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砂漠の船
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砂漠の船の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.44pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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なぜ篠田節子が面白いのか? それは主人公の立っている位置がどんどんと崩れていく ところに 面白さがあるのだろう。 崩れ落ちていこうとする 主人公に踏み込んで、主人公は なぜなんだ。 オレは 何にも悪いことをしていないはずだ。 なんて 思うんですね。 でも 自分の生き方が ヒトに迷惑を かけるっていうことが いつもあることを気がつかない。 自分はいつも正しいことをしていると思い込んでいる。 この主人公 卓郎は なぜ奥さんと話をしないだろう。 決めつけてしまう場合が多い。息が詰まるなぁ。 卓郎は 一つの枠にとらわれていて 枠の中に 押し込めようとする 愚かさがある。 祖母 母 卓郎と嫁 娘 と 四代にわたる オンナの物語 になっている。 祖母は 田舎のかたくな 因習の中で 生活し、 それを不思議とも思わない。 リンゴの漬物 サツマイモ(本来ならば ジャガイモ) などを囲炉裏を前にしてかじる。生活の中心がそこにはある。 嫁いできた 母。 村の因習に対する行き詰った空気 自由に話もできない。 着飾ることもできない。 出稼ぎに出て どんなに苦しい仕事であってもこなし、 そして 自由にふるまい 服も派手なものをきることができる。 そのことの自由さを味わう。 都会の楽しさを知ることで 田舎がさらに厳しい状況を知る。 息の詰まるような 生活に 母は自らの命を 32歳で断つ。 そこに生まれた 卓郎 は 父親に 都会に行け と言われるが 自分は 田舎の生活に 憧憬がある。 家族だんらんの生活ができたら なんて楽しいだろう という 強い願望が その中にある。 おばあちゃんの生活が 家族だと思っている。 妻は卓郎の意見に逆らいながらも 従う。 チャンスがあったときにも そのチャンスを逃す。 卓郎は それは チャンス ではなく 使い捨てだと思っている。 あくまでも 地域に根差した生き方が本来のニンゲンの生き方だと思う。 常にステップアップしたいと思う妻。 パソコンも学ぼうとする。海外の派遣の仕事も 断らざるを得なくなる。 娘は 普通を常に装っているが、その中に秘められた才能が 開花するまえに つむぎ取られようとする。世の中は その才能を きちんと見ていた。 物語は 娘の自立で 大きく家庭が変化していく。 妻も娘も その中より飛び出したい。 それは 現代の イプセンの 人形の家 のような物語ではないかと思った。 専業主婦ではなく 共働きにしたのが物語を 確実なものにする。 どうも おカネが 回っていないのは不思議だ。 子供は 公立 ばかり行っているので。 家族が崩れるのは、経済的な問題が一番大きく その次が 異性問題ということなのだが どうも コドモ というのも 大きな問題になるんですね。 じっくり読んで 救い難い 現実。 真面目に生きるって あまりにもツライ。 | ||||
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出世を諦めて地域限定勤務を選んだ主人公の幹郎だが,不況の中で次第に追い詰められ,しかも,会社に対して有効な対応策をとることもできない。一歩一歩悪くなっていく状況は,自分がそんな目にあったらどうだろうかと胃が痛くなるような思いで読まされた。 篠田節子は,「女たちのジハード」以来,大好きな作家の一人である。 幹郎の情けなさは,「ゴサインタン」の主人公を思い出させられたが,篠田節子は,こういう情けない男を描写するのが本当にうまいと思う。また,出稼ぎや村八分など田舎の社会問題もリアルに描写されていた。 ただ,本書のストーリー展開は,偶然に頼りすぎていないだろうか。娘がその死に関わった浮浪者が,実は両親にとって親しい間柄の男だったとか,墓参に行ってその親族に偶然出会い,話を聞けたとか。 グイグイと一気に読ませる力技は健在ではあるが,ストーリー展開を偶然に頼りすぎているのではないかと気になってしまった点を考慮して,星4つにした。 | ||||
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出世を諦めて地域限定勤務を選んだ主人公の幹郎だが,不況の中で次第に追い詰められ,しかも,会社に対して有効な対応策をとることもできない。一歩一歩悪くなっていく状況は,自分がそんな目にあったらどうだろうかと胃が痛くなるような思いで読まされた。 篠田節子は,「女たちのジハード」以来,大好きな作家の一人である。 幹郎の情けなさは,「ゴサインタン」の主人公を思い出させられたが,篠田節子は,こういう情けない男を描写するのが本当にうまいと思う。また,出稼ぎや村八分など田舎の社会問題もリアルに描写されていた。 ただ,本書のストーリー展開は,偶然に頼りすぎていないだろうか。娘がその死に関わった浮浪者が,実は両親にとって親しい間柄の男だったとか,墓参に行ってその親族に偶然出会い,話を聞けたとか。 グイグイと一気に読ませる力技は健在ではあるが,ストーリー展開を偶然に頼りすぎているのではないかと気になってしまった点を考慮して,星4つにした。 | ||||
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お父さんの幹郎は、一人で熱くなっている。娘の茜の生き方や職業観に、他人から求められる仕事といった、自分の理想論を押しつけて何になるというのか。また、妻の由美子に対しても、単に夫婦だからという理由で、一緒に暮らすのが当たり前だと思っている。幹郎自身は気付いていないのかも知れないが、自分では努めて家庭的なお父さんになろうとしたものの、実は鬱陶しいお父さんになってしまっていた。それにしても、お父さんとは対照的な茜の冷めた感覚は、良くない意味で現代的と言うべきかも知れない。 本書で男の人生の後半部分の、不毛な生き様が描かれている。 親の死、リストラ、娘の心理的離反、妻の裏切り。 人生の後半部分とは、砂漠に放り出される様なものなのか? 世間ではありがちな事の連続だ。 けっして他人事ではない。 つい自分の人生を振り返ってしまう。 お父さんは独り相撲をとってはならない。 | ||||
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お父さんの幹郎は、一人で熱くなっている。娘の茜の生き方や職業観に、他人から求められる仕事といった、自分の理想論を押しつけて何になるというのか。また、妻の由美子に対しても、単に夫婦だからという理由で、一緒に暮らすのが当たり前だと思っている。幹郎自身は気付いていないのかも知れないが、自分では努めて家庭的なお父さんになろうとしたものの、実は鬱陶しいお父さんになってしまっていた。それにしても、お父さんとは対照的な茜の冷めた感覚は、良くない意味で現代的と言うべきかも知れない。 本書で男の人生の後半部分の、不毛な生き様が描かれている。 親の死、リストラ、娘の心理的離反、妻の裏切り。 人生の後半部分とは、砂漠に放り出される様なものなのか? 世間ではありがちな事の連続だ。 けっして他人事ではない。 つい自分の人生を振り返ってしまう。 お父さんは独り相撲をとってはならない。 | ||||
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家族のために最良の選択をしたと思っているのは幹郎だけだった。幹郎の思いは、かえって家族を息苦しくさせていく。だが、ほかにどんな選択肢があったというのか?幹郎に対し、男の哀れささえ感じる。たとえ家族であっても、心の奥底に流れている本質までは見抜けない。幹郎の祖母や父母、そして妻や娘の心に隠されたものに触れたとき、そこには悲しみとともに言い知れぬ恐ろしさがあった。「はたして自分の家族は?」そう考えると心がヒヤリとする。 | ||||
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早稲田大学を卒業後、妻が妊娠したが共働きで頑張ってきた。男女雇用均等法の施行により、女性の仕事にも責任ある仕事が任され、バブルでは働き盛りの年代だった夫婦。しかし、何より家族を大切にした夫婦は、出世より家族を選択して40代を迎える。「家族」を何より大切にし、堅実に働き、人に対し誠実であり、娘に対しても見守りながら親しい親子関係を築いてきたつもりが・・・娘が思春期を迎えた中学生から、予定外の出来事が少しずつ家族を揺さぶる。コミュニティーとして安心していた団地が家族を窒息させ、職場ではリストラが進行、安心感が倦怠感となった夫婦の危機。妻には娘の成長も、同じ女として世界を広げてゆくことが、世界が狭まってゆく自分と比較し羨望から束縛しようとしてしまう。自分達の親の世代には、日本社会の高度成長と重なり家族は1つの方向だけを目指せば良かった。だが、今の40代には道案内が無い。守ろうとする家族が幻のように脆く儚い。家族のためと働いてきた夫や、家族のために家事をこなしてきた妻リストラや子供の成長に巣立ち、更に自分自身の年齢と老齢になる親無我夢中で家庭を守ってきた主人公が、度重なる出来事にも必死で家庭を守ろうとする。全編を通じ暗雲たちこめる小説だが、不思議と暗さは感じない。それは、この主人公の家族だけが抱える問題に感じないからだと思う。各家庭で乗り越える課題が存在し、その時期を各々の家族が乗り越えるように、1つの家族の時間としてじっくり読める。生身の人間が巡り合い家庭を築く。生身の人間だからこそ、未来は予測不可能であり、幸福も苦渋も生まれる。丁寧に書かれた1つの家族の話に、最後までじっくり読ませる本。 | ||||
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