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昨日星を探した言い訳
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昨日星を探した言い訳の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.06pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全26件 21~26 2/2ページ
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河野さんの作品は「サクラダリセット」が角川スニーカー文庫で発刊されていた頃から読んでいます。 (当時、私は中学生でした) その頃から河野さんの作品には他の作家にはない独特の味があって、新刊を読む度に打ち震えるほど感動してきました。 そうそう、そうなんだよ、私が求めている言葉を、どうしてそう的確に書けるんだ……!、と。 このテイスト、なんなんだろうと思っていましたが、今作を読んでこの感情に訴えかける筆力の根源がどこにあるのか、少し理解できた気がしました。 結局、河野さんって、デビュー時から一貫してずっとロマンチストだったんですね。 小説家って多かれ少なかれ皆どこかロマンチストだと思うんですが、河野さんは、「すごくロマンチスト」です。 我々読者は、この理想主義的なところに救われて、癖になって、読むのをやめられない訳です。 そして、今作についてですが、普段からロマンチストの河野さんが遂に「恋愛」というカテゴリに手を出されました。 どうなるかは読んでいただきたいのでネタバレはしませんが、河野さんの味がよく出ていました。 忙しない毎日を忘れることができました。 河野さん、いつもありがとうございます。 | ||||
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サンキュータツオさんの書評を読んで購入。作家の名前は書店でよく見かけていたが、「私には若すぎるかも」と思って手にしたことがなかった。 しかしこの作品、青春恋愛小説という甘いオブラートに包まれたなかなかの劇薬だった。 物語の本質は、世代なんて関係ない、むしろ世代差さえ包括する真理だ。 読後、きっと誰かと語り合いたくなるだろうし、自分と周囲の持つ価値観についてじっくりと考えてしまうだろう。 もう『昨日星を探した言い訳』を読む前の自分には戻れない。 読者の思考に見事なフィルターをもたらす可能性があり、良い意味で要注意な名作。 | ||||
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こういう小説を読んで楽しめる、あるいは感情移入ができる年齢というのは意外に広いかもしれない。両親はいないが恵まれた養親に育てられた少女とまずは良家というべき家庭に育った少年が名門の全寮制中高一貫校でであう。 少女は転入してきた挨拶で将来は総理大臣を目指すと宣言する。少年は鬱屈を抱えながら彼女と近づいていき歩調をそろえ始める。 周りの大人たちは穏やかで話を聞いてくれてよく助言を与えてくれる。しかし自我を形作りつつある少女と少年にとってはそれが正しいとか、よりよいとかではなく、独り言と変わらぬものに聞こえる。それが変わり始める過程を描いた作品です。 二人の視点から描かれるのでそれぞれが主人公です。ただ、少女と少年のモノローグの雰囲気が似通っているのと同じ場面を二つの視点で眺める形なのでたまに混同してしまう。このくらいの年齢の少女は特に性別を超えた言葉遣いをすることがある。それがリアルに描かれているとはいえる。 二人ともかなり頑固なところがあるので、すれ違いがひどいが感情には素直なのが救いだろう。それが冒頭のトランシーバーを何年たっても手元で大事にしていることからもわかる。それで実のところはこの話は終わっているのだ。そこに至るまでの長い長い前置きを楽しむ趣向といってもよい。 生徒会選挙や学校行事、それに少女の心の大きなピースを形作る亡き養父の書いたシナリオが物語を動かしていきます。いつもさざ波が立っているような文章です。大きな波乱はないが読みながら心をざわつかせる。10代で読めば等身大、40代で読めば中高生に戻って自分の子供たちの目線を思い出し、老齢で読めば人生の通過点がこんな美しいものならと回顧に浸ることができるだろう。 ただ、物語の設定に差別問題や貧困などの社会問題を織り込んでいる割には特段それが生きているというわけではない。優しく静かな物語には深い闇は似つかわしくないのか、それらはベールに包まれている。おそらくは亡き養父のシナリオを引き立たせるための配慮だろうと思うが、設定が過剰な嫌いはある。 | ||||
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まずネタバレを防ぐために抽象的な表現のコメントになることはお許しいただきたい。この本は長編青春恋愛小説です。しかし、よくありがちな軟派な恋愛小説とは大いに異なります。世界を変えようとする少女と人類の完全な平等にこだわる少年の出会いから別れ・再開を描いたものです。その背景には差別・抑圧・不条理・理不尽と呼ばれるものが登場します。それを乗り越えた2人に感動的な結末が訪れます。本書の途中で出てくる文章があります。「勇気はチョコレートに似ている。甘いだけではない。苦味も混じっている。」この小説で繰り広げられる恋愛もチョコレートに近いのではないでしょうか。倫理的側面にも触れる恋愛小説は好みは分かれそうですが、著者河野裕のファンであれば是非一読したい1冊ではあるでしょう。 | ||||
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『いなくなれ、群青』などで知られる河野裕氏の 初の単行本小説である本作は、少年少女の青春と恋愛、そして決別を描いており、 これまでの氏の小説のファンなら、読んで絶対に後悔しない作品だ。 帯の謳い文句どおり、氏の最高傑作かもしれない。 が、本作がそこだけにとどまらない深さを内包する。 誰かの言葉を借りれば「深くておいしい」小説である。 「おいしい」のは、胸がきゅんきゅんする主人公たちの恋愛の部分だとして、 「深い」のはどこか。表面的には「差別」を扱っている部分だが、 掘り下げると、法哲学の正義論をごく自然に物語内で昇華している点に行き着く。 しかも、映画『ダークナイト』とは全く異なる創造性で。 「無知のヴェール」に覆われた状態(個々人が自分の持つ財産や才能、運などが 全く不明な状態)で、人々は平等で公正な社会秩序を作ることを選択するのか? というロールズ「正義論」の大テーマに対する、日本社会としてのひとつの回答、 というよりもむしろ、祈りを伴う希望、のようなものが、この物語では語られている。 軽めの話だと思って読み始めたら深くてびっくり、でも読後感は極めて爽やか、 そして3日経っても、台詞が体内に残っている、という稀有な小説。 | ||||
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全寮制の中高一貫校である制道院学園の中等部二年である坂口孝文は、編入してきた茅森良子と出会う。そして3年ほど同じ時間を過ごし、8年間断絶する。この物語は、理解しようとした結果として決定的にすれ違う過程を描くものであり、すれ違ったゆえに間違いに気づく物語でもある。 作者は、最近5年くらいの中で個人的に最も注目している作家であり、言葉に対して誠実であろうとしている作家であると感じている。そして、その人をその人たらしめる精神的な支柱や、それが失われ、あるいは取り戻される様など、言葉で伝わりにくいことを言葉で表現しようとしている様に感じている。 その表現のために、あるいはエンタメ的なことのためにかも知れないが、これまでの作品では特別な力が用意されていた。それは、3日間巻き戻す超能力だったり、魔法だったり、死者との対話だったり、同じ時間を繰り返す空間だったりした。しかし本作には、そういった特別な力は用意されていない。当たり前に時間が経過し、そしてそれは戻らない。しかしその進み方は、人によってちょっと違うのかもしれない。 人と人の関係を進めるのは、基本的には対話だ。そして対話には、言葉を使うしかない。一方で、言葉が相手に伝えてくれるものは不正確かもしれない。でも、その不正確さを補うにも、結局、言葉を使うしかない。二人が顔を合わせている間は。 しかし、顔を合わせていない間にも時間は進む。時間が進めば深まる理解もきっとある。それが、本書のプロローグであり、エピローグなのだろう。 | ||||
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