■スポンサードリンク
パワー
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
パワーの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.88pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全22件 21~22 2/2ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
おもしろい構成(書簡体)の小説です。 「この作品はフィクションである」という、言い訳がましい言葉でこの本は始まります。 最高権力者の実在の人物を想定して書かれている本だからのようです。 それが誰のことか、冒頭のエピグラムだけからでもピンとくる読者は多いでしょう。 この本に書かれていることは全部「フェイク」だ、読むに値しないXX本だ、とツイートされる可能性が予想されるから、分かり切ったことだけど、わざわざフィクションですよ、と巻頭で念を押しているように感じました。 この本は、過去の有名な事件や現実の場所を借用しています。 この本の巻末の渡辺由佳里さんの「解説」によると、 「『パワー』は、何千年にもわたって女性がためこんできた男性社会の残酷さや男性の女性嫌悪に対する怒りを直接伝える小説ともいえる」(431頁) 「この本は、SFであり、ディストピア小説であり、フェミニスト小説であり、そして多くの男性にとっては『ホラー小説』でもあるだろう」(433頁) さらに、スタイルからは「歴史小説」(429頁)であると渡辺さんは書いています。 確かに、9頁の中扉になった小説の原稿の上には、「歴史小説」とはっきり書かれています。 過去の事件や現実の場所を借用しているから、そうしたのでしょう。 見出しが、これまたおもしろいです。 「その時」(367頁)から過去にさかのぼった見出しになっています。 「あと十年」(12頁)から始まり、「あと九年」(48頁)、「あと八年」(97頁)、「あと六年」(168頁)、「あと五年」(208頁)、「あとせいぜい七か月」(315頁)、「ついにその時」(367頁)と過去から現在へと逆方向にカウントダウンしていく見出しです。 一方、「性別の枠」(423頁)という観点からは、「女流文学」ということになるでしょう。 ところが、この物語は、「男性」考古学者が書いた歴史小説の原稿に対するアドバイスを、「女性」作家に求める手紙(6頁)から始まるんです。一種の書簡体小説です。小説の中では、男性が書いた男流文学です。 そして、この本の真ん中には、9頁から413頁まで、歴史小説「パワー」の分厚い原稿が挟み込まれています。 歴史小説らしく、古文書の断片や図も含まれていて、具体的で説得力のあるリアルな歴史物語となっています。 なお、160頁から167頁までの頁は、灰色の紙の上に「保管文書」として印刷されています。芸の細かい装幀の本です。 歴史小説の最後の図は、「パワーの形」。右手の掌の上に見開いた目玉が一つある図です。 アメリカ合衆国の一ドル札の裏面にある、ピラミッドの頂上の見開いた目玉を連想してゾッとしました。 最後は、再び、その原稿を読んだ「女性」作家のコメントの手紙と、原稿を書いた「男性」考古学者の返事のやりとりで、この本は終わります。 特に、最終行の一文は、ガツンと効きました。女の権力社会で受け入れられる出版の裏ワザ。 「ニール、これはあなたにとって腹にすえかねることかもしれませんが、この本を女性の名前で出すことも検討してはいかがでしょうか。 心からの愛をこめて、ナオミ」(423頁) ニールというのは、男性考古学者。 ナオミは、女性作家。「ナオミ」は、この本の著者ナオミ・オルダーマン本人とダブって重なります。 おそらく、著者ナオミ・オルダーマンも最初、この本の著者を架空の男性名で出すことを検討したのでしょう。しかし結局、皮肉とパロディーを込めたストレートな構成ということで、「男性」学者の小説原稿を、「女性」作家がコメントする形に落ち着いたのではないでしょうか。想像ですが。 《備考》 著者ナオミ・オルダーマンの見解(手紙の記述より抜粋) <女性が権力を得たら、もっと平和な世界になるか? について> 「わたしは直感的に(これはあなたもそうだろうと思いますが)、男性の支配する世界のほうがやさしく、穏やかで、愛情に満ち、本質的に慈しみ深い世界だろうと感じます」(415頁) 「男性が生まれつき女性より平和的で破壊を好まないかどうかについては……読者に判断を任せたいと思っております」(416頁) <歴史の本は古い記録に基づいているというのに、この「歴史小説」の記述は、それらの歴史本とは完全に矛盾している理由について> 「写字生にはみなそれぞれの思惑があったでしょう。二千年以上ものあいだ、写字を手がけていたのはみな修道院の修道女でした」(419頁) 女の見方は、男の見方と完全に矛盾するみたいですね。残念です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
一気に読みました。 「21世紀のガリバー旅行記」を思わせる壮大で風刺の効いた物語です。 訳文もこなれて読みやすいです。 のちの文学史では20世紀後半に『侍女の物語』があり、21世紀には『パワー』があったと記されるかも。 『侍女の物語』の作者であり著者を助けたアトウッドと 著者ナオミ・オルダーマンに敬意を表します。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!