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夜蜘蛛
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夜蜘蛛の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.78pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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作家が新聞に掲載した自殺についてのエッセーを読んで、聞いてもらいたい話があるという男が新聞社の支局の記者を通して作家に連絡するところから話は始まります。興味を持った作家は、実際に会って話を聞くのだが、男はなかなか話を進めようとはしない。言いたいことは、後で手紙にしたためますっ、つーことになり、お話は、男の手紙に書かれた彼の父親の戦争体験とその後の生活とかに進んでいくのであります。読み手の私は、登場する作家さんは、芥川賞を受賞した、マスコミ等に登場する、個性的な人物である田中さんであるとして認識しながら読み進めていくんですが、なんとなく作家自身もこの男に投影されているのではないか、と思ったりもします。手紙形式の語り口の文体は、ドラマチックに読者に語りかけてきます。 | ||||
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この作者は、読者の五感に訴える文学的イマジネーションがとても豊かです。豊か、というより、濃い、と言った方がいいのかもしれません。都会の情報の洪水の中でアップアップしながらものを書いている人には真似のしにくい「濃さ」であります。 横溢する水・火事の炎・地中の生暖かい闇―他の作品では生理に密着したイメージが作品全体を効果的に包み込んで、どこか作り物めいた話の展開に小説的リアリティを与えています。この作品でも、冒頭、幼児が押入れの闇の中で見る夜蜘蛛のイマージが出てきます。しかしいまひとつ、という感じです。そのため、物語の作為が目立ってしまいます。 夜蜘蛛とは死のメタフォアでありましょう。はっきりと、これは何々の暗喩である、という解釈の仕方は昨今流行りませんが、やはりそうであろうと思われます。赤子は空襲下で、すぐそこにある死に、無邪気に手を伸ばすのです。 作品で自死を扱うことの多い(と思われる)小説家へ、ある老人が宛てた書簡(一人称の告白文)が、物語の大部分を占めています。こういう物語設定は、いささか古色蒼然としていていますが、物語の枠組みがしっかりして分かりやすいので、落ち着いて筋を終えます。 話の内容からして、下敷きに漱石の「こころ」があるのは誰もが気づくでしょう。しかし本歌取りと考えると、やはり物語の無理・作為が目立ち、成功しているとは思えません。 「こころ」という作品は私にはなんとも不気味で、なんでこんな暗く不気味な作品が中学の国語の教科書に掲載されたり、課題図書になったりするのか、さっぱりわかりませんでした。(今でもそうですか?)本歌取りには失敗しても、作者が「こころ」に抱いた読後感は、もしかしたら自分と近しい部分があるのかな、と感じます。自死した者は糸をはいて、残された者をからめ捕り、身動きできなくして、長い時を経て死に至らしめるのです。 以下余談ですが… お父さんが次第に老いていき、トイレットプログラムを抱えるところなど、80歳の夫の世話をしている私には身につまされます。このお父さんは老害が服を着ているような老人に比べると、家族に対する配慮・遠慮を過分に持っていて、提案にはあっけないほど素直に従い、ちょっと出来すぎ。こんな老人が、たとえエクスキューズを付けているとはいえ、こんな遺書は絶対に書きませんよ。無神経な人ならともかく。 それに介護が…今の常識からすると糾弾もの、という箇所、いくつかありますね。まだ十分動ける老人にいきなりおしめをするなんて。おしっこ3回分吸収する超薄型パンツなんてものは、(主人はこれをはいて空手の稽古し、中央アジアを旅してます)昭和の終わりにはまだなかったのかしらん。お父さん、かわいそうに。 | ||||
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