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道誉なり
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道誉なりの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.54pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全24件 21~24 2/2ページ
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あまり北方氏の作品が好きなわけではない。だが、氏の南北朝ものは、ついつい読んでしまう。 個人的に南北朝が好きなことと、この時代を描いた作品が少ないことは、もちろん小さからぬ理由ではあるが、なんというか、氏のドライな文体が、南北朝時代という時代に合っているのかもしれない。 この作品では、絶妙な距離感で足利尊氏の姿を追い続ける道誉のスタンスがいい。 ラストまで至ったとき、静かな興奮を覚えた。 佐々木道誉という人物を、単なるトリックスターと位置づけることなく描いたという一点において、北方氏は吉川英治を凌いだのではないか。 | ||||
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南北朝時代の傑物の一人佐々木道誉の視点から描く、室町幕府勃興の物語。 北方先生は歴史小説の中ではあまりトップの内面を描写しないと思っていた。(「楊家将」で皇帝を描写はしているが、主役級の扱いではない。) この作品では幕府のトップである足利尊氏の人物像をかなり書き込んで、佐々木道誉から見た尊氏という造りになっている。 道誉自身も戦闘で子を失ったりするわけだが、尊氏といえば、弟直義や股肱の臣でもある高師直といった対幕府、対南朝戦を共に乗り越えてきた「近しい者」を自分の手で葬り去っている。 後世から見れば「なんで?」とか「自分の栄達のためにはなんでもするひどい奴」のような印象をもたれても仕方ないのだが、この作品で整理された解釈を追うと、「さもありなん」と思えないでもない。 史実であるとは思わないが、北方先生の解釈する尊氏像にそれほど違和感はない。 結局は「男がどう生きるか(どう死ぬか)」という北方作品普遍のテーマに行き着くわけだが、この作品はあまりストレートにその主題を表現しているとは言いがたい。 その意味で一連の南北朝物の中では「異質」。 「笛」「唄」「舞」といった「芸道」を効果的に登場人物の内面を写す「鏡」のように使っている。その点も異質である。 本作に先行する 「悪党の裔」(赤松円心) 本作の後に刊行された 「楠木正成」 も合わせて、できれば「悪党の裔」、本作、「楠木正成」の順に読まれることをお勧めする。 文字というメディアでありながら、非常に立体的な解釈につながることと思う。 | ||||
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南北朝時代は厄介だ。中心に外国思想かぶれ(朱子学)の強烈な天皇がいる。この天皇は徒手空拳ながら強い。「理想」や「正統」を振りかざすお方だからだ。対するは地生えの論理(利権調整)に生きる地方者集団だ(武士)。「理想」を持たない側は、万の兵を擁してもどこか分が悪い。相手が天皇なのでさらに悪い。争いは果てしなく続く。しかし面白い時代だ。あらら、と気付けば、公家も皇子も武家のように戦っている時代が現出しているのだ。 この時代の面白さを味わうなら本書である。文章も台詞も簡潔でカッコ良く、一瞬もダレることなく最終頁まで酩酊出来る。 道誉は確かにカッコイイが、「観察者」だ。彼は物語の最初と最後で変わらない。最初から人間が出来ている。影の主役は足利尊氏だろう。「武門の棟梁」という運命に引きずられ、天皇と優柔不断に敵対し、皇子たちを殺し、実弟を殺し、実の息子を放逐する。壮絶な人生を送る、いまいちヒロイックじゃない人物なのだが、造形が大変に魅力的だ。 北方氏には南北朝シリーズとも言える一連の作品群があるが、この作品が一番面白い。しかし本書を堪能したら他の作品も間違いなく楽しめる。『破軍の星』は若き北畠顕家が主人公で、密かにギャル人気がある。『武王の門』は九州の南朝方という珍しい題材を小説に仕立てて一気に読ませる逸品。 しかし後醍醐天皇の皇子たちの運命たるや…貴人に情なしか。思想かぶれの魔境か。 | ||||
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佐々木道誉、と聞いて、すぐにピンとくる人はかなりの歴史通なのだろう。 はじめて北方謙三氏の「道誉なり」を読むまで、このような人物が足利尊氏と同じ時代に生きていたことすら知らなかった。 氏の筆は、そんななじみの薄い、歴史教科書にも名前が載らないような一人の漢の生き様を見せて(魅せて?)くれた。己のルールを貫いきながら、時代の中に生きる一人の漢として。 それは、あたかも激しい濁流にあらがって立つ一本の棒杭のように、潔い。 この作品もまた、氏の簡潔な文体が道誉の魅力を最大限に引き出している | ||||
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