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(短編集)
さよならの儀式
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さよならの儀式の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.52pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全30件 21~30 2/2ページ
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どんな作家であれ、あまり短編集は好きではない。 が、長編が読みたい作家の自作が待ちきれなくて読んでみることがある。 本作も、そうした理由で読んだ。 短編に特徴的なのは、短いがゆえにすべてを展開することができず、強烈なインパクトを残す終わり方の作品が多いことかもしれない。 フレデリック・ブラウンや星新一のショートショートは、そんな作品で溢れている。 本書でも、「母の法律」「戦闘員」「星に願いを」などの作品はそんなスタイルを踏襲している。 が、これはこれで、宮部みゆきならではのストーリテリングで、そのラストまで引っ張られてくるので、やられた!という感じはしても、悪い気はしない。 ただ、ぼくがより強い読後感を持ったのは表題作の「さよならの儀式」や「保安官の明日」だ。 意外な結末はない。 というか、最後の1行までに必要なことは全て書かれている。 が、長編小説並みのストーリが凝縮されているようで、読み応えのある「重み」を感じたのである。 彼女なら、きっと、このネタでも1冊の長編は書けるだろうに、勿体ないとも思うが、彼女の発想の宝庫はそんなことでは尽きないのだろう。 | ||||
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小さくしか書かれてないけど「サイエンス・フィクション」なんですね。 私には現状(時事的な事件)というものを一段上(俯瞰)という架空の位置から見た「シュールレアリズム」の魅力も感じました。 | ||||
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宮部みゆき初のSFに特化した短編集である。 バラエティに富んだ逸品ぞろいだが、残念ながら8編のうち4編を初出本で読んでいた。 初めて読んだ作について述べると、 『わたしとワタシ』タイムスリップがロマンティックで劇的とは限らない。 日常的な「嫌さ」がいかにも宮部らしい。かなり気に入った作品だ。 表題作はロボット愛好者にはこたえられない感動SFである。ヒトならぬ者を擬人化して何が悪い。 反応を返さない相手(自然・動物・機械など)に自己を投射することは、人生を豊かにする。 『星に願いを』な、なんだこれは。不条理かナンセンスか。それでも面白い。 『海神の裔』死体を使役する世界の話だ。手堅くまとめた感じ。 既読作四本もかなりのハイクオリティだ。SF読者も充分に納得できる。 宮部読者にはSFへの入門書になるかもしれない。内容に文句はないが、半分が既読なので星4個で。 | ||||
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宮部みゆきというと、ミステリーかファンタジーか時代小説か、と思ってしまうが、これはSF。確かに他のレビューを見ても批判的な意見が見られるようにあまりこなれているとはいえないかもしれない。しかし、SFファンから見ると、「海神の裔」は明らかに伊藤計劃に対するオマージュ(巻末にもあるが)だし、「保安官の明日」はスティーヴン・キングの「ドーム」を思い起こさせる。ほかにもアーサー・C・クラークやアシモフ、もしかしたら新井素子?風の作品も見受けられる。SFファンのツボを刺激してくれるような、思わず「ムフフ…」となるような短編集ではないだろうか。監視カメラを題材に小説を書くと、伊坂幸太郎は『ゴールデンスランバー』になるし、宮部みゆきはオカルト臭が濃い「戦闘員」という作品になると気づくだけで楽しいではないか。 | ||||
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宮部みゆきの描くSFということで興味を持ちました。 こういうSFもありかと、思います。 | ||||
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SF短編集、と言えばいいのかな。それも「サイエンス・フィクション」ではなく、 藤子F不二雄先生そのまんまの「すこし・ふしぎ」という世界観……と思いきや、 相当しっかり近未来的なリアリティを感じさせる、科学的な内容も含まれている。 それでも「すこし・ふしぎ」と当初思ったのは、描かれている人の心の在り方が、 現代社会のそれと少しもかけ離れたものではないから。だから科学とか苦手だよ、 と思ってる人も頭を痛めずに楽しめる。また、宮部さんは架空の設定でも何でも とにかく巧みにわかりやすく描く作家さんだし。 『母の法律』は、たぶん近未来の日本の話。虐待被害児童を手厚く保護するための、 『マザー法』という架空の法律が施行されている社会だ。信頼のおける養親の斡旋、 虐待加害者である人間のクズ親を矯正させる公的な教育制度、被虐待児に施される、 忌まわしい記憶を封じ込める処置……宮部さんの他作品を読んでも見受けられるが、 宮部さんは児童虐待に関して、半端なく真摯な問題意識を持っておられるようだ。 作品は主人公の一人称で記述されており、内容すべてが宮部さん自身の考えだとは 断定できないのだが、とにかくこの問題についてポイントの考察が的確というか…… こういう、頭の働きがちゃんとしている人にナントカ大臣になってもらいたいなぁ。 俺も毒親持ちだったもので、自分が子供の頃にこんな社会だったらよかったのにと 本気で思った。もちろん全面的に素晴らしい法律ではなさそうだけど。 圧巻だったのは、この法律に反対する側の連中の描写。彼らは「血の繋がり」を 絶対的に神聖視しており、優しく健全な養親のもとで幸せに暮らしてきた主人公は、 その考え方に対して明確に批判的な立場。そういう連中は富裕層に属する者が多い、 という書き方に大きく頷いた。経済的に余裕がある家でたまたま頭のおかしくない 両親に大事に育てられたから……ということか。現実には金持ち=性格がいいとは 限らないのだけど、貧困による切迫感が児童虐待を生みやすいことは一般論として まあ正しいと思われる。で、そういった反対派の連中の「どんな親でも血縁がある、 愛がある、大切にしないと駄目」という独善的物言いにとことんイライラさせられ、 そしてこの「恵まれた連中の独善」こそが、現代社会において被害児童の逃げ道を ますます狭めているという事実を再認させられた。 読みながら宮部さんに直接ファンレターを書こうかと思ったぐらい興奮したけど、 最後が今ひとつ……この人、全般的な内容がよすぎるせいで、終わり方が「なんか 期待してたほどじゃなかった」って感じることがたまにある。最後だけに力入れて 盛り上げる作家さんじゃないんだよな。いや、ダメってほどじゃなかったんだけど、 ちょっと投げてるかなって。結局、宮部さんは主人公側と正反対の考え方なのかな、 という危惧すら湧いてしまって。 『わたしとワタシ』は、ささやかなタイムスリップの物語。壮大でないからこその 技巧に感心させられる。そうか……「自分」に対してそういう姿勢ってあるんだね。 壮大な話でないだけに「あるあるある、ていうか、ありそう」とすごく楽しかった。 最後はなかなかスパイスが効いてますな。 表題作『さよならの儀式』は、ロボットが普通に人間社会に浸透している時代の話。 この話だけじゃないし、というより宮部さんだけじゃないんだけど、架空の舞台設定、 プロの作家さんってよくこんなに精密に描けるよね。いい意味で頭がおかしいのでは。 優れた作家さんのそういう異常性って、社会の宝だよね。政治家の異常性はたいがい 害悪でしかないけど。とはいえ、この作品の肝は惜別と愛情。ありふれた心の有様が、 当たり前でない世界観のなかでくっきりと輝きを放つ。 『聖痕』……これは『チヨ子』という短編集にすでに収録されていたのをだいぶ前に 読んだことあるんだけど、そのときは宮部さんにしては数少ない駄作かな、と思った。 正直言うと、そちらの短編集自体が俺的には駄作集というか(いや、宮部さんだから。 並の作家なら充分合格点)……だから余計に印象悪かったんだと思う。今回、全般に 満足できる短編集のなかで再読してみて、けっこう面白かったんだな、と考え直した。 人間のクズである実母と、同類かさらにクズの内縁の男に壮絶な虐待を受けて育った 不運な青年。その実父が主人公の経営する探偵事務所を訪れて…… 途中までは人間描写の精密さや思いの表現の重厚さ、胸糞悪い児童虐待の記述等に 引き込まれながら読んだが……後半どうしても「電波……?」と思えてしまうんだな。 宮部みゆきなりに説得力ある内容を構築しようとしているのは伝わるし、内容的には つまんないわけじゃないんだけど、宮部さんが優れた作家で真摯なだけに余計怖くて。 青年の実父であるいかつそうな料理人のおっさん、この人は当たり前の「父」である。 こういう人のリアルな人情話のほうを読みたいと思ってしまった。 『保安官の明日』は、さっきも似たようなこと書いたけど「よくこんな見てきたような 大ウソがつけるな。作家ってすげえな」と、ひたすら感心した。この保安官に絶妙な 男臭さが感じられるのもよい。導入からしばらくは「ありふれたどっか外国の田舎の 警察官の話みたい」と思うが(この作品集の趣旨からしてそれが間違いだということは 知っている)、読み進めるうちに「あれ? なんだこれ?」と訝る要素が出現してきて、 やがて「うおっ、なんだこりゃあ!」と驚いて、後半の種明かしでは設定の緻密さに 宮部さんってホントに素敵だわぁと感じる(←だんだんレビューが雑になってきたぜ)。 とある「苗字の一致」が作中で提示される時点で、なんとなく全体像は掴めるけどね。 途中の怪しげな描写がカチッカチッと噛み合うように回収されていく過程は読んでて 快感だし、終盤に明かされる男臭い保安官の背景は、たまらない切なさを心に残す。 あと2編だっけ。どちらもなかなか。フランケンシュタインのほうは「書き方」が 特異であって内容的には正直大したことないけど……ストレートに心優しい話。 『戦闘員』はスッキリしないところが持ち味なんだろうか。生理的に怖くて夜寝るとき 周囲を見回してしまった。意外にありそうな描写がゾワゾワする。 宮部さんって生身の人間なのかな……と思った。それこそ古今東西あまた存在してきた、 優れた創作者たちの技術力を小さな装置に凝縮し、それを脳機能に搭載されたアンドロイド。 マジでそんな気がしてきた。 | ||||
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私は宮部みゆきが好きだ。 作品が、物語が、文章が、好きだ。そして、なにより彼女の作品に出てくる人びとが、真っ当に生きているのがいい。 短編が収録されているこの本、どの作品素晴らしいが、なかでも「戦闘員」がとても良かった。 仕事と子育てを終えパートナーを見送り、ひとり真っ当に生きている主人公が思いもよらないものと戦う。そこには、年を重ねていく寂しさもありながら、それでもここから生きていくという強い気持ちを感じる。勇気をもらった。 宮部みゆきさんの作品には、そういう、年齢を超えて真っ当に生きている普通の人びとが物語を動かすことがよくある。「模倣犯」のおじいさんのように。 本を読み終わるのがもったいないと思える作者だ。 | ||||
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常にその時代の問題点に鋭い考察でメスを入れてきた宮部みゆき。犯罪を憎みながらもその裏に人への愛のようなものが感じられる作品が多いし、そんな作品が好きでいつも予約購入してきたのですが、今回のさよならの儀式の8編には、現代社会への戸惑いのようなものを感じた。なぜこの殺人がおきたのか、なぜ監視社会がこれほど進むのか、人とロボットは同共存していくのか、疑問への答えが宇宙人だったりするのは宮部さんの中に世の中何だかよくわからないところに進んでますよねという戸惑いや問いかけがあるように思えて、スッキリとしなかった。 | ||||
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軽めのSF短編小説集。私はあまりSF小説は得意ではないが1日で読みおえてしまった。 傑作はなかったが、すべて標準以上に面白かった。 身近な家庭内の話や自身の生き方の問題、あるいは高齢者社会など現代の社会問題も扱っており、 SFは舞台設定という面が強かったので、SFが苦手な人でも楽しめると思う。 著者の最高傑作ではないだろうがとても楽しめた。 | ||||
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長編の名手宮部みゆきが短編の名手でもあることを本作が証明している。帯に記載されているように、感動的な作品ばかりが収録されている。実は宮部の長編はどれも長過ぎて、最後まで読み通すことができなかった。なぜこれほどまでに細部にこだわり、全登場人物を詳細に描くのか、理解に苦しんだ。 しかし、本作は違う。話の本筋を凝縮して表現し、主人公の人生を感動的に描写することに成功している。冒頭の「母の法律」は、養父母について規定した「マザー法」の問題点を鋭く抉っている。養父母のうち、どちらか一方が死亡するか、または養父母が離婚した場合、養子は施設に戻すことをマザー法は規定している。養母を養子による家庭内暴力から守るためである。また、養子は骨相学上、養父母と似ている子どもを選ぶのが通常であることも明記されている。こうした話の一端からも、マザー法が問題を抱えていることが分かる。養母の死後、施設に戻された子どもたちが受ける理不尽な社会的差別を本作品は巧みに描く。この短編はもはや小説ではなく、社会批判をストーリーに仕立てた作品だ。これ以上のストーリーは書けないが、著者の慧眼に感服した。どの作品も見事なストーリー展開である。 短編の名手宮部みゆきに拍手を送りたい。お勧めの一冊だ。 | ||||
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