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とも さんのレビュー一覧
ともさんのページへレビュー数45件
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【ネタバレかも!?】
(4件の連絡あり)[?]
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2017年、東野 第二弾は、前回の『仮面山荘殺人事件』に味をしめ、同じ系統の密室、叙述ミステリーを選択。
結果から述べると、上記作品に比べれば やや小粒感は否めない。 とは言うものの、題名の付け方、物語の進行、トリッキーさ、スピード感、それと読み始めると止められない徹夜本であることは間違いない。 評価が少々低めなのは、東野作品としての期待値に対してであり、他の作家との相対評価では決してないので悪しからず。 さて、ストーリーはというと、 ある劇団のオーディションで、劇団員から選抜6名と外部から1名、彼が主人公でありストーリーテラーなのである、の計7名の役者が選ばれる。 ある日彼ら全員に、信州のとあるペンションへ来るようにとの演出家からの連絡があり 集合することになるあたりで、題名からも 「ああ、大雪が降って閉じ込められて、そうして殺人事件が起こるんだろうなぁ」と勝手に想像するのだが・・・、しかし この想像は 早々に駆逐される。 彼らが到着するやいなや 演出家からの速達便にて、ミッションが告げられる。 次回作品は密室連続殺人がテーマなので、『このペンションで過ごす4日間、あたかも実際に密室連続殺人が起こることを擬似して過ごすように』。 但し書きとしては、あくまでリアルに過ごす必要があるので、外は大雪と想定して外出不可、もちろん外部との電話などの連絡も一切断つ様に。 これを違反すれば、選抜は即時取り消しとなる、という注意書きがある。 これにより、この瞬間よりペンションは人工的に密室と化すこととなる。 こうして きっちりと殺人事件が発生するのだが、すでにこの辺でトリッキーさ満載で、物語に引き込まれてしまう。 さてはて、犯人は誰ぞや! 4日間が過ぎたあとに、なにが起こるのか( ^ω^)ワクワク そんなこんなで、無理矢理感がたぶんにあるのは読者だけではない、作中の登場人物にとっても同じで、とはいえ 伏線はきっちりと張りめぐらされている。 しっかりとしたどんでん返しもある。 きっちり誘導にも引っかかった。 しかし、この というか東野作品の面白さは、兎に角読みやすく、スピード感があり、文字がそのままビジュアルに変換する表現であり、あたかも登場人物の一員になった感がする。 間違いなく秀作であるので、読もうと思っておられる方 ご心配なく!!! 了 |
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当作は芥川隆之介を探偵役に、義経伝説を追う作品。
とはいえ、よくある ”義経=ジンギスカン”説ではない。 「玉牒天潢世系」という古書(ただし、実在するのかどうかはよく分からないが)に記されている義経=清朝始祖説を解明する作品となっている。 この表のテーマが真実であるかどうかは読んでもらうしかないが、これと関係する 裏テーマ、 ロシア ロマノフ王朝や日本の裏社会について、どちらかというと 作家がほんとうに伝えたかったのは こちらではないだろうか。 よくよく考えれば、井沢作品には 表題のメインテーマとは別に、裏に潜む巨大な政治や経済、文化などについての真実の考察の方が、ほんとうに言いたいことなんではないかと。 そう考えて読み直せば、新たな発見が生まれるのではないか、そんな思いを持ちながら、読み耽った作品であった。 了 |
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生まれながら代々の京都人であることから、良きにつけ悪しきにつけ、寺社仏閣については馴染みはある。
個人的なことを言えば、私が通った高校の土地は寺の借地であった。 とはいえ、この高校、なにも寺が運営している私立ではなく 全くの公立高校である。 そうして、授業をサボって近所の喫茶店で溜まって麻雀ゲームなんかをしていると、明らかにこちらもサボっていると思われる僧衣のままの若い坊さんもタバコを燻らしながら麻雀ゲームに勤しんでいる。 教科書に載るような有名寺社の僧侶なんかは、ポルシェやフェラーリの乗り回している姿を万々目撃することも珍しくもなく、寺社の金権については、まったく違和感がない。 そんな下地で読んだ当作だったので、少々 批判的感情が入っていないとも言えないが・・・。 というわけで、当作表題となっている『本廟寺』は架空である。 もしやと思い、調べてみたが、そのような名前の寺はやはりない。 ただし、親鸞を祖とする浄土真宗の中の一派、真宗大谷派の総本山であり 正式名称「真宗本廟」が東本願寺であることからも、またその歴史的背景からも、同寺であることは明らか。 この浄土真宗総本山で起こる連続殺人事件となっている。 構成は井沢作品としてオーソドックスな、歴史モノを題材にした推理小説となっている。 推理小説として見れば、残念ながら、というかいつも通りはあるのだが、それほど大したことはない。 が、彼の本領となる歴史的側面を 推理小説に上手く取り入れ絡ませあう手法は、ただただ脱帽。さらに、彼独特の読みやすさとスピード感も健在で、一気に読めてしまう。 特に今回の作品で突出しているのは、仏教の歴史的背景はもとより、真宗の教義と現実の乖離、金、権力等々を生々しく伝えてくれるところに 格段に面白さ上乗せされた秀作となっている。 兎角、宗教というものは、ヒトは弱いものであり 楽な方へ楽な方へと流されてしまうことを認め、その弱さを理解し補う目的で 元は善意から発生しているのかもしれない。 それは本来、坊主も同様であるはずである。 が、その自浄作用を考えていなかった片手落ちか、年月が立ち その善意がお金や権力と結びつくことにより、もともとの教義は都合よく改変され保守に向かうのは、世界中の宗教共通であり、ある意味 一番 わかりやすく生臭いのかもしれない。 そんなことを、考えさせらる一冊であった。 了 |
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意味もなく、東野圭吾が読みたくなった。
積読が山となっているなかから、ネットなんかで評判のよさげな 相当前に買ったままになっていた『 トキオ(改題 時生)』を選び出して読み始める。 結論、読んで良かった。 これまでに読んだ彼の作品で印象深かったガリレオシリーズの『容疑者Xの献身』や、『百夜行』『手紙』『秘密』なんかは、ストーリー性はもちろんだが、それ以上に 最後のどんでんに驚愕させられる 奇を衒うものが多かった。 それらと比べ 衒い方は小さいかも知れない。 とはいえ、じゃあ それらに比べて劣るかというと、決してそうではない。 難病の息子の死の間 際に、青年時代に息子と出会っていたことを思い出す父の青春時代の回想物語と設定自体は少々SFチックなれど、それ以外に意表を突くことない。 それよりは、淡々と息子がちょいグレ親父をまっとうな考えに向けさせるきっかけになるよう努力する、そんな少し変わった親子の絆の物語で、全体的にアップダウンは少ない。 とはいえ、そこは東野圭吾。 非常にテンポよく読みやすく、実に内容は濃い。 彼の代表作の1冊と十分に呼べる秀作であった。 了 |
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いわゆる図書館モノ。
東北の田舎の野原のど真ん中にある図書館に務める新人司書が、そこで遭遇する小さなミステリーの数々を司書仲間と解決するとともに、地域住民とのふれあいをほんわかと描いた連作短篇集。 れんげとは、自然に育つ野草ではなく、翌年にはその根が肥料になるために 田んぼを耕す際 前の年に意図的にまいかれたものとのことで、このれんげ野原にも意味がある。 図書館員がどれくらい本が好きで大切にしているかが、ひしひしと伝わる作品ではあるが、私が図書館を使用することがないため、残念ながらその辺では感情移入出来なかった。 一度図書館に行ってみようかと。 もしかすれば、何か新しい発見があるかも。 了 |
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ジャンルは伝奇ミステリー。
若い男女カップルが、あるきっかけで江戸 天和期に飛ばされ、芭蕉に助けられるところから話は始めまる。 聞きなれない時代であるが、有名な元禄時代の黎明期で徳川綱吉がまだ善政を行っていた時代である。 その年は凶星ハレー彗星到来の年で、厄災がもたらされると予言されている。 その時代に、韓国通信使の一部が、豊臣秀吉朝鮮征伐で国土を蹂躙された恨みから怨霊 怨魔大王を復活させ、日本に大厄災を起こすべく徳川綱吉に乗り移らせるという物語。 その辺りから、綱吉の性格は徐々に変化が起こり、人民を苦しめる政治へと転嫁することになる。 それを食い止めるべく、水戸光圀の忍 松尾芭蕉が男女とともに、過去大王によって捕らえられた超能力のスーパースター安倍晴明、空海、役行者を開放させ見方にすべく登場させ、場所を時代を巡りる。 ほかの伝奇と一味異なるのは、作家が歴史に精通した井沢元彦である点。 それが故に、歴史トピックスをうまく物語とマッチさせる点などは秀逸で、楽しめる娯楽作品となっている。 怨魔大王の正体は関ヶ原で討ち死にしたあたりで辻褄が合って納得ながらも、個人的には聖徳太子か後醍醐天皇当たりにして欲しかったなぁ。 了 |
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この作家の書く作品には、品がある。
当作ももれなく、上質で上品な一冊である。 物語は、矢上教授と呼ばれる70才も越えた非常勤講師が巣食う大学の片隅にある旧棟で起こる殺人事件だが、そこでは嵐による停電や非常階段が閉じられることにより密室と化してしまう。 そのなかで、他の教授や助手、学生たちの思惑や隠された事実が存在しながらも、ゆったりと状況を確認し原因を追求していくのだが、その探索の方法や雰囲気は矢上教授の醸し出すノーブルさと相まって、あくまでゆったりと静かである。 そうしながら、最後の数章で 事件の真相は どんでん返しとはまた異なる 深い理由が明るみにされ、それが思いのほか大きく展開され花を添えてクライマックスを迎える。 兎に角 休日の午後にゆったりと紅茶でも飲みながら、が似合う作品であった。 了 |
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日本史最大とも言っていい謎の一つが邪馬台国と卑弥呼。
その存在は 唯一魏志倭人伝に記載されているのだが、正確には中国の正史で65巻からなる『三国志』のなかの「魏書(魏志)」全30巻のなかの最終巻である烏丸鮮卑東夷伝の、更に最終章「倭」に記載されている。要は、中国正史の最終巻の最終条にほんの付けたしの様に記載されいるといってよいかと。 (※)魏書以外に呉書、蜀書という あの三国志でもお馴染みの3国の歴史が紀伝体で記されたものであるが、あくまで歴史書である。 (※)ちなみに、血湧き肉躍る あの三国志は正式名称を三国志演義という読み物であり、この三国志とは少々ことなるのでお間違えなきよう。 当作は表題の謎を、現代人が捜索しながら事件に巻き込まれ殺人事件が起こり・・・という。いつも通り ミステリーと邪馬台国と卑弥呼の謎の探求の2本命題となっている。 この歴史探求には、現代科学や彼の『祟り』理論を駆使して この謎を解き明かすのだが、彼の場合それだけにとどまらない。 それは、派生的というには大きすぎる謎や既に常識となっている事柄にまで追及の手が入る。 例えば、天皇家と神話の関係や、世界の宗教との関わり、伊勢・出雲・宇佐神宮の設立の謎などを次々に解き明かしていく。 その解明方法は、通説やそれに対する他方面の説を土台に独自理論を展開する井沢作品の常套で安心感甚だしい。 彼の作品には迷いがない。また、学者ではなく作家であることが 下手な束縛やしがらみを排除できる為か、常識とされえていることについてもどんどんと反論する様は圧巻。 いつかこの井沢説が立証される日がくるのか愉しみである。 了 |
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前回の紫式部をテーマにした歴史ものとはことなり、今回は現代小説。
各章ごとに視点を変えているため、相当に凝ったプロットになっている反面、その凝りすぎが足を引っ張り、少なくとも途中までは 各章間のつながりが分からず、単なる短編なのかと思って読んでいた。 途中から連作短編の体を取っていることがわかるも、刻遅し。 連作と意識せずに読んだため、既に過ぎた章とのちのち関連する章とが繋がらない。 それでも 最後には、それぞれの物語がキッチリト収束に向かい、綺麗に片付くところは 流石である。 再読すれば、相当に評価は異なるのではと思わるので その辺を見越した評価とはなっているが、もしこの作品を読まれる方がおられれば 頭の片隅に連作であることだけ置いておけば、それだけでも相当に読み方が変わり 楽しめると思われる。 了 |
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言わずもがな、井沢元彦の歴史に隠された解明物。
当作品は、主人公を芥川龍之介に据えて、彼の友人の先祖で伊達騒動の逆臣 原田甲斐が無実であったことを証明するのだが。 井沢元彦のこと もちろん地方大名の内紛を解明するだけではない。 その後ろに隠れている巨大な陰謀を解き明かしていく。 それと相まって発生する殺人事件を絡めることにより、どこかダルイ歴史モノしょうせつではなく、テンポよく飽きさせないスピード感で楽しめる推理小説仕立てとなっている。 了 |
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井沢元彦という作家、どうにも胡散臭い。
手当たり次第の歴史上の謎の解明が、ほんとうに理屈に合っているのかどうか 検証はしてはいないが、あまりにも明快すぎて 逆に嘘くさいくらい。 ただし間違いなく言えるのは、彼の見解がなんであれ、相当に文献を調べ尽くし、それをベースに彼独自の『和の思想』と『怨霊思想』を絡めて解明していく手法はいつも通り。 そんな訳で こんかいの作品は、表題い通り 『義経北行伝説』と『中尊寺金色堂の謎』解きとなっている。 「義経」といえば、日本で最初で最後の英雄。 その彼の最後が、平泉で匿われていた藤原氏から殺されたという歴史的事実に対して、実はそこでは死んでおらずに逃げおおして、北海道へ更には中国にまで渡って成吉思汗になったという伝説が未だに語り継がれている。 この日本史最大の伝説に真っ向と挑むのだが、それに現代の殺人事件を絡めた推理小説の形態になっているのだが、相変わらず軽い筆致で読みやすく出来上がっている。 解明した内容がどこまで信憑性があるのかは分からないが、平泉へ行ってみたくなる、そんな作品であった。 了 |
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久しぶりに奥田英朗を手にとった。
結構幅広い作品を書く作家だが、彼の魅力はなんといっても ハチャメチャな登場人物が魅力的なところであろうか。 『イン・ザ・プール』シリーズの医者 伊良部なんかは 徹底的にコメディー調だし、『サウスバンド』の父は元過激派。 どれもが強烈な個性の主人公と 、愛らしくも負けず劣らず個性的な登場人物たちは、結局はどれもが笑える作品なのである。 さて、それでは この『ウランバーナの森』の主人公はジョン。 これまでの作品に比べると、微妙に個性はない。 妻も、通う病院の医者も看護婦も、森で出会う人たちも、比較的抑え気味。 ただし、物語はあらぬ方向に どんどんと振れていく。 前半は、ジョンが便秘になることから始まる。 この便秘話が意外と長く、この辺りでは この本って何なんだぁ~って思って読んでる。 そのあと、話の筋があらぬ方向に。 この辺で、勘のいい人は 主人公が誰なのか察しが着く。 そうして最後には、思いがけず ほのぼのと優しくハッピーエンドを迎えることになるのだが、兎に角 ウィっとに飛んでいる。 バカ笑いじゃなく、コメディータッチがら読ませる当たりは流石。 まぁ楽しめる本であり、相変わらず外さない作家のひとりです。 了 |
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大当たり!!
今回、彼女の作品を初めて手に取りました。 ファンタジー大賞受賞作ということで 数年前に購入したものの、この題名から なかなか食指が動かないまま、未読の山に埋まったままになっていた。 が、読んでみてそんな懸念は一蹴。 時は近未来の日本。 北関東の沿岸に『江戸』と名付けられた治外法権、鎖国状態の地域があり、そこでは 江戸時代さながらの暮らしを営んだ世界がある。 そんな設定のなか、そこでは いろいろな事件が発生しながら、それを解決するというストーリーながら、巷に転がっている ただ時代風俗を楽しむ江戸時代ものとは一線を画しており、現実に存在する通常の現代社会との関わりも一興。 もうひとつの魅力、六尺六寸というから 体長196cm 、173kg 巨魁の女奉行を筆頭に、主人公の辰次郎ほか松吉など、登場人物が非常に魅力的でこの作品を大きく盛り立てている。 了 |
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前回読んだ 『隻眼の少女』に気を良くして、2作品目になる。
作品自体の雰囲気はよく似た感じで、どことなくオドロオドロしいホラーチック(決してホラーではないので、苦手な人ご心配なきよう)な雰囲気は 昔の横溝正史を彷彿とさせる。 この作品、意味のある登場人物も多く またその個々の社会のなかでの位置づけなどの関連性も絡んでくることから、複雑で混乱をきたしがちな呈はあり、なかなか頁が進まない。 この作品、主人公 珂允(カイン)が、殺された弟 襾鈴(アベル)の謎を追って というか鴉に襲われて知らぬ間に地図にも無い村に迷い込むところからスタートする。 この兄弟の名前、ピンと来る人もたくさんいるであろう あの聖書のカインとアベルを同名であり、彼らがこの作品とどのように関連するのかしないのか、また閉鎖された村に巣食う神=大鏡を中心とした政治権力構造、次々と起こる不可解な殺人事件と、最後まで飽きが来ることもなく読み進められ、また推理小説による技法も至るところに散りばめられており、本格と呼ぶにふさわしい作品である。 とはいえ、読み終えたところで その結末の驚きとともに理解しがたい箇所があり、ネットで説明を求めてやっと全ての作者の意図が出来た次第でもあり、その文書構造は複雑である。 というわけで、非常に手の込んだ作品であり大作である反面、万人向けかというとそうでもなく、ある程度の読書歴と本格推理になれている方にはお勧めの一冊となる。自身のある方、一度挑戦を(笑) |
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この作家 すっかり忘れていたが、もともとの作風は この作品のように ほんわかふんわりだった。
それが、ここ最近 『ファクリファイス』に連なる作品のイメージが強くなっていたためか、硬派なイメージと錯覚していた。 そういう意味では、当作はひさしぶりの近藤史恵のゆったりとした作品。 舞台は商店街にあるちいさなフレンチレストラン。 そこで 各編 ワインと料理に合わせたちいさな事件をオーナーシェフが解決していくだけの短編集で、大した内容ではない。 が、全体的におおうほんわかゆったりとした空気感は、休日の昼間にソファーでゆったり それこそワインとブルーチーズをつまみながら読みながらうとうとする。 そんな風に読みたかったなぁと思う、ある意味癒される上質の作品であった。 了 |
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伊坂に作品はお気に入りで、デビュー当時より読みついでいる。
この作品も期待にたがわず楽しめるが、他の作品と少々違うのは、バックグラウンドに音楽が流れていないのと、明確な悪役が存在しないこと。 彼の作品には、いつも何らかの音楽がながれているが この作品は無音である。 それは隕石(※)が近づいてくるヒューっていう音がある為なのか。。。 あと悪役にしても同じで、隕石があまりにもその悪が大きすぎて、ヒトレベルでの悪役は不要ということなのか。 というわけで、他の作品と少々異なるものの、伊坂ワールドは健在である。 当作品は、地球に隕石が到来し人類が滅亡するまであと3年という世界で生きる人々の生き様を表わす連作短篇集。 というわけで、大した内容はない。隕石というSFチックなストーリーベースになっているものの、それに対する言及も追求もあまりなく、あくまで 隕石が襲来し人類が滅亡するという一つの事実をバックボーンにあり 短編間を繋げるキーワードにあるだけで、メインストーリーではない。 8年後に隕石襲来して人類は滅亡すると発表された5年後の世界であるが、発表当時の混乱は収まったものの、今はある程度ひと息ついた状態にある。 この間 暴動などで殺されて死んだもの、絶望して自殺したものとある程度死ぬ運命のものは淘汰され、残るべくして残っている人たちの世の中で、彼らが残りの時間をどう生きるのかをリアルにとはいえ淡々を記されている。 状況としては、最悪。 とはいえ ほんのりと明るい未来が想定されているところに、伊坂的ハッピーエンドなのではないだろうか。 あと、この作品、珠玉の言葉満載です。 了 |
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北京原人の化石が日中戦争中に紛失したのは有名な話で、いま見られるのはレプリカ。
その紛失の謎が現代の殺人事件と相り、どんどんと枝葉が付き、最後は日本敗戦の理由にまで飛躍する。 が、鯨の論理は大したもので、相変わらず・・・「あるかも」。 とにかく、一興の価値ある作品で、単に読み物としてだけでも楽しめる1冊。 |
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初めて読む作家である。
ほかの著作の題名見ていても、軽そうな題名が多くあるし、文庫本の裏の説明も軽めだし。 ということで、気軽に時間つぶしのつもりで1頁目を開いてみた。 前半は軽く、消し屋(殺し屋)将司とそのオカマの彼女 蘭子のウィットに富んだ軽快で雰囲気でスタートすることで、難なく物語の世界に同化。 ひとつの仕事を終えて、新たな仕事(殺し)を引き受けることから、本題に入る。 次のターゲットは、大富豪で若き天才科学者?発明化?の天願。 彼の殺害を依頼するのが小橋川という代理人なのだが、殺し方は「自殺」と見せかけること。 ターゲットを知らなければ自殺させられない、という将司の要求で、天願が所有するの沖縄の山原地区の広大な所有地に建てられた豪邸のゲストハウスに泊まり込むことに。 そこで1ヶ月同居することになるのだが、カレ天願の歴史を調べるうちに。。。 この辺までは ほんとうにテンポもよく軽快であるのだが、騙されてはいけない。 作家がほんとうに述べたかったのはここからが本題。 一見 気楽で明るく能天気に装おっていた登場人物たちの素顔が徐々に明らかになっていく。 ターゲット 天願の生い立ちを調べるうちに、また将司や蘭子のココロの葛藤、小橋川とはなにものなのか、本来の依頼者は。。。 とそれぞれの裏の暗い面が、沖縄という表向き海と珊瑚礁とという明るさに対して、今尚 戦争によって受けたキズが所々に残っている隠れた裏の歴史と交錯し合いながら、哀しいハードボイルド模様に知らず知らずに変わっていく。 個人的には、沖縄に行きたいと思ったことがない、というよりは行きたくもない。 それは、同じ日本ということで近い場所でありながら、距離だけでなくその島の生い立ち、歴史、民族などから、近代の悲惨な歴史的事実を考えれば、遊びで楽しみに行けるような場所ではない。 それでも、4島とそれに列なる従来の日本領土であれば違うのかもしれないが、歴史や民族の違いのため、日本に属しながらも 一線を画しているという意味で遠い避けたいクニなのである。 最後の一文にあった、この海では泳げない、という一言。 私も同じで、近隣諸島にはいったことがあるものの、未だ本島にだけは足を踏み入れたことがない理由も同じで、あの観光客の神経には目を覆うものがあるが、これは単なる個人的主観であるので。。。 どちらにしても、考えさせられる作品を、初めから重くすれば その作品を手にとられないだろうから、一見手に取り読みやすくした作品を作った作家に うまく騙されたということか。 了 |
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