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新世界より



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新世界よりの評価: 3.97/5点 レビュー 506件。 Sランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.97pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全364件 261~280 14/19ページ
No.104:
(5pt)

こんなに面白い本に早く出会いたかった。独創的な新世界に引き込まれ新世界に引き込まれる

この本に早く出会いたかった。独創的な新世界に速攻引き込まれてしまう。
新世界より(中) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:新世界より(中) (講談社文庫)より
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No.103:
(5pt)

緻密な設定と手に汗握るストーリー

第29回日本SF大賞を受賞した著者入魂の冒険活劇です。いや〜、むちゃくちゃ面白い!

舞台は1000年後の日本。一個人が核兵器にも匹敵するほどの超能力を身につけた時代。人類は、その刃を決して自らに向け合うことがないよう、徹底的に管理された社会で生活をしていた。しかしある時、ほんの小さなほころびから「異端の者」が生まれ、やがて多くの命を奪う凄惨な事件へとつながっていく…。

とにかく、物語の設定が細部にいたるまで堅牢に構築されていてすごいです。タイトル通り、見事なまでの「新世界」が創造され、描写されていきます。

上下巻で1000ページを超えるストーリーも、息つく暇を与えないほど面白く、世界の謎が解明されていく過程にワクワク、戦況の行方にハラハラと、先が気になって仕方がありません。敵の正体を推理するミステリの要素もあり、最後は「なるほど〜」と膝を打つと思います。

「破滅的な力をどう制御するか」「異端者をどう処遇するか」「支配・被支配の矛盾をどう解決するか」など、社会派なテーマも底にはあるのですが、まあそれはあくまでBGMとして、とにかくスリリングな展開に身を委ねて楽しみましょう!

スプラッタな要素もかなり入ってるので、血なまぐさい描写が苦手な人はダメかもしれませんが、時間を忘れてどっぷり楽しみたい方にはおすすめの一冊です。
新世界より 上Amazon書評・レビュー:新世界より 上より
4062143232
No.102:
(5pt)

これまで読んできた小説のなかでダントツに面白い

三冊にまたがって綴られるこの作品。

読み始める前は「うわー長いな―。これでつまらなかったら損だなー」と、あまり乗り気ではなかったものの、
読み終わった後の感想は「え!? 三冊で終わりなの!?」でした。

というのも、世界設定がものすんごく濃い。
登場する生物の習性、先祖、名前の由来、学名まで完全に考え尽されていて、まるでファンタジーを読んでいるかのよう。

そのため、上巻では説明描写が多くグダる印象はあるものの、300ページを越えたあたりからはノンストップ。熱い展開が待ってます。

個人的な感想ですが、上巻の説明描写がどうしても耐えられない方は、流し読みしてしまっても平気かと思います。というより、初見で完全に理解できる人はあまりいないかも。
全部読み終わった後に、その説明を見て納得できれば作者の意図も汲めると思うので、取り合えず全巻読んでみることを強く薦めます。

これは何十年後も残るエンターテイメント作品です。
新世界より 下Amazon書評・レビュー:新世界より 下より
4062143240
No.101:
(5pt)

これはヤバい!

時間が余っていたので長目の物を手に取りましたが 、あっという間に読み終えてしまいました。SF小説ではありますが、まったくの異次元でもなく、それでいてあの独特の世界にどっぷりはまってしまいました。この後に黒い家という作品を同じ作者とは知らずに読みましたが、感情の負の部分の描写には共通するものを感じました。長編でしたが苦もなく読めましたね。
新世界より 上Amazon書評・レビュー:新世界より 上より
4062143232
No.100:
(4pt)

世界観が・・・

作者の今までの作品とは、時代背景や設定が違いすぎて、
上中下巻と3冊一気に買ったので、はじめはこの世界観になじめるか不安でした(笑)
でも読み進めていくうちに、どんどん引き込まれていきました。
難しい説明のくだりは、さら〜〜〜っと適当に読み流し(すみません)
家事や子育てしながら、あいた時間に集中して3日で読みました。
一番せつなかったのは、最後のガラスケース越しの対面シーン。
いままでのいろんなことが明らかになり、ショックでもありました。
タイトルが「新世界より」。最後まで読んで納得。
最初に複線がはってあったアレはどーした?とか、
読み進めていくうちに忘れちゃったり、?なところがあったりしたので
そのうちもう一回よみ返そうかと思っています。
新世界より(中) (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:新世界より(中) (講談社文庫)より
4062768542
No.99:
(4pt)

未来小説? いや、現在でも

長編かつ、100%想像世界の話ゆえしかたないのかもしれないが、粗さが気にならないでもない。

例えば、文庫本上巻p.255 l.6-l.8と文庫本下巻p.186 l.2-l.5の矛盾とか。
まあ、それはまさに「粗」探しの部類だと自分でも思うが。

ただ、下巻で登場する最大の敵はなぜ、清浄寺でのイニシエーション(大事なkey wordを授けられる)や全人学級での呪力の開発過程を経ずして呪力をコントロールできるようになったのか?
の点については、得心が行かない。
上巻〜中巻にかけて膨大な枚数を使って構築した世界観を覆しかねない設定のため、敢えて指摘したいと思う。

それを差し引いても「面白い」作品であることは間違いない。
このような世界観を構築して、これだけの文章量の作品をそれほど飽きることなく読ませる技量は間違いなく上級。
少年少女の成長物語としてみてもなかなか良質であると思えるし、戦闘場面や追跡場面はロードムービー的な面白さもある。
主人公の幼年期の描写と世界観の説明に上巻はほぼ費やされるわけだが、それほど苦になることもない。

先端の科学技術に背を向けて、個人に付加された呪力によって生活が成り立つ社会。
呪力は使いようによっては、人類を絶滅させかねない禁断の力の側面も持つ。
...個人が呪力は持たなくても、道徳や法令順守の意識が外れてしまった瞬間から大量に人を殺してしまえる現在の社会も同じことなのか?
自動車、核技術etc。
呪力そのものに善意も悪意もないように、科学技術にも善意も悪意もないとすると...。
示唆するものは非常に深くて広い。

それだけに粗の部分が何度か読むたびに気になる。
筆者の責任だけでなく、編集者にも責任はあると思うのだが。
よって、非常に面白い作品であるにもかかわらず、星は4つ。
新世界より 上Amazon書評・レビュー:新世界より 上より
4062143232
No.98:
(5pt)

What an imaginative mind the author has got!

The first 100 pages sounded like that the book was the Japanese version of Harry Potter. Well, the reality was something far from it.

The stage is the future Japan, 1,000 years from now. The world created by the author and the problems therein would be hard for ordinary people to create. It sounded so real…The human characters and creatures are depicted so well. The author must have a lot of drawers of imagination within him.

After the first 100 pages or so, I was gradually dragged into the world of the author and ended up being deprived of sleep and having day-night reversal…

Enjoyable entertainment. Too enjoyable that I did not care about people looking at me as if wanting to say, “What a thick book! What have you got here in your hands?”

新世界より (講談社ノベルス キJ-) (講談社ノベルズ)Amazon書評・レビュー:新世界より (講談社ノベルス キJ-) (講談社ノベルズ)より
4061826603
No.97:
(4pt)

壮大な嘘八百!

久しぶりに読み返してみました。やはり壮大な世界観に圧倒されます。
特に、バケネズミの白黒いかんとも付けがたいキャラ設定が秀逸でした。
読み終わってみれば壮大な嘘と空想のオンパレードなのですが、
読んでいる間はその世界にどっぷりとつかることができました。

あまりにも想像上の生物や事件の記述が多いので、読んでいて少し
疲れますが、現実逃避したい方にはもってこいの作品です。
あまり後味のよい結末ではありませんが、きちんと落とし前がつけて
あるので、読後はスッキリ、満足感があります。

ただ、貴志先生の惜しいところはラブシーンの記述ですね・・
格調高い小説の中で、なんだかそこだけ三文官能小説みたいになってます・・
どの作品でも思うのですが・・残念です。
新世界より 上Amazon書評・レビュー:新世界より 上より
4062143232
No.96:
(5pt)

まさに圧倒的なエンタメ小説。

まさに怒涛の小説一気読み!圧倒的とはこのことでしょう。

この「新世界より」の1000ページはまさに一気読みしました。(途中でやめられません)

内容は読んでる人がもしいたらマズイのでネタばれはしませんが、想像力の極致をきわめた作品で、舞台は破壊のかぎりを尽くした暗黒時代を経た千年後の日本です。科学技術に代わり呪力(超能力です)が支配する徹底した管理社会。何も知らずに育った子ども達に今、悪夢が襲いかかるというエンタメ小説です。

ハードカバー2冊で4千円ですので面白くなかったら・・・とおもうと少しリスクを感じますが、その辺は作家の名前を信用して、即買い問題なしです。

貴志さんの作品はとにかく、描写が異常に細かいのですが、その分情景が目に浮かび、興奮します。奇想天外な世界の話がまるで現実のような気になるほど文章力があります。まさに天才的。

とにかく面白かった。人間に文字と想像力があって良かったなあと実感。本読んだあとって幸せ。
新世界より 下Amazon書評・レビュー:新世界より 下より
4062143240
No.95:
(5pt)

圧倒的な構想力に脱帽

私自身も創作経験があり、並の小説ですと読後漠然と「この程度の作品なら私でも…」などと思うことが多いのですが、この作品は無理です。桁違いな構想力に裏付けられた大作です。

 悪鬼の登場や若い主人公たちの東京行きを通じて、上巻で一通り見てきた風変わりな設定の背景が次第に明らかにされます。なぜ日本の人口が5、6万で町も9つしかないのか。なぜ町には原始的な通信・交通手段しかないのか。なぜ学校が極端な管理体制の下にあるのか。
 そして町の外に棲息する異形の動物たちのうち、最も人間に近いバケネズミの正体。「ひょっとすると…」とは思っていても、実際に種明かしされると、背筋に寒いものが走ります。

 SFという形はとっていますが、深く人倫に根ざし、強い社会性を持った小説です。覚悟を決めて読んでください。

新世界より 下Amazon書評・レビュー:新世界より 下より
4062143240
No.94:
(5pt)

大人にお勧めのファンタジー小説です

壮大なスケールで描かれた、大人のファンタジーです。
読む前はこのボリュームに辟易しましたが、読み始めるともう止まりません。
圧倒的な世界観と物語に引き込ませる描写、先の読めない展開に、あっという間に読み終えてしまいました。

映画とはまた違う、第二の未来像がここにあります。
未来社会の人間と共存しているのは、コンピュータではなく、真言(マントラ)という呪力でした。
テクノロジーが退化する代わりに、人類が進化した未来の世界。
核兵器より恐ろしい、呪力という強大な能力を人間が身につけることによって、世界を支配しています。

そしてその人間を取り巻く、人間並みの頭脳を持ったネズミ、跳梁跋扈する進化した未来の生物、「図書館」なる生き物、想像上の悪魔。
この斬新な発想と独特の世界観が、物語に引き込ませる要因でもあります。
早い段階でこういった世界観を読者に掴ませてくれたのも大きかったです。

呪力という強大な力を手にしながら、常に何かに怯え、ひとたび人間を脅かす脅威があれば、それを除去するように取りかかる。
この作品で描かれる未来社会は閉鎖的で、そこに生きる人間たちも保守的でどこか臆病でもある、残念な未来像です。
核兵器による支配から、呪力による支配へと変わった1000年後の世界。
現在と変わらず、1000年後の未来も過ちを繰り返し築きえた社会であり、そこに生きる人間たちもまた同じ過ちを繰り返している。
実際の1000年後は、大局的な見地からすると、この物語とほとんど変わりのない世界なのかもしれません。

貴志さんの作品の中でも特に評価の高い『天使の囀り』『クリムゾンの迷宮』を読んできましたが、それらと同様読み応え十分です。
貴志ファンはもちろん、ファンタジー好きの方にもお勧めできます。
新世界より 下Amazon書評・レビュー:新世界より 下より
4062143240
No.93:
(5pt)

この世界観ハンパない

いやー、圧倒されました。

ラストまでの持って行き方が凄い。

もう何も言えないです(笑)(*_*)
新世界より 下Amazon書評・レビュー:新世界より 下より
4062143240
No.92:
(5pt)

めったに出会えない100点満点の1冊

上中下と読んでの感想です。
SFはあまり面白いと感じたことはなかったのですが、貴志祐介ならと買ってみました。
結果、大正解。本当に読んで良かった。
人間の想像力にただただ感服しました。

日野光風がでてくる一連の流れが漫画的で、読み進めるのをやめられなかった。
通学中に電車の中で本を読んでいるのですが、初めてです。電車降りた後、道歩きながら本読んだの。

まだ読んでない人が羨ましい。
新世界より 下Amazon書評・レビュー:新世界より 下より
4062143240
No.91:
(4pt)

久々に読んだ貴志祐介氏の力作

現代より千年先を生きる主人公・渡辺早季が、未来へ宛てた手記を基に
物語が進むSF作品。

早季の成長と経験を通して世界観を紐解きながら展開される物語は、
ゆっくりした立ち上がりから徐々にその魅力を増して行き、
読者の興味を捉えて離さなくなる作品です。

著者の筆力により未来世界を見事に構築し、『黒い家』『天使の囀り』で感じた
恐怖や不快感が甦る表現力は流石だと思います。
世界観を表現するために語られるその世界の生物の説明が随所に用いられ、
読者にリアリティをもたらす効果を演出しています。
反面、その説明量からちょっとくどく、テンポが悪いなと感じる部分もありました。

この作品の世界観を補う作品も思案中とのことでしたので、
楽しみに待ちたいと思います。
新世界より 上Amazon書評・レビュー:新世界より 上より
4062143232
No.90:
(5pt)

発想が凄い。

この著者の作品は、ほとんど読んできたが相変わらず物語の発想と展開の速さには舌を巻く。

今回の舞台は「黒い家」のように日常の中にある現実的な部分から恐怖
をにじませていくのではなく、完全に現実からはなれた、未来の日本という
設定で物語りは始まる。
もちろん、主役を含め登場人物のひとつは人間だけれども、もうひとつは
この世界特有の生き物であり、この世界でいう「大事件」が発生して
人類の存亡をかけてメインの登場人物達が、多大な困難に遭遇しながら
乗り越えていくという、言葉にしてしまうとまったく単純なストーリーなのだが、
そこは貴志祐介先生。こんな平易な言葉では表せない、複雑かつ重みを
持たせた重厚な仕上がりになっている。

自分の勝手なイメージは「クリムゾンの迷宮」多人数バージョンなイメージも
ないではないが、まずは凡人では思いつかない舞台設定の中で、本書の舞台となる
特殊な世界の歴史を徐々に明かしながらクライマックスに持っていくその構成力と
スピード感に、ただただ驚くばかりである。

けちな自分は、文庫になるまでひたすら待ち続けてしまったのだが、文庫になってびっくり
上中下の三巻構成で、文庫であってもかなりの出費になってしまった。
しかし、そんなことよりもなによりも、会社の行き帰りで読もうと思ったが
とまらず久しぶりに、自宅に帰ってもお風呂にはいりながら、休日も朝からぶっ通しで
あっという間に読み切ってしまった。久しく感じてなかった、面白い本を読んだ後に訪れる虚無感というか、
物語りが終わってしまった悲しみを十分に感じていたので、自分にとっては
良作だったといえます。

ちょっとしたスリルな冒険を感じたい方にはぴったりではないでしょうか?
SF嫌いの人でもきっと楽しめると思います。
新世界より 下Amazon書評・レビュー:新世界より 下より
4062143240
No.89:
(5pt)

素晴らしい。是非読んでみてください。

厚い本が2冊なので、いつ読むか考えるうちに
全ての貴志作品を読んでしまいました。
ファンタジーには興味が無いので、正直躊躇してましたが
もう読むものないし。
ということで購入。

結果、良い意味で裏切られました。
SFだーのー ファンタジーだーのー(笑 なんて馬鹿にしてた
食わず嫌いな自分のバカバカ。

こうしたものは作家が作る世界なので、
内容を理解するには説明が必要です。
説明が長くなれば白けるし、作中の人物が
わざとらしく会話で伝えれば冷めます。
でも恐れてあやふやに記すのでは
読者によって理解が変わり、人によっては
「意味わかんない」となってしまう。

でもこの作品にはそうした興ざめするものが全くないです。
「呪力」なんて文字を見て「そんなの出ちゃうかーー」と先々の内容を
不安に思いましたが、杞憂に終わりました。

この厚さですが、意味無く長い文章はありません。
だから読み飛ばしてもいっか、と思う事はないです。しっかり読めます。

そして読み終わった後、もう一度要所を見返したいと思った時
どこら辺か大体分かってしまう程、頭に入っているような本です。

私のようにファンタジーをつい馬鹿にしてしまう人も
是非読んでみてください。
きっと貴志作品をもっと読みたくなると思います。お勧めな本です。


新世界より 上Amazon書評・レビュー:新世界より 上より
4062143232
No.88:
(5pt)

人間の『想像力』を問う傑作

08年刊行、第29回日本SF大賞受賞の長編作。『クリムゾンの迷宮』や『天使の囀り』など、著者90年代の作品はいずれも相当な快作/怪作揃いで当時興奮しながら読み耽った記憶があるが、00年代2作目となる本書では、その当時感じた眩暈のするようなどす黒い狂気と興奮が「復活」しており、その強烈な負のインパクトに酔うとともに、読後しばらくは涙も出ないような衝撃の余波に浸っていた。

まるで眼前の景色がうっすらと拓けていくように、少しずつ明らかにされる本書の「新世界」は相当に異質だ。いま、我々が住んでいるような「科学技術が高度に発達した」社会は「愚かしい」紛争によって絶滅しており、本書においては忌むべき「古代文明」として記録される。そして本書の舞台である「現代日本」の風景は、まるで近代以前の農村を思わせる小さなコミュニティ単位の生活を成している。そこには自動車も携帯電話も高層ビルも存在しないが、高度な倫理基盤に裏打ちされた秩序ある理想郷として成立している。そして、科学に代わって人々が「コントロール」するのは呪力である。

まるで女の子が初潮を迎えるように、呪力の「目覚め」を迎えた子どもたちは、ある「通過儀礼」を与えられたのち「全人学級」という教育機関へ送り込まれ、そこで呪力養成のための指導を受け、大人になっていく。高度な「物質文明」を持たない人間が、なお世界の支配者として君臨するゆえんが、この呪力という「精神的な」超能力なのだ。しかし、高い理性のもと構築された「理想的な」世界の背後には、当然ながら排他され抹殺される存在がある。徹底した倫理規定のもと、絶対の禁忌として隠匿された「過去の歴史」と、気づけば「いなくなっている」子どもたち。凄まじく忌わしい気配を孕んだそれらの「陰」を軸として、少年少女たちの冒険譚を描くかたちで上巻は展開される。八丁標という限られた結界の中で暮らす人々、その内で、外で人間と共生する異様な姿の生き物たち。そして大人たちはなぜこうも執拗に子どもたちを「管理」しているのか。それらの事象が、上巻のラストにかけて明らかにされ、一つ崩壊の極地が現れる。そうして大きな綻びを生じた世界は、下巻にて阿鼻叫喚の混沌へと突き進む。この下巻に入っては、まさしく奥底からの焦燥そして不安を掻き立てるホラーの旗手/貴志祐介の本領発揮といったところか。燠火のように暗い情感と、目を背けたくなるような陰惨な暴力とが吹き荒れる怒涛の展開に、息をするのも忘れるほど引き込まれる。

本書は、ファンタジックなモチーフと熱狂的な展開に満ちた一級のエンターテインメント小説であると同時に、人類が犯しうる(そしてこれまで幾度も幾度も繰り返してきた)「自衛の正義」の名のもとの差別と排他的暴力についての寓話でもある。自らと同様に異質な他者をも認める、ということが、いかに「自分たちの世界が侵されない」という前提条件の上にのみ成り立つ戯言かということが、読めば嫌でも痛感させられるだろう。本書における、高い倫理と高潔な人格に基づく理想の社会というものが、裏返せば自らの圧倒的な能力に基づく傲慢(本書にて人間は、他の知的生物から「神様」と崇められている)と、怒りや復讐の感情に頼った連帯感だという事実は、認めたくなかろうが、やはり揺るぎの無い真実なのだ。物語ラストがもたらす感覚は人それぞれだろうが、愚行を犯し、悔い改め、それでもまた繰り返してしまうのが人間ならば、その連鎖を断ち切るための、他者を含めた世界に対する「想像力」を持ちうるのもまた人間なのだと気づかされる、そんな傑作。

新世界より 上Amazon書評・レビュー:新世界より 上より
4062143232
No.87:
(4pt)

緻密に計算された物語

超能力を持った人々で構成される未来の世界の物語。その世界は現代社会の延長線上にはあるものの異質な世界。「もし人間が超能力を持ったら」という土台上に緻密で精巧な世界を組み立てています。残酷な戦いの場面が多く、生々しいので小説でなければ表現できない世界であり、怪しさと緊迫感に惹きこまれます。現代社会から新世界へと変遷した訳や過程が、物語の一つのキーワードであり、最後は見事に収束するところは感心しました。単なる超能力者達の戦いの物語ではなく、人間の業が生み出す際立った階層社会について恐怖を感じる物語でもあります。ホラー小説ではなくSFですが、怖い物語が得意な著者ならではの力作だと思います。
新世界より 下Amazon書評・レビュー:新世界より 下より
4062143240
No.86:
(4pt)

現実世界への不信感

多くの人々が巨大な力を持つ世界の物語。
冗長な気もしたが、面白かった。
続編があれば読みたい。
生物の解説が多い理由はどうしてなのかと思った。
リアリティをだすため?

新世界より 下Amazon書評・レビュー:新世界より 下より
4062143240
No.85:
(5pt)

実はとても悲しい物語

最後まで読みきった時、圧倒的なボリュームからくる達成感と、
なぜか寂しさを同時に感じてしまう物語である。

主人公の回想シーンから入っていく物語は、様々な出来事を盛り込みながら、
過去からの人間の歴史を紐解いていく。
ついに悪鬼が登場し、多くの破壊&殺戮行為が進んでいくにつれ、
物語は予期せぬ方向へと流れ込んでいく。
ある意味で、とても恐ろしい内容がクローズアップされる。
なぜかそれは、とても悲しい「いきもの」の歴史であったりする。

「黒い家」から入り、「クリムゾンの迷宮」で作者のファンになり、
「青の炎」である意味感動した私にとって、久しぶりの読み応えのある作品でした。

なかなかボリュームのある物語ですが、文庫サイズでの登場を期に、
読んでみることをおすすめします。
新世界より 下Amazon書評・レビュー:新世界より 下より
4062143240

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