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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧

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レビュー数87

全87件 21~40 2/5ページ

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No.67: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

もっと瞬間移動のようなテンポの良さを

この著者の作品では珍しくハマらなかった。人がワープするかと思えば時間軸もひっくり返って始まり、また一章が長い。一気に読まないと内容を忘れてしまう。奥様との馴れ初めも長いし、全体的にもっとコンパクトにできなかったものか。読者が(この本を手に取ったからには)待ち望んでいる瞬間移動について触れるのもかなりページ数が経ってからだ。ストーリーに関しては瞬間移動どころか牛歩のようなテンポの遅さを感じた。ウエイトバランスもややこしくて頭が痛くなる。まさに重しであった。
もう一つ楽しめなかった要因として、登場人物を理解できなかったことが挙げられる。誰もがクセが強く、私には受け入れ難かった。
新装版 瞬間移動死体 (講談社文庫)
西澤保彦瞬間移動死体 についてのレビュー
No.66:
(5pt)

動機が弱すぎる!

ハードボイルド作品のあらすじに魅力を感じやすい。そんな私は「八月のマルクス」のあらすじにも興味を惹かれた。
しかしそこまでの面白さはなかった。ハードボイルドといえば、チャンドラーのように皮肉めいた表現が面白さの1つだと私は思っているが、お笑い芸人の今作では相性が悪かったように感じる。売れっ子の元芸人の設定だったが、全く面白くない。著者自身そう感じたのか、「人を笑わせるのが下手になった」との保険をかけてくるあたり、余計に面白くない。タイトルについても、センスを感じない。
ストーリーは芸能界の裏側を覗いているようでワクワクしたが、真相を知って動機が弱いと思わざるを得ない。主人公が相方を探す理由も弱い。何故このような行動を取るのか、著者の操り人形としか思えないのが残念だ。それでもエキストラが全くと言っていいほどいないのはいい点だろう。みんな何かしら役割を与えられている。
八月のマルクス (講談社文庫)
新野剛志八月のマルクス についてのレビュー
No.65: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

カエルの格好をした人は出てきません。

読み始めて数ページで、「思ってたのと違う」ことに気付かされた。刑事責任能力のない犯人が裁かれないことについてメッセージを発していることに、そういう話だったんだ、あらすじに書いといてよと思った。
とはいえ、そういった社会派の側面を持った作品は好きだ。

ちなみに、カエル男は殴打してから首を縛るはずが、文庫本の表紙では刃物を持っているというのはどうなのだろう。

▼以下、ネタバレ感想
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連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)
中山七里連続殺人鬼 カエル男 についてのレビュー
No.64:
(6pt)

探偵は2人必要?

あらすじに興味を惹かれたのと、かつて住んでいた横浜が舞台になっていることで読むことにした。知っている街が出てくると、どうしてこうもワクワクするのだろうか。細かな描写も目に浮かぶからかもしれない。

ストーリー構成はお見事。最初に2つの仕事を遂行する探偵の話があり、最終章で全てを明かしてくれる。一見独立した話のようにも思うが…伏線をも1つの物語にしてしまうのは圧巻だった。
とはいえそれほどのめり込めた作品ではなかった。登場人物に感情移入できなかったからだ。「友情」を描いた作品だけにクサさも否めない。というのもあまり丁寧にキャラクターを描ききっていないように感じたからだ。2人の探偵はどっちが喋っているのかわからなくなることも多々あった。その辺りは今一歩だった。
北天の馬たち (単行本)
貫井徳郎北天の馬たち についてのレビュー
No.63:
(4pt)

カブス愛は感じた。

女性作家の女性探偵ということで気になってはいた作品だが、ついに今回読むことにした。労働の諸問題や女性活躍については当時のテーマなのだろうか?私立探偵といってもチャンドラーのそれとは全く雰囲気が異なっている。
感想を率直に述べると、事件の内容や社会性は面白く難解であったが、全体的に単調に終わってしまうのが残念だった。平板にずっと同じペースの印象がある。また意外とあっけなく読者が真相に辿り着いてしまうのも残念だ。とにかく証拠集めに徹するだけの作品だった。
一方でアメリカ色が色濃く、他文化に触れられるのは良かった点だ。シカゴを舞台にしたこの作品には、度々メジャーリーグ球団のシカゴカブスが登場する。カブスは100年以上ワールドチャンピオンになっていなかったことで、そのことをいじられるのはお決まりのようだが、2年前についにワールドチャンピオンになってしまった。今のカブスは強いよとニヤニヤしながら読んでいた。
サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))
No.62:
(6pt)

良くも悪くも短編

メガバンクの管理職から弱小地方銀行の雑用担当に成り下がった主人公が、あれよあれよと悪党に復讐を果たすストーリーは爽快感がある。決して水戸黄門のような話ではないが、やはり勧善懲悪を期待してしまう。
本作は連作短編として雑誌掲載されたものなのだろうか?1話ごとに区切りがついた感があり、一度緊張感が途切れてしまう。また最後の終わり方もあっけなかったのは残念だ。長編であったら、もっとジリジリと相手を追い詰めて決着をつける場面にピークを持ってくることもできたのだろう。あまり構成としては見事ではない。とはいえストーリーが面白いことには変わりないので、次に読む長編に期待したい。
仇敵 (講談社文庫)
池井戸潤仇敵 についてのレビュー
No.61: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

ロンドン、パリを旅したい。

これがトラベルミステリーと呼ばれるものなのか。細かい描写は省かれ、ものすごいテンポで物語は進んでいく。あくまで事件を本格的に紐解くことに主眼を置いている。正直、樽や登場人物が何時にどこにいたかというのはほとんど整理せずに読み飛ばしてしまった。あまりに細かいので正直煩わしくも思った。
ミステリとしては尻すぼみ感は否めなかった。バークリーがルファルジュと捜査を繰り広げるところは、なかなか読み応えがあったが、最後の終わり方はつまらない。まさに樽のように、真ん中だけが膨らんだ作品だ。

イギリスやフランスを行ったり来たりといったことが当たり前にあるのは、ヨーロッパの国際色に憧れてしまう。イギリスと同じ島国であっても日本ではそのようなことは珍しい。同じようにそういったミステリも少ない。だからこそ洋書をたまに読みたくなるのかもしれない。
樽【新訳版】 (創元推理文庫)
F.W.クロフツ についてのレビュー
No.60: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

今後の読書人生において意義がある一冊

辞書を一冊作り上げるのにこれほどの期間と労力が費やされるのか。知らないことだらけだった。この作品は一冊の辞書を作り上げる15年もの奮闘を300ページ程度で書き上げるわけで、ダイジェストのような印象を受けた。表面だけをすーっと撫でていくように淡々と進んでいく。あまり具体的な描写は少ない。そういう点では印象に残らづらいかもしれない。
一方で、言葉の豊かさを存分に楽しむことができた。人生を航海に例えることは少なくないが、辞書も言葉の海を進む舟である。「舟を編む」というタイトルはなんと素晴らしいことか。辞書について興味を持ったことは間違いない。読書をする身として、辞書には当然お世話になっているが、当たり前のものとしか思わず、特に意識したことはなかった。私は、知らない言葉に出会った時に広辞苑で調べるが、それは単に私の電子辞書の一番上に広辞苑が入っているから、ただそれだけだ。他の辞書との違いなど気にしたこともない。今以上に言葉というものを大事にして、読書に深く入り浸りたいと思わされた。
豊かな表現を用いて美しく描かれているこの一冊が、今後の読書人生に与える影響は大きいだろう。
舟を編む
三浦しをん舟を編む についてのレビュー
No.59:
(5pt)

子供を書かせたらやっぱり凄い道尾秀介

読んでいて、直木賞に選ばれそうな作品だなぁと直木賞をよく知りもしないが勝手に思っていた。
途中の描写にストーリーの本筋に関係のないものがあると、その暗示を深く考えてしまうのは私の読書の仕方であるが、この作品もそんなところが非常に多い。単に情景を捉えたものではなくて、確実に主人公の精神とリンクしたものが目立つ。祖父の髭が白くてベッドの白さと重なってよく見えないシーンはとりわけ印象的であった。まだ小学生である子供故に見える景色であったり、捉え方であったりがとても瑞々しく、こういうことってあったなぁと振り返りながら小学生時代を懐かしく思った。
小学生特有の狭い世界というのは十分に表現されていたが、ストーリーも同様に幅のないもので退屈ではあった。ヤドカリ焼いての繰り返し。なんだかとても美しいのだけれど、面白みは薄かった。
月と蟹
道尾秀介月と蟹 についてのレビュー
No.58:
(6pt)

これが代表作だなんて…

私の中でお気に入りの作家となりつつある西澤保彦氏であるが、まだまだ読んでいない作品、シリーズの方が圧倒的に多い。彼の代表作とされている「七回死んだ男」を遂に読むことにした。結論から述べると、今まで読んできた他の作品の方が面白かったという印象だ。

ずっと同じテンポで進むことに飽きてしまったのだろうか。何度も行われる繰り返しと、タイトルからもわかるようにどうせ七回死ぬんでしょ?と先が分かっているので、淡白な読書部分が目立ったしまった。反復ごとに人の態度が大きく変わり、見え隠れする部分があるのは西澤氏らしく闇の部分を丁寧に書いてくれていることはよく伝わってきた。

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新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)
西澤保彦七回死んだ男 についてのレビュー
No.57: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

好き嫌い分かれそう、自分は普通。

盗作と倒錯といったストーリー、遊び心が十分、いや過剰である。この試みは非常に面白いし、こういった作品は嫌いではない。とはいえ、あまり気持ちよくないなぁと思う。ストーリーのいい意味での複雑さ、何重にも掛かった展開などは見事なのだが、圧倒的な筆力で読者を捩じ伏せるわけでもなく、肝心なところでは使用もなさを感じる。
感想をなんとも言い表しがたい作品であった。ちなみに話自体の面白さは至って普通であった。あまりのめり込めはしなかった。

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倒錯のロンド 完成版 (講談社文庫)
折原一倒錯のロンド についてのレビュー
No.56:
(6pt)

もっと毒々しさが欲しかった

妻の浮気に嫉妬して、夜中に1人暮らしの女性宅に侵入してレイプを繰り返す主人公。被害女性が復讐を決意するという話。細かく区切られた章ごとに、視点となる人物が変わりながらテンポよく進んで行くのは自分好みだったら。御都合主義ではあるが。
一方で、ここが本作での楽しみだと思うが、登場人物に寄り添うことができなかった。特に主人公である川辺の心情が理解できなかった。妻の浮気から強姦にどう結びつくのか、甚だ疑問である。「緑の毒」というタイトルながら、川辺があまりに可哀相すぎて、コメディに感じてしまう部分もあった。
もう少し毒々しさがあっても良かったが、ストーリーは充分面白かった。
緑の毒
桐野夏生緑の毒 についてのレビュー
No.55:
(4pt)

全体的にイメージしにくい

読んでみてつまらないことはなかった、というより普通に面白く読めた。古代エジプトとタイタニック沈没のストーリーがどのような意味を持つのか、どのように絡んでくるのか、ワクワクさせられたのと、それ自体が十分に読み物として面白かった。
残念なのはミステリの部分。ピラミッドがどのような構造なのか全く頭に浮かばなかった。もっと日本語の選び方があるだろうにとも思ってしまった。全く伝わってこない。
事件の決着としては、なるほど幻想的な内容をしっかりと論理的に説明できているのは島田氏らしく素晴らしいが、今作ばかりは針小棒大に感じてしまった。それだけ夢とロマンの詰まった一冊としては、世界観を否定はできないが。
水晶のピラミッド (講談社文庫)
島田荘司水晶のピラミッド についてのレビュー
No.54:
(5pt)

期待していたのと違う趣

1970年、当時20歳だった学生たちが人を轢き殺してしまう。そこから10年毎に4人は集まる、といった内容。こういった時間が一気に何年単位で飛ぶ話は好きである。だが読んでいってこういうのを読みたかった訳じゃない…と悪い意味で裏切られた。全然思っていた趣向の話と違った。
最後の終わり方は良かったが、そのほかはアッサリとしていた。
クリスマスの4人 (光文社文庫)
井上夢人クリスマスの4人 についてのレビュー
No.53: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

挑戦的作品

杉下和夫の心理を丁寧に描かれており、非常に感情移入できた。解説を西澤保彦氏が書いて「自分のために書かれた作品」とかなんとか言っていたが、似ているなぁとちょっと思った。
事件を紐解くところはエラリークイーンのようで、論理的な内容は自分好み。

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新装版 星降り山荘の殺人 (講談社文庫)
倉知淳星降り山荘の殺人 についてのレビュー
No.52:
(4pt)

期待はずれ

西澤保彦氏らしくないです。こんな作品も書くんだと驚きました。途中までは作者本人の実体験を基にしているのかと思わされます。

中学高校時代の吹奏楽部のことから、大学時代はもちろん中年に至るまでをあっという間に触れていきます。その中で、中学の同級生の死体発見と、そこで見つかったかつて盗まれた楽器とが絡んできて一体どうなるのか、期待はしましたが正直裏切られました。
ミステリ色はあくまで弱めです。それよりも人間としての自意識や振る舞いについてしっかり書かれた作品だと感じました。
黄金色の祈り (中公文庫)
西澤保彦黄金色の祈り についてのレビュー
No.51: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

ミスマッチ

殺人を犯してしまったことを隠すために目撃情報をでっち上げたら、それにそっくりな人が現れてしまうという物語の入り、なんとも魅力的です。
複数のグループがそれぞれ事件の真相を追い求めていきながら、次第に絡み合ってくるのは爽快感がありましたが、どうも作風と合わないように思います。話の構成がしっかりしていて面白かったんですが、ユーモラスな文体と雰囲気にズレを感じずにはいられませんでした。個人的にはもっとハードボイルドな作風だったら楽しめそうです。消化不良感が否めません。
死の内幕―天藤真推理小説全集〈3〉 (創元推理文庫)
天藤真死の内幕 についてのレビュー
No.50: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

何が悲劇かと言われると

えっ??ここで終わり!?
クイーンの作品はどれも意外な犯人と結末にいつも驚かされるのですが、「Yの悲劇」もまた然りでした。古典作品なので誰よりも先駆けているのに、こんな作品読んだことない!と結末に驚愕しました。言葉を矛盾させると、斬新です。

ストーリーや構成はとっても見事だったんですが、考え方の古臭さや前作ほどドルリー・レーンが魅力に欠けていた点が若干マイナス。

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Yの悲劇【新訳版】 (創元推理文庫)
エラリー・クイーンYの悲劇 についてのレビュー
No.49:
(5pt)

独特の表現が小気味良い

チャンドラーを初読。チャンドラーが本格推理を批判しているように、本格派には現実感がなく登場人物が生き生きとしていないと言うならば、まさにフィリップ・マーロウは魅力的な人物で生き生きとしているだろう。ハードボイルドというと「固ゆで」ですから口を閉ざした寡黙な人間を私はイメージしていたのですが、とっても剽軽でおしゃべりな印象を受けました。余計なことばっかり言ってるなと。それでも恐怖に立ち向かう強い心の持ち主が格好良かった!

一方で禅問答のような内容は非常にわかりにくい。細かな謎を提示しておいて、それを数ページに渡って引っ張るのでなかなか頭に入って来ない。場面の転換も一気に飛ぶので、行間を補うことが大変でした。似たような悪玉が多くて区別が付きにくいし、何をしているのかさっぱりなことも多々ありました。
とはいえ、シリーズで続くフィリップ・マーロウの作品は他も読んでみたいと思っています。英語を直訳したような翻訳も、チャンドラー独特の表現なのかわかりませんが、味があって軽妙洒脱に感じられました。次回作以降に期待です!
大いなる眠り (創元推理文庫 131-1)
レイモンド・チャンドラー大いなる眠り についてのレビュー
No.48:
(6pt)

横浜にて

初めての鯨統一郎作品です。以前横浜に住んでいたのでタイトルに惹かれて手に取ってみました。表紙をめくるとみなとみらいの地図が載っていて懐かしさに購入を決断。なるほど、真面目には事件を解決しないぞ!といったユーモラスな姿勢がうかがえました。お堅く湿っぽい作品とは対極にあるので、たまには気分転換にいい一冊でした。

全8話の連作短編であり、毎回おきまりのパターンで話が進みます。これが癖になりました。よくわからないが横浜の名所に集合し、殺人現場に向かい、そこにはダイイングメッセージが!時にはダイニングメッセージだったり、ダイイングマッサージだったり。意外といっては失礼ですが、ミステリとしてはしっかりした内容だと思います。
みなとみらいで捕まえて (光文社文庫)
鯨統一郎みなとみらいで捕まえて についてのレビュー