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(短編集)
緑の家の女(ハポン追跡)
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緑の家の女(ハポン追跡)の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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5つほどの短編が収録されていますが、「ハポン追跡」が頭ひとつ抜け出ていたように思いました。 最初の3つの作品は、オーソドックスな依頼~事件~解決のフォーマットをベースにちょっとひねりを効かせたなかなかの面白い作品ですが、ぬきんでたというところまでは達していないようです。 最後の作品も、深夜のドライブに始まり、巻き込まれ型のサスペンスストーリーを堪能できますが、私の好みより、ちょっとお涙頂戴に傾きすぎたように思います。 「ハポン追跡」は、メインストーリーと真相に飛躍があるきらいがありますが、「ハポン」(日本)という姓を持つスペインの一族のルーツを探るという導入から、その探索過程、やがて浮かんでくる別の事件、怪しい人物と、物語としての魅力に満ちていると思います。 どの作品も水準以上だと思うので、ミステリ好きに広く薦めたいと思います。 | ||||
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都内でPR調査会社を経営する岡坂神策が怪事件を追うハードボイルド連作短編集です。1992年9月に単行本として出たものを95年に文庫化した一冊です。2017年には『』の書名で角川文庫へ籍を移しているようです。 ◆「緑の家の女」 :渋谷区猿楽町にある所帯持ち専用マンション「カーサ・ベルデ」の206号室には、どうやら独り身の女が住んでいて、しかも部屋に客を呼んで良からぬ商売をしているらしいと噂が立ち始める。不動産会社に調査を依頼された弁護士・桂本忠昭は岡坂に真相を探るように命じる。そうするうちに賃借人であるはずの明和商事の北川一郎がその部屋から転落死してしまう…。 物語の開巻部では、スペイン通の作者・逢坂剛氏ならではのスペイン内戦蘊蓄話がひとつ披露されます。往年の銀幕スターだったエロール・フリンが内戦の現地に赴いたのは、決して共和国側に肩入れしていたわけではなく、共産主義ドイツ人をあぶりだそうとするゲシュタポに協力していたからだという歴史ミステリーの存在です。これには思わず前のめりになってしまいました。(ただし、この話のもとになった評伝『』(1980年)は内容が根拠薄弱だと批判を浴びているようですが。) 本題である転落事件の背景には、この小説が書かれた1990年代初頭に話題になった主婦●●の存在が見え隠れします。そんな時代状況をうまくつかんだ謎の事件の顛末をそこそこ楽しみました。 ◆「消えた頭文字」 :岡坂の今回の依頼人・田倉いづみは、夫の暴力に耐えかねて家を出たものの、世田谷区千歳船橋の自宅に置いてきてしまった16歳の娘・伊久代をなんとか取り返したいという。しかし伊久代は夫・誠造の連れ子だ。血のつながりのない娘と暮らしたいと言ういづみの目的は一体何なのか…。 こちらも田倉誠造が南米とビジネスをしているとか、岡坂を尾行する謎のメキシコ人が現れるなど、スペイン語圏との関連があちこちに散りばめられています。そして思わぬ形で殺人事件が発生し、被害者の謎めいたダイイング・メッセージが岡本に突破口を与える展開はスペイン好きの読者には、そう来たか! と思わせるに十分なものです。 しかし、題名の「消えた頭文字」は少々ヒントを与えすぎではないかと思います。 ◆「首」 :PR調査の仕事で普段からつきあいのある広告会社社員・柏原美千子から岡坂に依頼がある。体調不良が続いて渋谷区神宮前の精神科医・中林のセラピーを受けているが一向に良くならず、しかも中林医師は美千子に業務上の秘密を暴露するように仕向けてきているという。中林医師の意図を探ってほしいと言われた岡坂は、さっそく調査にかかるが、事態は思わぬ方向に進展していく…。 患者との守秘義務に縛られている精神科医が、それを利用して悪事を働こうとしているのか否か。その真相を探っていくと想像をはるかに超える奇怪な結末が読者を待ち構えている短編です。先の2編と異なり、スペインやスペイン語圏とのつながりはないものの、私は大いに楽しませてもらいました。 ◆「ハポン追跡」 :スペイン商社の日本駐在員ミゲル・ロドリゲス・コロンは岡坂に、コリア・デル・リオに多いハポン姓と支倉常長一行の関係について調べてほしいと依頼してくる。その関係が明確になれば、新作ワインの輸入キャンペーンに利用したいのだ。しかも下北沢のスペイン料理店に勤めるスペイン人ウェイトレスもハポン姓らしいという。岡坂は支倉常長の遣欧経路についてまず調べ始める…。 日本に由来するハポン姓の人々がスペイン南部に多数いることは、まさにこの短編にあるとおり、1990年の朝日新聞の記事で私も知りました。その記事から作者の逢坂氏が解き起こし、実在する文献やハポン姓の人々にあたって書き上げた、まさに文献渉猟型のミステリーです。リチャード三世が甥っ子二人を本当に殺害したのかを歴史的資料をあさって探りあてるジョセフィン・テイの『』のような味わいの掌編です。 そして単なるハポン姓の故事来歴を探るだけに飽き足らず、物語は当時のスペインの社会状況に沿った、奥に隠された真相へと一直線に向かっていきます。 一粒で二度おいしい物語を堪能しました。 ◆「血の報酬」 :雨の中を運転する岡坂は、迎賓館近くで車が立ち往生してしまった若い女とその父を乗せる。父親は警視庁警備部警備課の主任警部・西海で、心臓病の手術を受ける孫のために入院先の病院で自分の血液を急いで提供しなければならないと語る。折しもカーラジオからは、南米ヌエバスコ共和国のアラステギ総統が暗殺されたと緊急ニュースが流れ始める…。 スペイン・バスク地方の人々が亡命して作った国家ヌエバスコの要人暗殺と、孫への血液提供という一見つながりのない話が、バスク人に特有の血液型が接点となって切り結んでいきます。これもまたスペイン蘊蓄話に基づいたミステリーというわけです。 短編なだけに、良く言えば息つかせぬスピードで、悪く言えば短兵急と形容せざるをえないほどの勢いで、物語は雨脚の激しいなか展開していきます。これまでの4編と異なり、ヌエバスコという架空の国を物語の中核に置いているため、少々荒唐無稽な感じが否めません。血液型の特徴をなんとか取り込んで小説化しようとするあまり、ご都合主義的な国際関係を設定せざるをえなかったのでしょうが、必ずしも成功しているとはいえないと感じました。 読み終えた後、巻末の山前譲氏の解説で、この書が岡坂神策シリーズの4作目にあたることを知りました。もちろんこの書から読んでも話が見えないことはありませんが、「首」の精神医学者・下村瑛子や「ハポン追跡」の明央大学助教授・花形理絵らは先行作品で既に登場しているのだとか。遡ってシリーズ一作目から目を通していきたいと思います。 . | ||||
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意外性が多くて、ヒューマニティで、ユーモラスなところも多くて、面白かったです。 | ||||
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支倉常長一行の日本人の子孫が今スペインにいるという現実をとらえた素晴らしい小説でした。 | ||||
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良かった 逢坂剛の作品に最近はまっているのですが、すでに廃刊になっているものが手に入って良かった | ||||
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探偵まがいを行う主人公の元に持ち込まれる、いろいろな調査。調べているうちに、それが事件に発展していく。この調査やこの行動は、こんな事件につながるのか、と事件自体を、考える楽しさ、そして、結末を考えるたのしさ、そんな話がつまった作品集です。5つの話があり、それぞれ、70~80ページ前後の長さです。 主人公の本職が、スペイン近代史の研究家ということもあり、スペインあるいはスペイン語に関する話が多いです。同じ筆者の他の本にあるような、スペインの歴史が背景になって・・という事件は少ないです。 主人公の自由な生活・趣味を仕事にしている、自由さ、がまた、うらやましい作品です。 | ||||
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