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終止符には早すぎる
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終止符には早すぎるの評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点5.00pt | ||||||||
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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| 一、はじめに ◯初めに書いておくと、本書はすばらしい小説である。前半は普通の中間ハードボイルド的展開だが、後半はミステリーとしては異様な世界に入っていく。この異様な世界の展開が素晴らしく、この異様な展開の解決のために、関係者のそれぞれが、自分の人生を賭けて、ベストを尽くすのが素晴らしい。その過程で、事件の謎が解明されていくのもミステリーとして素晴らしい。 二、ペンティコースト=フィリップスあれこれ ◯本書は日本では、ヒュー・ペンティコーストというペンネームで知られるジャドスン・フィリップスが本名で書いた『終止符には早すぎる』(原題 A Dead Ending 1962年)の本邦初訳である。植草甚一氏のエッセイでは題を『行きづまり』と訳されていたので、そういう題名で記憶されている方もおられるかもしれない。 ◯フル本名はジャドスン・ペンティコースト・フィリップスで、学生時代に短篇で商業作家デビューし、パルプ雑誌小説家、コラムニスト、放送作家等として活躍していたが、出版社が賞金1万ドルで募集したコンテストで長篇『Cancelled in Red』(未訳)が受賞作に選ばれ、1939年にヒュー・ペンティコースト名で出版されたこの本が大ヒットとなり、出世作となったようである。(ただし、小山正氏の解説のよると、このコンテストの受賞者は初めからフィリップスに決まっていたらしい。) ◯ペンティコーストは多作家で、本書(新潮文庫『終止符には早すぎる』)の最後についているペンティコースト=フィリップス著作リストには膨大な作品題名(ほとんどが未訳)が並んでいるが、本になった長編小説(1936年以後、中編含む)だけで約98冊あり、中短編集が7冊あり、雑誌掲載の中短編小説(1921年以後)となると、ごくごく大雑把に数えて500編ぐらいと思われる。このほかに小説以外の著作もあるようである。小山氏は「必殺のB級作家」、小森収氏は「量産型作家の先駆者」(『短篇ミステリの二百年3』)と評されている。 ◯ペンティコーストの著書(アンソロジー収録短篇除く)の日本語訳はこれまで5冊あり、1960年代前半に、ポケミスから『死亡告知クラブ』(1962年、688番220円、原書は1958年)、『ささやく街』(1963年、795番200円、原書は1960年)、『狂気の影』(1964年、848番270円、原書は1950年)の3冊が出た。当時ミステリマガジンに連載されていて、のちに新書化文庫化された石川喬司氏の『極楽の鬼』には『狂気の影』の短評が載っている(新書本73〜74頁)。ここで、石川氏は新刊翻訳ミステリ16冊について採点しており、『狂気の影』は78点で、点数の多い方から9番目となっている(最高点はアルレイ『わらの女』90点)。「一気に読めるペンティコースト」と褒めながら、肩に力が入りすぎて失敗した『死亡告知クラブ』のほうが好きと余計な注釈が入る。そして、ペンティコースト、スレッサー、ガーヴ、ブラウン、チェイスをまとめて、「どの作品も、発らつとしていて、巧妙で、とても面白い。読んでみてそれほど損をした気はしないだろう」と褒め貶している。 ◯それで、ポケミス『ささやく街』の巻末解説には、「一流のミステリ作家ではない」「ハヤカワ・ミステリで紹介されるのは、これが最後だろう」とあり、『狂気の影』解説には、「二流の作家」とあるが、どちらの解説でも共通しているのは、長篇よりも短編のほうが面白く、傑作の多いことで、その評価通り、長篇の翻訳は3作品で終わってしまい、短篇翻訳がポツポツと雑誌に載るのみとなった。1983年に突然『過去、現在、そして殺人』(原書1982年)がポケミスから出たが、これはネロ・ウルフ賞受賞という箔付けが大きいと思われる。 ◯その後また長編の翻訳本は出なくなったが、論創社から、2006年に長篇『灼熱のテロリズム』(原書)、2020年に中短編集『シャーロック伯父さん』(原書1970年)が翻訳出版されたので、「21世紀になって1冊も翻訳本の出ていない作家」ではなくなっている。 ◯しかし、日本の一般的(?)海外ミステリー愛好家にとって、一番有名で、意外性があり、ダイナミックで、ハート・ウォーミングなヒュー・ペンティコースト作品は、3回翻訳され、3冊のアンソロジーに収録されている『子供たちが消えた日』(原雑誌掲載1958年)ではないかと思う。一度読むと、ちょっと泣け、忘れられなくなる。最新の白須清美氏訳は小森収氏編の『短編ミステリの二百年3』に収録され、この本で小森氏はヒュー・ペンティコーストについて約17頁費やして論じている。 ◯さて、今回の本書刊行では、植草甚一氏が1972年9月に刊行した『雨降りだからミステリーでも勉強しよう』で原書を絶賛していることが売り文句となっている。この植草本は話題になり、よく売れた本で、私も当時読んだのだが、本書の原書について書かれた部分はすっかり忘れていた。それで、実に久しぶりにこの本の「フラグランテ・デリクト 第17節 ジャドスン・フィリップスの「行きづまり」には感心した」を読み返してみた。 その感想は ◯「行きづまり」A Dead Ending が絶賛紹介されている。紹介の内容は略。結論は「訳出するだけの価値は充分にある」であった。 ◯面白いのは、この第17節では、アメリカの推理作家ジャドスン・フィリップスはイギリスで評判になっている新人のひとりで、「行きづまり」A Dead Ending は彼の第四作とされていて、戦前からのベテラン作家ペンティコーストについては一切言及されないことである。もちろん、ポケミスの三冊のペンティコースト訳本のことも出てこない。 ◯それで、植草本の初めの方から読んでいくと、冒頭からジュリアン・シモンズが褒めているアメリカの新人ジャドスン・フィリップスの第二作『耳うちする町』(翻訳は上記『ささやく街』)が出てきて、第2章で約5頁費やして『耳うちする町』の原書が紹介批評されている。それで、前半はかなり気に入っておられて、ストーリーも詳しく書いてくださるのだが、結論は「訳出する価値もない」であった。しかし、第12節第128頁には、このつぎには、どんなものを書くだろうか、とおおいに期待した、と書かれている ◯その186頁では、フィリップスがペンティコストと同一人であるという不意打ち的新事実を知ったのは、『耳うちする町』を読んだ1年後であったと白状され、「両者のむすびつきを感じさせないぐらい、その作風は異質のものである」と弁明されている。 私的感想 ◯それで、本書は植草氏が激賞してから53年ぶりの本邦初訳である。しかも文庫版。素晴らしい、実に素晴らしい。まさに文化事業である。 ◯ポケミス『狂気の影』とポケミス『ささやく街』と本書を比べてみると、いずれ異常な状況設定がされている点が共通している。『狂気の影』は資産家の法律家が自分を数年来脅迫し続けてきた犯人を突き止めるために、林の中の家に家族、友人、部下等の8人を銃で監禁しているところに、散歩で迷った精神科医も巻き込まれて監禁されてしまい、この中で起きる事件の謎と脅迫者の正体を精神科医が突き止めるという展開で、3冊の中では比較的普通のサスペンスミステリに近い。『ささやく街』は、夜に自動車に乗っていた男女高校生4人が交通事故を起こし、3人が死ぬという事件が起き(逃亡した事故の相手は読者にだけ知らされる)、高校で生物教育を行っていて、住民の一部から〈性教育〉と非難されていた女性教師が、生徒たちに性的交際を教え、勧め、それが夜の不純交際→自動車事故の原因となったとして、告訴され、公聴会で糾弾され、私的生活も脅かされる状況となる。そして、糾弾勢力の中心だった牧師が殺され、容疑が彼女にかかるが、友人の新聞記者が彼女を守り抜き・・という展開で、今日的には面白いテーマのミステリーである。そして、本書は上述のように、前半は普通のミステリー展開であるが、後半はミステリーとしては異様な世界に入っていく・・。 | ||||
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| 競馬を始めたい顧客から弁護士が相談をうけ・・・というお話。 植草甚一が褒めた、という事で知られざる傑作になっていて、今回の海外名作発掘枠での紹介になったらしいですが、確かに、面白いし植草さんがキャラクターを褒めていて、私もそう思いましたが、ただ人生が変わる様な衝撃をうけたとか興奮した、という感じではないで、読んでいる間は楽しめました、という感じでした。 この著者の方は小山さんの解説によると、研究書がでるくらい多作で優れた著作が多かったとの事で、実際に巻末に掲げられている作品も膨大な感じで、アメリカやイギリスの推理小説界の懐の深さを感じました。他によくできた物があったら、またこの枠で紹介して頂きたいです。 今年(2025年)にリチャード・デミングの作品集がでて、読んで面白かったので好意的な感想を書き込みましたが、年末のベストで上位にくるとは思わなかったので、意外ではありましたが、いい作品なら再評価されたり、発見されたりするみたいで、こういう物を好きで読んでいる身としてはありがたいです。今後もこの海外名作発掘シリーズが続くのを期待しております。 植草甚一も絶賛した、よくできたミステリ。是非ご一読を。 | ||||
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