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夜蜘蛛



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【この小説が収録されている参考書籍】
夜蜘蛛
夜蜘蛛 (文春文庫)

夜蜘蛛の評価: 3.78/5点 レビュー 9件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.78pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全9件 1~9 1/1ページ
No.9:
(4pt)

「父と子」「戦争」を描いた中編

例によって「父と子」「戦争」といったテーマで書かれた作品。たしか芥川賞受賞第一作だった気がする。
田中文学のうちでも、夜蜘蛛は筋を楽しめる小説だと思う。つまり「週末の葬儀」や「第三紀層の魚」といった作品(これらも良作だが)とはちょっと違った読み方、楽しみ方ができる。実際、息子にとって絶対的な存在である父親の、徐々に衰えていく様が凄まじかった。特に、これはネタバレになるかもしれないが、父親の切断された片足が赤ん坊向けの棺に入れられてて燃やされた場面、ここでは鳥肌が立ち、しばらく読むのを止めてしまった。
ともかくこれは佳作であり、田中作品の入門としてはちょうどいいのではとも思った。
夜蜘蛛Amazon書評・レビュー:夜蜘蛛より
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No.8:
(4pt)

芥川 太宰 三島好きな方 必見ですよ

気持ちが良く、すらすらと読める純文学の王道だと思いました。今の時代にこのような文体で表現出来る作家は、田中さんの他いないのでは?などと思える作品です。ハラハラドキドキする物語では無いにしろ、表現の豊かな描写 文章には、毎冊安心して読める事が、素晴らしく思います。
夜蜘蛛Amazon書評・レビュー:夜蜘蛛より
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No.7:
(5pt)

何故か泣いてしまう

どこがどう、と説明出来ないのだが、田中慎弥氏の作品は、読み終わった後、何故か涙がでる。自分にとっては、琴線に触れる作品。
夜蜘蛛Amazon書評・レビュー:夜蜘蛛より
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No.6:
(4pt)

父と子の葛藤を描くファン納得の一冊

「夜蜘蛛」は、著者がとりあげ続ける父と子という題材を、読者を引き込む持ち前の文章で編み継ぐんだ田中慎弥ファンを納得させる一品である。
 現役日本人小説家の作品を、私は長い間読むことがなかった。何か読みたいという気持ちから、話題の本を書店で見てきたが、残念ながら最初の数行で失望するということが続いた。一つの小説に魅せられると、その著者の小説すべてを読みたくなるのは当然であり、私もかつて酒見賢一氏の作品をそのように読んだことがあった。
 田中慎弥氏の「共喰い」は、芥川賞受賞のテレビ映像と書名が印象に残っていたので(注目発言を私は知らなかった)、休日の空いた時間に書店で1ページ目を確認した上で購入しましたが、迫力ある文章で見事に人間達を描いており、私は即刻魅せられてしまいました。そして発行されている6冊の文庫小説を立て続けに読んで、この最新刊の「夜蜘蛛」に行き着いたわけです。
 評価4としたのは、私個人としては他も含めオール5なのですが、田中慎弥氏の作品はやはり万人向けではない、という評価がなされるのではないかという気持ちからです。すぐれた小説というものに万人向けなどあるはずがないと私も考えます。ドストエフスキーの小説と同様、私には比類ない作品群ですが、まったく受け入れない人達が少なからず存在するのではないか。逆に評価5のお一人がコメントされているように「ますますファンになりました」という著者ファンも数多くいるのではないでしょうか。
 ましてや、この作品に登場するような父と子の関係を自らも経験した読者にとっては(まったく同じではないが、その一断面と重なる葛藤を経験した読者は少なくないはずです)、二重の感慨が胸にこみあげてくるに違いないと思われます。私もそのような読者の一人でありました。
 田中慎弥氏の新たな長編小説の一刻も早い発行を期待しつつ、「夜蜘蛛」の評を終わりたいと思います。
夜蜘蛛Amazon書評・レビュー:夜蜘蛛より
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No.5:
(2pt)

黒蜘蛛は今何処(いずこ)へ?

物語は、新聞に作家が、自殺についてのエッセーを書いたがために、興味を持ったというある男(A氏)から、編集部経由で面会を求められ、会うもうまく話せず後日、手紙が送られる。
この手紙には主に、男(A氏)の明治生まれという親父のことが自殺するまで書かれていた。
こういった手紙形式は漱石の『心』ですでに書かれており、読めばこの『夜蜘蛛』が『心』のオマージュか、剽○作と言えるかもしれない。
戦時中、親父は戦場で死んだふりをして生き延びたという。その情景を子供の私(A氏)がのちに聴かされ、「ある一言」を言い放つ。
忠臣蔵、乃木大将の殉死、天皇陛下の崩御、戦争、日本高齢化問題、介護社会などをネタに描いているものの、読後感はどれも中途半端で、消化不良、文中P138にもある「なんの深い意味も込めず、ただ勝手に頭の中で話と話、戦争と戦争を結びつけただけ」のような単純なレポート小説になっている。もう一歩、文章芸術としての深みが感じられない。介護福祉について取材でもした記述もないのはレポート以下とも言えるのだが(文中の「老人施設」は「老健施設」が正しい)。

親父の遺書には、自殺するのは子供の私(A氏)が言い放った「ある一言」とある。が、私(A氏)は親父の自殺は「理解不能の行為」P140とし、戦時中、子供の私(A氏)が壕だか押入れで見た蜘蛛を殺さなかったためだ、ともいう。(「親に似た夜蜘蛛」て、どんな蜘蛛? )
そして、「本人(A氏)の気づかぬ真実を発見」してもらいたいと、作家に手紙を送りつけるのである。

『夜蜘蛛』の親父の自殺は、漱石の『心』のKよりは謎めいてなく、単に、私(A氏)やその妻、そして娘と(A氏)の姉が、親父に冷たく厄介払いにしたのが原因のように思えるのは、私だけであろうか?
息子(A氏)が言い放った「ある一言」は、単に自殺への理由付けに過ぎない。もちろん、親父の天皇観へ関連付けもできぬではないが、如何せん、この筆力不足ではそこまで至るには少し無理があるように思う。
戦争とは? 乃木大将とは? 天皇陛下とは? これを読者にでなく、筆者自身がまず向き合い書かずして、一体何を書こうというのだろう?
そういう意味では、この『夜蜘蛛』は個人的にはつまらなかった。

しかしエッセーを読んだくらいで、こんな長ったらしい手紙を作家に送りつけてくるとは、なんと迷惑な人(A氏)であろう。
夜蜘蛛Amazon書評・レビュー:夜蜘蛛より
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No.4:
(3pt)

手紙形式文学

作家が新聞に掲載した自殺についてのエッセーを読んで、聞いてもらいたい話があるという男が新聞社の支局の記者を通して作家に連絡するところから話は始まります。興味を持った作家は、実際に会って話を聞くのだが、男はなかなか話を進めようとはしない。言いたいことは、後で手紙にしたためますっ、つーことになり、お話は、男の手紙に書かれた彼の父親の戦争体験とその後の生活とかに進んでいくのであります。読み手の私は、登場する作家さんは、芥川賞を受賞した、マスコミ等に登場する、個性的な人物である田中さんであるとして認識しながら読み進めていくんですが、なんとなく作家自身もこの男に投影されているのではないか、と思ったりもします。手紙形式の語り口の文体は、ドラマチックに読者に語りかけてきます。
夜蜘蛛Amazon書評・レビュー:夜蜘蛛より
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No.3:
(3pt)

蜘蛛の吐く糸

この作者は、読者の五感に訴える文学的イマジネーションがとても豊かです。豊か、というより、濃い、と言った方がいいのかもしれません。都会の情報の洪水の中でアップアップしながらものを書いている人には真似のしにくい「濃さ」であります。
横溢する水・火事の炎・地中の生暖かい闇―他の作品では生理に密着したイメージが作品全体を効果的に包み込んで、どこか作り物めいた話の展開に小説的リアリティを与えています。この作品でも、冒頭、幼児が押入れの闇の中で見る夜蜘蛛のイマージが出てきます。しかしいまひとつ、という感じです。そのため、物語の作為が目立ってしまいます。
夜蜘蛛とは死のメタフォアでありましょう。はっきりと、これは何々の暗喩である、という解釈の仕方は昨今流行りませんが、やはりそうであろうと思われます。赤子は空襲下で、すぐそこにある死に、無邪気に手を伸ばすのです。

作品で自死を扱うことの多い(と思われる)小説家へ、ある老人が宛てた書簡(一人称の告白文)が、物語の大部分を占めています。こういう物語設定は、いささか古色蒼然としていていますが、物語の枠組みがしっかりして分かりやすいので、落ち着いて筋を終えます。

話の内容からして、下敷きに漱石の「こころ」があるのは誰もが気づくでしょう。しかし本歌取りと考えると、やはり物語の無理・作為が目立ち、成功しているとは思えません。
「こころ」という作品は私にはなんとも不気味で、なんでこんな暗く不気味な作品が中学の国語の教科書に掲載されたり、課題図書になったりするのか、さっぱりわかりませんでした。(今でもそうですか?)本歌取りには失敗しても、作者が「こころ」に抱いた読後感は、もしかしたら自分と近しい部分があるのかな、と感じます。自死した者は糸をはいて、残された者をからめ捕り、身動きできなくして、長い時を経て死に至らしめるのです。

以下余談ですが…
お父さんが次第に老いていき、トイレットプログラムを抱えるところなど、80歳の夫の世話をしている私には身につまされます。このお父さんは老害が服を着ているような老人に比べると、家族に対する配慮・遠慮を過分に持っていて、提案にはあっけないほど素直に従い、ちょっと出来すぎ。こんな老人が、たとえエクスキューズを付けているとはいえ、こんな遺書は絶対に書きませんよ。無神経な人ならともかく。
それに介護が…今の常識からすると糾弾もの、という箇所、いくつかありますね。まだ十分動ける老人にいきなりおしめをするなんて。おしっこ3回分吸収する超薄型パンツなんてものは、(主人はこれをはいて空手の稽古し、中央アジアを旅してます)昭和の終わりにはまだなかったのかしらん。お父さん、かわいそうに。
夜蜘蛛Amazon書評・レビュー:夜蜘蛛より
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No.2:
(5pt)

これが田中慎弥か

芥川賞で知り、
他の作品も少し読み、
何て上手な作家さんだろうとファンになったところで
この小説。

素晴らしかったです。
個人的に(お父さんが衰えていく様子など)グッとくる場面もありつつ、
相変わらずステキな文章で、
おそらく、私にとっては今年一番良かった小説です。
ますますファンになりました。

今後の作品も楽しみにしています。
夜蜘蛛Amazon書評・レビュー:夜蜘蛛より
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No.1:
(4pt)

父と子の関係性を客観視できるようになったのか、あるいは客観視しようと試みたのか

これまでの作品と同様に、父と子という題材ではありましたが、物語の射程が『時代』というものまで広がったようであり、そのため従来作よりも読みやすい、読者が感情移入しやすい仕上がりになっています。

これから親の介護を考えなければいけない世代として、いろいろな思いが湧き上がってくると同時に、今は亡くした祖父母にも思いを馳せることができ、分量も長くないので一気に読めてしまいました。

従来作のような刺々しい、身近な人との関係性を否定しながら逃れられないような感情は直接は表現されていませんが、このような関係性への客観的な距離感を持つために、直接の書き手ではなく手紙というギミックを用いて、自分の作風からの脱皮を図っているように思えました。次回作も楽しみです。
夜蜘蛛Amazon書評・レビュー:夜蜘蛛より
4163817301

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