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りーり さんのレビュー一覧
りーりさんのページへレビュー数109件
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私立吏塚高校の屋上で葉群という男性生徒の遺体が見つかる。遺体には墜落死の痕跡があり、犯人が屋上から落とした後で再度持ち上げたという疑惑が出るか・・・。最も疑わしい校舎に残っていた人物から無罪証明を依頼される「吏塚の名探偵」。喉を煙で焼きながらハードボイルド風の意妙な学園ミステリ開演。
後に遠海事件を書く詠坂雄二のデビュー作。事件としては死体が持ち上げられた以外は平凡、殺されてもおかしくない学生が屋上から突き落とされた。打って変わってあまりに異質すぎる登場人物達、煙草で喉を焼く「吏塚の名探偵」、「情報屋」、愛と体を切り売りする「売春生徒」、等身大の青春から大きく離れたリアリティの薄い設定になっている。それでハードボイルド調の物語を展開するのだからびっくりだ、この湿ったドロッとした感じを高校生で出すのだからすごいな。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「どんな夢を見ているの。」
地下シェルターに閉じ込められた3人。 外に出るためには5年前の転落事故の真相を告げよ。 外部で進行する交換殺人の本当の狙いは、そしてこの作中作「かつていたところ」という物語の正体とは。 体験せよ浦賀トリックの帯に釣られ牢獄に迷い込みました。 物語は浦賀とその恋人である亜矢子が階段から突き落とされる所から始まります。 5年間眠りの牢獄から抜け出せない亜矢子、そして1日で目覚めた浦賀、やがて事件の真相を求める亜矢子の兄の手によって事件関係者の3人が地下シェルターに閉じ込められてしまう。 3人は途方に暮れながらも事件を振り返るのだが・・・。 一方、別視点では冴子という女がネットを通じた交換殺人のやり取りを持ちかけられる。 自身の元恋人・博の殺害の代わりにある人物の殺人を依頼されるのだが・・・。 この全く視点の異なる二つの物語が「かついていたところ」という亜矢子のために書かれた小説なのだという。 250頁の中に詰め込められたいくつもの技巧。 欲張りセットなパズル小説だった。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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連続殺人鬼との対決から幾月、城塚翡翠に前に3つの殺人事件。 タイトル通りの倒叙3編。 作中で度々使われている古畑任三郎ネタはもう若い世代には通じないんじゃないかもしれない。 トリックよりロジックによったもので作品としては結構地味だ。 前作より落ち着いた展開になっていて、城塚翡翠の過去に迫っていくのかと思いきやそんなことは無かった。 シリーズ通した何かしらのオチを付けるのか、ただ城塚翡翠が事件を解決する推理物にするのか、そこら辺は作者の都合。 個人的にはこの作品の探偵のスタンスは苦手で犯罪者を捕縛したいのならそれに準ずる職に就けと思ってしまう。 探偵が能力を発揮出来るのは誰かに頼まれるか不可抗力で巻き込まれる時だけにして欲しい。 |
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クリスマスを控えた階段島に起こる事件。 島のインターネット通販が機能を失った。 島に逃げ込んだハッカーの噂を聞き調査を始める真辺、泣いてる少女の為にヴァイオリンの弦を探す佐々岡、通販で届かなかった真辺への代わりのプレゼントを探す水谷、それぞれの物語はクリスマスの七不思議の謎に収斂する・・・。 階段島シリーズの第二作。 クリスマスを前に島の通販が停まってしまった階段島。 それぞれが自身の考える正義や理想の為に奔走する。 悪がいるなら正したい真辺、不幸な少女の為にヒーローになりたい佐々岡、クリスマスを機に友好と秩序を守りたい水谷。 前作ではあまり触れられなかった佐々岡や水谷の内心が見れて良かった。 そして本作の面白い所は主人公である七草が物語の序盤よりおおよそ真相に辿り着くような布石を打っているのだがそれが読者には知らされない点である。 犯人の意図も主人公の意図も隠された状態で進む物語は非常にミステリーらしかった。 |
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階段島
山奥に住むという魔女によって下界から隔絶されたこの島で僕は平穏な日常を送っていた。 何の為に僕らは集められここに閉じ込められているのか、 自身の失くしたものを探し出せば島から出れるというが・・・。 そして11月19日午前6時42分、僕はこの島で一番会いたくなかった人に再会する。 学園を舞台にした青春ミステリかと思いきや、不思議な力で支配された島からの脱出を図るファンタジー。 とはいえ主人公はあまり乗り気ではない。 未来を生きることに悲観している故にこの平穏な島から出る理由を見出せないでいる。 しかし、2年振りの彼女との再会が状況を一変させる。 対照的なまでに底抜けな理想主義な彼女はこの階段島の違法性を主張し主人公を振り回す。 シリーズを見越して様々な伏線、登場人物を収めた本作。 シリーズの一作目、つかみの作品として上々。 |
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芸術探偵・神泉寺瞬一郎シリーズの一作目。 エコール・ド・パリの画家に魅了された画廊の屋敷での密室殺人を描く。 目を惹くのはあちこちに散りばめられた芸術論だろう、この絵画にまつわるエピソードを楽しめるかにどうかが問題だ。 そして芸術家ゆえに展開される推理劇は芸術に興味なくても瞠目することだろう。 深水作品は殺人事件、高度な蘊蓄も堅苦しくなくて良い。 |
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山奥の別荘に招待された6人。 雪に閉ざされ脱出不可能の中、一人また一人と殺されていく。 残されたのは殺害方法の異なる6人の死体とある人物の手記。 プロローグに現れる「兜虫の亡霊」の正体とは・・・。 前々から読みたかった作品、ついに手に入りました。 もう舞台、トリック、設定、全てがはちゃめちゃなミステリを演出するために存在している。 作中の人物が言っているように一年後の記憶に残るのは上手な推理小説より奇想天外な推理小説というのを体現している。 奇想天外がすぎて、もはや読者全員を納得させるような気もない作品。 僕もあの道具を見たら、兜虫の亡霊を思い出すことにします。 |
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「宮峯は私のヒーローになってくれる?」
その日から僕は寄河景のヒーローになり、常に彼女の味方でいることを誓う。 彼女の愛がいくら猟奇的でも、暴走する願望が殺人に発展しても僕は彼女の隣にいる。 これは僕と彼女の、僕が化物と化した彼女を殺すまでの物語。 粗筋とプロローグを読めばこの物語の行く末が破滅的な方向へ進んでいくことは想像に難くない。 2人の奇妙な愛の形は自殺教唆ゲーム『青い蝶』をもってより歪なものになっていく。 そして歪から生まれた、さらなる歪が悲劇的な結末を迎えさせている。 評判通りラストの仕掛けが面白いのに加え、男女2人をメインにした構成により男と女の読者それぞれ違った解釈、見解が披露され考察も中々楽しい。 |
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円く切り取られた過去の記憶。 五つの赤い影。 サーカス小屋の子供。 兄の死をきっかけに思い出す幼少の記憶。 3人の兄の旧友たち。 「ね、遊んでよ」と輪に入ってきたもう一人・・・。 囁きシリーズの第三作。 緋色では魔女、暗闇では双子という存在が幻想的に怪しく描かれているが今作は非常に現実的なお話である。 兄が何者かに殺されてしまうことから物語は始まり、それを兄の予備校の講師だった占部とともに調査していく。 幼少の記憶をたどり、15年前のサーカスが訪れた間に何かが起こり、自分はそれを傍観していたことに気付く。 この過去の記憶がノスタルジックで黄昏という表現がぴったし当て嵌まっている。 幼かった故に欠けていたパーツが揃ったときに驚愕の真相が浮かび上がってきた。 |
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大学の課題の為、山奥の別荘に逗留中の悠木拓也は近くに住む双子の兄弟と知り合う。 どこか浮世離れしてミステリアスなその少年達。 「あっちゃん」と呼ばれる誰もが口を閉ざすもう一人の存在。 遺体の一部が切り取られる殺人は何を意味するのか、そして事件の究明に呼応する過去からの囁き。 囁きシリーズの2作目ですがシリーズ通して関連性はないです。 むしろこの作品は「殺人鬼」の方に繋がる作品らしい。 内容はミステリ要素を兼ねた幻想的なホラーで館や探偵は登場せず、淡々と事件が起こりそれに巻き込まれていく。 しかし悠木拓也には微かに聴こえるのだ、遠い過去からの囁きが。 特にシンボル的な要素が無い囁きシリーズですが、シリーズ通して「過去」の記憶が重要な意味を持っている。 その隠された記憶が暴かれた時の静謐な狂気を味わって欲しい。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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いきもの係の事務担当田丸弘子が誘拐された!? 残された手掛かりの動物園のチケットから導かれる象のはな子、そしてラオスの密輸グループ。 死神と呼ばれる刑事から偽造パスポートを受け取りいざラオスへ! 警視庁いきもの係シリーズ第6弾、蜂の話以来の長編。 今回のお話はちょっと他作品のネタが多いです。 特に真相部分において過去作品がほぼ必読レベルなのでご注意を。 あとオマケで作者がリアル象に乗っかています。 |
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倍返しではなく自分の為。 復讐をモットーにする女子高生「小峰りな」、どんな些細なこともやり返さないと気が済まない。ハンムラビ法典ってのがあるみたい、目には目を歯には歯をって奴、でも私の悲しい気持ちや周りの気持ちも考えたら同じことをやり返すのじゃ足りないと思う。 そんな私は、ある日刺された。 復讐女子高生が夜道で刺される所から物語は始まる。 6歳の時に事故に見せかけて同級生を骨折に追いやって以来、復讐をモットーにして生きてきた彼女にとって最大の復讐劇の開幕の予感である。 犯人が残した謎の言葉「ラメルノエリキサ」を手掛かりに復讐心のもと奔走する主人公、家族や友人たちも巻き込み未成年の心の拠り所に迫る青春小説の一面も覗かせる。 色々と物騒な内容だが本作は小説としてはかなり軽い、「小峰みな」は自分の心の平穏の為に復讐を行うが、中身は案外女子高生。 夜道での犯人捜しは足が震えるし、涙も出そうになる。 復讐が生きがいなのではなく、復讐して心の清算をしないと生きてゆけないというのが正しいだろう。 そんな彼女がどう事件と向き合い、折り合いをつけるのかが本作の肝になる部分である。 斬新かつ、読んでいて過去に類のない作品なのは保証する。 |
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碆霊様を祀る強羅地方の村には時代の異なる4つの怪談が伝わる。「海原の首」「物見の幻」「竹林の魔」「蛇道の怪」、村を訪れた刀城言耶たちの前に怪談をなぞった連続殺人事件が起こるが、、、。 村の秘密を暴こうとした異端民俗学者、村の合併話、素性の分らぬ蓬莱の存在、現場に残された笹船、広げに広げた風呂敷から言耶の導き出す一つの真相とは・・・。 2年ぶりに読みました言耶シリーズ。 時が経つのって早い。 結構なボリュームで最初に4つの怪談話が展開される。 謎に満ちた怪談話の至る所に怪しい点があり、どうまとめるのこの話状態だ。 やがて現在の村を訪れた言耶の前に遺体に笹船を添えた連続殺人が起こる。 伏線も長ければ、解決も長い、久しく言耶のガッツリ一人多重解決が見れる。 正直真相は肩透かしものだったが、600P越えで重厚なホラーを観れたと思えば満足。 |
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「白骨鬼」 江戸川乱歩の未発表作品がある文芸誌に掲載される。 江戸川乱歩と萩原朔太郎の2人の作家が探偵役を努めるその作品にはある秘密が隠されていて・・・。 作中作と現実パート、そしてミステリの遊び心光る技巧派作品。 がっつり作中作を取り込み、しかも江戸川乱歩の文体の寄せる徹底ぶり。 現実パートに仕組まれた仕掛けに驚嘆。 |
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「妹になにがあったか知っている。 同じことが起きようとしている。」 不吉なメールで故郷に帰ってきた僕。 25年前、確かに妹のアニーには何かが起こってて、その正体は分からないまま死んでいった。 忌々しいあの夜の記憶、あの夜の出来事からアニーは変わってしまった、まるで別人のように。 二度と戻ってこないとは思っていた故郷。 僕の前任の教師は自分の息子を殺したのち、自殺を遂げた。 「息子じゃない」という血文字を残して。 生粋のキングファンであるC・J・チューダーの長編二作目。 匿名のメールによって過去の記憶の封印を解いた主人公が自身の妹の謎に迫っていくストーリー。 この主人公のジョー・ソーンが中々の曲者でギャンブル好きで借金まみれ、アルコール中毒の兆しも見える中年男。 しかし謎の正義感を発揮したり、皮肉を以て巨悪に立ち向かう姿勢も見せてくれる。 この主人公の人格の形成と事件への執念の理由が過去の事件を通して見えてくるのが面白い。 殺し屋まがいの女や経歴詐称の同僚、そして町会議員の旧友、信用ならない奴らとの駆け引きでハードでな展開が繰り広げられる。 一体だれがジョーを呼び起こしたのか、25年前の事件の裏の真相とは。 キング氏のモダンホラーとミステリーが融合した秀作。 三作目の長編も発表済みというしそちらも楽しみだ。 |
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1986年、まだ少年だった僕たちは月並みな日々を送っていた。 友人達とやんちゃもしたし、喧嘩もした。 甘酸っぱい恋に憧れることもあった。 大人たちの難しい話は無視したし、友達の体に付いた痣の意味もまだ分からなかったけど、それなりに平穏な日々を送っていたはずだった、あの時までは。 事件の始まりはいつだったのか、僕が移動遊園地で凄惨な事故を目撃した時なのか、友達の兄貴が溺死した時? それともチョークの落書きで伝言を始めた時? 2016年、42歳になった僕に投げられた言葉。 誰もが間違っていたし、誰もが秘密を抱えていたあの事件の真相を明らかにする時が来たのか。 「あの事件の真犯人を知っている。」 スティーヴン・キング推薦という強力な後ろ盾を以て日本でも刊行された本作。 スタンドバイミーを彷彿とさせるようなティーンエージャーを中心とした物語。 彼らは年相応に未熟であって、それ故に事件の大きさも方向性も変わってゆく。 点と点が結ばれて隠された線を探偵役が見つけ出すようなかっこいい物語ではない。 色々な事件が起き、過去でも未来でも、殺人も起きたしそうじゃない事件も起きていた。 それらのほとんど線は2016年に回収される。 振り返れば些細なことだが当時の未熟な少年たちと大人たちの蟠りの前では有耶無耶になった。 <本物の友達じゃないから。子供のころから知っているっていうだけ。> そう、確かに彼らは親友ではなかった。 秘密を共有するには身分が違い過ぎた。 ただ近所に住んでいるだけでは明かせない事実あった。 もし彼らが強固な絆で結ばれた親友同士で合ったら事件はこんなにも複雑に残酷にはならなかったのかもしれない。 でも小学生時代の友人関係なんてそんなもんだと思う。 複雑な人間関係、身分違いの個性的な人物たちを多彩に書き分け最終ページに恐るべき秘密を隠してみせた本作。 キング氏のサスペンスな作風が好きなら一読の価値ありです。 |
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11歳の僕は唐突に親元から引き離されある施設に預けられた。 異国の地で異国の同級生との共同生活を行う、そこでは<実習>という名の推理合戦の課題が課される。 スパイの養成施設? 特別な才能の持ち主? 僕たちは一体何の為に集められたのか。 新入生の登場に揺れる級友、学校に潜む“何か ”が目覚めようとしていた・・・。
10年以上振りに再文庫化され手に入りやすくなりました。 でも反復するような旧題の方が素敵かな。 物語は11歳の主人公が突然異国の土地の施設に飛ばされることから始まる。 自身の存在理由、施設の目的をクラスメイトと推理するも分からないまま時は過ぎていく、しかし新入生の登場を機に事態は一変、ホラーなのか或いはファンタジーなのか現実なのか空想なのか終盤に至るまで輪郭さえも掴めさせないようなアクロバットなストーリーになっている。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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