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とも さんのレビュー一覧
ともさんのページへレビュー数89件
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井沢元彦という作家、どうにも胡散臭い。
手当たり次第の歴史上の謎の解明が、ほんとうに理屈に合っているのかどうか 検証はしてはいないが、あまりにも明快すぎて 逆に嘘くさいくらい。 ただし間違いなく言えるのは、彼の見解がなんであれ、相当に文献を調べ尽くし、それをベースに彼独自の『和の思想』と『怨霊思想』を絡めて解明していく手法はいつも通り。 そんな訳で こんかいの作品は、表題い通り 『義経北行伝説』と『中尊寺金色堂の謎』解きとなっている。 「義経」といえば、日本で最初で最後の英雄。 その彼の最後が、平泉で匿われていた藤原氏から殺されたという歴史的事実に対して、実はそこでは死んでおらずに逃げおおして、北海道へ更には中国にまで渡って成吉思汗になったという伝説が未だに語り継がれている。 この日本史最大の伝説に真っ向と挑むのだが、それに現代の殺人事件を絡めた推理小説の形態になっているのだが、相変わらず軽い筆致で読みやすく出来上がっている。 解明した内容がどこまで信憑性があるのかは分からないが、平泉へ行ってみたくなる、そんな作品であった。 了 |
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久しぶりに奥田英朗を手にとった。
結構幅広い作品を書く作家だが、彼の魅力はなんといっても ハチャメチャな登場人物が魅力的なところであろうか。 『イン・ザ・プール』シリーズの医者 伊良部なんかは 徹底的にコメディー調だし、『サウスバンド』の父は元過激派。 どれもが強烈な個性の主人公と 、愛らしくも負けず劣らず個性的な登場人物たちは、結局はどれもが笑える作品なのである。 さて、それでは この『ウランバーナの森』の主人公はジョン。 これまでの作品に比べると、微妙に個性はない。 妻も、通う病院の医者も看護婦も、森で出会う人たちも、比較的抑え気味。 ただし、物語はあらぬ方向に どんどんと振れていく。 前半は、ジョンが便秘になることから始まる。 この便秘話が意外と長く、この辺りでは この本って何なんだぁ~って思って読んでる。 そのあと、話の筋があらぬ方向に。 この辺で、勘のいい人は 主人公が誰なのか察しが着く。 そうして最後には、思いがけず ほのぼのと優しくハッピーエンドを迎えることになるのだが、兎に角 ウィっとに飛んでいる。 バカ笑いじゃなく、コメディータッチがら読ませる当たりは流石。 まぁ楽しめる本であり、相変わらず外さない作家のひとりです。 了 |
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大当たり!!
今回、彼女の作品を初めて手に取りました。 ファンタジー大賞受賞作ということで 数年前に購入したものの、この題名から なかなか食指が動かないまま、未読の山に埋まったままになっていた。 が、読んでみてそんな懸念は一蹴。 時は近未来の日本。 北関東の沿岸に『江戸』と名付けられた治外法権、鎖国状態の地域があり、そこでは 江戸時代さながらの暮らしを営んだ世界がある。 そんな設定のなか、そこでは いろいろな事件が発生しながら、それを解決するというストーリーながら、巷に転がっている ただ時代風俗を楽しむ江戸時代ものとは一線を画しており、現実に存在する通常の現代社会との関わりも一興。 もうひとつの魅力、六尺六寸というから 体長196cm 、173kg 巨魁の女奉行を筆頭に、主人公の辰次郎ほか松吉など、登場人物が非常に魅力的でこの作品を大きく盛り立てている。 了 |
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何故か「神」という言葉に惹かれる。
別に過去になにかの宗教に偏ったこともないし、今後もおそらくないであろう。 とはいえ、なぜかしらに この語句があると手に取ってしまうのだ。 今回 当書は再読であったのだが、それは結局のところたまたま 題名に興味が惹かれて手にとってしまったとしか言いようがない。 要は、以前に読んだことすら忘れていて、読み始めても全く読んだことを思い出さず、半分位に差し掛かった時になって初めて、「あれっ!読んだかも?」ってことで、読書メモを引っ張り出して初めて確認が出来た、がもう半分位読んでしまったし 「最後まで読んでしまえ」ってことで、読んだに過ぎない。 それくらいに陰も薄く、というよりは数年前に読んだ当時のメモでは、相当の酷評だった。 では、今再読して何か変わったかといえば、同じく酷評になってしまうのだが、それでは面白くないので 良いところだけを拾い出してみようかと思う。 概要としては、ある言語学者が謎の言葉「古代文字」の書かれた石室に連れ出されることから始まる。 彼がこの言語を「神の文字」と認識する過程には論理学が用いられている。 わたしも一時、論理学をかじったことがあるのである程度は分かるが、作家の知識は相当に希薄で、(論理記号は最低5つなど)極論すれば間違っているのではあるが、それでもサイエンスの部分を化けや物理、数学にもってくるSFが多い中で論理学を用いたSFは数少ないであろう事から、それだけでも評価の対象かと。 そして、その論理が神の存在の根拠としまた、世界各国に散らばる奇跡と呼ばれるものと結びつける所などは、まぁこの時代 日本SFの創世記の作品としては、致し方ないというか、頑張った作品であろう。 そういった点を甘く見て、SFのフィクションではなくサイエンス部分を取り上げた点だけでも、評価しておこうかと思う。 最終結末が赦せない部分はあるにしても、全体を通して読み物として楽しめはするかと。 ということで、評価は前回に比べると少々アップすることになった。 了 |
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前回読んだ 『隻眼の少女』に気を良くして、2作品目になる。
作品自体の雰囲気はよく似た感じで、どことなくオドロオドロしいホラーチック(決してホラーではないので、苦手な人ご心配なきよう)な雰囲気は 昔の横溝正史を彷彿とさせる。 この作品、意味のある登場人物も多く またその個々の社会のなかでの位置づけなどの関連性も絡んでくることから、複雑で混乱をきたしがちな呈はあり、なかなか頁が進まない。 この作品、主人公 珂允(カイン)が、殺された弟 襾鈴(アベル)の謎を追って というか鴉に襲われて知らぬ間に地図にも無い村に迷い込むところからスタートする。 この兄弟の名前、ピンと来る人もたくさんいるであろう あの聖書のカインとアベルを同名であり、彼らがこの作品とどのように関連するのかしないのか、また閉鎖された村に巣食う神=大鏡を中心とした政治権力構造、次々と起こる不可解な殺人事件と、最後まで飽きが来ることもなく読み進められ、また推理小説による技法も至るところに散りばめられており、本格と呼ぶにふさわしい作品である。 とはいえ、読み終えたところで その結末の驚きとともに理解しがたい箇所があり、ネットで説明を求めてやっと全ての作者の意図が出来た次第でもあり、その文書構造は複雑である。 というわけで、非常に手の込んだ作品であり大作である反面、万人向けかというとそうでもなく、ある程度の読書歴と本格推理になれている方にはお勧めの一冊となる。自身のある方、一度挑戦を(笑) |
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作家の3つの人気(?)シリーズものの美人探偵3人が勢ぞろいして旅行へ。
それも行き先は、邪馬台国の所在と考えられている有名な3地点、九州 吉野ヶ里、畿内 纒向、あと東北 三内丸山。 ということで、初めから期待値はあがる。 その各地で邪馬台国や卑弥呼に纏わる殺人事件に遭遇するのは 探偵もののとして当たり前で、もちろんこの3探偵が解決していくのも普通の話し。 要は、この邪馬台国をどう処理していくのか。 望むべくは、彼の名著『邪馬台国はどこですか?』をどのように深堀していくのかにあった。 が、しかし、期待に反し 全くと言っていいほど彼の著の歴史推理には触れず、結局はその地で起こる殺人事件の解明に留まるのみ。 なぜにこの本を書いた?という作家の意図も全く見えず、得るところもない全くの期待はずれに相当のガッカリ本であった。 了 |
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この作家 すっかり忘れていたが、もともとの作風は この作品のように ほんわかふんわりだった。
それが、ここ最近 『ファクリファイス』に連なる作品のイメージが強くなっていたためか、硬派なイメージと錯覚していた。 そういう意味では、当作はひさしぶりの近藤史恵のゆったりとした作品。 舞台は商店街にあるちいさなフレンチレストラン。 そこで 各編 ワインと料理に合わせたちいさな事件をオーナーシェフが解決していくだけの短編集で、大した内容ではない。 が、全体的におおうほんわかゆったりとした空気感は、休日の昼間にソファーでゆったり それこそワインとブルーチーズをつまみながら読みながらうとうとする。 そんな風に読みたかったなぁと思う、ある意味癒される上質の作品であった。 了 |
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相当の期待値をもって読み始めた場合 期待を裏切られることが多い中、あっさりとその期待値を超えてくる力量は、「さすが 柴田よしき」というべきか。
1000ページの大作、登場人物も多く 中盤にダレ気味感はあるものの、それも結果的には必要な部分であり 枚数稼ぎの無駄なページは全い。 ストーリーは、警察組織、やくざ、バイオレンス、夜の世界、冤罪、性、銃、薬、売春と、クライムサスペンスの要素がオンパレードで収拾が取れなくなりがちと思いきや、ありきたりの表現をすればパズルのピースが過不足なく収まっていく。 そのなかで、RIKOシリーズのスピンオフという位置づけの主人公の刑事麻生龍太郎を軸に、素人、玄人が相まみえ入り乱れながらも、緻密なプロットとスピード感。 大作だからこそ可能な人物の書き込みや その人生のリアリティと迫力。 ミステリー部分はおおよそ想定できるものの、そんなことはどうでもいいほどに圧倒させらる作品に仕上がっている。 とにかくは、読んでみるべし。 了 |
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お気に入りの作家で、もともと非常に高いレベルに期待値がある為、通常レベルの作品では満足できないところに、ほかの作家の作品を読む場合と異なり、大きなビハインドを背負っている。
そういったことが前提とはなるものの、伊坂作品としては、内容も登場人物もパンチのない作品。 ヒトは自分の理解できる範囲でその少し上の能力を持ったモノを天才といって賞賛するが、理解不能な上回り方をした場合、嫌悪感を抱くしかない。 例えば陸上で、100mを10秒を切れば凄い、おそらく今後9秒を切るようなものが出てくれば おそらく世界の賞賛を浴びるであろう。が、仮に100mを5秒で走る人間が出てきた場合、ヒトは彼に喝采を浴びせるであろうか。。。 この作品の主人公もそういった、理解不能なレベルで野球の能力がある人間であり、それが故に なにかと不幸がもたらされる。 しかし、彼得意の登場人物の魅力も得意の伏線も、プロットも徹底的なヒール役も出てこない。 時と場合により、僻み根性の小悪党がちょっかいを出す程度。 そうして ファンタジーもワクワクドキドキの高揚感もなにもないままに、なんとなく終息を向かえる。 あと、シェークスピアのマクベスを知らなければ、更にこのおもしろみは半減するであろう。 とはいえ、どちらにしても、ん~非常に残念な駄作。 了 |
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本当に凄い作家だと思う。
幅広のジャンル、中でもミステリー色が強く、他にもバイオレンスの表現が得意な作家で、時折 男性では書くことができないようなリアルな暴力なんどは、読んでいても痛いと感じるくらい。 が、この『ばんざい屋シリーズ』は、静かに淡々と流れているようでありながら、流されずしっかりとひとの心の機微を捉え心に染み入ってくる作品として仕上がっている。 シリーズになるのかと思ったが、これ以降新作は出ていない様である。 いつか続編が出ることを、気長にゆっくりと待つことにしましょうか。 了 |
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構成は3部からなる。
はっきり言って、1部2部もそれなりには面白みもあるが、取り立てて どうこういうレベルではなく、所詮最近の海外モノはこの程度かと高をくくる。 違いとしては、農耕民族の日本人作家と肉食の西洋人とでは、根本的な残虐性が違うのかと、取り立ててエゲつない表現があるわけではないのだが、そんなことを考えながら読んでいた程度。 が、第3部に入ると その様相が大きく変わる。 これを 巷に溢れた『ドンデン』と同レベル呼んでよいものなのか。 単に 話の道筋をひっくり返して驚かせるだけの、そこらの小説とはレベルが違うとしか言いようがない。 内容は、あとがきにもあるように あまりの衝撃で余計なことを書いてはいけないので控える。 が、少なくともミステリーが嫌いでなければ読むべき作品。 了 |
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伊坂に作品はお気に入りで、デビュー当時より読みついでいる。
この作品も期待にたがわず楽しめるが、他の作品と少々違うのは、バックグラウンドに音楽が流れていないのと、明確な悪役が存在しないこと。 彼の作品には、いつも何らかの音楽がながれているが この作品は無音である。 それは隕石(※)が近づいてくるヒューっていう音がある為なのか。。。 あと悪役にしても同じで、隕石があまりにもその悪が大きすぎて、ヒトレベルでの悪役は不要ということなのか。 というわけで、他の作品と少々異なるものの、伊坂ワールドは健在である。 当作品は、地球に隕石が到来し人類が滅亡するまであと3年という世界で生きる人々の生き様を表わす連作短篇集。 というわけで、大した内容はない。隕石というSFチックなストーリーベースになっているものの、それに対する言及も追求もあまりなく、あくまで 隕石が襲来し人類が滅亡するという一つの事実をバックボーンにあり 短編間を繋げるキーワードにあるだけで、メインストーリーではない。 8年後に隕石襲来して人類は滅亡すると発表された5年後の世界であるが、発表当時の混乱は収まったものの、今はある程度ひと息ついた状態にある。 この間 暴動などで殺されて死んだもの、絶望して自殺したものとある程度死ぬ運命のものは淘汰され、残るべくして残っている人たちの世の中で、彼らが残りの時間をどう生きるのかをリアルにとはいえ淡々を記されている。 状況としては、最悪。 とはいえ ほんのりと明るい未来が想定されているところに、伊坂的ハッピーエンドなのではないだろうか。 あと、この作品、珠玉の言葉満載です。 了 |
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北京原人の化石が日中戦争中に紛失したのは有名な話で、いま見られるのはレプリカ。
その紛失の謎が現代の殺人事件と相り、どんどんと枝葉が付き、最後は日本敗戦の理由にまで飛躍する。 が、鯨の論理は大したもので、相変わらず・・・「あるかも」。 とにかく、一興の価値ある作品で、単に読み物としてだけでも楽しめる1冊。 |
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終戦後から数年間にあった未解決事件を解明していく。
GHQ占領下の時代とあって、偏った犯人にはなっているものの、あたかも本当に答えのように思えてきて、読み物として十分に楽しめる。 が、この時代に生まれてなくてつくづく良かったと思う。 |
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前読 「カエル男」や「ドビュッシー」に引き続きの3作目。
過激なミステリーの期待値をもって手にとったため、大幅な主観をもって読み始めたことは否めない。 前半は楽器の盗難や破損という小さな事件はあるものの 淡々と音大生の学生生活やその苦悩、葛藤がクラシック音楽の楽器、オーケストラなどの説明とともに語られる。 それがあまりに淡々としすぎて、ミステリーを読んでいるのか音楽小説を読んでいるのかわからなくなってくる。 中盤よりは、徐々に主人公の恋人?親友の病、脅迫状と話しが展開していく。 とはいえ、それでも大きな変化ではない。 その後 表題のラフマニノフやチャイコフスキーの調べとともに、ほぼ予測出来る程度のわずかなどんでん返しはあるものの、最後まで静かに終息に向かう。 期待値が違うところにあったため、非常に物足りないと思ったものの、それを除いたとしても凡作としか言いようのない残念といわざるを得ない一作。 了 |
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初めて読む作家である。
ほかの著作の題名見ていても、軽そうな題名が多くあるし、文庫本の裏の説明も軽めだし。 ということで、気軽に時間つぶしのつもりで1頁目を開いてみた。 前半は軽く、消し屋(殺し屋)将司とそのオカマの彼女 蘭子のウィットに富んだ軽快で雰囲気でスタートすることで、難なく物語の世界に同化。 ひとつの仕事を終えて、新たな仕事(殺し)を引き受けることから、本題に入る。 次のターゲットは、大富豪で若き天才科学者?発明化?の天願。 彼の殺害を依頼するのが小橋川という代理人なのだが、殺し方は「自殺」と見せかけること。 ターゲットを知らなければ自殺させられない、という将司の要求で、天願が所有するの沖縄の山原地区の広大な所有地に建てられた豪邸のゲストハウスに泊まり込むことに。 そこで1ヶ月同居することになるのだが、カレ天願の歴史を調べるうちに。。。 この辺までは ほんとうにテンポもよく軽快であるのだが、騙されてはいけない。 作家がほんとうに述べたかったのはここからが本題。 一見 気楽で明るく能天気に装おっていた登場人物たちの素顔が徐々に明らかになっていく。 ターゲット 天願の生い立ちを調べるうちに、また将司や蘭子のココロの葛藤、小橋川とはなにものなのか、本来の依頼者は。。。 とそれぞれの裏の暗い面が、沖縄という表向き海と珊瑚礁とという明るさに対して、今尚 戦争によって受けたキズが所々に残っている隠れた裏の歴史と交錯し合いながら、哀しいハードボイルド模様に知らず知らずに変わっていく。 個人的には、沖縄に行きたいと思ったことがない、というよりは行きたくもない。 それは、同じ日本ということで近い場所でありながら、距離だけでなくその島の生い立ち、歴史、民族などから、近代の悲惨な歴史的事実を考えれば、遊びで楽しみに行けるような場所ではない。 それでも、4島とそれに列なる従来の日本領土であれば違うのかもしれないが、歴史や民族の違いのため、日本に属しながらも 一線を画しているという意味で遠い避けたいクニなのである。 最後の一文にあった、この海では泳げない、という一言。 私も同じで、近隣諸島にはいったことがあるものの、未だ本島にだけは足を踏み入れたことがない理由も同じで、あの観光客の神経には目を覆うものがあるが、これは単なる個人的主観であるので。。。 どちらにしても、考えさせられる作品を、初めから重くすれば その作品を手にとられないだろうから、一見手に取り読みやすくした作品を作った作家に うまく騙されたということか。 了 |
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湊かなえは、間違いなく人間嫌いである。
完全な厭世化であり、性悪主義であり、そうして子供嫌いである。 それを隠すこともなく、どうどうとブレる事もなく作品で言い切り続ける態度はあっぱれである。 当作品のテーマは家庭内暴力。 昔流行った「積木くずし」よりは、おそらく内容は浅い。 が、彼女の人間嫌いが徹底している分、救いがなく清々しい。 その悪意の分、一歩突っ込んだ心理描写となっている。 「人はひとりで生まれてきて、ひとりで死んでいく」は使い古された言葉なれど、当作品を読んでいると つくづくと、家族と血縁といっても真には何を考えているかは分からない。 そうして最終的には、家族といっても所詮は他人である、ということを言いたかったんではないであろうかと思えてくる。 あくまでも湊かなえらしい後味の悪い、そうしてその悪さが期待を裏切らない 湊かなえらしい作品であった。 了 |
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