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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数78件
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一部の好き者にしか評価されなかったであろう前作のまさかの続編。
しかも、前作はミステリのお約束に対する、鋭いツッコミでもあり、それなりに意義もあったのでしょうが、まさかの続編であるこの作品は一転、殆どが脱力系ギャグに。 作者にとって造詣の深い絵画・音楽までをも、(作者のシリーズ作品のエースである)芸術探偵・神泉寺瞬一郎まで引っ張り出してきた上にこき下ろしています。 破壊力抜群のバカミス警部と薀蓄探偵との掛け合いは、当然ながら、対決などという立派なものではなく、ズレにズレまくっていて、「クスッ」と笑えますが、それ以上のものでは有り得ないです。 |
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正体不明(らしい)絵師東洲斎写楽が誰かという真相に御大が挑んだ作品。間違いなく力作でしょう。分厚いし。
御手洗シリーズなどとはテイストもまるで違いますが、御大らしいスケールの大きさは感じる事ができました。 御大がデビュー当時からアイデアとして持っていたらしいですね。 だとしたら、満を持して・・・のはずですが、正直中途半端な気がします。 この評価の高さには若干違和感を感じてしまいます。 写楽の謎を追求した、というか自説を展開しただけで、これはミステリではありませんね。 そういう趣向の作品であるのなら、資料とかは用意して欲しかったです。 こういった芸術作品を取り扱った作品はこれまで何冊も読んでいますが、普通写真の掲載くらいするでしょう。 ですので、不親切なのは勿論、説得力もないですし、そもそも読み手に分からせようという気がないのかな、と。 ミステリ仕立てにした方が面白かった気がします。 また多くの方が指摘していますが、私も同じです。 まさか終わり? ってのが、700頁もの本を読み終えた時点での率直な感想。 回転ドア事故の裁判はどうなった? ヒステリックな妻と資産家の義父は何処行った? っていうか、そもそも子供が死ぬ意味あったのか? 結局あの(日本人離れした顔立ちの)教授は何者? 本は出版されたの? で、どうなったの? 主人公の置かれた状況や、その周りの人物造形に、事件や事故の臭いをプンプンさせるようなサイドストーリーをバラ撒いておきながら、完全に置き去りのまま終わってますよね。 発端となった肉筆画についても、あの程度の扱いでは弱くないですかねぇ。 読んでいる間はそれなりに楽しめたのですが、読み終わった瞬間「ウソでしょ?」な作品でした。 あとがきには「長くなりすぎて端折った」って言い訳していますが、明らかに端折る箇所を間違えてますよね。 回答編の役割を果たしていると思われる「江戸編」も、私が関西人だからなのか、あの江戸弁が・・・ |
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将棋をモチーフしたバトルゲームで、主人公を含め登場人物(?)は作者お得意の異型キャラで、コマそのものであり、ゲーム自体は仮想空間で行われるという感じです。
何故こういったゲームを行うハメになっているのか、などは全く明らかにされないまま、いきなり戦闘シーンから開始されます。 で、その謎は、最後の最後に明らかにされるのですが、これまでの流れにマッチしない、想像もしなかった受け入れがたい地点へ着地させられた感じで、驚きというより呆れや怒りに近いですかね。 将棋をモチーフにはしていますが、勿論、その設定自体、将棋そのものというわけではないです。 正直「設定負け」ですかね。 まずターン制ではないこと。 そして、視点が主人公のチームに固定されたままなので、相手側の考えが見えないです。 対戦ゲームならではの心理戦の面白味を感じる事ができなかったです。まして将棋でしょ。 次に7局4本先取という点。 残りページでおおよそこの対局の勝ち負けの予想がついてしまいます。 まぁこれはある程度仕方のない事かもしれないのですが・・・ 次に冒頭に舞台となる軍艦島の地図こそありますが、場所の特徴が全く不明だという事。 位置関係どころか、この場に留まる事、または移動する事の意味、メリット、デメリットが全く分からないです。 将棋を意識しているのに、この辺りの設定が出来ていない(少なくとも私には伝わっていない)のは、どうか、というより将棋である意味がないように思います。 そして最悪だったのが、コマが持つ特性の設定が大雑把すぎた事です。 三竦みの関係になっているコマがありました。 「新世界より」にも同じルールがあって、「新世界より」では非常に効果的な設定だったわけですが、この作品では完全に逆効果になってしまっています。 決着をつけるためには局面を動かす必要があります。膠着状態を続けるわけには行かないのです。 「新世界より」のレビューで、このルールにより「トンデモSF」にならずにすんでいる、と書いたのですが、この作品は「トンデモSF」とは言わないまでも、1角が崩れた時点で勝負ありになってしまってますよね。これは「昇格」ルールにも同じ事がいえますね。 一気にゲームバランスが崩れてしまってますもんね。 もう少し凝った設定にして欲しかったですね。 「黒い家」「天使の囁き」「新世界より」を描いた時とは、明らかにモチベーションが違うでしょ。 どこか投げやりな気がするのですが・・・ |
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「他者にその存在さえ知られない罪を完全犯罪と呼ぶ。では他者にその存在さえ知られない恋は完全恋愛と呼ばれるべきか?」
それってただの片想いじゃねぇか、と思いながらも、この冒頭の一節には惹かれるものがありました。 しかし、読後の感想としては、 「作者のネームバリューが過大評価させている」そんな印象です。 作中3つの殺人事件が起こります。 1つ目の殺人が終わった後は、もしかしたら「白夜行」的な作品になるのかな、という期待感がありました。 主人公の画家は成長するにしたがい、「もし完全犯罪を目論むとしたら凄い事をやりそうだ」的な雰囲気を持った人物に感じていましたし・・・ ところが、 2つ目の殺人で、島田荘司氏が頭に浮かんだのは私だけでしょうか? ただ、御大でもそういうオチにはしない、と一応フォローしておきますが・・・ で、この辺りから、「何か想像してたのと違うぞ」・・・と。 そして、3つ目は最早バカミスの領域かと・・・ まぁバカミスならバカミスでもいいのですが、そこまでの作品の雰囲気に合っていないというか・・・ 真面目にバカミスやらないでよ、って感じです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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私の読書歴でかじってきた作家さんの数なんてたかが知れているのであるが、この作品を誰の作品か知らずに読み始めたとしても「恩田陸さんじゃないか」って思うんじゃないだろうか。私の知る限りでこんな作品を描くのは恩田陸さんしかいない。・・・そんな作品である。
エリザベスとエドワード。 この二人の時空を超えたラブストーリーなのだが、相当に難解であるので流し読みでは何のことやらサッパリ分からないはずである。 ラブストーリーの中でも恩田陸が描く少女漫画的ラブストーリーである。 普通男性が読むには厳しいモノがあるのだが、この設定の難解さを読み解くという意味で読む価値はあると思う。 5章立てなのですが、輪廻転生の繰り返しのなせる技か、年代や場所だけでなく二人の年齢、年齢差もバラバラ。 更に物語を複雑にしているのは、お互いにとっての初めての出会いの場所と時間が違うという設定。 第4章がキーで冒頭の出来事と繋がっているのではないかというのは何となく分からんではないのですが・・・ 兎に角難しい作品です。 |
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警察組織をあざ笑い叩き潰す。裏切り者は誰だ。
タイトルからはこういう内容を連想できないだろうか。 実際は「真逆」だった。誰一人笑ってる奴などいなかった。 作品のタイトルが「笑う警官」になった経緯は解説に描かれていたのですが、正直作品の内容と合っていない。 そんな気がします。 実話をモチーフにして描かれた作品という事で、リアル感こそあるものの正直ドラマ性には欠けますかね。 地味ですね。 「内部腐敗を証言させまいとする上層部VS仲間を無実から救おうとする同僚」 という構図ですが、その割には、その同僚たち、意外と自由にそしてトントン拍子に捜査を進めていきます。 上からの非合理な圧力を受けての苦悩といったものが感じられないですし、トンデモ人事異動によるド素人集団による捜査っていう設定も活かされていないですよ。 まぁタイムリミットまでが余りにも短いんで仕方ないのですが・・・ それにしてもいたって「普通」です。 解説には、各分野の一芸に秀でたエキスパート達が集い・・・なんて描かれていた気がしますが、正直「あの女性警官、ハッカーだったの!?」ってな感じ。 要するに人が描けてないって事なんじゃないかなと。 つまらなくはないのですが、全てにおいて中途半端だった気がしますね。 |
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既読ながらまだレビューを書いていなかったので15年ぶりくらいに再読。
原作を読まず映画だけ観た人にとっては「THEホラー」なのだろうが、実のところ原作はSF+ミステリって感じですね。 正直ホラーは好きではないのですが、この作品に関しては圧倒的に映画に軍配ですね。 山村貞子の出世作となる訳ですが、「あのように」映画化されていなければ、これだけ持ち上げられることもなかったでしょう。 15年ぶりとはいえ結末を完璧に覚えているという事もあり緊張感はイマイチ。 これはある程度しかたないにしても、結末まで紆余曲折もなく一直線ってのも気になりましたし、何より、謎を解く鍵はビデオの映像になるはずなのに、「こんな描写で読み手に伝わるのか?」という感じでしたね。 映像の描写だけでなく、その謎解きについても正直説明不足に思いました。 続編がある事を知らないで読み終えてしまうと、とてつもない消化不良感に襲われるのではないでしょうか。 |
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何やらシリーズの2作目のようです。短篇集です。
主人公の探偵役が、例えばエッシャーの絵画が現実化された世界といった異世界に迷い込んだり、或いは過去のある人物に憑依(?)したりして、そこで起こる事件を解決するといったかなり特殊な設定になっています。 シリーズ1作目を読んでいない私にとっては最初何が起こっているのか理解するのに苦労させられる事になりました。 一見西澤保彦氏的なノリなのですが、読みやすさという点では惨敗です。 絵画や特殊な構造をした建物を扱っている割に、その描写の殆どが文章のみなのではっきり言って解りにくいのです。 読み手にトリックを気付かれないようにするため意図的に解りにくくしているのではないかと勘ぐりたくなるほどに解りにくいです。 読み切るのに気合と時間を要する作品です。マニア向けと言えるかもしれません。 考えついたトリックを成立させるために何よりも先に物語の背景となる特殊な舞台を構築させる。それが最優先。 そしてその部分に傾倒しすぎるがために、肝心の物語の方に必然性というかドラマ性が欠けてしまっているように思えてなりません。 理詰めで堅苦しすぎるんですかね。 オチの方も、眉間にしわを寄せながら読んだ割にがっかりするものが多かったです。 こういう評価は多分に、この読みづらさ、どこかストレスを感じながら読んでいた事が影響しているように思います。 読了後改めて考えてみるとそこまでがっかりするような内容でもなかったですから。 |
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アイデアは面白いし、プロットも非常に練られているレベルの高い作品だと思います。
ただ評価が余り高くないですね。でもそれも何となく分かる、そんな作品です。 第一幕の殺人における動機云々を言う方が多いですが、私にはこのプロットを考えるならこの動機はすんなり受け入れられます。 ポアロが苦戦したこの動機ですが、今読めば推理できた人も多かったのではないかと思います。 そんな突飛な動機だとは思いません。 私にとって問題だったのはこの作品におけるポアロの立ち位置でした。 戯曲風にアレンジされた凝ったプロットで、ポアロを完全に脇役へと押しやる必要があるのはやむを得ません。 主要登場人物の一人である女性からは完全に邪魔者扱いされてましたしね。 ただそれによりポアロの登場頻度が極端に減っているのですよ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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性同一性障害をテーマにした物語・・・なのか?
私は性同一性障害については何も知らないし理解も出来ない。この作品を読了した後もそれは変わらなかった。 ウィキペディアより引用すると性同一性障害とは「何らかの原因で、生まれつき身体的性別と、性同一性に関わる脳の一部とが、それぞれ一致しない状態で出生したと考えられている」らしい。 だったら、この作品におけるキーパーソンと言える女性?は性同一性障害とは言えないのではないか? 性同一性障害やらトランスジェンダーやら難しい専門用語が数多く登場します。 似ているようで違うんでしょ?これ。 何となく意味は分かっていても、実際正確にどこまでの範囲が性同一性障害或いはトランスジェンダーとして定義されているのか境界線がどこなのか理解できないでいました。 興味のない私には難しすぎた。 東野さんのこの手の作品の場合、間違いなく「深い」のは分かっている。 ただ作品テーマの根幹となる部分に対してこんなあやふやな状態では「まともには読めんな」と感じながら読んでいました。 多分、その「深さ」に到達することは出来ないだろうな~と思いながら読んでいました。 予感は的中するのですが・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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クイーンの国名シリーズ第一弾。
シルクハットのことをローマ帽子というのかと思っていたら違った。 舞台もローマじゃなくてアメリカだし・・・いきなり異議ありじゃないかこれは。 発生する事件はたった一つ。 そして推理展開の起点となるのは「何故帽子が消えたのか?」 前提から次の前提を導き・・・それの繰り返し、そして最終的に必然的な結論を導き出すという極めて論理的な展開を魅せます。 途中に納得出来ないような論理の飛躍もなく、非常に分かりやすいです。 これぞ「The推理小説」という感じで「序盤は」かなり楽しめました。 ただ全てを台無しにしてしまったのが、おなじみの「読者への挑戦」・・・というより「読者への挑戦」以降の種明かしなのです。 因みに私が手に取ったのは創元推理文庫旧訳版。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ポアロシリーズの2作目。
ポアロシリーズは知名度の高い作品を先に読んでいるため、評価がそれらに追い付く事はまぁないなと思いながら読んでます。 それにしてもかなり違和感の残る作品でしたね。これまで読んだ作品と比較してという意味ですが・・・ プロットは凝っているというかかなり複雑です。クリスティにしては珍しい?初期の作品の傾向なのかな? 最終的な真相から読者を欺くために色々小細工し過ぎに感じました。 特に2番目の事件の被害者の存在などはかなり都合が良すぎますかね。 また、ポアロに敵対心丸出しで挑んでくるジローという名の刑事が登場するのですが、ポアロに一泡吹かせそうな印象をまるで持てませんでした。 単なるポアロの引き立て役でしたね。 彼の導き出した推理は「猟犬」と評された彼の捜査スタイルからかけ離れたものでしたし、理論だった推理を展開する事もなしです。 またこの作品は、クリスティによくある最後関係者全員を集めての大団円がありません。 いつ始まるのかと思っていたら終わっていたという印象で、ジロー株暴落の描写がないのにもがっかり。 しかし、ポアロがジロー刑事に挑発されて、ヘイスティングズと二人きりの時に本音爆発、張り合う描写はあるという・・・ ポアロってこんな小さい奴だったのか?ポアロの株を落としてどうする。 まぁ何れにせよポワロとの対決として用意されたキャラクタだとしたなら、思い切り失敗ではないでしょうか。 そして、この作品のヘイスティングズはワトソン役という枠を大きくはみ出しており余計な事をし過ぎです。 ヘイスティングズの恋愛模様も見どころですといったレビューも見受けられますが、私はちょっと・・・ 殺害現場がたまたま建設中のゴルフ場であったというだけでゴルフ場である意味は全くありませんしね。 |
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