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はつえ さんのレビュー一覧
はつえさんのページへレビュー数144件
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中山氏が生み出したサイコパス総出演ですね。ファンなら「カエル男」「御子柴礼司」シリーズはお読みになってるかと思いますが、未読ならぜひ。これは陰謀でしょうか。
中山氏の描くサイコパスは魅力的ですね。「猟奇殺人者を肯定してはいけない、いけない」と言い聞かせながらも、何だか愛おしく感じてしまいます。 作品の出来は…微妙ですが、ファンならでのお愉しみと次作への期待を膨らませて下さったので、この評価点です。 |
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絶対!先に前作「medium」をお読みになって下さい。そして倒叙ミステリー「invert」を「探偵の推理を推理する」ように、存分にお楽しみになることをオススメします。特に最終話の「信用ならない目撃者」は秀作だと思います。
女性の敵のようなこのあざとさは、最早変幻自在の翡翠の魅力でもありますし、某有名ドラマのパロディのような振る舞いも苦笑から始まり、終いには翡翠のクセそのもののように思えてしまうほど、突き抜けています。ここまでやると、あっぱれです。 城塚翡翠は一体何者か?情状酌量の余地がない程にどんな理由があろうと人の命を奪う者を許さない…のはなぜか?翡翠の正体=秘密を知りたいがため、次作も必ず手にすると思います。 |
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ショッキングな社会問題が提起されています。多くの方にお読みいただけたらと思うほどに。
作品に登場する子育てに責任を持てない大人は、実際も沢山います。自分の欲望を満たすことだけで刹那的に生きる人が増え続ければ、このような社会問題も増殖の一途を辿るでしょう。生活様式も考え方も、心身にたたき込まれた習慣を変えることは困難で、ほとんどの場合、その子たちに連鎖します。人生の在りかたが生育環境に大きく左右させると実証され、教育が重要と言われても、すでにどこから手をつけたらいいのかわからない段階に来ているのかもしれません。 切なさと無力感が読後に残りましたが、クライムミステリー好きでしたら、小説としても楽しめる作品たと思います。 |
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あらゆる表現を駆使し嫌悪感を呼び覚まそうとしています。読者を選ぶ作品ですのでお気をつけ下さい。
グロテスクもカニバリズムも、ここまで来ると嫌悪通り越して滑稽さすら感じてしまいました。 作品の根底にある哲学的思想は響くものがありましたが、如何にせん生理的嫌悪感>心理的嫌悪であるため、せっかくのラストを迎え深い思索を入りぞわり感を悦しむことができず、残念な想いをいたしました。 それが作者の狙いかもしれませんが…。 |
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夫婦の形はさまざまですが、「鎹」といわれる子どもの存在とは…母は命をかけて子を産み愛おしむ、父は血縁を頼りに愛を育む。一方でその子自らの存在意義を確信する基盤は父母でしかない。
家族、夫婦、親子の関係を我が身に照らし合わせしみじみとかんがえさせられました。親子を繋ぐ糸は強靭なのか脆いのか…それすらもそれぞれなのですね。 登場する4人の女性のそれぞれの生き樣には感慨深いものがありました。東野圭吾氏の女性の心情の機微を捉える力に脱帽ものです。 家族や夫婦の問題を考えたい方たちには、オススメしたい作品です。 |
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結局ワクワクでしたのは第一話の怪異伝承…ちょっと悲しい思いで読み終えました。
せっかくの刀城言耶登場なれど、怪しさも妖しさも感じられない作品で、とても残念でした。 編集者の祖父江偲女史が苦手です。現実的過ぎる彼女の存在が、作品の魅力を台無しにしています。言耶と彼女の漫画的やり取りが多すぎて、このシリーズに潜む怪奇と荘厳な雰囲気を壊してしまっていました。 加えて謎ときにも神秘的策がなく、「果たして真相は…?」の余韻すら楽しむことできません。 シリーズを順番に読み進めているのですが、次作に期待してもいいでしょうか? |
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「刀城言耶シリーズ」は幼き日のノスタルジーに浸る悦びをもたらしてくれます。人生の終盤に生きる私には記憶の底に眠る出来事の数々を引っ張り出し、時に切なく時に微笑ましく、懐かしい想い出を味わう時間を与えてくれます。
特にこの短編集は、記憶の断片を遡ることのできる限界の小さき頃に「世の中には奇妙で不思議な出来事が溢れている」ことに気づき、漠然なる恐怖と孤独に襲われた感覚を呼び戻してくれました。 南方の伝承文化、彼の国の怪奇現象、世界の文学や宗教、人間心理、数えきれない知識を組み合わせで練られたトリックを、まだ遠くない昭和の時代を舞台に、その記憶を留める読者の感性に潜り込む…三津田氏の手法にまたしてもやられてしまいました。 |
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若き日に手にし深く心に残っていた作品、再読です。
私にとって、その世界観に浸る…という読書の悦びを与えてくれる大切な一冊です。おこがましいですが、この作品がミステリファンにも一定の評価を得られていることを嬉しく思います。元来ミステリではないと思っていましたので。 なぜこの大量殺人が起きたのか、起きなければならなかったのか、何より真犯人すらも明確ではないようです。どこまで深く追求し推理するかは読者次第ですが、闇の中にそっとしておくこと…という読み方もいいものです。 犯人探しがお好きな方は、あなたなりの真実を見つけてみたらいかがでしょうか。 |
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奥田英朗氏の高い文章力のなせる技ですね。一気読みです。
題材は至って安直な殺人事件、事件の背景も単純であるがため、複雑な心理描写もありませんが、「嫌なことはなかったことに」的な心理は人間の防衛本能なのだと感心し、予想できる展開なのに読むことを止められません。 物語は終止、女性特有のオプトティミスティックな感覚で進み、最後は…、良心との葛藤(笑)のラストで爽快感すら覚えました。 |
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読み易い、そして適度に楽しめる、そんな作品でした。
嫌みのない文体に時おりちりばめられた「読めても書けない熟語」が面白く、私としては一風変わったお楽しみもありましたが。 内容は可もなく不可もなく…です。失礼な表現ですみません。ある時点で事件の真相が見えてしまったので、後は謎ときのきっかけやラストのまとめ方を楽しむだけになってしまいました。 もうひとつ欲を言えば、大手新聞社の幹部たちがこぞって詣でる誘拐犯の娘の人材としての価値を、もっと説得力あるものに描いていただきたかったです。まるで魅力的な女子大生に入れあげるおじ様集団のようで…残念でした。 休日に軽く読書を、といった場面にオススメしたい作品です。 |
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新本格ミステリというジャンルを久しぶりに読みました。考えるために文章を追い、出来事を咀嚼しなから読む作業はそれなりに楽しいものでした。
ただ、綾辻氏の作品は館シリーズ、囁き三部作、霧越邸をよんでいますが、閉ざされた塲、複雑怪奇な館で起きる由緒正しき妖しい一族による殺人事件でないとしっくりこないと感じてしまうのは、私の偏見でしょうか。 トリックにも真犯人にも驚かされましたし、最後の伏線回収による事件発生へのエピソードで心理ミステリの面白さも味わうことができたのですが…。鮎川氏の賛や乾氏の解説にあるように秀逸な作品であることは確かだと思います。でも、やっぱり作品の深みを感じられなかったのが本音の感想です。 |
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「贖罪」と「寛怒」…東野氏の作品によく著されるテーマですね。今作も感慨深く読ませていただきました。人が人の命を奪うことの重みに向き合う時間をすごしました。
ちょうどこの週末、池袋暴走事故への有罪実刑判決が下されましたが、判決前に被害者遺族がSNS上でその心中を綴った文章で「誰かを憎む人生を終わりにさせて欲しい。妻子が愛していた私でいさせて欲しい。」といった内容が記されていたことを知りました。罪の十字架は加害者だけでなく被害者にも重くのし掛かって来るのです。 罪を背負わず生きる人間などいないと思います。誰もがただ生きるだけで、何がしらの十字架を背負っています。その中身は人により異なり、その重さは背負う人間にしか感じることはできません。「命を奪う」とい罪の重さを軽んじる人に、その罪の重みを知覚し、苦しみ贖罪へと導く方法があるとしたら、罪が罪であることを感じる心を人として生れたてそのときから育むことしかないのではというのが、私の結論なのですが、今の社会に、今の大人にそれが出来得るのか、疑問符を拭うことが出来ず、また混沌の思考のなかに堕ちて行ってしまいました…。 取りとめのない感想になってしまいましたが、ぜひオススメしたい作品でした。 |
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「人を殺さないミステリー作家」の筆頭にあげられていた加納朋子さんの作品を初めてよんでみました。
エッセイ集のような七つの物語は、それぞれ詩句や童話、神話に宇宙、美術や動植物、果ては物理までを題材に、ほのぼの、ドキリとする日常のミステリーを描いています。作者の博識とその知識のエッセンスのとり出し方=感性に心ひかれました。 品格がありながら親しみやすい文体に、今時の若ものらしいオチや自虐ネタや尖った自己主張も散りばめられ、清清しい読後感を味わうことができました。自称文学少女のような方たちは、側に置いておきたくなる作品なのではないでしょうか。 気になることが二点…ラストの「追伸」部分は必要だったのか、なぜ「鮎川哲也賞」へ応募なさったのかということです。(この作品が世に出たことはとても喜ばしいことですが、) 円紫さんシリーズがお好きな方は絶対オススメですよ。 |
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一篇のルポルタージュを読んだようでした。時々織り込まれる登場人物の心理描写も客観性をもって語られ、心の在り方にういては読者の想像に委ねられているものでした。登場人物たちに不要の感情移入をすることなく読むことで、当に「事件」そのものと向き合うことができるようになっています。
また裁判制度の細かな描写はとても興味深く、戦後から今に続く裁判制度の問題に目を向ける機会となりました。裁判制度は時代に沿って変化し続けており、どの時代でも完全なものではないことを改めて感じるとともに、裁判は被疑者と被害者の権利を追究する塲であって「真実」を追究する塲ではないという事実には、落胆を感じずにはいられませんでしたが。 それ故に最終章で初めて焦点があて描かれた犯人、上田宏の有様がとても印象的でした。不運であろうとも「殺人」を実体験してしまった人間が、その罪とどう向き合い罪悪感を乗り越えて行くのか…なんとも悩ましい思いにさせられました。誰でも大なり小なり、こんな良心と罪の葛藤を繰り返しながら生きているのではないでしょうか。 私はオススメいたします。 |
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「正義の反対はもうひとつの正義」なぜかそんな言葉を思い浮かべました。社会が概ね善であると仮定した場合、その人の心根が善か悪かで「その人の正義」が「その社会の正義」の一致するかどうかで異なるのですよね…。
こんな小難しいこと考た理由を分析したら、二人の警察関係者である人物が一人称で語る心境が、激しい自己主張の繰り返しで、時々ただの自己満足としかおもえずいらついたからかもしれません。語り手たちは普通の善悪の感覚を持った人間なので、自分の都合で善悪の判断を下すのは当たり前ですが、仲間や犯人への情や働きかけが、自らの正義の押し付けにしか感じられなかったのです。しつこすぎる独白に飽きていたからでしょう。 以上は私だけの感覚かもしれません。そうしないとタイトルが「鎖」の意味がなくなりますからね |
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全編通して語り手が財布たち…という設定が興味深い作品でした。しかもそれぞれの財布たちがちゃんと人格?物格?(適した言葉ありますか?)を持ち、持主への情を踏まえた第三者の視点を持って、その財布しか知り得ない事実を語っていくという流れです。派手などんでん返しはなくとも、財布たちが慮る持主たちの背景や心情の描写は小説として満足できるものでした。
殺人事件、しかも4人もが惨殺されているお話しなのに何故か読後にほっこり感が味わえました。同作者の「我らが隣人の殺人」に通じるものを感じます。 オススメの一冊です。 |
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東野圭吾氏の取り上げる題材の幅広さに驚きます。
医療の難解な専門用語もなく、臨場感のある医療現場の様子が身近に感じられ、登場人物の奥深い心理を描き方も相まって、親しみ易い医療ミステリーでした。余りに臨場感があり、まるで自分や身近な人が今、まさに治療を受けているような、妙な不安に襲われるほどでした。 難点をあげるとすれば、いい人だらけ…というところでしょうか。こんなにいい人ばかりの世の中だったらいい…ですね。 テーマとなっている、誰もが持っている「使命」を読者自身が探しながら、読み進むことができるでしょう。 私情ですが、最近イヤミスばかり読んで少々鬱気分だったのですが、そんな心が温まる作品でした。作者に感謝です。 |
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濃くて複雑怪奇な作品を続けて読んでいたので、閑話休題のように手軽に楽しみました。ハードボイルドは好みではないのに手にした理由は「代償」の作者の別作品を読んでみたかったからですかね。「代償」は少し前に読みましたが、読後に様々な想いが心に渦巻き今でも感想すら書けずにいます。
さて、こちらは題名通りハートウォームな作品です。ダサいのにかっこよく、粗野なのに厚情なわけあり過去を背負ったタフガイの主人公が、正&反社会的組織の中で立ち回る!テキスト通りの作品です。何も考えない読書もたまにはよいかな。 |
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長いですね…でも完読する価値ある作品です。仕事をしながらでしたが、10日もの間「人死に」に浸っておりますと、何やら精神が揺らぎはじめてきて、読み終わった時には安堵しました。
前半は閉じた村=人間主体の社会の中で生きるの人々心理や行動、個と集団の葛藤等が描かれ、後半は創造主である神の創りし世界の一部でしかない世界て生きる人間を、その死生感を通じて人間が人間として生きるためには、何を信じてどう生きるか…が、問題提起されていたように思います。 人間の限界、神との境界は人に寄って異なります。自分が人間である以上、種としてよりよく生き、生き続けるためには、どこまで守るべき範囲を広げ、どこに境界線=妥協点を設ければいいのでしょうか。他者を尊重するということは自分の尊厳を守ることだとしたら、対象となると他者とは一体なんなのでしょうか。種を越え類を越え、神の領域さえ越えていったらその先には何があるのでしょうか。まるで宇宙の終わりを目指す旅のようでした。 私としては、結論が出るわけはない問いの中をグルグル巡る無限地獄に放り出され、じっくり深く思考する有意義な与えていただけき、素晴らしい作品に出会えたと思っています。ストーリーもプロットも飽きのこない展開もとても面白いですし。お時間のある方はぜひお読み下さい。オススメです。 ただ、評価をマイナス2ポイントの訳をですが…こんなに哲学的な思索に耽ることのできた作品だつたのに、ラストのまとめが少女漫画的な薄いものになっており…少し残念でした。 |
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流石芥川賞作家の作品でした。ある猟奇的事件を引きがねに、登場人物たちの心に生れた小さな疑惑が、情という養分を吸いながら、緩く深く根をはり巡らせていく様を夢中になって読み進めました。あるものは純粋で、あるものは無垢で、あるものは正直であるが故に、自らの心に芽生えた疑惑に破滅させられてしまいます。なんとも切なくやるせない思いに苛まれました。
憎むべきは彼らの心を壊したサイコパスの所業ですが、これについては理由は語られてはいません。作者は「怒り」が産み出す仕業として人間の脆さを描くことに集約し際立たすことで、「怒り」の本質を突きつけようとしたのでしょうか。私の勝手なる解釈です。 読みやすい文体、引き込まれるエピソード、形の異なる愛のすがた、丁寧に描かれた心の機微…。オススメできる一冊です。 |
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