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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数247件
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累計部数が電子含めて100万部を突破しているという人気作品。作者の作品を久々に手に取りました。
物語は、彼女がストーカー被害に遭ったことをきっかけに同棲が始まり、ほどなく婚約に至ったものの、その彼女が突然行方不明になってしまう――というところから始まります。彼女はどこへ消えたのか。ストーカーは誰なのか。行方不明の彼女を探す、男性主人公の視点から始まる物語です。文庫のあらすじでは"恋愛ミステリ"と書かれていますが、ミステリー要素は失踪もの作品という扱いぐらいで、ミステリー要素は低めです。 扱われる内容は、30代後半の未婚男女の実情や、婚活模様、アプリでの出会いなど、現代における恋愛感が描かれています。そして自分や相手の"傲慢さ"、そして"善良"に生きてきた人々の価値観などが描かれていきます。読み進めるうちに、読者自身がハッとさせられる一面があり、多くの気づきを得ることになるのではないでしょうか。一方で、こういう感想を抱くこと自体が傲慢さゆえに起きている次第だなと、少し言葉を選びたくなる読後感を得る気持ちでした。 作品中では、傲慢と善良といった言葉で男女の考えを示していますが、結局のところ、この表現は相手にレッテルを貼って距離を取っているだけな気もします。婚活の売れ残りと表現している人々も相手を品定めして距離を置いているだけな気がしました。相手の思考を汲み取ったうえで、傲慢と突き放すのか、許容とするかは人それぞれの解釈だなと感じます。 ストーリーとしては2章まではとても面白かったのですが、3章からはやや脇道に逸れたような印象でした。心境を改める大事な場面転換ではありますが、間延びしてしまった印象を受けました。 作品はよくできていて8点ぐらい気持ちなのですが、内容の好みの問題でこの点数で。 |
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山奥にある温泉湖近くの病院が舞台。災害により病院一帯は濃霧と温泉区域による硫化水素ガスが発生。
硫化水素は空気よりも重いため、すぐに吸い込む事はないが、徐々に足元から上がってくるタイムリミット状況。ガスによるクローズド・サークルの状況設定に新しさを感じた作品でした。 前作が面白く本作も本格ミステリとして描かれ、斬新なクローズド・サークルの環境設定に期待値が高まりました。しかし結果としては個人的にはやや合わなかった印象です。 本書はデビュー前のストック的な作品でしょうか。前作では感じない文章の質で、今回は内容が把握し辛い読書でした。 小説冒頭のミステリのワクワク感として、病院内の見取り図はとても好感でした。一方、登場人物紹介の方法がやや難点でした。病院ゆえに患者の登場人物だけで70名以上います。主要な登場人物も19名と多く、人物の把握に苦労します。そして主要登場人物の肩書も「外科部長」や「薬剤師」や「看護師」という特徴的な要素で簡潔に示せるところを「更冠病院薬剤師」 「更冠病院新館三階看護師」というフル名称で並べるため、圧迫感といいますか把握し辛さを強めている気がします。共通項はグループ分けで整理すればより良いと思います。もしかすると、あえて意図的に人物は把握しないで読んでもらいたいという狙いがあるのかもしれないのですが、私は登場人物表の段階で少し挫けそうになりました。 登場人物の把握以外にも、突然の回想や、ローカルネタのような知っていて当然のように扱われる用語が多く、内容が散漫に感じました。ただし医療現場の描写や専門的な説明は解説付きであり、前作同様にリアルに描かれたシーンは魅力的でよかったです。見知らぬ時事ネタが同じトーンで差し込まれる箇所はやや違和感が残りました。 ミステリとしての骨格や医療問題を通じた社会的なテーマは印象に残り、意図自体は好感です。今回は構成や文章が合わなかったのですが、シリーズとしての魅力は十分。また、城崎医師がシリーズとして登場しているのはとても良く、彼の性格や行動は個性的で作品の強みになると感じます。その点でも今回は少し役割が少なかった印象。などなど気になり楽しみな点も多い為、今後のシリーズも出れば手に取りたいと思います。 |
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最近映画化されたこともあり、書店でよく見かけるようになった一冊。『第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞』の受賞作ということで手に取りました。
少し背景をお話しすると、第39回から賞名に「ホラー」が加わり、『横溝正史ミステリ大賞』は『横溝正史ミステリ&ホラー大賞』へと改称されました。しかし初年度は「受賞作なし」。本作『火喰鳥を、喰う』は、名称変更後はじめての受賞作です。 そのため「ミステリなのか?ホラーなのか?」という点が大きな注目を集めた作品でした。 読んでみると、その境界は確かに曖昧で、良い意味でジャンルの掴みどころがない物語です。どちらとも言い切れない不穏な雰囲気と、予想外の方向へ進む展開には驚かされました。この「先の見えなさ」は見事だと思います。 一方で、個人的には非常に読みづらい文章で、内容も把握しづらい印象でした。今どうなっているのか、理解が追いつかないまま読み進める読書体験でした。結末の意外性は評価したいものの、ついていけないまま終わってしまい、「そういう結末にするのか」としか思えなかったのが正直なところです。 後味の悪さもホラーとしては正解かもしれませんが、私とは相性が合わなかった作品でした。 |
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タイトルが一品で興味が沸きました。ただ少し期待値が高すぎたのもありますが合わない作品でした。
同じ著者の『そしてミランダを殺す』は大変読みやすく好みであり、翻訳者も同じの創元推理文庫であったのですが、本書は読み辛く内容の把握が難しくて楽しめませんでした。後述しますが、本の構成として、読みやすくする工夫はあると思うのですが、本書はその丁寧さが欠けている気がします。 物語は、アメリカ各地の9人に、自分の名を含む9つの名前だけが記されたリストが郵送されます。差出人も意図も不明。そのリストの人物が殺されていくという事件。9名の繋がりは何なのか、なぜ殺されるのか、といったミッシングリンクもののサスペンスです。 ■内容の把握が難しかった理由について。 第一に膨大な登場人物です。主要9名に加えて一時的な登場人物も現れるため、誰が誰なのか混乱しがちでした。しかも人物表にすべて載っているわけではなく、「この人は誰だろう?」と思って確認しても見つからないこともあるわけです。 登場人物表にはまず主要9名が描かれ、さらにそれぞれに関わる人達が一覧で並んでいますが、それぞれが誰に絡む人物なのかが分かりづらく、画が浮かぶような特徴のあるキャラではないので、カタカナ名の把握が困難でした。 改善してほしい点としてはサブキャラは2段組や複数ページでも良いので全員を一覧に載せ、主要キャラに対して絡むサブキャラを余白や区切りで分けて掲載するなどして、人物を把握しやすくしてほしかったです。 第二に、視点の切り替え方です。 9人の視点を行き来する構成自体は面白いのですが、章の冒頭には「日時」だけが記され、誰の視点なのかは本文を読み進めないと分かりません。そのため「これは誰の視点だろう?」と確認してから冒頭に戻って再読するという、テンポの悪い読み方を強いられました。せめて視点人物の名前を章頭に明示してくれれば、ずいぶん読みやすくなると思った次第です。 さらには、事件の区切りに挟まる、9名のリストの扱いです。 物語の節目にリストが挟まれ、人数が減っていく演出自体は効果的ですが、英字で9人の名前が並ぶだけなので被害者の把握が困難で効果的ではありません。例えば「名前はカタカナ表記」にし、事件で「亡くなった人物には打消し線を引く」などの工夫があれば、読者はより物語を追いやすくなったと思います。 英字や死亡者の表記に何か意味がある演出なのかと思いきや、特になかったので、ただ素材を載せるだけでなく、読者が楽しめるように丁寧に処理をしてほしかった心境です。 というわけで、内容そのものよりも「読みづらさ」が強く残ってしまいました。同じ著者・翻訳者でも、編集者が違うのでしょうか。ここまで印象が変わるのかと考えさせられる一冊でした。内容についても最後まで読んでよかったかというと、肩透かしな印象なので、好みに合わない作品となりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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異界の存在が見えたり、操れたりする世界観で描かれる、奇妙な物語。角川ホラー文庫のレーベル作品で、ホラーの系統としては「恐怖」ではなく、「気味の悪さ」をじわじわ感じさせるタイプの作品でした。
怪異の正体や、潜入先で行われている不可解な出来事の謎に引き込まれた読書でした。その怪異の解明に心霊案件を扱う佐々木事務所が関わるという流れです。 民俗学や宗教の要素を絡めた構成は興味深く、霊能力者同士の力関係や、覆いかぶさるような絶望感も魅力的でした。ただ前半で抱いたワクワク感が後半でやや失速したことや、キャラクターについても闇が深すぎる人物ばかりで感情移入できず、自分の好みに合いづらい作品でした。 |
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翻訳の問題か、原文の文体の特徴によるものかは分かりませんが、文章が自分には合わなかったというのが正直な気持ちです。作者の視点で語られる物語ということもあり、地の文の所々の描写が省かれているように感じました。そのため、内容が把握しづらく、読んでいる途中では「このあたりに何か仕掛けでもあるのでは?」と、つい深読みするという誤読をさせられました。終盤では物語の全体像が繋がっていく様子が明示されるものの、読書中は混乱が多く、あまり物語に没入できなかったのが残念です。
古典ミステリのルールにのっとった懐古主義を感じさせつつも、作者視点の文章によって「どこで誰が死ぬか」を序盤でページ数を明かしておいたり、途中でまとめを提示して読者の理解を助けるなど、現代的な工夫も見られ、そこは新鮮さと面白さがあってよかったです。ただ「ルールに沿ってますよ」と伝えながらも、解釈の違いによってはルール違反のようにも感じられ、なんとも煮え切らない印象を受けた作品でした。 面白かったというより、うまくまとめたなという感想が強く、個人的にはあまり相性の良くない作品でした。 |
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文庫版表紙にある通り、日本人作家として初めてCWA(英国推理作家協会)翻訳部門を受賞したことをきっかけに手に取りました。ページ数は200ページと手頃で、サクッと読めるのも魅力です。
物語は、暴力を唯一の趣味とする喧嘩屋のような女性が、ヤクザ社会に巻き込まれていくというもの。ボリュームが抑えられている分、予備知識なしで読んだ方が楽しめるタイプの作品で、あらすじ紹介も最小限にとどめられています。 読み終わってみると、海外でヒットする理由が分かる作品でした。 海外の人にとっては、日本のヤクザ社会、暴力シーンが新鮮に映りますし、とあるネタがまさに時代を反映しているというか、海外の人の方が反応するお話でした。日本のミステリ読者には見慣れた仕掛けではありますが、海外向けの作品としては非常に効果的だった印象。ただ、個人的にはやや強引に感じた部分もありました(詳しくはネタバレ感想にて)。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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犯罪街である特別自治区、通称<成れの果ての街>を舞台に、異能力者たちが激突する犯罪劇。
表紙に描かれた2人の主人公による“バディもの”としても楽しめます。そして、どちらも論理も感情も欠いた狂人であり、狂った世界で狂った者同士が繰り広げる異能バトルは見応えがありました。 キャラクターや世界観には独特の魅力があり、ミステリー的な意外性もあって、設定面は楽しむ事ができました。 ただ正直なところ、作者のデビュー作である為か、文章は荒削りで、読みにくさが気になりました。読書中、頭の中に浮かんでいたイメージは、文章から直接得たものというよりも、セリフ回しや設定から連想された他のアニメやマンガ作品に頼って補完していた感覚でした。挿絵のない場面では、どんなシーンかうまく想像できない事も多く、物語に入りこめなかったのが残念でした。先に本作の3年後に出版された『嘘と詐欺と異能学園』を読んでいたのですが、そちらでは読みにくさは感じなかったため、作家さんの成長を感じる作品とも思えました。 |
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タイトルや雰囲気作りは抜群に面白かったです。ただ、勿体なさを感じた作品でした。
『二人一組になってください』という、学校で馴染みのある言葉をタイトルにしたセンスがとても良いです。卒業式直前のデスゲームのルールも、"誰とも組めなかった者は失格" というシンプルで分かりやすく、読者が手に取りやすい作品で巧いなと思ったのが最初の感想でした。作品序盤の出席名簿やカースト表を見せる演出も好感で期待が高まりました。 文章も読みやすく、デスゲーム特有の理不尽なペナルティが発生する序盤のパニック感や心理描写も良いので最後まで一気読みで、面白く楽しめた……はずなのですが、なんというか結果は何も残らない作品でした。 デスゲームものとしての感想ですが、頭脳戦要素は皆無でした。最初に示されたルールから読者なら思いつきそうな戦略もまったく描かれず、登場人物たちは場の流れに身を任せるばかり。考え方の刺激や登場人物の悔しさも伝わらず、ただ死んでいくだけの展開が続いたことで、死の重みが軽くなってしまっていたのが残念でした。結果として大事なテーマや内容の印象が残りにくく、達成感や結末への感情移入もしづらかったため、終盤に至ってもどこか醒めた視点で物語を見てしまいました。 テーマ性について。 「いじめ」がテーマという話が序盤で示されているのですが、正直なところ、根底に「いじめ」があったという事は最後まで隠しておいた方がよかったような気がします。物語の導入で、いじめがあったからデスゲームが行われたと提示されるので、読者にいじめについて考えさせる狙いがありそうな気がしますが、それがあまり伝わってきませんでした。というのも、描かれているエピソードの多くは思春期の女子高生たちの悩みに重きがある為、「いじめが理由でデスゲームに巻き込まれた」という必然性に共感しづらかったからです。むしろ、最初は「なぜデスゲームに巻き込まれたのか?」という理不尽さと緊張感を前面に出し、最後に「実はいじめが背景にあった」と明かすほうが、より印象に残る展開になったのではないかと思います。 文章や雰囲気はとても読みやすく魅力的だったのに、デスゲームといじめのテーマの描き方がチグハグで、もっと良くなりそうな惜しさを感じる作品でした。女子高生たちの空気感や、生徒たちの悩み、友人関係の各エピソードはそれぞれ面白かっただけに、最後は何も残らなかったのが正直勿体ない作品に感じました。 最終章の最後の2行みたいな要素がもっと全編に欲しかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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読後に知りましたが、シリーズものの3作目でした。
ただ、メインの登場人物が続投してる程度なので本作単体で読んでも大丈夫です。 好みの評価に関しては非常に悩ましい点数でした。 480ページのボリュームの中、残り数十ページの終盤までは何が起きているのか、何が大事な話なのかよく分からず退屈だったのが正直な気持ちです。読書中の気分は3~4点ぐらいがホンネ。面白くない。色々と事件が起きているのですが、把握したり真相を読み解くのは難しいでしょう。ただ、全ての理由や繋がりや真相が明かされる終盤は圧巻であり驚かされました。これまでのエピソードの数々が大いなる伏線となり、意味も変わり真相に帰結するのです。これは本当に凄かった。本格ミステリとしての鮮やかさを久々に体験しました。そして最近の作者の作品の持ち味となる後味の悪さも良い意味で健在。真相と心に残る読後感は9~10点の傑作でした。なので平均でこのぐらいの点数で。 物語の読み物としては好みに合わなかったのですが、ミステリとしては傑作です。 |
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幽霊となった完全犯罪請負人と、両親を殺された小学生・音葉。それぞれ個では無力だが復讐を目的に協力するバディもの。
古典ミステリへのオマージュが随所に散りばめられ、二転三転ではすまない多重解決模様の物語は圧巻でした。読後感も良く、ミステリ要素が満載の一作です。 作品としては素晴らしいのですが、個人的な事情から点数は控えめになりました。 本作品は文章密度が高く、450ページに及ぶ大ボリュームです。このボリュームを楽しめたかというと、前半は良かったのですが後半になるにつれて、内容の把握が難しく読書が少し大変に感じられました。小説の終わりどころを見極める難しさはあると思いますが、本作では「気持ちよく終わった」と思った瞬間にまだページが続いているという感覚を何度も味わいました。大長編作品が好きな方にとってはプラス要素かもしれませんが、個人的には少しマイナスに感じた部分です。 特に多重解決ものは、スピード感とともに一気に読むことで連続的な意外性の爽快感が生まれると思うのですが、本作では残りのページ数の多さからか、今読んでいる推理や結末は後で覆る「ダミー」案の間違えを読まされている感覚になってしまい、爽快感ではなく面倒な気持ちになりました。内容を把握する気持ちが得られず「読みたい」ではなく「読まなくちゃ」と使命感で読書していたような気持ちでした。 他にも、印刷された文章の密度や文字の大きさの影響か、「音葉」が「音楽」に見えてしまうなど、読書中に引っかかることが多く、気持ちが入りづらい読書体験でした。読みやすい講談社文庫化されたら改めて再読したいと思います。また文字サイズを調整でき、残りページ数が見えない電子書籍版で読むのも良さそうです。 本作は要素が盛りだくさんで面白いのですが、個人的にはどこか名作になりきれなかったような勿体なさを感じる作品でした。 |
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2023年度の鮎川哲也賞 優秀賞作。
死に戻りによって残された余命の中で事件が展開する、特殊状況下のミステリーです。 おすすめな読者はミステリーを読み"慣れていない"人向け。90年代のミステリーが盛り上がった頃の作品が味わえます。 個人的に悩ましく感じた理由は、設定が多いミステリーであるため、人物や物語の広がりが限定的に感じられた点です。ある程度ミステリーに慣れている読者にとっては、「こういう展開になるのだろう」と結末が予想の範囲内に収まりやすく、結末が見えることで設定作りの意図も逆算的に読めてしまいます。その結果、驚かされるはずが「やっぱりな」という感覚に落ち着いてしまうのではないでしょうか。また展開が強引に感じられる部分もやや気になる点でした。 本作を読んで感じたのは、90年代ごろの尖ったアイディアが詰まったミステリーを読んでいるような印象でした。見慣れてますが好きなので読んでいて楽しいです。そのため細かいことは気にせず、物語がどのような結末を迎えるのかという気持ちでの読書。ただ、結末の描き方も90年代当時に見られたネタに近く、なんというか本書はその当時に盛り上がった設定が集まってできた作品であると感じました。おそらく著者もこの時代のミステリーを愛する方なのでしょう。作者名"小松立人"は岡嶋二人(おかしなふたり)みたいな感じで、小松立人(困った人)と命名していますし、先人のアイディアを多く感じる内容でした。ポジティブに考えると好きなもので作られた作品です。 気軽に楽しめるミステリーとして、わかりやすい構造は好みでした。ただ真相の明かされ方やネガティブな思考の描写は、読んでいてあまり気持ちの良いものではなく、読後感が悪くなってしまいました。そのため人に薦めづらい点が残念でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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フランス革命期を舞台にした歴史ミステリ。
当時の背景や環境が巧みに活かされた物語です。 読む前は「もしかして、カーの『三つの棺』に関連するのかな」と期待する方がいるかもしれませんが、そういった作品ではありません。 科学捜査が存在しない時代。犯人は襲撃現場を目撃されていたものの、容姿がそっくりな三つ子の1人だったため、誰が犯人か特定できないという事件です。しかし、物語はこれだけでは終わらず、二転三転する展開が見事でした。 また、時代の雰囲気を再現するため、作中には当時の服装や銃器の写真が挿絵として掲載され、立派な地図も添えられるなど、雰囲気づくりにもこだわりが感じられる点は良かったです。 ただ難点は、文体まで当時の雰囲気を模したためか、非常に読みにくく感じました。著者の作品はいくつか読んでおり、読みやすい作品もあることは知っているのですが、本書の序盤は読むのに苦労しました。 最後まで読み終えた結果、とても面白く、この時代背景だからこそ成立するミステリを堪能できた点はよかったです。 ただ、文章が合わなかった事と、その先の物語の展開がある程度予想の範囲内だったこともあり、少し好みとは違うものだったのが正直な気持ちでした。 |
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作者の『逆転美人』の好評を受けて、『逆転シリーズ』としてシリーズ化した第三弾。
この本は帯やあらすじで「紙の本ならではの仕掛け本」と謳われており、ネタバレではなく、あえてその点を伝える宣伝PRがされています。しかし正直なところ、このPRが評判を落とす結果につながるような不安を感じました。 シリーズであるため、読者はすでに驚きの要素についてある程度把握している状況で読み進めることになります。しかし、PRが過剰に期待を煽り、さらに仕掛けの内容をほぼ明かしてしまっているため、実際の内容がその期待に応えきれていない印象です。そのため、評判も控えめなものになってしまうでしょう。 また、想定される読者を驚かせようと仕掛けに凝った工夫が施されていますが、そのためか、真相が明かされても少し分かりづらく、面白みに欠ける印象を受けました。こだわりすぎて伝わりにくい作例になってしまったように感じます。 そのため、仕掛け自体にはあまり面白さを感じませんでしたが、物語の本筋であるショートショートには、作者のネタ帳のような小ネタが満載で、楽しんで読むことができました。気軽に楽しめるショートショート集として手に取ると良いと思います。 |
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元校長先生だった認知症の祖父。レビー小体型認知症を患い、幻視の症状が現れています。介護の際には積極的に話しかけることが重要です。そんな祖父に孫娘が身の回りで起きた謎を語り聞かせると、祖父は生き生きとした表情で推理を始め、かつての知性を取り戻したかのように活躍します。本書は日常の謎を扱った安楽椅子探偵ものの作品です。
祖父にまつわるエピソードや介護のお話、祖父と孫娘の関係など、祖父を取り巻く状況がとても温かく描かれていて、謎を聞かせた時に知性が蘇る祖父の探偵としての姿が、なんとも心温まるものでした。 また、物語に登場する海外の古典ミステリ作品名やセリフなど、ミステリ好きが楽しめるポイントが散りばめられていて、思わず心がくすぐられました。 ただ個人的にそれらが巧くいっているかというと、ちょっと好みと外れるものでした。本書では祖父を取り巻く環境や孫娘との関係が家庭的な温かさを感じさせる一方で、扱われる物語の背景がやや重く、全体像が明らかになる最終章に至っては、謎解きの面白さよりも、つらい心境になりました。そのため後味がとても悪かったです。 最初の1章あたりでは、一般読者やライトなミステリファンにも薦められる作品かと思ったのですが、そういった読者には物語の居心地が少し悪い印象を受けました。一方で、重い雰囲気や謎の面白さを重視するミステリ読者にとっては、ミステリとしての魅力がやや弱く感じられました。謎解きが試験問題のように記号的で、一度で全体像を把握しづらい場面が多かったです。さらに物語の結末が何度も覆される展開は、多重解決ものというより、やや優柔不断にも見えてしまいます。個人的には、明確な結末で一気に決めてほしかったです。 日常系の物語を求める方には後味が重く、ミステリの謎解きを求める方には謎がやや軽い。そのため、個人的な好みだけでなく、他の人にも薦めづらい作品という印象でした。 |
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前作の『死んだ山田と教室』は好みで感動しましたが、本書は合いませんでした。 333人の石井が強制参加のデスゲームから始まる物語。 正直な所、"333人"の意味がなく、数字設定はただの販売PRの演出の為だけに感じられました。ササっと人数も減っていきますし、ゲーム内容にも面白味が感じられませんでした。なので凄く薄い内容に感じてしまうのが難点です。 作品内にデスゲーム状況の例えで『バトル・ロワイアル』がでてきますが、あちらは登場人物の背景が丁寧に描かれているため、多くのキャラクターが印象深く残ります。それに対し、本作はわざと対比して軽くしているのでしょうか、、、非常に薄いです。その影響で、後半で『山田』の時の様に想いをぶちまけるシーンがありますが、突発的な薄い考えに感じられてしまい、心に響くものがありませんでした。 仕掛けについても、映画の有名作品が存在するため、それとは異なる魅力や新しい要素が欲しかったというのが正直な気持ちでした。 |
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前作『星くずの殺人』に登場した真田周が主人公となる本作。前作はあれで完結していたと思っていたので、まさかの続きとなるお話に驚きました。
ただ、続きものとは言っても大きな関連性はないので本作から読んでも問題ありません。 前作の宇宙を舞台にしたお話から一転、今回はその宇宙旅行から帰ってきた真田周の高校生活から始まります。事件に巻き込まれた者への好奇心からの街頭インタビューやSNSでの攻撃、YouTuberによる突撃取材などの迷惑行為に巻き込まれていきます。ネット上の"炎上"と言葉を合わせる形で、京都市内での放火事件("炎上")が描かれているストーリーです。 扱うテーマの要素が結構重苦しく、毒親やカルト、被害者と加害者問題など、社会派小説となります。著者のデビュー作からの流れを考えると、武侠、SF、社会派という流れで色々な作品が描ける方なんだなと感じました。今作は社会的なテーマがしっかりと描かれている為、これまでの作品の中では最も江戸川乱歩賞らしい内容だと感じました。過去の作品を真田周を主人公としたシリーズとしてリメイクしたものではないかと感じます。 社会派ミステリーとしてのテーマは興味深かったのですが、個人的にはいくつか気になる点がありました。 例えば、放火事件で名所が次々と炎上する場面では、警備やセキュリティの存在が感じられず、リアリティに欠ける違和感がありました。事件自体の映像は華やかですが、どこか都合よく描かれており、実現性が低く感じられました。さらに、京都や関西に関する雑談が多く、話が脱線してしまい、大切なテーマが散漫になってしまった印象を受けました。事件の構造に無理を感じる為、読んでいる最中に何度か引っかかり、テーマやミステリーを純粋に楽しめなかった次第でした。 |
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社会的な風刺があるエログロ系ではない方の大石作品。
物語はビルを吹き飛ばす程の爆弾がプレゼントされたらあなたはどうするか?という話。複数人に配られた爆弾を受け取った者達の姿を描く群像劇。まずは疑心暗鬼に始まり、はなから悪戯だと信じない者、警察に届ける者など様々。社会への不満、格差による嫉妬、幸せな奴らを吹き飛ばしたい悪意など、負の感情が渦巻く姿を描くのはいつもの作者の持ち味で楽しめました。 爆弾が爆発するシーンや社会が混乱する所など、世の中を描くシーンは作者には珍しい場面で新鮮でした。いつもは個対個や犯人や被害者の異常性を読むことが多いので珍しいと思った次第。作者の作品は人には薦め辛い内容なのですが個人的に好みが多い。なかなか面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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あらすじやタイトルから感じる期待感と中身が合ってないと感じました。
発売月が11-12月なのでその時期に合わせたタイトルとしてクリスマスにしたのかなという印象。たしかにクリスマスの奇跡ととらえる事もできる内容ですが、ちょっと安易な気がしました。 物語は4人の若者がドライブ中に交通事故で人を殺してしまうという始まり。夜で誰も見ていない為、事故を隠蔽し4人の秘密とします。それから数年後、10年ごとのクリスマスの日に何故か轢き殺してしまった男性が生きて姿を現します。一体何が起きているのか。という物語。 著者の作品は読みやすい為、物語に没入できるのが良かったです。事故を起こしてしまった不安や何故か現れる男性の姿によるパニック。不安な気持ちによるホラー模様で序盤は楽しめました。ただ中盤以降や真相についてはちょっとアンフェアに感じます。良い意味では予想外の物語へ展開したとも言えますが、悪い意味では突然の設定変更みたいな気持ちで腑に落ちませんでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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小説を用いた新しい読書体験作りを感じた一冊でした。
『いけない』シリーズでは最後のヒントとして写真画像を見せて読者に真相を推理させる話となっていましたが、本作はそれの動画バージョンです。小説中にYoutubeへのURLが書かれたQRコードがあり、そこからYotubeにて最後の手掛かりとなる音を聴くわけです。 ちょっと悩ましい所は音を聴けばすぐに真相がわかるという訳ではありません。あくまで最後のヒントとなるもので、音を聴いてそこから読者が真相を推理する必要があります。ゲームブックや謎解きゲーム/イベントに参加している感覚なので自分で謎を解くのが好きな人向けです。言い換えると『いけない』シリーズと同様に真相は描かれていないので、結末が分からずスッキリしない作品でもあるのでそれが好みではない人には不向きです。 他、普段読書をどこでするのかが影響する作品です。私は電車移動中や外出先で読書をする事が多い為、外では結末の音が聴けず家に帰ってから動画を見るという手順だった為、没入感が途切れました。『いけない』シリーズだと読書のまま画像が見れたのですが、本書は動画を再生する必要があるので悩ましい所でした。本書は家でじっくり読むのに適してます。 5作の短編集ですが、個人的には『ハリガネムシ』が一番良かったです。本書の音に関する物語と仕掛けがマッチしていますし、抑揚のある音声を聴いたからこそわかる真相や心情が見事です。物語の内容は作者らしく重苦しいのがちょっと苦手ではありますがミステリと本書の音のテーマには一番マッチしていると感じました。 その他本書のおもしろい所はYoutubeの再生数ですね。ある意味読者数の集計ができるわけです。出版部数に対しての再生数の動きをちゃんと解析していけば、読者の広がり、中古や図書館での読者数、著者のファン数の推測値、文庫化した時の動きなど、分析に活用できるなと思いました。 |
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