも人生を見出していく。
この序盤の主人公の過去・現在そして希望の無い人生の哀愁漂う雰囲気から、物語が一転する様子が楽しめました。ぶっきら棒な様で実は照れ隠し、言葉は汚いけれど人思いの主人公の優しさと熱さが魅力的でした。100kg越えの強面のおっさんなのですが味があります。序盤はハードボイルド模様。
中盤以降は、あらすじにある様な敵との戦いとなりますが、これは派手なアクション映画のようなドタバタ模様となり、著者が好きなんだと思われる機械や軍事ものの専門用語が飛び交います。
前半は"静"で後半は"動"と雰囲気が違う作品です。好みとなりますが、前半は面白かったのですが後半は好みに合いませんでした。
ただ、最後の最後は落ち着く所に落ち着いており、よい読後感でした。
川の深さは (講談社文庫)
福井晴敏川の深さは についてのレビュー
No.117:
(6pt)

七日間の幽霊、八日目の彼女の感想

本書は"ループもの"や"幽霊もの"ではなく、記憶障害を持つ恋人との青春物語です。
あらすじやタイトルで誤解しやすいというか、わざとな商業戦略なのかもしれませんが、こういうのは印象が悪いです。
ただ、望んでいた内容とは違いましたが、1つの物語として楽しませてもらいました。

記憶障害作品ですが、話の重さはなく、非常にライトで楽しめます。
中高生男子のラノベ色が強く、ちょっと訳あり主人公が、美人なヒロインにモテモテな設定。完全に男子向け作品です。
現実的に、恋人や友人や家族や身の回りに起こるであろう事を考えると、本書はとても都合がよい展開で、ツッコミ所は豊富でキリがありません。
なので、そういうのは一旦おいておいて物語として楽しむとすれば、全体はとても綺麗な小道具や言葉で描かれいるので、中高生向けの青春恋愛小説としてよく出来ていると思いました。主人公とヒロインの考え方には共感できないのですが、世の中の恋人の思考は人それぞれなので、1つのハッピーエンドでしょう。

さくっと読める読みやすさと、彼女の日記を間に挟む物語の構成など、作り方はとても綺麗でした。終盤の一言を配置するページの気配りなど、細かい所をよく考えられているのも好感。ライトな仕掛けのサプライズがあったり、 不思議な恋の物語としては中々面白かったです。
で、読み終わってから表紙を見ると、記憶障害の作品にしては綺麗な絵柄かつ意味深でタイトルも巧いなと思いました。

色々とわだかまりが残るのですが、全体的に綺麗にまとまっている事で好感が持てる不思議な作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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七日間の幽霊、八日目の彼女 (メディアワークス文庫)
五十嵐雄策七日間の幽霊、八日目の彼女 についてのレビュー
No.116:
(4pt)

魔の淵の感想

"密室物の名作"だったり、当時ミステリマガジン連載のみで書籍がなく入手困難で"幻の傑作"と言われていた本書。読む機会が出来たので読んでみました。
正直、期待値が高すぎた事や、70年以上前の作品である為か、今読んで面白いかと言われると首を傾げる次第。

前半はオカルトものです。交霊会が行われ、霊媒師が呼び出した死者と相続に関して真面目な会話が進みます。古い時代の作品なので仕方がないですが、今読むとなんか滑稽でした。その後、殺人事件や怪奇現象、雪に残る不可思議な足跡の存在が現れ、浮遊できる呼び出した霊でないと事象を説明できない状況が発生します。
"密室物"として名高くなった本所ではありますが、これは密室物ではないと思います。カーっぽいオカルト+不可能犯罪の状況です。まぁ雰囲気は好みでした。

事件解決方法やトリックについては、トンデモトリックで実際には無理でしょという机上の空論なのが残念。ただ、終盤の2人による舞台の裏側の背景は良かったのでそこだけ印象に残り加点です。

▼以下、ネタバレ感想
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魔の淵 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ヘイク・タルボット魔の淵 についてのレビュー
No.115:
(6pt)

時間島の感想

要所要所のネタは凄く面白いのに、B級ホラーのようなネタだけが目立って深みが弱い作品でした。文章表現が軽くてイメージが沸き辛いので絵付きの漫画かアニメ向きかも。小説というより仕掛けを楽しむ作品という感想でした。

舞台は廃墟がそびえ立つ無人島。ここに廃墟番組撮影のスタッフ9名が訪れた所、次々と人が死ぬ事件が発生します。このシチュエーションは好物です。
そこにホラー要素として、事件の予言の動画の存在が加わります。これは5年後の未来から主人公の元へ、未来を変えるべく犯人を暴いてほしいという動画で、動画には全身怪我を負い記憶を失くしたミイラ男が映っており、その人物の不気味さがあります。

生き残ったミイラ男は誰なのか?犯人は誰なのか?などなど、面白そう!と思う要素は豊富なのですが、なんだろう、、、読んでいて惹き込まれませんでした。
真相の仕掛けも面白かったので、アイディアは良いのですが煮詰まっていない勿体なさを感じました。

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時間島 (アルファポリス文庫)
椙本孝思時間島 についてのレビュー
No.114:
(6pt)

逆転裁判 時間旅行者の逆転の感想

ゲーム『逆転裁判』のオリジナルストーリー。著者は討論が魅力のルヴォワールシリーズを手掛けた円居挽。小説を過去に読んだ事があるので、言い争う逆転裁判の小説化の担当としては面白そうな組み合わせだと思いました。ゲームは逆転裁判1~4をプレイ済み。『逆転検事シリーズ』はプレイしていません。
その上での感想としては、とても逆転裁判を再現していて文句なしです。読んでいて画やBGMが浮かびました。シナリオの進行の仕方、敵役の証拠の隠し方とその暴き方の展開、セリフ回しなど、逆転裁判が好きな人は納得の出来だと思います。キャラ物として面白かったです。
一方、逆転裁判を知らない人が、ミステリや小説単品として見るとどうか?と思うと、非常に厳しい作品かもしれません。法廷ミステリでもあるのですが、展開はゲーム的なノリそのままなので、シリーズが好きな人は楽しめ、知らない人は何だこのふざけている裁判は?となるかと思います。

大きな主軸となる謎はタイムマシンが存在するのかどうか?
密室内に被害者と共にいた被告人。タイムトラベルをしたとしか思えない状況の数々。この非現実的な内容を謎として捉えられるかどうかがポイントです。
原作はゲーム作品だから、霊媒やらタイムマシンの存在もアリなんじゃないかと思えてくるわけで、違和感なく楽しめたかどうかが評価に繋がると思います。
個人的にはミステリも然ることながら、ファンサービスが強い印象でした。懐かしいキャラクターが多く登場したのが楽しかったです。

何故、被害者は死の寸前、密室内に閉じこもり助けを呼ばなかったのか?この解法は本書ならではの理由で唸りました。
タイムマシンネタも、一般ミステリでは扱い辛いので、逆転裁判と結びつけたのはある意味巧いなと思います。

点数について。
ゲームだと相手の証言を崩すべき、おかしな所を試行錯誤して論破するのが楽しい魅力ですが、小説だと解答への一本道な為、おかしな証言はそのままおかしいまま読まされるだけなので、検察側の理不尽な証拠隠しが目立ち、なんだこのふざけた裁判は?という印象でした。文章は正に逆転裁判なのですが、小説の一本道だと違和感がありますね。同じ文章や雰囲気でもゲームと小説での印象は大分違う難しさを感じました。手放しで面白いと言えない難しさが残った感想です。シナリオそのまま、本書をゲームとしてプレイしてみたいと思いました。
逆転裁判 時間旅行者の逆転 (ハヤカワ文庫JA)
円居挽逆転裁判 時間旅行者の逆転 についてのレビュー
No.113: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

ブルーローズは眠らないの感想

青い薔薇の温室。小窓はあるが室内の壁一面が薔薇の蔓が張り巡らされているという目張りされた密室の属性。首だけの被害者と謎のメッセージ。密室の情景が美しくとても魅力的でした。ミステリとしての仕掛けと物語の作りは非常に濃厚。読後感は凄く複雑な内容を作り上げる凄さを感じました。

読み終わってからの感想はとても良いのですが、そこへたどり着くまでの読書中はどうかというと、個人的な問題なのですが、あまりのめり込めなかったです。。。
本書は前作からの続きのシリーズとなりました。その為、時代設定がパラレルワールドの80年代。ちょっとSFが入る不思議な世界です。青薔薇におけるDNAや科学的の解説。「実験体七十二号」という怪物のような存在を感じさせる本書において、どこまでが現実的に解き明かせるミステリなのか?空想もの?読書中は判断が付かずで頭を悩ませてしまった次第。世界情勢も不明でU国やJ国という表現。登場人物名はカタカナの海外ミステリ模様。物語を楽しむ前段階で意図しない混乱をしてしまった次第です。本書はパラレルワールドの必然性は感じず、シリーズ故に引き継がれた設定が読みにくくしている難しさを感じました。作品はとてもよいのですが、好みの問題でこの点数で。
1-2作読んで傾向が分かったので3作目はちゃんと把握できると思います。しっかりした濃いミステリなので次回作も楽しみです。
言葉遣いが悪いけど特徴的なマリアと、丁寧な漣のコンビは中々よいです。

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ブルーローズは眠らない (創元推理文庫)
市川憂人ブルーローズは眠らない についてのレビュー
No.112: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

死と呪いの島で、僕らは(死呪の島)の感想

単行本と文庫で表紙とタイトルが変更されましたが、これにより作品の印象が大分変りました。
『死と呪いの島で、僕らは』として読むと序盤のホラーからして一転、ラストの結末への展開は若い世代向けのライトな青春小説とも感じます。
一方、『死呪の島』として読むと、呪いで閉鎖的になった島での不可解な怪奇現象に挑む、昔からなじみのあるホラー小説を感じます。

本書は6章ある構成で、各章ごとに、怪奇現象⇒プチ結末⇒新たな怪奇現象⇒プチ結末⇒・・・と続いていきます。章ごとに話の系統が変わる展開なのですが、色々なホラー小説を読んでいる気分になり、飽きさせない面白さになっています。個人的には2章目に出てくる『顔取り』が雰囲気含めて好み。漂流した首なし死体と、蘇る死者のホラー展開は、何が起きているんだ?という困惑と恐怖が楽しめました。4章ぐらいまでが好みだったのですが、終盤は全く予想外な話になっていき、ちょっと好みが逸れました。

読後に俯瞰して思う事は、1章~6章への各エピソードが、昔ながらのホラーから現代ホラーへと時代を駆け抜けて表現していると思いました。
科学が進化した現代では、呪いや超常現象的な恐ろしさを描こうとしてもホラー作品ではなく、「異世界ファンタジーもの」にされてしまう悲しさがありますが、本書は昔ながらのホラーから描いていく事と、全体を締める結末作りで一風変わった作品になっていると思いました。
そんな事を思ったので、改めて表紙とタイトルを見直すと、前半は『死呪の島』として感じる昔ながらのホラー、後半は『死と呪いの島で、僕らは』で感じる青春小説というわけで、人の好みによって本書は評価が変わるだろうなと思います。

他の方のレビューでもありますが、文章は読みやすく、いろいろ詰め込んだ物語なのに300P台でまとまっているのが凄いです。現代的な読みやすさでホラーが楽しめたという所は好みでした。終盤のなんでもアリ感はちょっと好みから外れたのでこの点数で。

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死と呪いの島で、僕らは (角川ホラー文庫)
No.111: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

言霊たちの反乱(言霊たちの夜)の感想

言葉遊びのネタに特化した短編集です。短編4つの作品のテーマはそれぞれ
・同音異義語による聞き間違い
・日本語/英語の聞き間違い
・ワープロ誤変換
・表現、印象操作
を扱ってます。

前2つはお笑いコントのような話。電話越しで「きせいちゅうです」と聞いた時、"寄生虫です""帰省中です"の誤読が生まれる。日本語は同音異義語が多い為、前後の文脈から言葉の意味を推測するわけですが、このネタをふんだんに盛り込んだ結果、勘違いのコントに仕上がっています。
どこで勘違いしているかが分かり易いので、ずっとボケ続けている様子を見るのはちょっとシラケ気味でした。ただ、多くの聞き間違いネタを披露している所は面白かったです。

3作目の誤変換を扱った『鬼八先生のワープロ』は、かなりトンデモ作品。
キーボードで入力した平仮名としては全く同じ文章なのに、 評論家の酷評文章が誤変換によって下ネタ小説になってしまう作品。
『ここ数年。恐るべき新人が…』⇒『ここ吸うねん。お剃るべき新人が…』という感じで変換されていく下ネタ小説。
もう、アホかとw これは変態作品(褒め言葉)。ある種の病気。苦労系のバカミスを感じながら、物語を楽しむよりこれだけ豊富な語彙がでてくる事に驚きを味わう作品。
短編集ですが、この作品が一番やりたい事かと勘違いする程に際立った作品でした。
4作目の表現印象操作は、TVの問題やそれに負けない文章を紡ぐ作家の思いを感じました。

そんなわけで、帯に"トリック"や"犯人"という誘い言葉がありますが、個人的にこれはミステリではない作品だと思います。
技巧系作品です。語彙が豊富でないとできない作品ですね。ほんとうに凄い。そしてチェックする校閲も凄い。実際どうだか分かりませんが、制作現場が気になった次第。
ミステリのミスリードや叙述トリックなんかは、この言葉遊びによる対読者への印象操作ですものね。普段から作家さんはこんな事を考えながら思いついてニヤニヤしているんだなと勝手に感じて面白く思いました。
言霊たちの反乱 (講談社文庫)
No.110: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

世界で一つだけの殺し方の感想

著者の作品は、何かしらテーマを決めて他作では真似し辛い特異な作品作りをするので好みです。
本作はタイトルにある殺し方(ハウダニット)をテーマとした特異な存在となっております。他で真似できないような仕掛けの2つの物語です。

正直な所を申しますと衒学的な小説でした。専門知識の紹介が伏線となったり段階をおって読者を惹き込めればそれなりの仕掛けと驚きを得られそうな印象なのですが、短編なので心構えができないまま急に出てきた仕掛けに困惑します。これはかなり好みが分かれる作品かと思いました。

1作目『不可能アイランドの殺人』
何が起きているか分からない超常現象の作品。オカルト?ファンタジー?何なのコレ?と、心構えが分からず、どう感じたらよいか困惑の読書でした。読み終わると、あ、そういう事なんだ。一応ミステリだし、ハウダニットもなるほどな。と置いてけぼりを受けながら納得した読書でした。☆4点。

2作目『インペリアルと象』
前作でちゃんとミステリをするという事が分かったので心構えができての読書。ただ中身はクラシック音楽の薀蓄が披露されます。
クラシックは好きなので、私的には好みで楽しめました。ただ、これって興味ない人には目が滑る読書になるかと思います。。。

この2作目はとても好みでした。薀蓄もトリックに結び付きますし、音楽ミステリとしては作者の知識が披露された濃い作品となっています。
個人的には長編で読みたかった作品でした。☆7。

一般向けではない、ちょっとマニアックな作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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世界で一つだけの殺し方 (講談社文庫)
深水黎一郎世界で一つだけの殺し方 についてのレビュー
No.109:
(4pt)

メルキオールの惨劇の感想

たまに変態小説を読みたくなる、そんな時に手に取る平山作品。
序盤2,30ページ程は、言い回しとクセのある比喩が気になる文章が続く。読み辛くとも我慢して読書。
辛いのは最初だけで、途中から普通の文章になり読めました。

いつもながら変態設定な登場人物達が魅力的。
自分の子供の首を切断し何処かへ隠した母親。その首を欲する死に際の物語を集めるコレクター。首を探す主人公。犬を振り回す怪力男。などなど、クセが強い。
グロくて気持ち悪いけど、何故かユーモアがある所は表現の巧さというか、人それぞれの好みですね。

話はめちゃめちゃなのですが、全容が分かるとブラックユーモアな所が面白い。
ただ、メルキオールが登場したあたりから、ファンタジー色が強くなってしまったのが好みではありませんでした。
求めていたのは、現実にはないけれど、現実のどこかにありそうなアングラ世界のバランス。これはファンタジーでしたね。

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(新装版)メルキオールの惨劇 (ハルキ文庫)
平山夢明メルキオールの惨劇 についてのレビュー
No.108:
(5pt)

ダンガンロンパ霧切 5の感想

「密室十二宮」完結。本作は単体では楽しめず、3~5巻を上中下巻と捉えた方が良いです。

振り返ってみれば、本格ミステリのトリックを十分に楽しめる作品でした。古典的トリックや有り得ないと思える仕掛けを、このゲーム的な世界観だからアリと思わせるバランスが良かったです。
個人的な難点は、3~5巻の発売が間延びしていたので、前後の関係や登場人物を忘れてしまった事です。せめて主要人物紹介のページは欲しい。この人誰だっけ?というのが多かったので作品に没頭し辛かったです。事件現場やトリックが豊富な所は楽しめますが、豊富過ぎてパズル・ミステリの問題集のように感じました。物語を楽しむというかトリックネタを眺める感覚でした。
3巻でアホキャラになりかけた五月雨が、本作ではちゃんと探偵として活躍していたのが良かったです。物語はどう進むのだろう。DSCナンバーもインフレしてしまっているし。。
次回作は1巻完結もので楽しめる作品だと嬉しいなと思う所です。

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ダンガンロンパ霧切 5 (星海社FICTIONS)
北山猛邦ダンガンロンパ霧切 5 についてのレビュー