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あなたも私もの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.60pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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鉱山の遺産が若い娘に転がり込む。 と思いきやダイヤモンドや金鉱ではなくウラニウムとは! まず採掘しても精製したり技術がなくては使い物にならないではないか。と、いう山師的な設定ではあるのだが、それ自体がこの小説のいかがわしさ、トリック、ペテンの構造を示して余りある。 創作から二世代以上の歳月に洗われると、ウラニウムから爆弾なり原子力発電なり、あるいはソビエト(もう解体されて一世代になる)や西ドイツや合衆国や…の思惑、さらには端的にペテン師、山師でしかない登場人物のいくたりかといったストーリーよりも、水上サト子というヒロインの無色透明、また凡庸なのだが(すみません)この年代の人間なら身につけていたと思われるはっきりした理非判断、世知、現実をリアルに受け止め、分析する「凡人の正常さ」のキャラクター設定だった。 ・いまの東京ではこれ以上の贅沢はないと思うと出かける気もしない ・無為の生活のなかで、人間がだんだんものぐさくなってく経過が分って面白くもある。 ・あてもなくブラブラしているうちに、以前のような元気がなくなり、どんなことにもきっぱりとした決断を下すことが難しくなった。 ・24の娘の意想のすべてはどれも真実からほど遠いところで霞んでいる。 ・人生の端っこを覗いたばかりなのに、なにもかも知り抜いているみたいにいい気になって差し出るのは止めた方がよろしかろう。 作者は当時の日本がウランの輸出禁止といった法的措置がないこと、ビキニで炸裂したばかりの水爆のエネルギー源がウラニウム238であること(半世紀ぐらい未来にビキニ環礁は負の遺産として世界遺産に認定される)といった科学的・法律的事情をよくよく調べ上げたうえで、そのような複雑怪奇な説明や背景を一切書かず、数人の恋愛模様と敗戦後の喧騒に溢れた人間関係に極限したプレーンな物語を編み上げた。 初めて久生十蘭を読んだ。 一読、深遠な知識と物語構築の計算の上に、凝りに凝って意図的に軽く作られた物語、という印象で、これがかの魔術師の作物か、と思う反面、余りにも超絶技巧すぎて筆者のようなニブイ人間にはその舞台装置の深淵は理解できず、結果的にはライトノベルにも見えたところはあるのだった。 おそらく著者、この感想を聞いても 「まあ、そんなもんでしょう(凡俗には何を言っても仕方ないな、の意」 という感じだろうと思いますけれども。 | ||||
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いい意味で人を小馬鹿にしたような話。何やら一癖ある人物達が主人公のまわりを蠢き、陰謀めいた不穏な空気がみちる。面白そうなミステリー仕立てで話は進んでいくのに、肝心の主人公はその日暮らしのアプレ世代でまったく活躍せず、状況に流されるだけ。しかも最後は一応ハッピーエンドだが、結局は大きな空騒ぎだったというオチ。それでいて妙な現実感がある。 戦後まもない頃の日本人は、皆こんな感じだったのかもしれない。いろんなものを失い、新しい世界が目の前にひろがっていてもその日を生きるのに精一杯だった。多くの庶民は世界情勢などわからずというより気にかけないで(戦争に懲りた反動で)、ただ状況に流されるままだった。あなたも私も...。 | ||||
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