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ノヴァーリスの引用/滝



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ノヴァーリスの引用/滝の評価: 4.36/5点 レビュー 14件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.36pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全14件 1~14 1/1ページ
No.14:
(4pt)

どなたかネタばれお願いします

担当教授の葬儀で数年ぶりに出会った同窓生たち。彼らは経済史の文献を読む研究会に参加し、まじめな討論もはめをはずしたバカ騒ぎも共に分かち合った仲間だった。葬儀の後に飲もうということになりしばし思い出話に花を咲かせるが、その後「石塚は自殺ではなく、殺害されたのではあるまいか」と、当時図書館の屋上から転落死した同窓生の死因について、謎解き遊びのような討論が始まった・・・という出だしです。

結論から言うと、何が言いたかったのかいまひとつよくわかりませんでした。奥泉氏の小説は「グランド・ミステリー」と「雪の階」が読み終わりたくないくらいその世界に入り込んでしまったのに対して、「”吾輩は猫である”殺人事件」は途中で退屈になって放り出し、「石の来歴」「神器 軍艦”橿原”殺人事件」はその迫力にあてられて読後茫然としてしまったもののやはり理解できず・・という今までの読書歴です。
まず雰囲気がものすごく好きなので読み続けているのですが、何が心に響いて何が響かないかは自分でもよくわかっていません。

石塚が死んだ当夜に主人公が時間を遡って居合わせるあたりまでは、いわゆるまっとうなミステリに見え引き込まれました。が、実際には時を遡れるはずはないので、この時点で”ああ、「石の来歴」と同じパターンだな”と。他のレビューアさんも書いていらっしゃいましたが「また話をずらして終わるのか」という感、確かにありです。
そういえばどの作品も、時が前後し、過去が現在に繋がり・・という話が多いですよね。著者はこうして時と人間と生死を描くことで何を訴えたいのか、そのあたりがいまひとつよくわかりません。
結局、主人公は酔っぱらって夢を見ていたのか?それは主人公が心の奥底に抱えていた罪悪感が元になっているのだろうか。
それとも迫真に満ちたその夢に、石塚の死のなんらかの真実があるのか?結局、実際に何が起きたのかは曖昧なままで終わります。そして最後の海泡石のパイプの意味は?どなたか理解力のない私にネタばれしてくださいませんか。
ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
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No.13:
(4pt)

普通のミステリではなくミステリ寄りの純文学で、固い哲学書を読むのが面白いような変人向き

商売っ気のないタイトルで、中身も哲学的。ミステリの体裁はとっているけど、結局謎は謎のまま解かれることはない。学生時代に議論を戦わせた仲間が、教授の葬式で中年になって再開し、昔の仲間の不審死について再び議論するのだけれど、文学好きのミステリーサークルみたいだと思った。わかったかどうか不明の固い哲学的議論が続くので、少し読んでみて難し過ぎると思ったら避けた方が賢明。個人的には嫌いではないけれど。
 本書のクライマックスで、事故の現場に酒を持ち込んで集まった時、酔っぱらった主人公が幻想を見るシーンが生々しくて素晴らしかった。特に気分が悪くなって嘔吐し、フラフラになりながら上階の仲間のもとへ酒を運ぼうとする主人公の醜態が目に見えるように、同様の経験が豊富な私には感じられた。きっと作者の実体験が生きてるんだろうと思うが、どうか。
 普通のミステリではなくミステリ寄りの純文学で、固い哲学書を読むのが面白いような変人に向くと思う。と、そうゆう変人が締め括ってレビューを終わりたい。
ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
4087475816
No.12:
(5pt)

”滝”は隠れた傑作である(内容説明に傑作とあるが、本当である)

奥泉ファンなので、未読の作品が文庫化されたので読んでみた。2編とも中編と言ったボリュームである。”ノヴァーリスの引用”は、この著者の作品に親しんでいる者なら、ある意味で予想された内容であるが、それでも不可思議な雰囲気と失われた青春時代への郷愁を漂わせた水準作と見た。”滝”は真の意味で傑作である(内容説明に傑作とあるが、本当である)。端正な文体で綴られたある少年たちに課せられたイニシエーションの儀式。一種の山岳でのオリエンテーリングであるが、読み進むに連れ、異様な雰囲気を醸し出し、結末へと至る。実にスリリングな内容で、凡百のエンタテインメント作品を遥かに凌駕する。
ノヴァーリスの引用/滝 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用/滝 (創元推理文庫)より
4488444113
No.11:
(5pt)

読めてよかったです。

お蔭様でタイミング良く読むことが出来ました。 ご縁があれば、また、宜しくお願い申し上げます。 本当にありがとうございます。
ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
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No.10:
(5pt)

思索と幻想のアンチ・ミステリ

誰もが『虚無への供物』や『匣の中の失楽』を想起するであろうアンチ・ミステリ「ノヴァーリスの引用」はまるで戦後の思想史を総括するような知的興奮と、推理と討論の応酬の果てに知らず知らずのうち曖昧模糊とした境地に読者を連れ去る幻想が交錯する。
『蠅の王』や三島由紀夫の作品を思わせる設定の「滝」は少年たちのイニシエーションの道程に仕組まれた陰謀、その果ての異常心理が生み出す息詰まるサスペンスとやがて迎える宿命的結末が恐怖をもたらす。
両作とも長編並みのヴォリュームに感じる濃密な内容であり、巧みな物語の興趣と鋭利な思索性が相反することなく織り込まれた傑作。
ノヴァーリスの引用/滝 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用/滝 (創元推理文庫)より
4488444113
No.9:
(5pt)

毒入りジャンル横断小説

本作はいくつものテクストが下敷きになっていると思われるが、一番はバークリーの『毒入りチョコレート事件』だろう。
これは数名の探偵が「毒入りチョコレート事件」にいくつもの推理を展開する本格ミステリーだが、
奥泉氏の本作では数名の探偵役がそれぞれ「本格推理」「幻想小説」と別の語り口から語る。

四人の語り手が10年前の事件の「死」をそれぞれの語り口で語るのだ。
それは、生きる者と死者との付き合い方でもある。
死者の意味は生きる者と関係性のうちでこそ「意味」を帯びる。
その意味において、死者は何度でも蘇るし、実際この『ノヴァーリスの引用』でも、そうだ。

と堅苦しいことを書いたが、切り口をもう少し浅くすると、
本書は決めるところは決めたり「ノヴァーリスの引用だ」(このセリフの使い方がカッコいい。手に取られた方はそこまでは最低読んでほしい。痺れます)、固い理性的な語り口の中にもユーモアがあり、読みやすい。長さも、コンパクトだ。
著者の著作は何冊か読んでいるが、個人的にはベストスリーに入る良書。
奥泉光の入門書としてはぜひともこれを推したい。
ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
4087475816
No.8:
(4pt)

「死」を主なテーマとしたミステリ仕立ての哲学書

作者の作品としては「「吾輩は猫である」殺人事件」の様なメタ・ミステリを先に読んでいたのだが、本作はそれに先立つミステリ仕立ての哲学書と言う印象を受けた。一応、多重解決メタ・ミステリ風の趣きもあるのだが、それよりは「死」を主なテーマとして考察した書との感が強い。ミステリの限界に対する諦観の念も感じられる。

マルクス主義、実存主義、観念論、キリスト教(信仰)、ロマン派芸術、左翼(革命)活動の挫折、国毎の文化の違いと言った思想・社会的状況を背景として、青春の思い出というやや通俗的な衣を纏っているが、読んでいて常に浮かぶのは「死」のイメージである。それは、逆に言えば生きている事の意味への問い掛けである。人間の意識が外界を内包しているか(出来るか)という問い掛けでもある。

青臭くなりそうなテーマだが、作者の作品に既に馴染んでいたせいか、読んでいてかなり惹き込まれた。「メビウスの環」的な物語の構成が後の作品に通じているのである。作者の立ち位置も良く理解出来た。これ以降の作者のメタ・ミステリの原点となった指標的作品と言って良いのではないか。
ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
4087475816
No.7:
(3pt)

思想とミステリ

昔は(冷戦秩序の維持のために)、大学の教授の3分の1は必ずマルクス主義の学者をいれたなんて噂があります。
著者はなんかそういう(経済史とかの)大学院にいたらしいのですが、この小説の中では、キリスト教徒のマルクス主義者が飛び降り自殺をする。
残された仲間の教授が酒の席で談義をしているうちに、彼の自殺は学会から破門されたのが原因ではないか、ということがわかってくる。
というようなミステリーでした。
キリスト教やマルクス主義などが絡んでいるが、別に難しくはないです。
思想や学問を糧にしている人にとって冷戦崩壊とか、思想上の変遷というのは重そうだと思うなど、
あまりなじみのない世界ではある。

ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
4087475816
No.6:
(4pt)

普通のミステリじゃないけれど、面白かった。

奥泉光氏の作品は、何冊か読んだことがあるけどどれも最近の本。ちょっと旧作も読んでみたくて読んでみた。ミステリ、探偵小説の形式をとりながら、謎解きがテーマではないメタミステリだ。

読んだのは2003年に文庫化されたもの。もともと単行本は新潮社から1993年に出版され、野間文芸新人賞と瞠目反文学賞を受賞した作品。瞠目反文学賞なんて聞いたことがなかったが、何やら島田雅彦氏が提唱し、1回だけ行われたものらしい。この文庫の解説も島田雅彦氏が書いている。

あらすじとしては、恩師の死をキッカケに学生時代の仲間が集まり、10年前に起きた友人の自殺についての謎を追うというもの。このあらすじを聞くと、まっとうなミステリと思えるけど、内容はかなり異なる。普通のミステリは探偵役が謎を解き明かしていくプロセスとその結末が描かれるのだけれど、こちらは違う。探偵役はいるのだけれど、読んでいくうちに、どんどんと謎が深まるばかりで、結論がもたらせるわけではない。むしろ、幻想小説っぽい感じ。

普通の謎解きをきたしていると、ちょっと期待はずれで、いいミステリを読んだあとのカタルシスは感じられないんだけど、むしろ、著者はそれが狙いで、読者を宙ぶらりんにすることによって、この小説の独自な世界が築かれている。ノヴァーリスやマルクス、シューマンなどの彩りもよく、面白かった。
ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
4087475816
No.5:
(5pt)

良い意味で期待範囲を裏切る作品

一見ミステリーであり、ミステリーのディスコースに従って展開するようであるが実はそうではない。謎があれば、それが解明されなければいけないという常識や典型をくつがえす。そうは言っても、伏線をほったらかすわけではなく、きちんと回収していく。ミステリーのそれとは異なるが、ラスト一文には衝撃をおぼえる。感想はすごい!の一言に尽きる。
ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
4087475816
No.4:
(4pt)

形式は楽しめますが・・・

次々に展開される推理とその根拠、背景。文学的な堅めの文章が好きな人、思想に興味がある人には一気に面白く読める。私もその一人だ。人物も興味深く作りこまれている。死者となった石塚の痛切な告白部分もかなり読ませる。しかし、奥泉光の他の作品を読んだ者としては、「またか」という感想を抱かざるを得ない。『葦と百合』『吾輩は猫である殺人事件』両作にも見られた、意図的な「ずらし」の構造。正直なところ、「ああ、またこうして話をずらして終わるのか・・・」と思ってしまった。しかし、こうした傾向が顕著であるのは、この作家がこうした「ずらし」について拘りを持っていることの現れであろうし、いずれの作品もその拘りへの試みと考えることができよう。
ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
4087475816
No.3:
(5pt)

逆転されたミステリ

謎があるから探偵の推理がある。こうした通常のミステリの因果関係が逆転してしまった小説である。探偵の推理が謎をどんどんと増殖させていってしまい、その謎の世界に探偵自身が次第に飲み込まれていってしまうというわけだが、その過程はスリリングであるとしか言いようがないものだ。同じ筆者の「葦と百合」も同じようなタイプのミステリーであると言えるけど、かっちりと作り込んだ整合性という点ではこっちの方が上だと思う。分量的にも一気に読める一冊。純文学こそがエンターテイメントだと奥泉は昔言っていたけど、まさにその通り!と賛同せざるを得ない。
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4087475816
No.2:
(4pt)

知性の物語、想像力の物語、肉体の物語

 十年以上前の友人の死の謎をめぐる推理小説と幻想小説と恐怖小説の三態構成。知性の物語、想像力の物語、肉体の物語。そしてシューマンの作品47、ピアノ四重奏の響きとともに四人の男たちによって再び封印される死者の記憶。最後に明かされる「復活」の痕跡。《死者は去り、死者の記憶は消える。》 グノーシス思想(反現実主義、反宇宙主義、霊肉二元論)がふたたび蔓延する時代を先取りし、身体性を抽象した「純粋な関係」への希求と身体的な営みからはじまる関係を肯定する「幸福な思想」への憧憬との分裂を「刻印された肉体」をもって、文字通り身をもって生きた「帰国子女」の叫び──「アナタタチハ、ネッカラノ、ニッポンジン、ナンダナ!」「アナタタチハ、死ンデイルノト同ジダ」。 初期マルクスの疎外論にノヴァーリスの魔術的観念論を接ぎ木した思考を紡ぎ、背中に痣(聖痕)をもった魚(つまりイエス)が最期に残した言葉。《あなたたちは祈ることをしない。だからぼくはあなたたちを信用しない。祈るっていうのは想像することでしょう? いまとは違う現実に向かって、こことは違う場所に向かって、リアルに、いろいろに、想像を巡らせることでしょう?》《人間は本当に理解しあうなんてことは絶対にできない。でも、人間には理解しあう以上のことができるんじゃないでしょうか? あなたたちが僕を理解しないで、僕があなたたちを理解しなかったのはたしかだと思います。しかし、本当は、僕らは理解しあうことなんかじゃなくて、もっと別のことをすべきなんじゃないでしょうか?》
ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
4087475816
No.1:
(4pt)

探偵小説

奥泉光は、探偵小説っぽい結構の小説を何冊も書いているが、その中では最も探偵小説らしい探偵小説。語れば語るほど、また、思い出せば思い出すほど、実際に起こった事が判然としなくなっていくという技巧が、本作品においては成功している。
ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:ノヴァーリスの引用 (集英社文庫)より
4087475816

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