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ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編
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ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.08pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全132件 41~60 3/7ページ
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1Q84よりこちらのほうがよかったです。(比べるのもおかしいですが・・・。) | ||||
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もう10年くらい前に2部の途中まで読んで、そのまま放置していたのでした。今回2と3部を新しく買い、読みました。なんで10年もたって続きを読もうと思ったかというと、妙なウィルスにやられて頭痛と発熱で入院し、一週間で退院できましたが、その後もずっと隊長不良が続き、生命力が弱ったからです。 フェイスブックとかやる気にならず、なんか本が読みたいと思い、物語が読みたいと思い、読みやすそうな村上春樹に目をつけたというしだいです。主人公が無職の主夫で私と同じなのですよね。 面白い物語だったと思います。ていうか、村上春樹の書き方、文体が上手いからおもしろく読めるわけですね。キモキャラの牛河なる人物が好かった。あんな人物、これまでの村上小説に出たことなかったですよね。罪と罰のスヴィドリガイロフみたいな役どころで。もっと長たらしく喋らせてほしかった肝しますね。ほんとうんざりするくらい。 | ||||
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想像できない程汚れてます・すごく失望してます.ねじまき鳥コロニクル. | ||||
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終わりかたも、混沌とした もやもや感が残る すっきりしないが、 それが魅力な作品なんでしょうね。 | ||||
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三部作なのでやむなく購入。しかし、もう我慢できずに途中で読むのをやめた。村上ファンってどんな人達でしょう。こんな小説のどこに引き込まれるのか。「君みたいな凡人に春樹のよさは分からないよ」って言われそうだけど、分かりませんね。誰かがレビューで書いていたけど、短編小説を継ぎはぎしたような小説だ。どんなどんでん返しがあるのか知らないけれどもう読む気はしません。違う意味でどんでん返されそうなので。こんなクソ長編読むなら、星新一のショートショートの方がよっぽど有意義。何なんでしょう、村上ブームって。 | ||||
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本作が発売された当初、第一部と第二部は上下巻として刊行され、第三部はそれから一年以上後に発行されたことは興味深い。見方によっては、第一部と第二部を問題提起編、そして第三部を問題解決編と解釈することができなくもないのだ。けれども、本作は第三部の最後の方まで収束に向かってないかのような展開を見せ、むしろどこまでも発展していくかのようであり、だからこそ、結末はいささか急転直下であるような印象を与える。 | ||||
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第1部、2部と比べると少し読みづらいと感じた。 まあ、これが村上ワールドなのでしょうけれど。 いったいどこに話が転がっていくのか期待して読んでいた。 そして結末。あ、こういう風に落下したのか、と思った。 意外性? 日常生活から切り離された心で読まないと、決して理解することはできない。 でもそこが、この作家の魅力なのだと思います。 | ||||
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早く適切な対応をしていただき、読みたいときにすぐ読めました。読了しました。おもしろい本でした。 | ||||
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読み終えて。 物語だからこれでokなのだけれど 自分の身におきたら迷惑だろうなと おもわずにはいられなかった。 (一気に3部読んだのでずれがあるかも) | ||||
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これから読みます。遅れてきた、村上春樹ファン。文庫本でそろえて読んでいきたいと思います。 | ||||
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これからも一人ひとりの作品を出来るだけ続けて読んでいくつもりです。 | ||||
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第三部,ついにあの男が登場します。 背広を着た背の低い男。年齢は40代半ばから50代近く,むっちりと蛙のように肥って禿げている。話すときに言葉によっては上唇がくるっとめくれて,煙草の色に染まった乱杭歯が見える。これまで出会った中で間違いなく一番醜い何人かの一人といえる。ただ容貌が醜いというだけでなく,そこには何かねっとりとした言葉では形容できない不気味さがある。勝手に僕の家に上がり込んで自己紹介をする。 「牛河っていいます。まわりの人はみんな,ウシ,て呼ぶんです。おい,ウシってね」 「1Q84」を読んだ時,この牛河が再登場してビックリしました。 本書ねじまき鳥クロニクルの舞台は1984年。 つまり,「1Q84」の世界とリンクしているのです。 もちろん「1Q84」の世界の牛河は,月が二つある世界の1984年ですので,まったく同じ牛河ではないかもしれませんが,描写を見る限りほぼ同じ牛河ではないでしょうか。 作者も本書で登場させた牛河がよっぽど気に入ったのでしょう。 それだけの存在感があります。 第三部では,これまでの直線的な展開から雰囲気がかわり,途中に新聞記事が入ったり,時系列を入れ替えたり,過去の短編小説を組み込んだりと,文学的に趣向が凝らされているように思います。 また,牛河以外にも,ナツメグとシナモンという,これまた存在感ある人物が登場します。 「波の具合によって隠れたり現れたりする海辺の洞窟みたいに,ごく自然に現れたり引っ込んだりする口元の笑み」が特徴的なシナモン。 彼は少年時代のある出来事から一言も言葉を話さないが,とても感じが良く意思疎通に困らない。 三度目の再読ですが,それでもやはりまだまだ謎が残り,きっと数年後にまた再読することでしょう。 ただ,この第三部で作者の作家としての覚悟を強く感じました。 この作品の後,村上春樹の作品は更に進化していくことになるのです。 | ||||
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実は初めて作者の作品を読みました。1部を読んで訳解からず、 2部を読んでみても??なのでどうしても3部を読む必要がありました。 知らないうちに、引き込まれて自分を見つめなおしました。 | ||||
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村上さんが最初に戦争を暗に意識して書いたのが、おそらく『羊をめぐる冒険』なのかもしれない。 ここでいう戦争はさきの日本が敗戦した戦争のことです。 それから、世界の終わりとハードボイルドワンダーランドなんかも、その臭いがするし、へたするとノルウェイの森も関係してくる。 で、真っ正面から取り組んだのがこの作品で、それがのちに海辺のカフカ、1Q84に繋がるのだろう。 以上は勝手な推測だ。私が単純にそう思っただけだ。 ただひとつ言えることは、戦後生まれの私たちだって無意識のなかで戦争と繋がって、なにかしらの罪を背負わされているということだ。無関係じゃない。 無関係だと思えば、平気で人を傷つけることができるだろうし、戦争を望んで賛美するようになるだろう。 関係していると自覚するなら、二度としたくはないと思うはずだ。 ねじまき鳥は、どちらにねじを巻いたのだろうか? 後の作品を読んでいる限り、望まない方向に大衆は向かい、その罰として震災・原発事故に見舞われたように思えてならない。 今度の選挙結果次第では、さらに悪い方向へ進かもしれない。 村上さんは日本から距離を置く。ドナルド・キーンのような心中はしないのだろう… 私はおそらく、狂うだろう… | ||||
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「鳥刺し男編」で一気に物語が加速しました。 ゆっくりと流れていた川の先に滝が待ち受けていた、というような印象です。 途中で、この物語は終わるのだろうか?と感じてました。 怒り・暴力といった邪悪なものが描かれてゆきますが、このテーマは後の『海辺のカフカ』『1Q84』に繋がっていったようです。 メタファーといいますか暗喩が多用されていて、様々な連想を誘ってくる物語です。 想像力を求められるといいかえても良いでしょうか。 ノモンハン事件。満州国。スターリン。日本軍の誇大妄想的な精神が支配した時代の組織的な暴力。 共産思想という理想主義を掲げながら独裁者の猜疑心によって粛清を繰り返したソ連の暴力。 これら目に見える時代の暴力と現代の眼に見えない暴力が対比されているように受け止めました。 人間のどの場所で暴力は生みだされてゆくのか、村上さんは探ろうとしておられるのではないかと考えています。 実際読み終えて最も強く残るのはそのことです。 村上春樹さんの作品は、作品群として存在している印象が強くあります。 ここで登場する牛河は『1Q84』にも出演しますし、笠原メイが勤めるかつら工場は『日出る国の工場』でスケッチされた工場が使われています。 | ||||
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※ご注意 文庫は二種類あります。表紙は「ねじまき鳥クロニクル 第3部鳥刺し男編」の間に鳥マークのあるものと、鳥マークのないものです。前者は600頁で字が大きく、後者は509頁で字が小さいです。後者が古い版です。 72ページの「普通のかたちをした黒い電話機」は回転ダイヤル式で日本の家庭のどこにでもあったが、1980日本電信電話公社が日本電信電話株式会社 (NTT) へと民営化され、第二電電株式会社(現KDDI)をはじめとする参入の結果、電話機は多形態・多機能化し、電話局で引いてもらうのではなく、家電店などで買うものへと変化した。 第1部の冒頭に「一九八四年六月から七月」、第2部の冒頭に「一九八四年七月から十月」とあるが、第3部の冒頭にはない。が十二月までの話のようだが。 「やがてクミコの父親が電話をかけてきた。『何も絶対に離婚しないと言っているわけじゃないんですよ』と僕は答えた。『でもその前にクミコと二人だけで会って話をしたい。それで納得がいけば、離婚してもかまいません。それができないのなら、離婚はありません』」28 「しかし、家を出たクミコがそのまま実家に、あるいは実家の用意したどこかの場所に身を寄せるというのは、そして彼らを通して僕と連絡を取るというのは、納得できなかった。」30 「二月の半ばのひどく寒い午後に、僕は叔父が教えてくれた駅前にある「世田谷第一不動産」に寄ってみた。」36 「『僕がうかがいたかったのは、うちの裏手にある宮脇さんのお宅のことなんですが、あれは今のところ更地になっていますね』」38 「『実を言いますと、あの土地を買いたいと思っているんです』」42 「街に出るようになった八日目の午後に、一人の女性に声をかけられた。〜。去年の夏にやはり同じ場所で出会った中年の女だった。」52 「彼女は少し目を細めた。『結局またここに戻ってきたわけね』」53 「『どうやらお金が必要になったようです』と僕は言った。」54 「『明日の午後四時きっかりここにいらっしゃい』」55 「地下鉄の赤坂駅から飲食店の並ぶ賑やかな通りを歩いて抜け、緩い坂を少しのぼったところに、その六階建てのオフィスビルはあった。」67 「僕は602号室のブザーを押した。」68 「ドアを開けたのは若い男(シナモン)だった。」69 「ソファーに座っているようにと、青年が〜無言のまま示した。僕が指示にしたがってそこに腰を下ろすと〜、彼は〜ゴーグルのようなものを取り出した。」75 「青年はソファーの後ろにまわって僕にそのゴーグルをかけた。〜。完全な、そして人工的な暗闇が僕を包んだ。」76 「やがて一人の女が入口のドアを開け、足音を忍ばせるように部屋に入ってきた。それが女だとわかったのは、微かに香水の匂いがしたからだった。」78 「やがて彼女は撫でるのをやめ、〜。〜。その舌は巧妙に僕の肌に絡みついた。」80 「彼女は部屋に入ってきたときと同じように、静かに部屋から出ていく。〜。少しあとでドアが開いて、誰かが部屋の中に入ってくる。〜。ゴーグルを外してくれる。」81 「僕は知らないあいだに写生していたのだ。」82 「〜用意された清潔な新しい白いショーツをはく。〜。青年は外で僕を待っていた。〜。青年は〜。〜真っ白な封筒を取り出し、〜、それを僕のスタジアム・ジャンパーの内側のポケットに滑り込ませた。」83 「僕は少し迷ってから封を開けた。〜。中には一万円冊がきれいな束になって入っていた。〜。札は全部で二十枚あった。」85 「家に帰ったとき、猫が僕を出迎えた。〜。それは一年近く行方不明になっていた〜。」89 「スーパーで買ってきた生の鰆の切り身を皿に入れて、猫に与えた。」99 「よほどおいしかったのだろう。〜。この猫にサワラという名前をつけようと僕は思った。」102 「僕は電車に乗って新宿駅で降りた。それから地下街を抜けて西口の広場まで歩き、いつもと同じベンチに座った。その女は三時過ぎに姿を現した。」103 「『いらっしゃい』と彼女は言った。〜。僕は〜、言われたとおりあとをついていった。」104 「彼女は僕を表参道に面したデザイナーズ・ブランドのブティックに連れて行った。そして僕のためにスーツを二着選んだ。」105 「彼女は僕を近くのイタリア料理店に連れていった。」109 「『でも、どうしてあなたは僕のためにわざわざ服を一揃い買ってくれたり、散髪やクリーリングの費用を出してくれるんですか?』彼女は返事をしなかった。」110 「『あなたの名前が知りたいですね』と僕は言った。」115 「『ナツメグ?』『〜。それを私の名前にすればいいわ。〜』『〜じゃあ息子さんはなんて言うんですか?』『シナモン』」116 「僕らはいつもレストランで、同じテーブルをはさんで話をした。勘定はいつも彼女(ナツメグ)が払った。」144 「『〜、三つのとき両親に連れられて満州に渡ったの。お父さんは獣医学校の先生をしていたのだけれど、、新京に新設されることになった動物主任獣医として〜要請があったときに、〜名乗り出たの。〜。でも戦争の具合が悪くなって、まわりの情勢が不穏になってくると、お父さんは私とお母さんを日本に送り返すことにしたの。」145 「〜。そしてお父さんは一人であとに残った。新京の駅で手を振ってわかれたのが、お父さんを見た最後だったわ。〜』」146 「(一方)僕は長い時間をかけて、クミコのことを少しずつナツメグに説明した。なんとかクミコを救い出して、ここに連れ戻さなくてはならないのだと。」148 「ナツメグは微笑んだ。『ねえ、それってなんだかモーツアルトの『魔笛』みたいな話じゃない。〜『国じゅうに知らぬものなき鳥刺し男、パパゲーノとは俺のことだ』見たことある?』」149 「こんにちは、ねじまき鳥さん。〜。私(笠原メイ)は今のところ、「ある工場」で働いています。大きな工場です。日本海に面したある地方都市の、そのまた外れにある山の中にあります。」165 「ここで働いているのはほとんど女の子です。」166 「ここにいる女の子たちは地元の人、つまりこの地方の農家の娘たちです。」167 「高校を出て(中には私と同じように中退した人たちもいますが)、この工場に就職して、〜。〜結婚したら仕事をやめてしまいます。〜。〜、私はかつらをつくる工場で働いているのです。」169 「『〜。申し遅れましたが、わたしは実はクミコさんのお兄さんに使われているものです。牛河って言います。〜』194 「〜、さる週刊誌に掲載された『首吊り屋敷』(宮脇宅あと)の記事のことなんです。〜。世田谷の高級住宅地の一画にある因縁つきの土地。そこでは多くの人々が長年にわたって非業の死を遂げている。」200 「『〜、岡田さんがその『首吊り屋敷』なるものとのかかわりをすっぱりと切ってくれたなら、クミコさんとの復縁のこともひとつ真剣に考えてみようじゃないかと、早い話こういうことですね。いかがです、〜』」201 「朝の九時に玄関の門が低いモーター音を立てて内側に開き、シナモンの運転するメルセデス・ベンツ500SELが敷地の中に入ってくる。〜。僕は窓のブラインドのすきまからその光景を眺めている。」213 「<今日は午後の二時に一人お客があります。〜僕(シナモン)はここで一時間くらいかけて仕事を済ませて、それから帰ります。そして二時にお客を連れてまたやってきます。〜>」219 「『私(ナツメグ)は小さな(息子の)シナモンに潜水艦と動物園の話をしたの。〜アメリカの潜水艦が大砲をまわして私たちの乗った船を沈めようとしているあいだに、日本の兵隊さんたちがお父さんの動物園の動物たちを射殺して回ったことを。」224 「〜。言葉が少しわかるようになると、シナモンはその話を何度も私(ナツメグ)に繰り返させたわ。〜。そのようにして物語はどんどん大きく膨らんでいった。〜』」225 「輸送船は命令されたとおりにエンジンを停止し、ほどなく海上を静かに停止した。」168 「輸送船は潜水艦に向かって、当船は非武装の民間人を運搬する輸送船であり、軍需物資あるいは兵員はまったく積んでいない。〜、というメッセージを送った。」159 「〜輸送船に向けていた砲身をもとの前方位置に戻し、その不気味な黒い穴には蓋がはめられた。砲弾はハッチの中に戻され、乗員たちは駆け足で艦内に引き揚げた。」160 「現れたときと同じくらい理不尽に唐突に潜水艦が消えてしまったあとも、乗客たちは同じ姿勢で甲板に立ちすくみ、海面をじっと眺めていた。」161 「数日後には、遅くとも一週間後には、ソビエト極東軍の主力部隊が新京に到達するはずだった。」133 「動物園に向かった兵士たちも、自分たちが数日後にここでソ連軍と戦って死ぬのは避け難い運命と考えていた。〜。でもその前にとにかく彼らは、動物園の動物たちを殺さなくてはならなかった。」135 「中尉は命令書を彼らに見せ、園内に入った。〜。彼はもともとが、〜実践部隊を率いた経験はなかった。」136 「〜現在動物園が所持している毒薬はきわめて少量であり、馬一頭殺せるかどうかも怪しい〜。獣医は三十代後半の背の高い男で、顔立ちは整っていたが、右の頬に青黒いあざがついていた。」137 「彼らは道順の都合で、まず最初に虎を「抹殺」することになった。」139 「彼らは豹を殺し、狼たちを殺し、熊を殺した。」151 「結局象は殺さないことになった。」152 「射殺作業を終えた兵隊たちは司令部にひきあげ、最後まで残っていた二人の雑益夫が動物の死体を積んだ荷車と共にどこかへ消えてしまうと、動物園は家具を運び出したあとの家屋のようにがらんとした。」154 「夜の九時半に電話のベルが鳴った。〜『今晩は、岡田さん。わたし牛河です。〜』」239 「牛河は言った、『〜、岡田さん、あなたはあの土地を家付きである会社から借りていますね。『首吊り屋敷』の土地を。そのためにあなたは毎月かなりの額の支払いをしている。』」241 「『近いうちにまた連絡します。岡田さん。クミコさんとお話できるように手配を整えておきましょう。そいつは約束します。楽しみに待っていてくださいね』」251 「それは夜の九時で、僕は台所のテーブルに座って受話器を耳にあてていた。」269 「『〜。(クミコさんは)岡田さんと直接話すつもりはないって言うんですね。顔をあわせるのは論外だし、電話で話すこともできないって。電話もいやなんだそうです。〜』牛河はしばらく僕の反応を待っていた〜。」271 「『〜。クミコさんもコンピュータの画面を使ってなら岡田さんと話をしてもいいと、そうおっしゃているんですよ。〜』」272 「赤坂ナツメグは何ヵ月もかけて、その生い立ちを僕に語ってくれた。〜。赤坂ナツメグと母親は身につけられる宝石だけを財産として、満州から日本に引き揚げてきた。そして横浜にある母親の実家に身を寄せた。」284 「ナツメグは高校をやめ、洋裁学校に移ることにした。」287 「洋裁学校を出ると、〜。〜、服飾デザインの専門学校に通った。そこを卒業すると、ある高級婦人服の会社に就職し、希望通りデザインの部署に回された。」288 「〜二十七歳になったときに、ネツメグは業界の新年パーティで〜男性に紹介された。」289 「翌年ふたりは結婚した。〜、その翌年(東京オリンピックの年)の春に生まれた子供がシナモンだった。」290 「ナツメグと彼は結婚すると同時に勤めていた会社を辞め、独立したデザイン事務所を持った。」291 「〜、彼らが無一文から作り上げた会社は、一九七〇年には奇跡的といってもいいような成功を収めていた。」292 「夫が殺されたのは一九七五年の年末だった。そのときナツメグは四十で、息子のシナモンは十一になっていた。」295 「夫が殺された翌年の春、ナツメグは会社を〜大手の服飾メーカーに売却した。」298 「〜会社を売却した金を株式と不動産投資にまわしたが、好景気のせいで資産は年とともに膨らんでいった。」299 「〜仮縫いを待ちながらナツメグと世間話をしているときに、〜(客の)夫人は何の前触れもなく両手で頭を抱え、よろよろと床にしゃがみこんだ。ナツメグは驚いて彼女の身体を抱かかえ、右側のこめかみをさすった。」300 「〜、やがて夫人はゆっくりと起き上がり、ナツメグに侘びを言った。〜。何日かあとに、ナツメグは仕事の謝礼として、予想もしない金額を受け取って驚かされることになった。」301 「『その方はあなたが私にやったのと同じことをしてもらいたがっています。断ったりしないで。そして黙って謝礼をお受け取りなさい。〜』〜。『そして私(ナツメグ)はいつのまにかそれを仕事にするようになっていた』とナツメグは言った。」303 「指定された時間に僕はシナモンのコンピューターの前に座り、パスワードを使って通信プログラムにアクセスする。そして牛河に教えられた番号を画面にインプットする。回線が繋がるまでに五分ばかりかかる。〜。やがて回線が繋がり、相互受信が可能であるというメッセージが、軽いコール音とともに画面に浮かぶ。」311 「この画面の向こう側に、東京の地下の暗闇を這う長いケーブルの延長線のどこかに、おそらくクミコがいるのだ。」312「>〜たとえ私(クミコ)があなたに会いたいと思ったところで、会うことはできないのです。私があなたに会いたくないと思っていると、会いたいと思っていないと、あなたは思いますか?」320 「僕は牛河の事務所に電話をかけた。」338 「『〜綿谷ノボルとコンピューターを使って話ができないかな』と僕は言った。」339 「翌日シナモンが朝の九時に「屋敷」にやってきたとき、彼は一人きりではなかった。助手席には母親の赤坂ナツメグが乗っていた。」343 「〜、ナツメグは僕を「仮縫い室」に連れていった。そこには赤坂のオフィスの「仮縫い室」とまったく同じ体裁に作られていた。部屋の大きさもかたちもだいたい同じだ。窓にはやはり二重のカーテンが引かれ、昼でも薄暗い。」344 「〜、ナツメグは短いため息をついた。『今日の朝発売された週刊誌に、またこの屋敷のことが書いてあったわ。『謎の首吊り屋敷』シリーズ。〜』」347 「『〜。ところであなた(岡田亨)には義理のお兄さんがいて、その人は有名な若手政治家だとか誰かが私(ナツメグ)の耳に囁いてくれたんだけれど、それはほんとうかしら?』〜僕は言った。『僕の女房(クミコ)の兄(綿谷ノボル)です』」349 「『〜、ここに来るお客の中には政界と財界の関係者が何人かいるの。〜。その人たちのプライバシーは何かあっても守らなくてはならないし、〜』」350 「それからナツメグはやっと結論を持ち出した。『しばらくのあいだお客はここには来ないことになったわ。〜』」363 「夜の九時五十分に僕はシナモンのコンピューターの前に座り、スイッチを入れる。〜。そしてコンピュータの画面をはさんで僕は綿谷ノボルと向かい合うことになる。」355 「>〜。しかしいずれにせよ、もし君があそこにこのまま出入りを続けるというなら、クミコは永遠に君のもとには戻らないと思ってもらっていい。」357 「>〜。クミコが突然家を出て行った裏には、必ず何か僕の知らない大きな秘密がひそんでいるはずだし、その隠された本当の原因を解き明かさない限りクミコは本当には僕のところに戻ってこないだろうと。そして秘密の鍵はあなたがしっかり握っていると思うんです。〜」361 「>〜。君はそこで複数の信者だかクライアントだかに会って、彼らに何かを与え、その見返りに金を受け取っているらしい。〜」362 「暗闇の中で、〜白い光が浮かんでいるのが見えた。〜。コンピューターのスクリーンが放っている光だ。〜。画面に浮かんだメッセージを読んだ。あなたは今、プログラム「ねじまき鳥クロニクル」にアクセスしています。369 「今は一九四五年の八月で、ここは新京の街で、国境を突破したソビエト軍の戦車部隊が刻一刻と迫っている。」372 「昼前に昨日と同じ中尉が、同じ八人の兵隊たちを連れて動物園に戻ってきた。」379 「彼らは有無を言わせず、騾馬と荷車を引いて引き上げていった。」380 「兵隊たちは〜戻ってきた。〜。八人の兵隊は銃剣をつきつけるようにして、四人の中国人を連行していた。中国人たちはみんな〜、そろいの野球のユニフォームを着て、縄で後ろ手に縛られていた。〜。中尉は園長に向かって、シャベルとつるはしを貸してもらえまいかと訊いた。」381 「兵隊たちは〜空き地に中国人たちを連れていって、手を縛っていた縄をほどいた。伍長が〜、この大きさに穴を掘れと〜命じた。〜四人の中国人はつるはしとシャベルを手に、黙って穴を掘った。〜。一時間足らずで直径四メートルほどの穴が掘り上がった。深さは中国人たちの首のところまであった。」385 「それから中尉は二人の兵隊に荷車を引いてこさせた。〜、そこには四体の死体が積み上げられていた。その四人もやはり同じ野球のユニフォームを着ており、〜。中尉は〜、死体を穴に放り込むように命令した。」386 「それから彼(中尉)は伍長に向かって手短に、四人のうち三人を銃剣で刺殺するように命じた。」387 「中国人たちがすっかり死んでしまうまで予想以上に時間がかかった。」389 「どうしてこの男(背番号4)一人だけが殺されずに残されたのだろうと獣医は不思議に思った。〜。『この連中は満州国軍の士官学校の生徒でした。〜、昨日の夜中に日系の指導教官二人を殺して脱走したものです。我々は夜間巡回中に彼らを発見してその場で四人を射殺し、四人を捕縛しました。〜』」390 「『チームの主将の四番バッターで、この脱走計画のリーダー格だったようです。彼がバットで二人の教官を殴り殺しました。〜』」391 「『私はこの男を同じバットで殴り殺せという命令を上から受けています』、中尉は〜言った。」392 「中尉はそれから一人の若い兵隊を呼んで、バットを手渡した。」393 「兵隊は〜、そのバットを力まかせに〜殴りつけた。〜。頭蓋骨が砕けるぐしゃりという鈍い音が聞こえた。〜。中尉は、〜。〜獣医に言った。『御苦労ですが、あの男が死んでいるかどうか確認してくれませんか?』」395 「獣医は念のために手首をつかみ、親指を動脈にあてて鼓動を探ってみた。〜。ちょうどそのとき、中国人の四番バッターは目を覚ましたようにさっと身を起こし、〜獣医の手首を掴んだ。」396 「〜、獣医を道連れにするような恰好でそのまま穴の中に倒れ込んだ。」397「あの若い主計中尉はソビエト軍に武装解除されたあとで中国側に引き渡され、この処刑の責任を問われ絞首刑にされる。〜。顔にあざのある獣医は一年後に事故で死ぬことになる。」399 「ねじまき鳥クロニクル#8」はそこで終了していた。」401 「〜ぼくの選んだ#8が、母親のナツメグが以前僕に話してくれた、新京動物園の動物たちが兵隊たちに射殺される一九四五年八月の物語の続きであることはたしかだった。〜。話の主人公はやはりナツメグの父親であり、シナモンの祖父である名前のない獣医だった。」403 「翌朝九時半になっても十時になってもシナモンは姿を見せなかった。」419 「一時半に、僕はナツメグの赤坂の事務所に電話をかけてみたが、誰も出なかった。」420 「牛河の姿を見たのは品川駅のプラットフォームで電車を待っているときのことだった。」424 「僕らは田町で電車を下りて、駅を出た最初に目についた小さな喫茶店に入った。」428 「『でもわたし(牛河)の想像するところではね、あの綿谷っていう家にはもともとちょいとややこしい問題があります。どういう問題だか具体的にはわかりかねます。〜』」436 「『〜。それからクミコさんはひょっとして、かつて岡田さんが知っていたクミコさんとは違っているかもしれない。〜』」439 「家に戻ると、郵便受けに珍しく分厚い手紙が入っていた。〜。そんな立派な毛筆の字を書いて寄越す人間は間宮中尉以外はいない。」449 「モンゴル行きの長い話には、実を申し上げますとまだその後の続きが存在しているのです。」450 「私(間宮中尉)は通訳として、捕虜となって炭鉱の労働に従事している日本兵とソ連側の連絡係を務めました。」454 「工事の監督にあたっていた下士官が私を呼びとめ、通行許可証を見せろといいました。私はポケットから許可証を出して彼に渡しました。〜。彼は労働にあたっていた囚人の一人を呼び、許可証の文面を読み上げさせました。」458 「それは誰であろうハルハ河の対岸でモンゴル人に山本の皮を剥がさせたあのロシアの将校だったのです。〜。〜彼も私の顔をどうやら思い出したようでした。」459 「たぶんあの男は何かの事情で失脚し、囚人としてシベリアに送られることになったのだろうと私は想像しました。」460 「ソビエト軍の司令部にひとりだけ、私が親しく口をきくことのできる将校がいました。」461 「私は彼にあるとき、駅で労働に従事している一群の囚人〜のことをさりげなく尋ねてみました。」462 「皮剥ぎポリスの本名はボリス・グローモフで、〜秘密警察、NKGBの少佐でした。」463 「〜ニコライは声をひそめて言いました。『ここではボリスがいつか中央に復帰すると広く信じられている。〜」465 「だからここでは彼は腫れ物にさわるようなお客様扱いだ』 ある日〜軍曹が〜。〜。〜私に向かってすぐに駅長室に行くようにといいました。〜駅長室に行ってみると〜ボリス・グローモフが私を待っていました。」466 「〜君にその口ききをしてもらえまいかと頼んでいる〜。〜グルジア人の糞野郎の政治局員を、椅子から叩きだしてやることもできる。〜。君たちが部分的な自治を手にできるようにもっていくことも可能だ。」469 「私は収容所に戻って、その話を一人の男にこっそりと話してみました。」470 「(その日本兵の)中佐は今の政治局員を追放し、日本兵捕虜の自治を勝ち取るという可能性に興味を抱いたようでした。〜。私は数日後何とか中佐とボリスとが二人きりで人目を避けて会えるように場所を設定し、〜。」471 「およそ一ヵ月後に、ボリシが私に約束したとおりグルジア人の政治局員は中央の指示によってその地位を追われ、二日後にモスクワからべつの局員が送られてきました。」472 「我々は部分的な自治が与えられ、日本兵捕虜たちの代表によって構成される委員会が設置されました。中佐がそのリーダーになりました。」488 「もっとも〜。ボリスは日本人委員会のメンバーを一人ずつ、水面下で少しずつ彼の配下に収めていったのです。」491 「〜委員会の中心的な存在であった中佐が〜。〜ボリスと正面から対立し、その結果抹殺され〜。」492 「ある日突然、私はボリスが事務所として使っている建物に呼びつけられました。」494 「『〜、私は君をできれば部下として、手もとにおいておきたいと考えているんだ。〜』」495 「私はとにかく熱心に忠実にボリスの秘書の役を務めました。」498 「一九四八年の初めのことですが、日本兵捕虜がようやく帰国できることになったという噂が収容所の中に流れました。」502 「〜収容所をあとにし、列車でナホトカに運ばれ,〜、〜ようやく日本に戻ってきました。」509 「〜この話を岡田様にようやく引き渡せたことによって、私は少しは安らかな気持ちをもって消えていくことができるような気がします。」510 「僕は庭を出て井戸の蓋を取り、身をかがめて中をのぞき込んだ。」474 「〜、僕は井戸の底に下りた。」475 「〜、紐を引いて井戸の蓋を閉じた。そして膝の上で両手を組み、深い深遠の中で静かに目を閉じた。」476 「〜何かの気配でふと意識を取り戻したとき、僕は自分がべつの暗闇の中にいることを知った。〜。僕はあの奇妙なホテルの中にいた。」478 「僕は遠くに聞き覚えのある音を聞いた。口笛吹きのボーイだ。〜僕はすぐにボーイのあとを追った。」485 「彼のあとをつけるのはとくに難しい作業ではなかった。〜。〜、廊下を抜けて広いロビーに入っていった。テレビはNHKのニュース番組を放送していた。」513「『衆議院議員の綿谷ノボル氏が暴漢に襲われて重傷を負いました。〜」516 「〜、男は〜、バットを手にしたまま現場を立ち去ったということです。〜、犯人は〜、〜、顔の右側にあざのようなものがあり、〜と推察されます。〜』」517 「一人また一人と、人々は僕の方を向いた。〜。僕は〜意識しないわけには行かなかった。〜。僕の顔の右側にはあざがついている。〜。ここは早く引き上げたほうがいい。」519 「僕が廊下に足を踏み入れて、人々が僕の背後に迫ったときに、まさにその瞬間に明かりは消えたのだ。たぶんそこにいた誰かが、僕を危険から救おうとしたのだ。」521 「『岡田さん』とすぐそばで誰かが僕の名前を呼んだ。」522 「『〜あとをついていらっしゃい』」523 「やがて男は〜。〜、ペンシルライトでドアについた部屋番号を照らした。そこには208という数字が浮かび上がった。『鍵は開いています』と男は僕に言った。」526 「僕は念のためライトを消し、足音を殺してこっそりと部屋の中に足を踏み入れ、暗闇の中で室内の様子をうかがってみた。」537 「『私を照らさないでね』、奥の部屋から女の声が聞こえた。」528 「〜僕は言った。『実を言うと、僕は君のことをクミコだと思っている。最初は気がつかなかったけれど、〜』」533 「『あなたにひとつプレゼントがあるのよ』と彼女は言った。〜。それは野球のバットだった。」545 「そのとき、ドアにノックの音が聞こえた。〜。『逃げて』、はっきりとしたクミコの声が僕に言った。〜。僕の考えていることが本当に正しいかどうかわからない。〜。『今度はどこにも逃げないよ』と僕はクミコに言った。『僕は君を連れて帰る』〜。そしてゆっくりとドアに向かった。」547 「誰かが部屋の中に入ってきた。」549 「どこからかナイフがやってきた。〜。僕は〜バットを宙に振るった。〜。そのバットをもう一度相手の身体に叩きつけた。〜。息遣いの聞こえたあたりに。〜。三度目のスイングは頭に命中し、相手をはじき飛ばした。」553 「気がついたとき、〜。〜。僕は井戸の底に戻ってきたのだ。」556 「僕のまわりには水があった。それはもう涸れた井戸ではなかった。〜。〜水は僕の腰あたりまでの深さしかない。」557 「ゆっくりと、でも確実に水かさは上がっている。」559 「水面は既に喉もとまで達していた。」562 「水が僕の口を越えていった。それから僕の鼻に達した。」563 「『シナモンがあなたをここまで運んできたのよ』とナツメグが言った。〜。〜僕は自分が見慣れない紺色の新しいパジャマを着て「屋敷」の仮縫い室のソファーに横になっていることを知った。」575 「『この屋敷はもうすぐ処分されることになってるの』とナツメグは僕に言った。」579 「『綿谷ノボルさんは長崎で大勢の人前に講演して、そのあとで関係者と食事をしているときに〜倒れて、そのまま近くの病院に運ばれたの。一種の脳溢血だって。〜』」580 「〜、三日ぶりに鏡の前に立ってみた。〜。〜鏡の中の自分の顔をじっと見てみた。あざが消えているのだ。」584 『五日目の夜に〜。〜。〜シナモンの小部屋に行ってみた。〜。〜、コンピューターの画面に浮かんだメッセージを読んだ。あなたは今、プログラム「ねじまき鳥クロニクル」にアクセスしています。」585 「私はあなたにこれからいろんなことをお話ししなくてはなりません。〜。私はこれから彼(綿谷ノボル)の眠っている病室に行って、生命維持装置のプラグを抜いてくるつもりです。」586 「兄の綿谷ノボルはそれと同じことを、ずっと昔私の姉に対しておこない、そして姉は自殺しました。彼は私たちを汚したのです。」588 「私(クミコ)はあなたにあてた手紙の中である男の人と寝たと書きました。〜。私が寝た相手は一人だけではありません。私はたくさんのべつの男と寝ました。」589 「私は〜。〜兄の事務所の機械からこのメッセージをメイルで送っています。」591 「笠原メイは静かな顔で僕の顔をじっと眺めた。〜。『クミコさんは結局保釈されなかったのね?』」595 「『裁判はいつ始まるの?』〜『ねじまき鳥さんはクミコさんが戻ってくるのをまたずうっと待つのね?あそこの家で』僕はうなずいた。」596 | ||||
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僕の愛読書のひとつです。 村上作品は全部読んでますが、エネルギーの質はこの作品が一番好き。 喪失、再生を描く圧倒的筆力で、グイグイ引き込まれます。 純粋に、出会って良かったと思える小説です。 この小説が与えてくれるものを、まずはしっかりと受け止め考察しましょう。その上で、「私はそんな風には思わない」という結論に至れば、その考えもまたあなたの財産で、この作品を読んだ価値があるというもの。 でなければ、時間とお金がもったいない。けっこう長いしね。 | ||||
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長く、冷たく、詳細なマスターベーションの物語、或いは様々な暴力と死についての考察。 読後の感想をタイトルにすると、そんな感じがした。ロッシーニの『泥棒かささぎ』序曲やモーツァルトの歌劇『魔笛』について言及があるという、ただそれだけのきっかけで読み始めたら、なんだか大変な内容で驚いた。村上氏の長編小説を初めて読み、大いに戸惑い、感心もした。今さらながら少数意見の苦言を参考までに述べたい。 個人的に気に障った点は3つ。 1つは、長過ぎること。これだけの内容に3冊もの分量が必要だったのか?現代は19世紀のロシアとは違う。長編小説は長ければ良いというわけにはいかない。 2つ目は、文章に傍点が無闇矢鱈と付いていること。そんなに強調しなくても、読めばわかるし、重要な文章かどうかは読者が判断すればよい。頼んでもいないのに、バニラアイスクリームの上に白砂糖がどっさりふりかけられているようだ。歓迎する読者もいるだろうが、余計なことはするな、不味くなる、という読者だっているのである。 3つ目は、音楽の使い方。こういう不可解な小説に、ロッシーニやモーツァルトの音楽が登場することは面白い趣向だが、せっかく出しておきながら、使い方が唐突で、無理がある。小説の奥行きを増したり、見通しをよくするためにも、共に面白いオペラなのだが。 最近の流行で言えば、3D(3つのダメ出し)だが、以上の3点をクリアすると、もっと小説が立体的になるのではないか、と思った。 とはいえ、『小説家は多くを観察する』という著者の持論がよく実践されており、しつこいくらい具体的に説明・描写がなされている。凡人には到底書けない高度な文章だ。ただ、もう一つの著者の持論である『最終的な判断を下すのは読者』という点については、相当多くの判断が読者に託されており、読者にも訓練が要るようだ。本書は、疲れている人にはお奨めできないが、閑暇を愛する読書人には面白いのかもしれない。 | ||||
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第1部が強烈だっただけに最終的にどんな結末なんだろうと期待してしてしまったので、最後まで読むと「?こんな感じ?」という感覚がないでもない。第1部はそもそもの発想も歴史的な事件も常人の想像を超えた感じで、第2部はその結末への通過点として読み、第3部はとてつもなく現実から遠のいたように感じたが、結局とても現実的なところにおさまり、想像していた広がりではなかったように思う。 ただ、村上春樹ファンとしてはここまでの力作を途中でやめるわけにはいかないと思うので、最後まで読むべきということででこの評価。 | ||||
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第3部ではこの作品を終わらせるための、そしてこれからのハルキ・ムラカミの作品につなげるための重要なキャラが続々と登場する。ウシカワしかり、ナツメグとシナモンしかり・・・・・。 中尉と獣医は単なる語呂合わせか、満州の新京動物園は繁盛していたのか、ノモンハンはアナタハン? 読者に様々な想像力を要求しつつ、物語は大団円に・・・・・といいたいとこだが、何ら何も一つも解決しないままずるずると・・・・・ 「僕」はクミコを再び満足させることができるのか、そして、夫婦の危機は解消されるのか・・・・・・・こちらも何ら何も解決しないままずるずると・・・・・ | ||||
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