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とも さんのレビュー一覧
ともさんのページへレビュー数10件
全10件 1~10 1/1ページ
※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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この作者の作品は、前回読んだ『虹の岬の喫茶店』から2冊目。
前作同様、今回読んだ作品も喫茶店を巡る物語となっている。 喫茶店の店主で「癒し屋」の霧子の元には、噂を聞きつけた依頼者が店に足を運ぶ。 『癒し屋』などと突飛もない仕事を創作し、その報酬は店にある神棚のしたの賽銭箱へ入れる。 キリコはロッキングチェアでビールを飲みながら話しをきいて、金がありそうな客だけを選別して聞きき、店長のカッキーや常連客をパシリに使いながら 予想外なとはいえ理屈にあった方法で 依頼者を癒していく。 霧子とカッキーにも なんだか謎があり、それを全体を通したストーリーとしながらも、1章で1つのQ&Aの体裁となっているので読みやすいし、なによりその解決方法が見事。 ヒトには 生きていればどうしても忘れられないキズがある。 切羽詰まった物もあれば、いったんは心の奥底へ追いやってしまったもの(追いやらないと生きていけないものも含めて)もある。 それは、彼女たち2人も同じで、要は彼女たち自身も心に持っていながらソゲの様に突き刺さったままになっているキズがどう癒されるのか、これが短篇ではありながら連作の体となっており、全体的な深みとなっている。 誰もが、何かしら、それが過去であれいま現時点であれ、なにかしら 重いものは持っている。 もしキリコさんがほんとうに入てくれれば、すっ飛んでいくのになぁと、どれほどすっきるするだろうと考えながら、少なくともわずかでもヒトに対して心が優しくなれる感じがする、そうして読んだあとに自分が癒された様に思える 最高の作品です。 了 |
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本当に凄い作家だと思う。
幅広のジャンル、中でもミステリー色が強く、他にもバイオレンスの表現が得意な作家で、時折 男性では書くことができないようなリアルな暴力なんどは、読んでいても痛いと感じるくらい。 が、この『ばんざい屋シリーズ』は、静かに淡々と流れているようでありながら、流されずしっかりとひとの心の機微を捉え心に染み入ってくる作品として仕上がっている。 シリーズになるのかと思ったが、これ以降新作は出ていない様である。 いつか続編が出ることを、気長にゆっくりと待つことにしましょうか。 了 |
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構成は3部からなる。
はっきり言って、1部2部もそれなりには面白みもあるが、取り立てて どうこういうレベルではなく、所詮最近の海外モノはこの程度かと高をくくる。 違いとしては、農耕民族の日本人作家と肉食の西洋人とでは、根本的な残虐性が違うのかと、取り立ててエゲつない表現があるわけではないのだが、そんなことを考えながら読んでいた程度。 が、第3部に入ると その様相が大きく変わる。 これを 巷に溢れた『ドンデン』と同レベル呼んでよいものなのか。 単に 話の道筋をひっくり返して驚かせるだけの、そこらの小説とはレベルが違うとしか言いようがない。 内容は、あとがきにもあるように あまりの衝撃で余計なことを書いてはいけないので控える。 が、少なくともミステリーが嫌いでなければ読むべき作品。 了 |
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この作家の作品を読むのは何冊目になるんだろう。
作品間で登場人物が繋がったりすることが多いから、デビュー作より順番に読んできています。 で、なにはともあれ面白い!!! いつもながら プロット、伏線、スピード感、リアリティー、何をとっても秀逸。 今回の作品は 『グラスホッパー』の続編という位置づけだったこともあり、再度さらっと読み直してから 本作を読み始めたので、導入から非常に流れよく合流できる。 そうして、続編の予想通り登場人物もしっかり重なっており、それがまた楽し。 伊坂の登場人物は正義と悪がはっきりしていていて、潔いのが特徴。 最後は正義が勝つというある意味ヒーローモノ的な作品が多いのだが、この度のヒーロー役は犯罪組織に属し殺し屋を稼業をされている方とその関係者御一行様。 対するヒール役には、小生意気で頭の切れる中学生のクソガキを持ってきているちぐはぐさが、もう うまいとしか言いようがない。 この殺し屋たちと、クソガキのやり取りがテンポよく、それが東北新幹線の東京⇒盛岡間の一種密室で行われていることから、ミステリーチックなところもあり、2度美味しいという感じです。 あと、度々登場する「機関車トーマス」とウォルター・ウルフは気になります。 特にトーマスファンがこの作品を読んだら、堪らないんじゃないだろうかなぁと。 とにかく、ピカレスク作品として1行目から楽しめる作品まちがいなしの傑作です。 了 |
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傑作の『虐殺器官』に続き、2冊目となる。
前作同様に、はじめのうちは 非常に読みづらい。理解にも苦しむところもあり、また1行目から 何故かパソコンの機械語になっており、腰が引ける。 が、第三章くらいから、急に世界が見え、ストーリーも動き出した時には、もう一気読み。 有無を言わさぬ展開に圧倒される。 物語の設定は近未来で、21世紀初頭に起こった「大災渦」から数十年後の話し。 その時代、一種生命を最大限尊重する世の中が構築されてるなかで、すべての人間がチップを埋め込まれ健康状態から始まり生活すべてが管理され、例えばアルコールやカフェイン、タバコはもとより、健康に害を及ぼすとされているものが廃止されている様に、とにかく人命は個人のものというよりは社会の財産であるという認識が定着している。 その世の中で、管理されていないのが脳、つまり意識のみ。 で、この管理に反発する少女たちが 唯一の自由として自殺を企てるも失敗するところが序章となり、その後彼女たちを中心に物語は進んでいく。 完全なプロットのもと、今回のテーマは管理社会と生命。 近未来小説でよくあるロボット支配であるとか、宇宙人がという奇想天外なものではない。 生命を最重要視される社会にとって、ヒトが生きるとはとはなんなのか、意識や意志=感情や思考が失くなった時に果たしてヒトは生きていると言えるのであろうかという重厚なテーマが繰り広げられる。 とはいえ、なにも医学的、精神学的見地に偏っているわけではない。そこには、科学技術や戦争等の紛争や、政治などを絡み合わせた内容になっている。 また一見柔らかそうに感じられる表題も、考え抜かれたうえでの命名であることがおいおいわかってくるし、非常に読みづらい元凶のコンピューターの機械語が所々に挿っている理由などもキッチリと意味がなしている。 とにかく、すべてが考え抜かれた、SFであり、ミステリーでもあり、青春小説とも言える傑作である。 了 |
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読みづらい作品ではあった。
長いあいだ、買い置きしていたのは 表題からどうしても気が進ま無かった。 読み始め、30代の若者が書いた作品であろうとのことで、薄っぺらい内容か、それとも必死に背伸びして書いた、どちらにしても全く期待していなかった。が、途中でこの作家が若くして亡くなっているいることを知り、感傷も入った為か、斜に構えて読み始めたわたしの気持ちが変わり、素直な気持ちで物語に入り込めるようになった。 すると、この作家の奥深さが理解でき、感傷どころではない、のめり込んで読み始めていた。 ストーリーとしては、近未来の原爆が投下されたあとの近未来の地球。 そこでは徹底した管理社会が実現しており、ただしその徹底管理から漏れるジョン・ポールなる人物、彼が現れる所、テロが勃発することから、任務として彼を追いかける特殊部隊の暗殺者の主人公が、遭遇する様々な事態に対処しながら進んでいく。 そのなかに戦争、テロ、武器は言わずもがな、医学、心理、社会、経済、宗教を違う角度から眺め、その知識をほんとうにあっさりと書き流しながらも、所狭しと盛り込まれているため、読み進めるのには相当に時間がかかる反面、知的好奇心を掻き立てる やわらなか筆致が内容と対称的になっている。 静謐の中 この物語が閉じていくときに、ふと 『夭折の天才』という言葉が頭をよぎった。 了 |
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大人の童話。100年前の自然の中に植物や動物、はたまた妖怪までが違和感なく共存しているぼんやりとした世界観が読んでいて心地よい。このままどっぷり浸っていたいなぁと、そんな感慨深い作品。
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なるほど、読み終えてしまえば 評価の高い作品であることは納得するのだが、途中というよりかは後半に入るまでは結構ダルイ。傷害致死前科者の三上と死刑執行人(刑務官)南郷 2人の主人公の説明がだらだらあったり、この2人がある事件の捜査をすることになる状況や関係者の説明などなど、どちらかといえば本筋に入るまでの人物描写や経緯など外堀をきっちりと構築して後半で一気に収束という、大きな円がだんだんと小さな円になり最後に点になる、そんな感じの作品。題名の取り方もうまく、死刑執行の13階段だけでなく、時間に、場所にと多くに掛かっており、練られたものである。ということで、面白いというよりは。結果よく出来ましたと言わざるを得ない作品である。
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期待に違わない一冊。題材としては、歴史的に日本国に騙されてブラジルへ渡り虐げられた人々が、国を相手取り復讐する、という何とも言えず暗いテーマで長い間積読となっていたが、ラテンのノリがその重さ、暗さを払拭し、最初からテンポよく最後まで突っ切る、ただただ楽しめる一冊に仕上がっている。とはいえ、テーマになっている日本政府の政治、外交の酷さには今更ながらに辟易する。
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