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とも さんのレビュー一覧
ともさんのページへ書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点6.96pt |
レビュー数89件
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ここ最近、当たりの作品を手にしていない。
そんな本に当たれば、ほんとうに寝るのも忘れ読み続けてしまう。 逆に 途中で気乗りのしない作品にあたってしまうと、ついつい 途中で他の本に手が伸びてしまい、進まない頁が更に停滞してしまう。 そんな訳で 現在6冊を回し読み中、ということは6冊すべて大したことがない、という悲しい現実ではあるのだが (;´д`)トホホ… この作品は、コンゲーム的要素を取り入れたクライムノベル。 一言で言えば、詐欺まがいの方法で集めた10億円を巡り 3組の凌ぎ合いをするストーリー。 とはいえ、この手の作品の常道で ポップには仕上げてあり、少々の犯罪など吹き飛んでしまう爽快感はある。 が、いいところといえばそれくらいで、プロット、スピード感、人物描写、リアリティ、全てにおいて 中途半端で浅すぎる。 特に、思いのほか 迫力のないスピード感、いまいちキャラクターがありきたりで中途半端な登場人物、コミカルチックにしたかったのだろうがそれも弱いし、完全犯罪といいながら 手抜きの計画は作家の怠慢か能力か(;´д`)トホホ… これが例えば、道尾秀介「カラスの親指」なんかだと、徹底的にストーリー構築しキッチリと笑いを取っているし、伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」「グラスホッパー」なんかだと、圧倒的なスピード感と悪役が憎々しいほどにワルであるので 主人公との対比でキャラクターが引き立ち 作品にのめり込んでしまう。 もし、これらの作品を読む前に この作品を手に取っていれば、もう少し違った感想になったのかもしれないが。 とはいえ、病人を病院を徹底的にパロディー化した かの名作「イン・ザ・プール」や、圧倒的なキャラクターを描ききったクライムノベル「サウスバウンド」と同じ作者かと思うと、相当に残念な作品。 了 |
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初めてこの作家の本を読んだのは『黒い家』。
これには衝撃作だった。 ただただ、怖かった。 それ以来、この作品は 私の中では、ホーラーとしてはダントツに怖い作品のトップに君臨し続けている。 そうしてそれ以降、この作家の作品には 折に触れ 手にとってきているのだが、これといった作品に出会うことはなく、実は万を持して この作品を手に取った。 結果的には、残念ながらこの作家とは相性がよくないのだろうか、全く心を打たない。 内容としては、母の別れた義父が、家に押し入り住み込み始めることから、この作品は始まる。 義父は危険人物である。 だから消さなければ、母と妹は守れない。 真面目で少しばかり頭はよい優等生の少年が、狭い視野、少ない知識で可能な限り考え抜いた殺人計画。 それが成功に終わるのか失敗に期すのか、そんなストーリーではある。 犯罪に手を染めるまでの、その後の精神状態についは、実にリアリティーがある。 とはいえ、おそらく主人公が高校生ということで意図的に考慮されてなのではあろうが、その分内容が貧相で視野が狭く。。。 結果的には、私にとっては 薄っぺらなないように感じてしまったのも事実。 殺人というものはおそらく、殆どの人が経験しない世界である。 その1線を越えた先にあるものがどのようなものなのか、勝手な想像は出来ても実際のところは分からないし。 が、しかし その中でも 「タガが外れ」易くなることは、これは人間の弱さとして想定できる間違いない事ではあろう。 それが故に、人間社会には 法律があり、道徳があり、倫理があり、常識や慣習があり、規制されるのである。 それが時には、煩わしくもあり縛られることに対する息苦しさもあるが、換言すれば 外圧からの抑制になっていることも事実なのである。 少年から青年に移行する時代の、特に男子諸君には、殊のほか この制約が煩わしく感じらせる時期があり、無意味に抵抗/反抗してしまう経験をするものである。 そんな 逆にバランスの悪い時代を生きる青少年に対して、意図的に緩和する少年法は必要なのだろか、小賢しいガキどもにとっては逆に犯罪を助長させるきっかけにはならないだろうか。 そんなことを感じながら、自分の青春時代を思い出しながら、犯罪に手を染めるかどうかは、紙一重のことなんだろうと。 よくぞ前科を受けることなく生きてこられたことにただただ感謝するばかりでありながら、だからこそ こういった特に少年の悲しい犯罪小説に対しては厳しい評価になったかもしれない。 評価は低いが優秀な作品ではありますので、一度手に。 了 |
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【ネタバレかも!?】
(4件の連絡あり)[?]
ネタバレを表示する
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2017年、東野 第二弾は、前回の『仮面山荘殺人事件』に味をしめ、同じ系統の密室、叙述ミステリーを選択。
結果から述べると、上記作品に比べれば やや小粒感は否めない。 とは言うものの、題名の付け方、物語の進行、トリッキーさ、スピード感、それと読み始めると止められない徹夜本であることは間違いない。 評価が少々低めなのは、東野作品としての期待値に対してであり、他の作家との相対評価では決してないので悪しからず。 さて、ストーリーはというと、 ある劇団のオーディションで、劇団員から選抜6名と外部から1名、彼が主人公でありストーリーテラーなのである、の計7名の役者が選ばれる。 ある日彼ら全員に、信州のとあるペンションへ来るようにとの演出家からの連絡があり 集合することになるあたりで、題名からも 「ああ、大雪が降って閉じ込められて、そうして殺人事件が起こるんだろうなぁ」と勝手に想像するのだが・・・、しかし この想像は 早々に駆逐される。 彼らが到着するやいなや 演出家からの速達便にて、ミッションが告げられる。 次回作品は密室連続殺人がテーマなので、『このペンションで過ごす4日間、あたかも実際に密室連続殺人が起こることを擬似して過ごすように』。 但し書きとしては、あくまでリアルに過ごす必要があるので、外は大雪と想定して外出不可、もちろん外部との電話などの連絡も一切断つ様に。 これを違反すれば、選抜は即時取り消しとなる、という注意書きがある。 これにより、この瞬間よりペンションは人工的に密室と化すこととなる。 こうして きっちりと殺人事件が発生するのだが、すでにこの辺でトリッキーさ満載で、物語に引き込まれてしまう。 さてはて、犯人は誰ぞや! 4日間が過ぎたあとに、なにが起こるのか( ^ω^)ワクワク そんなこんなで、無理矢理感がたぶんにあるのは読者だけではない、作中の登場人物にとっても同じで、とはいえ 伏線はきっちりと張りめぐらされている。 しっかりとしたどんでん返しもある。 きっちり誘導にも引っかかった。 しかし、この というか東野作品の面白さは、兎に角読みやすく、スピード感があり、文字がそのままビジュアルに変換する表現であり、あたかも登場人物の一員になった感がする。 間違いなく秀作であるので、読もうと思っておられる方 ご心配なく!!! 了 |
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時事や登場人物等が中途半端に実在しており、ノンフィクションとは思えないリアル感満載は、当作家 いつもながらの作風。
当作品は、鳩山政権下で実際にあった韓国哨戒艦沈没事件や宮崎の口蹄疫、沖縄基地移転、サリン事件、警察庁長官狙撃事件なんかと絡ませて、このヤコブ病激増の真実を突き詰めていくというもの。 冒頭 ニューギニアで実際にあった笑い死病、その後 日本で起こる一見なんの関わりもない殺人事件が、どうやらクロイツフェルト・ヤコブ病と関係があるのではないかということを、曰くあるジャーナリストや警官、病院関係者が 関係者がどんどんと亡くなることから なんとなく気づき始め、調査していく中でつながっていき、真相を探っていくうちに、驚くべき真実が浮かび上がっていく。 とはいえ、中国が毒物の入った食品を輸出し続けていることは事実で、既に中国産がとんでもないものと忌避されてはいる。 とはいえ、分かりながらも市場に出回る毒食品、それをする中国はもちろん悪であるのは間違いないが、輸入品に対する国や納入業者の管理や意識の体制の不十分さもあるのではないだろうか。 とくに政府側としては、政治のカードとして押さえつけられ、軍事力でビビらされている現実。 わかってはいるものの、今更ながらに対外戦略(それが戦略と呼べるものなのか迎合なのかは別に)と称して必死に隠す政府や官僚の弱腰外交にも辟易とする。 人命に関わる食品である。 購入者側責任といっても、加工前の食品には産地明示義務が出来たが、加工品には未だに明示義務ない。 とはいえ、数年前 日本で大ブームになった、産地偽装はなにも中国だけではない所をみると、日本人のモラルも相当に低下してはいるのだが。。。 全てが、金や利権に関わるからこそ難しいのだが、もう少しなんとかしろよ!と言いたくなる、ある意味 結論の出ない後味の悪いテーマに対する追い打ち作品となっていたため、評価は低めとする。 とはいえ、単に読み物としては十分にスピード感も迫力も真実味もあり楽しめるので、そこは読み手に委ねられるのであろうが。 了 |
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当作は芥川隆之介を探偵役に、義経伝説を追う作品。
とはいえ、よくある ”義経=ジンギスカン”説ではない。 「玉牒天潢世系」という古書(ただし、実在するのかどうかはよく分からないが)に記されている義経=清朝始祖説を解明する作品となっている。 この表のテーマが真実であるかどうかは読んでもらうしかないが、これと関係する 裏テーマ、 ロシア ロマノフ王朝や日本の裏社会について、どちらかというと 作家がほんとうに伝えたかったのは こちらではないだろうか。 よくよく考えれば、井沢作品には 表題のメインテーマとは別に、裏に潜む巨大な政治や経済、文化などについての真実の考察の方が、ほんとうに言いたいことなんではないかと。 そう考えて読み直せば、新たな発見が生まれるのではないか、そんな思いを持ちながら、読み耽った作品であった。 了 |
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探偵役を信長に据え、時代背景は歴史的には少々マイナー気味な第一次木津川沖海戦で大敗北を喫した以降、鉄甲船を製造する間の出来事となっている。
実は日本の歴史でも、思いのほか海戦は数少なく、源平の盛衰を決した屋島・壇ノ浦の戦い、この信長対石山寺本願寺での勝敗を決した今回の第一次、第二次木津川沖海戦、あとは第二次世界大戦で日本の敗北を決定づけたマリアナ・レイテ沖海戦くらいしかなく、ただしこれら海戦はその後の歴史に大きく影響する戦いであったことは間違いない。 文頭の第一次で壊滅的敗北を喫した信長側九鬼水軍が、数年後には圧倒的逆転勝利を修たのに鉄甲船は不可欠であった。 この鉄甲船、単に船に鉄板を張ったというイメージくらいは浸透しているかもしれないが、日本海軍的には革新的な船なのである。 もちろん、名前は有名かも知れないものの 単に船の周りに鉄板を貼っただけではない。サイズは20mを越える当時の最大サイズなれど、その上に3層の天守閣、3門の大砲を備え、ぐるりと鉄砲用の穴が空いている。 構造的にも、それまでの箱型(ボートの様なもの)の不安定な形状から、ヨーロッパで開発された最新式竜骨(船首から船尾まで一本の軸を通した様が龍の背骨の様に見えることからそう呼ぶのだが)式で、更に船底に穴があいても沈没しないよう、細かな間仕切りがされたというから、その最新の技術力を取り入れる信長の柔軟性には感服するものがある。 まぁ、そんなこんなでここからは歴史的事実かどうかはわからないが、本願寺側の毛利家のブレーンである小早川隆景(毛利元就の三男で、秀吉5大老の一人)、信長がこんな船を作っていると知れば、いてもたってもいられなかったであろう。 そんな訳で、鉄甲船を製造しようとすsる信長軍団とそれを邪魔する毛利の裏で行われた高いをミステリー調にしたのが当作品となっている。 ミステリー的には、最初の被害者 船大工の棟梁を殺したのは誰か?なのだが、登場人物が信長はじめ、蘭丸、滝川一益、九鬼嘉隆、本願寺顕如、下妻頼廉、小早川隆景等々と、実はオールスターとは言い難い二軍選手感はあるものの、逆にそれが歴史好き玄人はだしにはたまらないのではないだろうか。 ミステリー的には作家得意の暗号が用いられるが、残念ながらこれは大したひねりもなく、評価を下げはしたものの、歴史的側面では そこは作家の十八番、キッチリと押さえるところは押さえられており、暇とエンターテインメント、あと少々の知的好奇心があれば、肩肘張らずに楽しめる一冊であることは間違いない。 了 |
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加賀恭一郎シリーズの記念する第一弾。
時は加賀の大学4年の卒業までの1年を描いた作品。 ストーリーは、加賀の友人が理由もなく原因(自殺か他殺か)すら分からず突然亡くなるところからスタートする。 そうして第二の殺人なのか自殺なのかが起こり・・・。 このころよりストーリーテラーのきざしは見えるものの、全体的に古臭く文庫では副題「雪月花殺人ゲーム」が示すとおり、少々この面白くない謎解きのしつこさに辟易されられるところは、まだまだ駆け出し作家の思い入れが見て取れる。 従い、読者はおいて行かれた気分満載で、まだまだ多分に作家としては洗練されておらず青臭い作品。 まあ、面白くないわけではない程度か。 とはいえ、最後はきっちり締めるところなどは、現在の東野に通じる記念すべき作品であることは、間違いない。 了 |
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生まれながら代々の京都人であることから、良きにつけ悪しきにつけ、寺社仏閣については馴染みはある。
個人的なことを言えば、私が通った高校の土地は寺の借地であった。 とはいえ、この高校、なにも寺が運営している私立ではなく 全くの公立高校である。 そうして、授業をサボって近所の喫茶店で溜まって麻雀ゲームなんかをしていると、明らかにこちらもサボっていると思われる僧衣のままの若い坊さんもタバコを燻らしながら麻雀ゲームに勤しんでいる。 教科書に載るような有名寺社の僧侶なんかは、ポルシェやフェラーリの乗り回している姿を万々目撃することも珍しくもなく、寺社の金権については、まったく違和感がない。 そんな下地で読んだ当作だったので、少々 批判的感情が入っていないとも言えないが・・・。 というわけで、当作表題となっている『本廟寺』は架空である。 もしやと思い、調べてみたが、そのような名前の寺はやはりない。 ただし、親鸞を祖とする浄土真宗の中の一派、真宗大谷派の総本山であり 正式名称「真宗本廟」が東本願寺であることからも、またその歴史的背景からも、同寺であることは明らか。 この浄土真宗総本山で起こる連続殺人事件となっている。 構成は井沢作品としてオーソドックスな、歴史モノを題材にした推理小説となっている。 推理小説として見れば、残念ながら、というかいつも通りはあるのだが、それほど大したことはない。 が、彼の本領となる歴史的側面を 推理小説に上手く取り入れ絡ませあう手法は、ただただ脱帽。さらに、彼独特の読みやすさとスピード感も健在で、一気に読めてしまう。 特に今回の作品で突出しているのは、仏教の歴史的背景はもとより、真宗の教義と現実の乖離、金、権力等々を生々しく伝えてくれるところに 格段に面白さ上乗せされた秀作となっている。 兎角、宗教というものは、ヒトは弱いものであり 楽な方へ楽な方へと流されてしまうことを認め、その弱さを理解し補う目的で 元は善意から発生しているのかもしれない。 それは本来、坊主も同様であるはずである。 が、その自浄作用を考えていなかった片手落ちか、年月が立ち その善意がお金や権力と結びつくことにより、もともとの教義は都合よく改変され保守に向かうのは、世界中の宗教共通であり、ある意味 一番 わかりやすく生臭いのかもしれない。 そんなことを、考えさせらる一冊であった。 了 |
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意味もなく、東野圭吾が読みたくなった。
積読が山となっているなかから、ネットなんかで評判のよさげな 相当前に買ったままになっていた『 トキオ(改題 時生)』を選び出して読み始める。 結論、読んで良かった。 これまでに読んだ彼の作品で印象深かったガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』や、『百夜行』『手紙』『秘密』なんかは、ストーリー性はもちろんだが、それ以上に 最後のどんでんに驚愕させられる 奇を衒うものが多かった。 それらと比べ 衒い方は小さいかも知れない。 とはいえ、じゃあ それらに比べて劣るかというと、決してそうではない。 難病の息子の死の間 際に、青年時代に息子と出会っていたことを思い出す父の青春時代の回想物語と設定自体は少々SFチックなれど、それ以外に意表を突くことない。 それよりは、淡々と息子がちょいグレ親父をまっとうな考えに向けさせるきっかけになるよう努力する、そんな少し変わった親子の絆の物語で、全体的にアップダウンは少ない。 とはいえ、そこは東野圭吾。 非常にテンポよく読みやすく、実に内容は濃い。 彼の代表作の1冊と十分に呼べる秀作であった。 了 |
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いわゆる図書館モノ。
東北の田舎の野原のど真ん中にある図書館に務める新人司書が、そこで遭遇する小さなミステリーの数々を司書仲間と解決するとともに、地域住民とのふれあいをほんわかと描いた連作短篇集。 れんげとは、自然に育つ野草ではなく、翌年にはその根が肥料になるために 田んぼを耕す際 前の年に意図的にまいかれたものとのことで、このれんげ野原にも意味がある。 図書館員がどれくらい本が好きで大切にしているかが、ひしひしと伝わる作品ではあるが、私が図書館を使用することがないため、残念ながらその辺では感情移入出来なかった。 一度図書館に行ってみようかと。 もしかすれば、何か新しい発見があるかも。 了 |
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ジャンルは伝奇ミステリー。
若い男女カップルが、あるきっかけで江戸 天和期に飛ばされ、芭蕉に助けられるところから話は始めまる。 聞きなれない時代であるが、有名な元禄時代の黎明期で徳川綱吉がまだ善政を行っていた時代である。 その年は凶星ハレー彗星到来の年で、厄災がもたらされると予言されている。 その時代に、韓国通信使の一部が、豊臣秀吉朝鮮征伐で国土を蹂躙された恨みから怨霊 怨魔大王を復活させ、日本に大厄災を起こすべく徳川綱吉に乗り移らせるという物語。 その辺りから、綱吉の性格は徐々に変化が起こり、人民を苦しめる政治へと転嫁することになる。 それを食い止めるべく、水戸光圀の忍 松尾芭蕉が男女とともに、過去大王によって捕らえられた超能力のスーパースター安倍晴明、空海、役行者を開放させ見方にすべく登場させ、場所を時代を巡りる。 ほかの伝奇と一味異なるのは、作家が歴史に精通した井沢元彦である点。 それが故に、歴史トピックスをうまく物語とマッチさせる点などは秀逸で、楽しめる娯楽作品となっている。 怨魔大王の正体は関ヶ原で討ち死にしたあたりで辻褄が合って納得ながらも、個人的には聖徳太子か後醍醐天皇当たりにして欲しかったなぁ。 了 |
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この作家の書く作品には、品がある。
当作ももれなく、上質で上品な一冊である。 物語は、矢上教授と呼ばれる70才も越えた非常勤講師が巣食う大学の片隅にある旧棟で起こる殺人事件だが、そこでは嵐による停電や非常階段が閉じられることにより密室と化してしまう。 そのなかで、他の教授や助手、学生たちの思惑や隠された事実が存在しながらも、ゆったりと状況を確認し原因を追求していくのだが、その探索の方法や雰囲気は矢上教授の醸し出すノーブルさと相まって、あくまでゆったりと静かである。 そうしながら、最後の数章で 事件の真相は どんでん返しとはまた異なる 深い理由が明るみにされ、それが思いのほか大きく展開され花を添えてクライマックスを迎える。 兎に角 休日の午後にゆったりと紅茶でも飲みながら、が似合う作品であった。 了 |
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井沢作品は基本歴史をベースに、歴史の真実を解き明かす作品と歴史をネタに物語を創作する2つのパターンがあるが、当作は残念ながら後者。
また彼得意のテンポやスピード感もなく、駄作としかいいようがない。 概要としては、平将門の至宝「三宝の神器」をめぐり、将門の娘瀧夜叉姫がその祖先 竜野隆之の夢に現れるところから物語は始まる。 神器を集めることがこれから発生する国難に対抗できる唯一の策であると告げられ その捜索、さまざまな妨害、そうして国際テロにまで巻き込まれるが、という作品である。 了 |
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単なる読み元として読めば 少々歴史的な内容を含んだテンポの良いハードボイルド、となるのであろう。
が、井沢作品として手にとった限り この作品はありえない。 彼の作品は あくまで歴史の事実を解明するものでなければならない。 事実や少なくとも 彼が事実として検証されたものでなければならない。 要は小説家として井沢元彦は期待していない、歴史家なのである。 ただし、その検証や考証をだらだらと書き綴っても面白くないので、小説家としての技量で その事実をミステリー風にしたり、ときに「逆説の日本史」として論文調にしながら、綴っているのである。 要は、井沢作品を読む限り 歴史真実の解明という絶対命題がある。 しかし、この作品には その必須条件が欠落しているため そもそも成り立っていないのである。 そうした理由から、当作品は全く想像上の物語であることから、駄作と判断する。 ちなみに、単なるミステリーや物語をよむのであれば、世に数多面白い作品はあるので、こんな作品を読まなくても そちらを お勧めします。 了 |
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日本史最大とも言っていい謎の一つが邪馬台国と卑弥呼。
その存在は 唯一魏志倭人伝に記載されているのだが、正確には中国の正史で65巻からなる『三国志』のなかの「魏書(魏志)」全30巻のなかの最終巻である烏丸鮮卑東夷伝の、更に最終章「倭」に記載されている。要は、中国正史の最終巻の最終条にほんの付けたしの様に記載されいるといってよいかと。 (※)魏書以外に呉書、蜀書という あの三国志でもお馴染みの3国の歴史が紀伝体で記されたものであるが、あくまで歴史書である。 (※)ちなみに、血湧き肉躍る あの三国志は正式名称を三国志演義という読み物であり、この三国志とは少々ことなるのでお間違えなきよう。 当作は表題の謎を、現代人が捜索しながら事件に巻き込まれ殺人事件が起こり・・・という。いつも通り ミステリーと邪馬台国と卑弥呼の謎の探求の2本命題となっている。 この歴史探求には、現代科学や彼の『祟り』理論を駆使して この謎を解き明かすのだが、彼の場合それだけにとどまらない。 それは、派生的というには大きすぎる謎や既に常識となっている事柄にまで追及の手が入る。 例えば、天皇家と神話の関係や、世界の宗教との関わり、伊勢・出雲・宇佐神宮の設立の謎などを次々に解き明かしていく。 その解明方法は、通説やそれに対する他方面の説を土台に独自理論を展開する井沢作品の常套で安心感甚だしい。 彼の作品には迷いがない。また、学者ではなく作家であることが 下手な束縛やしがらみを排除できる為か、常識とされえていることについてもどんどんと反論する様は圧巻。 いつかこの井沢説が立証される日がくるのか愉しみである。 了 |
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前回の紫式部をテーマにした歴史ものとはことなり、今回は現代小説。
各章ごとに視点を変えているため、相当に凝ったプロットになっている反面、その凝りすぎが足を引っ張り、少なくとも途中までは 各章間のつながりが分からず、単なる短編なのかと思って読んでいた。 途中から連作短編の体を取っていることがわかるも、刻遅し。 連作と意識せずに読んだため、既に過ぎた章とのちのち関連する章とが繋がらない。 それでも 最後には、それぞれの物語がキッチリト収束に向かい、綺麗に片付くところは 流石である。 再読すれば、相当に評価は異なるのではと思わるので その辺を見越した評価とはなっているが、もしこの作品を読まれる方がおられれば 頭の片隅に連作であることだけ置いておけば、それだけでも相当に読み方が変わり 楽しめると思われる。 了 |
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面白い、上手い、兎に角凄い作品である。
構成は3部となっている。 物語のベースは 副題の通り、源氏物語にまつわる話である。 時代背景が平安時代の藤原道長台頭期で、主な登場人物は既に主要な貴族は粛清され藤原家内での共食い状態で、その上はうようよと次の政権を狙っている皇族がいるのみ。 そんな分かりにくい時代の説明から、下級貴族の式部がどうやって一番の主流派の彰子へ参内できたのかを、単なる源氏物語の説明ではなく 全体の雰囲気が味わえるようになっている。 第一部では市井で起こる事件(彰子の猫捜し)について、式部の慧眼で解き明かす過程で、彼女の推理、判断、観察力を表現し どのような人物が源氏物語を作ったのかを象徴させている。 そういった意味では、第一部は よくある歴史人情モノの様な雰囲気が漂っているが、2部に入ると立ち位置が市井から宮中に変わることで、雰囲気もガラッと変化する。 参内後、続々と源氏物語が発表されていくが、あるとき発表したはずの1帖が出回ってないことに気づく。それが単なるミスなのか、それとも意図されたことなのか。。。 「かかやく日の宮」という表題に源氏物語に知見が深い人であれば気づくかも知れない、ミッシングリングについての謎解きとなっている。 また、この藤原時代に敵対する源氏を主人公にしているわけは、道長との関係はと、ある様々な謎を、もって回った理屈でなく 素直な解釈から自然に解明している。 最後の第三部では、これまた良く知れた「雲隠れ」。 この帖、ある意味では 現代の全ての芸術においても最高傑作かも知れない。 というのも、当帖は光源氏が身罷る全54帖中の第41帖に当たる作品なのだが、題名だけしか存在しないのである。 物語に「文章がない」ということは、例えば音楽で言えば「無音」、絵画なら「白紙」、彫刻で言えば「石の塊」「丸太」、という超荒技である。 理由は、紛失したとも 読者の想像に任せる とも言われているが、まずもって前者であることはありえないであろう。 彼女は、その大技をこの処女作であり人生をかけた大作のクライマックスにもってきたのである。それだけでも、源氏物語が古今東西の文学と比較しても突出している証明になるのではないだろうか。 兎に角、複雑で難解な源氏物語をそれほどの知識がなくとも平易に理解できる様になっており、といってところどころに玄人好みするネタを仕込み無理なく解明していく、非常に素晴らしい作品である。 了 |
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この作者の作品は、前回読んだ『虹の岬の喫茶店』から2冊目。
前作同様、今回読んだ作品も喫茶店を巡る物語となっている。 喫茶店の店主で「癒し屋」の霧子の元には、噂を聞きつけた依頼者が店に足を運ぶ。 『癒し屋』などと突飛もない仕事を創作し、その報酬は店にある神棚のしたの賽銭箱へ入れる。 キリコはロッキングチェアでビールを飲みながら話しをきいて、金がありそうな客だけを選別して聞きき、店長のカッキーや常連客をパシリに使いながら 予想外なとはいえ理屈にあった方法で 依頼者を癒していく。 霧子とカッキーにも なんだか謎があり、それを全体を通したストーリーとしながらも、1章で1つのQ&Aの体裁となっているので読みやすいし、なによりその解決方法が見事。 ヒトには 生きていればどうしても忘れられないキズがある。 切羽詰まった物もあれば、いったんは心の奥底へ追いやってしまったもの(追いやらないと生きていけないものも含めて)もある。 それは、彼女たち2人も同じで、要は彼女たち自身も心に持っていながらソゲの様に突き刺さったままになっているキズがどう癒されるのか、これが短篇ではありながら連作の体となっており、全体的な深みとなっている。 誰もが、何かしら、それが過去であれいま現時点であれ、なにかしら 重いものは持っている。 もしキリコさんがほんとうに入てくれれば、すっ飛んでいくのになぁと、どれほどすっきるするだろうと考えながら、少なくともわずかでもヒトに対して心が優しくなれる感じがする、そうして読んだあとに自分が癒された様に思える 最高の作品です。 了 |
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言わずもがな、井沢元彦の歴史に隠された解明物。
当作品は、主人公を芥川龍之介に据えて、彼の友人の先祖で伊達騒動の逆臣 原田甲斐が無実であったことを証明するのだが。 井沢元彦のこと もちろん地方大名の内紛を解明するだけではない。 その後ろに隠れている巨大な陰謀を解き明かしていく。 それと相まって発生する殺人事件を絡めることにより、どこかダルイ歴史モノしょうせつではなく、テンポよく飽きさせないスピード感で楽しめる推理小説仕立てとなっている。 了 |
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