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ツリーハウス
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ツリーハウスの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.48pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全49件 41~49 3/3ページ
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角筈にある翡翠飯店という中華料理店の当主夫妻、藤代泰造とヤエとその子供たち、孫たち三代の物語である。 表題は息子太二郎が庭の木に作った家を一義的には指すが、実は、泰造とヤエが出会った新京の広場にある大木にもつながっている。 現在に至る家族の歴史と、泰造の死後孫の良嗣がヤエと太二郎とともに満州をセンチメンタルジャーニーで訪れることが交互に描かれる構成も秀逸。 泰造とヤエは、いつも何かから逃げている,従って今いる場所も本来自分たちがいる場所ではないのだ、という感覚を常に抱いている。 それは、家族全員の心の傷になっている、学生運動に打ち込んだ末に自殺したヤエの末っ子基三郎がヘルメットに書いていた「デラシネ」という言葉に象徴されている。 その浮遊感覚は息子や孫の代にも受け継がれ、家族のメンバーの大半は定職に就くことなく、良嗣は、「うちは簡易宿泊所みたいだ」と繰り返しつぶやく。 太二郎をはじめとする登場人物の人物造形がすばらしい。 ただ、デラシネでしかない自分たちが初めて希望を見いだした基三郎という存在(基という漢字は定着できるという希望の象徴)が永遠に損なわれたことから、家族が再生する物語であるなら、「基樹」(ここでも木がでてくる)と名付けられた良嗣の兄の人物像をもう少し書き込んだ方がよかったのではないか、それだけが惜しまれる。 | ||||
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山もなければ谷もない。 ひとつの家族とその周りを囲む親族の、日常生活。 普通の日々の暮らしの中に、時々現れる様々な事件。 なのに、一気に読み上げてしまいました。 ひとつの家族の、長い長い歴史・・・それはまだ続く。 角田光代の底力を見せ付けられた一冊。 「とにかく生きよう」です。はい。 | ||||
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角田光代さんの作品は新作が出版されるたびに読んできたが いつも進化している。 その進化を目の当たりにできた幸せ。 内容は近代史を含みつつ、角田光代さんの作風らしさを 失わず全く新しい小説となり、心地よかった。 大傑作でした。 | ||||
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どこにでもいそうな、ありそうなごく平凡と思える一家の三世代に渡ってのそれぞれの時代、人物像が細かく、 ぶれることなく描かれており、大変長い作品であるのにもかかわらず、ぐいぐい引き込まれてあっという間に読ませてしまう所は、角田光代さんだけあるなぁと思いました。 読後も大変爽やかで、平凡と思える自分の人生、家族の歴史も実はかけがえのない、ここにあるべき現実は過去があったからこそ、と前向きに思える大変いい作品に出会え、久しぶりに読書から充足感を味わえました。 他の方も書いていらっしゃいますが、ここに描かれているのはごく普通のどこにでもありそうな家族の歴史ですが、 それぞれの時代に実際に起こった事件、出来事などと上手にリンクされて物語が進み、それぞれの人物像やその生き様等がよりリアルに感じられます。 物語の最後の方の場面で、孫の良嗣が祖母に長い人生で失ったものと、得たものについてどのように考えているのかを尋ねる場面があり、その場面での祖母の言葉 「後悔したってそれ以外にないんだよ、何も。私がやってきたことがどんなに馬鹿げたことでも、それ以外にはなんにもない、無、だよ。だったら損だよ、後悔なんてするだけ損。それしかなかったんだから」 という言葉が大変心に染みました。 人生には、もし、という仮定はあり得ない、その時代、その時々に起こる出来事を受け入れていくこと、一見流されているように見えても、そうすることに意味があり、先の未来に繋がっていくと自分なりに解釈しました。 | ||||
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久々にガツンとくる、読み応えのある小説を読みました。 家族3代の流れを記しながら、「敗戦から立ち上がり必死に頑張って生き延び、戦後の復興に乗っかった世代」「経済成長とともにバブルに向かった世代」「満たされた幸福の中でどんどん浮遊して行く世代」という“日本人の3段階”を、その家族の3世代に見事に投影させています。 登場人物のキャラが皆際立っていて身近にいくらでもいるような人物像だったりするために、思わず吹き出しそうになるコミカルな描写もあります。 全体的なタッチが非常に柔らかく、ゴツゴツした重厚なイメージはありませんが 読み終わった際に不思議な充実感を味わえる素晴らしい内容です。 終盤に現れる「希望」という言葉が、夜空に燦然と輝く星のように感じました。 | ||||
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新宿にある中華料理店の親子3代にわたる話ですが、主題がしっかりしており、さすが角田光代だと思いました。 前半の、祖父、祖母の満州での話から、終戦にかけての話は、引き揚げ者の苦難を描いて素晴らしかったのですが、 その後、その息子、その孫に話が発展していっても失速せず、その時代時代の事件や社会現象を織り交ぜながら描ききって 芯が通ってるな〜と感じました。 これだけの話だと、内容が散漫で長いだけの小説になりがちですが、そんなことも一切なく充実した内容と、文章の素晴らしさで 読みました。 大変いい小説でした。 | ||||
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角田光代さんは人物描写が実に上手い。 登場する一人一人が「あぁ、居るよねこういう人」と目に浮かび、魅力ある人物となります。 日本の戦後史を網羅するように次々と家族の誰かの身の上に起きる出来事が、ちょっと詰め込み過ぎかなという気がするので減点1ですが・・・。 とにかく面白く、読みやすく、こんなに分厚い本なのにあっと言う間に読み終えました。 ただ、重箱の隅をつつく気はありませんが、どうしても気になって仕方がない事があります。 私の誤読であったらごめんなさい、どなたか教えてください。 慎之輔が若い頃同棲する美津江の生い立ちですが、彼女は多分慎之輔と同年代ですよね?昭和20年前後の生まれだと思います。父親が戦死しています。弟妹が5人、母親は父方の祖母と同居、とあります。 母親が再婚しない限り、戦死した父親の子どもがこんなに居るのはおかしい。再婚したなら、父方の祖母と同居するだろうか?これがひっかかって仕方がないのです。 この小説の面白さから言えば些細なことですが、謎を解きたいのです! | ||||
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葬式になると、いつもは感じない血族や親族のつながりを感じたり、だれかの思いがけないエピソードが語られたりする。 満州から引き揚げてきた祖父と祖母から始まった根無し草一族。新宿のさびれた中華店「翡翠飯店」の三代にわたる物語。 大人物も大悪人もいない。ただ、流されて生きている。だけどここには日本という国のすべてが書かれている。 大戦、満州引き揚げ、戦後、学生運動、浅間山荘事件、マンガ文化、バブル、コギャル、オウム真理教…よくもこれだけこのボリュームに自然に盛り込めたものだ。角田光代はどえらい作家になった。大傑作だ。 ツリーハウスみたいな危なっかしくて隙だらけの子どもの秘密基地。空から見たら、どんなに立派な家庭も一族も、ツリーハウスや翡翠飯店のような危なっかしいものなんだろう。 | ||||
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本作は、翡翠飯店に住む三世代の家族の年代記です。 物語は、祖父の死をきっかけにして孫の良嗣が祖母と叔父とで中国を巡るパートと、戦時中の祖母が祖父と出会い、平成の現在へと至るまでを描いたパートが交互に進行していきます。 良嗣にとって謎の多かった家族の背景が徐々に明らかになるとともに、現在の家族の言動や態度の理由が分かってくる過程は、展開が巧みでミステリーの要素もあり、一気に読み終わりました。 本作に没入できた最大の理由は、戦後復興から2010年までの日本の史実を織り交ぜているからではなく、家族の人間描写が生き生きとしていて言葉や存在そのものに説得力があるからだと思います。作者の硬質な筆致も洗練されていて、最後まで、あざとさが無く好感が持てました。 昭和・平成史に残る数々の出来事が背景にあっても、 描かれているのは、あくまで、一般庶民の日常です。ですが、その日常の大切さがこの作品からは伝わって来ます。 年代・性別を問わない普遍的なメッセージ性を含んだ傑作であり、日本が苦境にある今こそ、お勧めしたい一冊です。 | ||||
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