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約束の地



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【この小説が収録されている参考書籍】
約束の地
約束の地 上 (光文社文庫)
約束の地 下 (光文社文庫)

約束の地の評価: 4.44/5点 レビュー 27件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.44pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全22件 21~22 2/2ページ
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No.2:
(5pt)

分厚い本だが、一気に読み切ってしまった。

冒頭で描写される殺人事件をはじめ、張り巡らされた伏線がクライマックスへ向かって収斂していく様は見事。
第一級のエンターティメント冒険小説として一気に読み切れる、と同時に、安易に流れることなく重いテーマを描き切る、という困難な両立を果たした大作である。買って損はないだろう。
本書の舞台は、八ヶ岳山麗の架空の市「八ヶ岳市」。
時代はほんの少し未来を想定し、架空の野生鳥獣管理保全管理センターを設定している。
主人公は、その八ヶ岳支所へ赴任してきた環境省キャリア官僚の七倉航(ななくら わたる)。
妻を喪い、娘と二人での赴任である。
七倉を着任早々に迎えたのは、巨大な体躯の熊が農家を襲い死者がでた、という知らせだった。そして事件の調査を進めるうちに見えてきた相手は、熊を超える恐怖の巨大生物だった。
だが、その生物の存在が、最終的な脅威ではなかった。
やがて明らかになる真に恐るべき「闇」は…。
いや、これ以上書くとネタバレになってしまう。口がむずむずするけれど、ここは自重しよう。
ホラーと冒険小説を能くする作者の面目躍如である、とだけ言って置こう。
七倉が任地で出会う人々は、どいつもこいつも一筋縄ではいかない連中だ。「独立愚連隊」のようなワイルドライフ・パトロールの同僚たち、非協力的な住民たち、旧来のやり方にとらわれた猟師たち、科学的調査すら否定し感情論だけで野生動物の“保護”を叫ぶ“環境保護団体”などなど…。
-- 人が山を汚し、じわじわと殺しつつある。
 その苦い現実をどうにか変えて行けるのか。--
これは大変重いテーマだ。
だが、主人公たちは現実の現場と同じように、限られた予算と人員と制約の中で、出来ることを地道にやっていくしかない。
そこには、安易な万能の解答など存在しないのだ。
仕事では人間模様と現実の困難さに翻弄され、私生活では娘がいじめにあいはじめる。
どちらを向いても問題だらけの四面楚歌生活。
しかし、七倉は逃げない。
悩み、苦しみながらも任地に踏みとどまり、問題に向き合い、課された制約の中で己に出来ることを力を尽くしてやろうとする。
その姿に「一所懸命」という言葉を想起した。
昔、武士が領地を守るにあたって「一所懸命」という言葉が生まれたという。
自分にとって身命を捧げるべき「一所」はどこなのか。
いや、自分はどこを「一所」と“する”のか。
-- どこでどう生きていくのか。
自分が根を下ろして、生きていく場所は…? --
周りの人たちとのかかわりや、土地への愛着などなど、そんな有形無形のものを全部ひっからげた「自分の居場所」。 共に生きること。
これは樋口明雄氏の小説に繰り返し現れるテーマだと思う。
単に地面のある地点、あるエリアをさすのみならず、人や獣や大地との絆を広く包括する「自分にとっての一所」を見出していく。
このテーマを担って本書の物語を生きるのが、主人公の七倉航であり、彼を取り巻く人々なのだ。
そしてもうひとつ、この作品の底流をなすテーマとして「死」がある。
愛しい者の死を、残された者たちがどう受け止め、生きていくのか。
重いテーマだが、繰り返し本書で語られる大切なテーマだと思う。
それぞれが抱える死の重み。そして物語が進むにつれて、変化してゆく死との関わりのありよう。
それは、先に述べた「どこをどのように一所とするのか」というテーマとも深く関わっていると思うのだ。
そういった人の心の変遷と成長もまた、本作の見所のひとつではないだろうか。
本書は重いテーマをはらみつつも、娯楽としての醍醐味を存分に堪能させてくれる。
もしもページ数に及び腰の方がおられたら、買って損はないはず、と重ねて申し上げたい。
ぜひ、主人公とともに困難を潜り抜け、あのラストシーンで清冽な八ヶ岳の冬の大気を感じて欲しい。
約束の地Amazon書評・レビュー:約束の地より
4334926428
No.1:
(5pt)

どうしようもない世界で

読みごたえのあるボリュームなのに、あっと言う間に読み終わったしまいました。ここ数年で読んだ本の中で、最も共感出来て感動した本です。
山を壊す人間、山を追われる動物、里に下りた動物は畑を荒らし、ヒトを襲い始める。
これは警告では無いでしょうか?人間の消えることの無い、果てしない欲望の末に起きるであろう近未来を描いているようにも思えました。
作者が書いた南アルプスの地に、私も同様に十年以上暮らしています。
山が何か変わってきた。川が何か変わってきた。何よりも動物達に落ち着きが無く、妙な苛立ちを持って里に下り始めています。農作物の被害のみならず、人に遭遇して怯えたクマが攻撃する事件も増えてきました。
深く、考えさせられた作品です。
約束の地Amazon書評・レビュー:約束の地より
4334926428

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