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DV8 台北プライベートアイ2
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DV8 台北プライベートアイ2の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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第1作の『台北プライベートアイ』(2021年12月レビュー済み)から約10年後の第2作だが、ミステリーとしては構成も展開も進化した印象である。 主人公の探偵自身がうつ病とパニック障害を患いつつも、その障害が起きたときに「秘密の目」で事件の関連を見抜く冴えを発揮するのだが、本巻では主人公に事件の相談に来た女性弁護士自身のトラウマから過去の難事件を解明していく第1の物語と、さらにそのトラウマを煙幕にした別の事件を解明していく第2の物語という重層的で巧みなストーリー構成がなされている。ただ、訳者の解説で指摘されているように、後者はシリーズ第3巻にしてもっと分厚く展開すればよいのにと感じる。 なお、表題の「DV8」は主人公の行きつけのバーの店名で、“deviate”(規範から逸脱する)のもじりであるが、主人公を含む登場人物が程度の差はあれいずれも規範逸脱者ということであろう。(性的)倒錯者という含意もあるようだが、これは事件と犯人を暗示している。 翻訳は第1巻同様テンポがよいこなれた訳文だが、現地の地名や人名、慣用句が難しい漢字表現のままで本文に使用されており、とても読みにくい。ルビをふったり、括弧書きで意味を説明したりしているが、学術書ではないのだから、わかりやすい日本語に訳文を工夫し、必要に応じて欄外注を加えるなどの配慮をしてもらいたい。 | ||||
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音楽の引用がよかった | ||||
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続編となるとすっかりお馴染みの主人公、おやしかし、取り巻く仲間たちはガラッと入れ替わっている!いわゆる名探偵とは言いがたい我らが呉誠は、新たな仲間たちに助けられ、芋づる式に発覚する事件を次々解決していく!スラスラ読みやすい文体で、きっと翻訳ものが苦手な人でも大丈夫。台湾好きの人もそうでない人も、きっとハマると思います。ただ前回は掲載されていた地図がなかったのが、ちょっとだけ残念でした。 | ||||
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一般的に面白いミステリ小説は,読みだしたら止まらず,結末(謎解き)が気になって徹夜... となるものだと思いますが,私にとってこの小説は逆だったのが非常に興味深いです.もちろん詰まらないと言っているわけでなく,むしろ非常に面白い部類の作品です. そこには主人公探偵である呉誠の生活があり,彼の人生観の語りがあり,時にはスノッブ的な蘊蓄もたくさん登場します.バーの店主エマとの恋愛(へそ曲がりであるが)もあり,若いころの回想シーンもあり... その中で事件は起こっていきます. 謎解き(事件の解決)はもちろん探偵小説の醍醐味ですが,その大前提として,物事には大きな「運命」という誰にも止められない流れがあり,人間というものはその運命に委ねているのだ... この描写がとても心地よく響いてきます.つまり呉誠が過ごしている時間を追体験する,呉誠の時間と同期してこの小説を楽しむ,という楽しさがありました.これが「ゆっくり読むと楽しい」ことの理由です.毎日就寝前が待ち遠しかったです. 探偵小説という部分に立ち返れば,なんか3冊くらい書けてしまう複数のストーリーで,ある意味お得感満載です. | ||||
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内容も面白く、登場人物たちとのやり取りも楽しく今回は淡水が舞台ですが実際にあるお店が出てきておりその点も魅力的です。 | ||||
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前作「台北プライベートアイ」を読んだのは、2021/5月。かつて台北、淡水を訪れたのは、1997/5月。私にとっての淡水は、夥しい数のバイクと美しい海岸を思い出させます。主人公は、前作同様、私立探偵・呉誠(ウーチェン)。舞台は、新北市北西部、淡水。”DV8”とは、呉誠を含め登場人物たちが集うバーですが、呉誠はそこで安安という女性から「人探し」の依頼を受けます。それは「深く埋もれた記憶」に基づく過去の事件を引き寄せてきます。スリラーですから、ストーリーの詳細を記すことはできませんが、安安から発せられた物語が二つの事件につながり、<過去>を埋め合わせ、<現在>へと繋がる構成、ストーリーテリングはかなり珍しい。そのスリラーとしての”アーキテクチャー”が美しい。 呉誠は、p.59に於いて、ヘニング・マンケル、マイクル・コナリー、そして我が国の横山秀夫がお気に入りの作家だと告白していますが、どおりでその丹念な筆致は彼らの作品を想起させます。細部をおろそかにせず、ロジックを緻密に組み立てながら、呉誠の地道な調査が二つの事件を包含しながら悠々と、時に忙しなく(ユーモアを交えて)語られていきます。 呉誠のキャラクターは、どちらかと言えば、1970-80年代の西海岸私立探偵小説(ネオ・ハードボイルドと呼ばれた時代)の探偵たちの血筋を引いているような気がします。一番近いのは、マイクル・Z・リューインが創生したアルバード・サムソンか?何故なら、常に心に弱さを抱えながらも地道に真実へとアプローチしようとする人間性にまるで適正な輸血を受けた時のような爽やかさを得られるからかもしれません。 また、本書は呉誠を通して<パニック障害>を語り尽くしているように思えます。そのことは作者の弱きものたちへの寄り添い方に表れています。要求される心理療法としての丹念なアプローチのように。 本作の欠点は、飽くまで私の好みの問題に帰するとして、呉誠とバーDV8の女マスター、エマとの関係性にあります。呉誠の恋愛が<母性>への依存へと傾けば傾くほど、ダシール・ハメット由来の「男たちの系譜」から遠ざかっていきます。勿論、それが美点だと感じられる男もいれば、とても見ていられないと思う私のような輩もいるということになります。反面、本格探偵小説好きの或る人に対して、「おれは本格は好みではないが、それでもいくらか読んでいる。」(p.490)と嘯く呉誠には快哉を叫ぶことにもなりました。私もまた、本格はたまに読めばいい(笑)。 <シンクロニシティ>として。本書を読む前に沢木耕太郎さんの「心の窓」というスケッチ集を読んだばかりでした。その中に『淡水』を描いた一篇があって、海を臨む防波堤の上の一組の男女のパントマイムが軽やかに描かれていました。きっとその二人は、フェリーに乗る前の若き呉誠とエマだったのではないか?と思っています。そんなはずはないって(笑)。そう考えた時、前作「台北プライベートアイ」も1997/5月の淡水も「心の窓」も”DV8”内の混沌も全て繋がっていくのです。それが、呉誠が言うところの「大同的世界」の実現へと導かれるのだと勝手に思っています(笑)。 □「DV8 台北プライベートアイ2 “DV8-Private Eyes”」(紀 蔚然 文藝春秋) 2024/5/25。 | ||||
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