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罪の水際



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【この小説が収録されている参考書籍】
罪の水際 (新潮文庫 シ 45-1)

罪の水際の評価: 4.50/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.50pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(5pt)

見事な本格ミステリー、犯罪謎解き小説。

一、あれこれ
イギリスの男性作家ウィリアム・ショーの日本初紹介の作品。解説によると、1959年生まれなので、年齢は60代半ばのよう。
長編ミステリー(警察小説、犯罪小説)は2013年頃から刊行しているようで、まず、1960年代のロンドン近辺を舞台にした《刑事キャサル・ブリーン&女性警官ヘレン・トレーザー》シリーズの長編を年1冊のペースで4冊出し、その後この2人の娘である女性刑事アレックス・キュービディが脇役として登場する長編を1冊出し、アレックスが主役に昇格した長編を5冊出している。
本書はアレックス主役シリーズ第四長編で、原書は2021年に刊行されている。
二、主人公アレックスと物語の舞台
◯刑事アレックスは夫と円満離婚して、変わり者だがしっかり者の17歳娘のゾーイと2人でダンジェネスに住んでいる。残酷な殺人事件の捜査でPSTDになってしまい、休職中である。
それなのに、ダンジェネス駅のカフェの女性同性婚のパーティの席で、乱入女性が山刀を抜いて花嫁の1人に襲いかかるのを阻止することになってしまう。さらに、近くの街ニュー・ロムニーで凄惨な夫婦殺人事件が起き、同僚たちが捜査に来るが、PSTD休職中のアレックスには捜査情報を教えるな、という上司の指示が出ていて・・。
◯ダンジェネスはイングランドのケント州南東部の海沿いの町で、原子力発電所があり、一見小石だらけの荒野のようだが、植物、昆虫、鳥等の生態系は豊かで、自然保護区が広がっている。
◯映像作家デレク・シャーマンが晩年を過ごした土地で、住んでいたコテージと庭が残り、「デレク・シャーマンの庭」として人気のようである。また、本書にも登場するロムニー・ハイズ鉄道がハイズからダンジェネスまでの海岸線を走っている。蒸気機関車が客車を牽くミニサイズのSLで、世界中から鉄道ファンが来るようで、様々な体験乗車写真がネットに載っている。
◯ハイズの東にフォークストンがあり、その東にはドーヴァーがあるので、パスポートがあれば、ドーヴァーからフランスのカレーまで日帰りデートに行くことも可能であり、アレックスはそれを実践することになってしまう。
◯アレックスの父は亡くなっているが、母親のヘレン・ブリーンは元気で、ロンドンに一人で住んでいる。本書ではちょっとだけ(?)出てくる。
◯アレックス同様に魅力的なのが、娘のゾーイ。はじめは野生動物、自然保護に夢中で、突拍子のない行動をしているが、後半は自分の中のレスビアン好みに目覚めて、女性愛花嫁たちの新居に入り浸っている。一方、アレックスの同僚だった元警官と強い友情でむすばれている。しかし、ゾーイがアレックスと住んでいるのは、アレックスの面倒を看る必要があると考えているからである。
三、私的感想
◯傑作であると思う。
◯たくさんの楽しい要素を織り込んでいる。アレックスの一人捜査小説としても、アレックスと同僚ジルや元同僚ビルとの友情小説としても、残酷夫婦殺しミステリーとしても、スリラー風味小説としても、アレックスとゾーイの親子関係小説としても、レスビアン小説としても、詐欺犯罪小説としても、男女ラブ小説としても、ケント州南東部の情景小説としても、コミカルな要素を織り込んだ小説としても楽しめると思う。
◯しかし、本小説の最大の魅力は、アレックスが様々な手がかりにより謎を解いていくと、関係ないと思われていた事件や出来事や物や人間の行動が結びついてくるところにあり、勘違い、人違いを経て、すべての真相にたどりついた時には、この本の中で起きたできごとの中で、偶然に起きたことはほとんどないように思えてくる。
◯つまり、本書はなによりも、見事な本格ミステリー、犯罪謎解き小説である。
◯このシリーズをもっと翻訳してください。絶対に読みます。
罪の水際 (新潮文庫 シ 45-1)Amazon書評・レビュー:罪の水際 (新潮文庫 シ 45-1)より
410240841X
No.1:
(4pt)

推理小説としては、良くできていると思われるシリーズ物第五作

同性婚のパーティーで、波乱があり、警察官がたまたまいあわせ・・・というお話。

人物や人間関係が輻輳し、互いにもつれ合いながら、緩くきつく絡み合い・・・というプロットは推理小説としてよくできていると思います。CWA賞の候補に残ったのも納得できます。

ただ、シリーズ物の5作目という事で、主人公の警察官が抱える懊悩、人間関係などが、いまいち判りづらく、感情移入しにくいのも(個人的には)真実だったりします。出来のいいものから翻訳し、徐々にファンを増やすという流れは、シリーズ物の翻訳ではよくありますが、それだと、中途半端な所からの読みとなり、興を削ぐ感じが否めませんでした。

尤も、推理小説としては、上記の様に良くできているし、翻訳でも文章の上手さは判るので、読んでいる間は楽しかったです。同じ著者のシリーズはもっと読みたいです。が評価が高くても売れ行き次第で、途中で終わるシリーズが多いので、あまり期待しないで続刊を待っております。

推理小説としては、良くできていると思われるシリーズ物第五作。機会があったら是非。
罪の水際 (新潮文庫 シ 45-1)Amazon書評・レビュー:罪の水際 (新潮文庫 シ 45-1)より
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