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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数88件
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腐敗した巨大組織の中で、自己を見失いそうになりながらも、圧力に屈しようとする自身への不信感を推進力にして殺人犯を追う刑事・合田雄一郎。
明と暗の人格を交互に繰り返すが故、社会的に底辺に位置する事を余儀なくされているマークスこと殺人犯水沢裕之。 追う側と追われる側の緊張感溢れる追跡劇が描かれる読み応えのある大作です。 そこには、社会的地位、名誉ある人物の圧力が介入してきます。 その圧力に、捜査の最前線にいる合田は怒り、苦しみ、一方マークスも怒り、そして圧倒的な狂気を発動します。 作者が女性とはとても思えないリアルな警察組織の描写、しかもその腐敗っぷりをも、汚らわしく描いています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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日航ジャンボ墜落事故の全権デスクに任命された一人の新聞記者の物語である。
事故当時まさに地元群馬上毛新聞の記者であった作者にとっては、渾身の作品である事は間違いないし、リアリティの高さも保証付きである。 新聞社内部の喧騒、上層部との衝突、派閥争い、出世を巡る汚い嫉妬・裏工作・足の引っ張り合い。 そして、汗臭く、怒号が飛び交う、そんなまさに男の職場における1分1秒を争うスクープ争い。 その臨場感や半端なしで、終盤まで読み進めた時点で、ここまで僅か1週間しか経過していないと驚かされるその密度の高さも凄い。 ある意味特殊な世界と言えるが、新聞社も、会社という1つの社会である限り、否が応でもそこに存在する大人の事情。 主人公は、40過ぎの仕事人間であるが、衝突で潰されたり、攻め時を間違えたり、駆け引きに負けたりする。 時に怒り、時に迷い、そして傷つき、目の前の高い壁を前にしてもがき苦しみますが、しっかり向き合っています。 そこには高いリアリティを感じますし、同年代の社会人にとって「わかる、わかるぞ」とその人間臭さにシンパシーを感じずにいられません。 仕事のみならず、家族、仲間との関係・苦悩もしっかり描けている点が、更に主人公に対する好感度を上げていますね。 「男の人生」を謳歌している主人公が羨ましかったりもします。 特に男性に読んでもらいたい作品ですね。 |
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雫井脩介さんの作品は「火の粉」しか読んでいなかったのですが、同じ作者さんの作品とはとても思えませんでした。
引き出しの多さに驚かされました。 万年筆、マンドリン。 派手さはないですが、作品にいい味わいを出していますね。 主人公・香恵の人間性をよく表せているように思えました。(映画の方は人選を誤りましたね(笑)) 石飛クンも伊吹先生も、みんな好感度の高い人物です。 脇に軽い男、意地悪な女も登場しますが、所詮は脇。 好感度の高い主人公が、好感度の高い男性に淡い恋心を抱き、好感度の高い女性に共感し、影響を受け成長していく物語。 全編を通して不快感に襲われる事がありません。 その分、起伏がないと言われれば、その通りなんですけど、まぁ読みやすい作品です。 結末は序盤で予想できてしまい、その予想通りに終わるのですが、それでも泣けます。 感動作です。 後何年かしたら、娘、息子にも読ませてみたい作品です。 恋愛のエピソードにおいては、男性と女性の思考や行動のズレを、女性視点から描いているのですが、男からはドキッとさせられるような記述もありましたね。 この程度の事が、女性に「鈍感」とこき下ろされるのか・・・とか。 作者男性だよなぁとか思いつつ・・・勉強になりました。 主人公が、常識的でいい仔だって思って読んでいるので、こちらとしても少々焦りますね。 |
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大学寮の取り壊しを主張する大学当局と、存続を主張する学生の対立を通して、そこに学生達の成長を描いていますが、作者の真の意図は別のところにあるように思いました。
寮の存続を要求する学生達の主張には、絶対的な信念、確固たる主義主張がある訳ではないと批判しています。 驚くのは、一方で、現代の学生達の父親の世代、即ち大学紛争のあった時代と現代を比較し、当時の学生達も同じだったと批判している点です。 「最近の若い連中は・・・」的色合いの作品ではありません。 寧ろ、現代の学生を引き合いに出して、作者が学生時代に経験した大学紛争、それを扇動していた学生達が、単に社会や権力に反抗しているだけで、現代の軽い学生達と同レベルだったと暴いていきます。 作者の主眼は、こちらにあったのではないかと思います。 寮は周囲から浮いた存在として描かれており、廃寮問題は大多数の学生にとって関心外の事になっています。 この作品の廃寮問題は、大学紛争の縮図的扱いをされているように感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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伊坂さんの作品といえば、どこか重っ苦しいテーマがあって、全体的に「暗」のイメージが付きまとう作品が多いです。(嫌いではないですよ)
またラストの伏線回収に向けて、序盤から身構えて読む事が多いので、読むのに時間が掛かるし、結構疲れてしまう。(嫌いではないですよ) そんな中でこのシリーズは、全体的に「明」のイメージで、勿論伏線は張られているものの、そんなに気張らず気楽に読める作品だと思います。(好きなんですよ) 第1章が、主要登場人物4人が巻き込まれた事件の4本の短編で構成されています。 前作で披露した各々の特技、個性をフルに活用しており、前作を読んだ方には十分楽しく、嬉しい内容です。 第2章以降は、第1章で描かれた一見無関係に思われる事象に繋がりを持たせるという伊坂さんお得意の仕組みが楽しめます。 彼らの会話のテンポや掛け合いは、センスに溢れ、読み手を退屈させませんね。 また、巻末のボーナストラックが、このシリーズを愛する読者にはたまらない内容になっており、愛すべきギャング達がその「らしさ」を存分に発揮します。 1作目より楽しめました。 続編に期待したいです。 |
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伊坂幸太郎を意識したのではないかと思わせる章構成で、シュールな要素を排除しその分人情をスパイスにしている感じ。
トリックを暴くといった作品でありません。 各章ごとに捜査の対象となる人物が異なっており、彼らは少なからずの「隠し事」を持っています。 加賀が、一人一人としっかり向き合う事で、彼らの人間性が非常によく描けています。 トリックを暴くのではなく、「隠し事」の真意を明らかにして少しづつ可能性を潰していくという趣向です。 「歩いて行く方向と、上着の有無」とか「無糖ブラックコーヒー」といった、些細な事への着目も、どこか新鮮さが感じられました。 派手さはありませんが、心打たれるエピソードもあります。 ガリレオシリーズは映像で見たい作品ですが、このシリーズは文字で追った方が味があると思いますね。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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主人公は死神で、名前を「千葉」という。
死神は、死が準備された人物に、人間の姿となり接近し、観察し、その死を見送るべき理由はないかの判断を行う。 死神に「可」と診断された人物は、7日後に死ぬ。 これが、この作品を通して基本となるお約束事である。 6作からなる短篇集であるが、連鎖している作品もあったりして面白い。 死神は人間界に精通していない。 見た目こそ成人だが、中身は子供のように無知でピュアだったりする。 6つの作品の中で、色んなタイプの人間と出会うが、やくざだろうがヤンキーだろうが物おじせず、ズケズケと言いたい事を言い、時に少々ズレた受け答えをする。 皆がそんな彼の事が気になる。 そしていつの間にか誰とでも良好な人間関係を構築している。 ある意味羨ましい奴だったりする。 伊坂作品というと、機知に富んだ会話やセリフが楽しいが、この死神こそ「THE伊坂キャラ」なのである。 ユーモアがあり、時にシュールであり、時にどこか心にしみる、そんな発言の製造マシーンになっている。 これは、伊坂作品好きにはたまらない。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
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文庫本にして5冊に及ぶ大作、社会派人間ドラマです。
この作品は犯人探しの物語ではない。 この作品における作者の主眼は、凶悪事件被害者遺族の悲しみ、苦痛と、事件が社会に与えた影響かと。 理不尽に傷つけられ人生を狂わされた人達、苦悩する警察、群がるマスコミ。 主犯であるピース、ピースに利用されたヒロミ、ヒロミを救おうとしたカズの同級生3人。 彼らが主要登場人物であるが主役ではない。 作者は、彼ら3人以外にも、事件に関係する数多くの人間を取り上げる。 そして、その人物達も、必要以上と思える程に掘り下げる。 主役級と思えるくらいの膨大な字数、ページを裂き、背景を与える。 それで、このような長編になってしまったように思えるのだが、その効果は絶大。 直接的に描かずとも間接的に、犯人の狡猾さ、卑劣さが浮き彫りにされ読み手に伝わってくる。 そして、犯人側の背景が明らかになっても、遺族の苦悩、悲哀を克明に記述しているからこそ、読み手には犯人に対して同情の余地を感じさせない。 これ以上ない「悪」の描き方だったのではないかと思う。 この作品は映画化もされたが、作者の意図を表現するには、キャスティングのバランスが悪かった。 主役はピースではないのだから。 読み応え十分でお薦めも出来ます。 ただラストに関しては不満です。 知的、狡猾、卑劣、冷酷・・・物語前半で植え付けられたピースに対するイメージと大きく乖離します。 たから「模倣犯」というタイトルも、個人的にいまいちしっくりきていません。 自爆という手段を選んだ映画版の方がピースらしかったように思えるのが何か歯がゆい。 |
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もっと固い感じの作品なのかと思っていたのですが、基本的にはコメディタッチで軽い雰囲気です。
舞台はアメリカ。 日本人とは少々かけ離れた死に対する考え方や薀蓄が展開されますが、軽い語りがそれを退屈させない効果をもたらしている。 ただ、余りに多い横文字の登場人物の把握に苦しみ、また翻訳調の文体にも苦しみと、その世界に入り込むまでのハードルはかなり高目かも。 「死者が蘇る」という荒唐無稽な現象を前提とした舞台設定。 論理が尊重される推理小説において、それを根底から覆さんとする、リアリティのない言わば超常現象ありきで語られる作品。 これを単なるホラーにもSFにも転ぶ事なく読ませるには、生半可な内容では納得してもらえないところだが、この作品は、このナンセンスな現象を、恐怖を煽るためではなく、何とロジックを成立させるための道具として見事に当て嵌めてしまっている。 宗教がらみで多分に哲学チックな殺人動機など、日本人には中々理解しづらいところはあるのですが、「どう回収するつもりなんだろう」という読中の疑問を想定以上の手法で解決してくれた作者のうまさは、そんな事など忘れさせてくれました。 軽いノリから一転、エンディング近くなってからの、切ない雰囲気もいい感じでした。 正直「異端」です。 しかし、スルー出来ない作品の一つなのではないかと。 |
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