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雨の匂い
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雨の匂いの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.77pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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しとしとと降り続く梅雨の雨に、身勝手で利己的な大人たち。癌で入院中の父親と家で寝たきりの祖父の面倒を見る青年の胸の内で、静かに育まれてきた殺意……。そんなお話です。この小説、大人の自分勝手な醜さがとにかく目につきます。それをおどろおどろしく描くのではなく、むしろ少しユーモアすら感じられる会話や場面に仕立ててしまうのが、樋口さんの文体の魅力だと思います。 チャキチャキの江戸っ子で女好きのじいちゃんなんかはまさにいい味出してる名脇役。「理想だ生き甲斐だなんぞとへ理屈を言わねえで、手抜きをやらず、目の前の仕事をきっちり仕上げる。それが人間が生きていくうえでの、基本ってやつだあ」なんて言葉には身につまされるものがあります。 樋口さんの小説の主人公はたいがい(?)定職についておらず、自由人っぷりにちょっと憧れます。俺もこんだけ料理うまくなりたいもんだ。 | ||||
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しなやかなタフさと優しさを持ち合わせた「永遠の38歳」柚木草介シリーズのファンだし、あり得ないほど成熟した10代の青年を主人公とする『風少女』や『八月の舟』などノン・シリーズも好きだ。小気味よい洗練された会話だけで展開を進めていく樋口有介の巧みさは、黒川博行と双璧だと個人的に考えている。 マンネリという批判もあるかもしれないが、『雨の匂い』はそんな感想を持つ方にこそ読んでほしい。お馴染みのワイズ・クラックは、本作でも軽快なリズムを刻んでいるのだが、同時に底の見えない不気味さを醸し出し、主人公に対する共感を阻む。柚木シリーズの魅力は、洒落たやりとりと、明らかになるやりきれない真実との落差の絶妙なバランスにこそあるが、ハードボイルドな台詞は、心理をほのめかしながら隠蔽することで、いくらでも闇を暗示することができる。木野塚佐平シリーズでハードボイルドのパロディをやってのけ、傑作『枯葉色グッドバイ』では柚木が辿ったかもしれない運命を主人公に背負わせた作者は、そのことを熟知している。言葉は軽いだけに、影の黒さが胸に迫る。 こんな作品も書いておられたのか、と樋口氏をもっと好きになった。 | ||||
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最初の場面はそもそも必要だったのか?それだけが何度読み返しても全く理解できなかった。 あの女性は誰だったのか??それが解らず、最後に解るのかと思いきや突然終わってしまい、正直戸惑った。 それ以外はとても淡々と物事が進み、表の顔と、どんどん狂っていく裏の顔が平然と使い分けできる主人公にうすら寒いものを感じ、読みごたえを感じた。 そして相変わらずの会話のセンスの良さ。 独自の世界があり、とっても好きだ。 | ||||
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樋口 有介氏の中ではトップ3の内の3番目という感じです ただ、近作を未読なので全作の中で……というのではありません 家事等の描写が冗長と感じられた方もいらっしゃるようで 判るような気もしますが…… 実は本筋より、その部分の方が楽しめました 普通、どんな実験作でも、どこかテイストに共通部分があるんですが 樋口 有介氏は徹底的に理解不能の作を書かれる場合もあって 不思議で面白い作家さんだなあと思います | ||||
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新宿、大久保かいわいを舞台にした物語。 祖父の老人介護と末期がんの父、 そんな2人と生活を共にしている主人公は、 それなりに淡々と日々を過ごしていた。 ちょっと変わった人たちの中で、 まともな男の子、 と言われていた。 ある日ゴミ屋敷ではボヤ騒ぎが起き、 チョット恋をした女の子は自殺騒ぎ、 男作って出て行った母は殺される。 淡々とした日常の歯車がくるっている。 しかし、彼は、 いつもの彼であった。 ラストがなんとも悲しく、 救いがないような気がして寂しい。 どんでん返しがあるけれど、 ちょっと尻切れトンボのような気がする。 その分が物足りなかったかな。 ただ、この作者を好きなのは、 主人公の男のクールさ。 冷たいとか、 そういうんじゃない。 なんだか落ち着いている、というのは、 なんか憧れるんだよね。 | ||||
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"他人を理解すること"に主眼が置かれているのが著者の作品の特徴であるが、この雨の匂いでは"裁く"ということが主人公の判断基準で描かれている。登場人物のクセも強い。 他作品でも「人間に対して失礼」な人物は犯人などによって裁かれてはいるが、樋口氏の描く諦念と無関心を抱えた主人公が実行するというのは、これは少し珍しい作品といえる。 主人公はどんな人間を裁き、どんな人間を見逃したか。 余談だが、最後に「他人を理解できると思うのは傲慢」と言っているが、数年後書かれたピースでは「他人にはどうせ理解できない、と思うのは傲慢」と書かれている。 | ||||
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こんな梅雨にうってつけの一冊 あらすじ 癌で入院中の父親と寝たきりの祖父の面倒を一人でみる柊一。 近所のおばさん、女子高生とその家族、行きつけの店の女性、 彼は、誰ともそれなりに当たり障りなく付き合い 日々の生活を淡々とこなしていく。 だけどあの日は雨が降っていた。 感想 この作品はおそらく数ある樋口さんの作品の中で、 代表作としてあげられない作品だと思います。 女性に対して気障なセリフを平然と吐く男性。 そういうタイプの主人公が多い樋口さんの作品の中では珍しく 柊一には口説き癖が装着されていません。 その代わり彼にあるものは『理解はできる』というスタンス。 相手の言い分を理解し、それにそつなく対応する。拒絶はしない。 外出中、突然AV女優が家を訪れ、祖父と意気投合していても動じず 女子高生がある告白をしてきても、否定はしない。 そのスタンスは不気味なまでに一定に保たれ、ラストを迎えます。 ものすごく盛り上がるシーンはありませんし、 話は終始淡々と進んでいきます。 それでもページをめくる手が止まらなかったのは、 柊一の行動原理に惹かれるものがあったからでしょう。 柊一の行いをつぶさに観察する。 興味深い対象ただ眺めていく、そんな小説でした。 読んでからの一言 理解はできる。でも、共感はできない。 | ||||
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樋口有介は、サントリーミステリー大賞の「ぼくとぼくらの夏」以来のファンだ。基本は高校生(が中心だが、中学生、大学生の場合もある)が主人公の青春ミステリー作家。柚木草平という独身中年探偵や木野塚佐平という老年探偵のシリーズものもあるが、この作家の本領は淡白で世間に流されてない男の子と美しい少女の会話にある。本書はその路線にある。あるはずなんだが、少し違う。主人公はさらに世間や人間の生死に無頓着になっているし、その癖は登場してくる美少女にも伝染している。このペシミスティックな感じは何なんだろう。しかし、細部や会話は面白い。ちょっとした、怪作である。 | ||||
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癌で入院中の父、自宅で寝たきりの祖父をかかえる柊一は、隣のハツの紹介で、昔祖父を手伝った緒川家の板塀の塗りを行うことになる。柊一の周辺で起こる出来事を淡々と描いていく。クールな柊一をはじめとする登場人物もよく描かれていた、終盤になってやっとこの作品がとても良く出来たサスペンスだった事に気付かされた | ||||
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