神様のいない日本シリーズ
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神様のいない日本シリーズの総合評価:
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野球を巡るいじめで傷ついた子どもに語りかける男。彼は0勝3敗から4連勝した日本シリーズの年に起こった自分と父の中学3年の出来事を語り始める。 最初から最後まで主人公が扉越しの息子に語りかけるモノローグで小説が進んでいく。そして劇中劇と二つの奇跡の日本シリーズ。様々な仕掛けが面白く読ませてくれる。 この本もテーマとしては「共喰い」にかなり近いと感じた。思春期に意識する親から受け継がれてきた自分というもののぬぐえなさと性(恋)。しかしこちらの方がグロテスクさが薄くて間口が広い。 親との葛藤を子どもに語るという形式がいい。ラストも非常にいい終わり方だと思う。 モノローグ、劇中劇、親子のドラマと二つの日本シリーズ... 色んなものがカチッと噛み合った快作。 田中慎弥をまず読んでみたいという人には「共喰い」よりこっちの方がお勧め。 | ||||
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これは傑作! 吃驚した。 前半三分の二は相変わらず話が何処に繋がるのか不明でグズグズと進むだが、後半で見事なくらいに重層的に伏線が合致すて天晴れ。ただひとつ、あの男がバットで殺したのが飼い豚である意味だけがわからなかったが、その後、丹羽文雄の短篇に料理人(だったか?)が殴打殺に梃子摺る豚をある男があっけらかんとを一発で殴り殺すシーンがあって何となく納得。 表題の日本シリーズは1986年の西武対広島戦。 | ||||
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野球好きなので、芥川賞を受賞した作家が書いた「日本シリーズ」という言葉の入った小説とはどんなものかと読んでみた。帯には「最高傑作」とあるし。 もちろん、あのすっとぼけ顔の著者なので、胸躍るような野球小説を期待していたわけではないが、変化球すぎるというか、このようなタイトルがふさわしい小説だとは思わない。 祖父と父と息子、三代をつなぐストーリーが最初から最後まで、父の口から小学生の息子に話しかける形で語られる。息子は自分の部屋に閉じこもり、父はそのドアの前で延々と語り続ける。 ストーリーの核になっているのは、祖父による豚殺し、3連敗4連勝でライオンズが優勝した2回の日本シリーズ、中学時代に父が文化祭で演じることになった「ゴドーを待ちながら」の3つ。父はそれら3つをからめて息子に話しかけるなかで自らのアイデンティティを探っていく。うーん、違うかな。「喜怒哀楽が乏しく理不尽な世界」が描かれているという表現は妥当だろう。そういう作品です。僕にはしっくりこなかったけど。 この文庫本のカバーの絵がいい。その無表情に佇む人物は、息子の部屋のドアに向かって語りかける父のようでもあり、部屋の中でそれに背を向けている息子のようでもあり、また家族に背を向けて家を出て行く若かりし日の祖父のようでもある。 | ||||
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【共喰い】が合わなかったせいか、この作品は全く期待せずに読み始めたが、これは、いい。文章というものが、一瞬であっても読み手に声となって語りかけてくる作家は少ない。 安っぽい癒しや、お手軽な物や媒体などで溢れかえっているこの世の中にあって、彼が描いた不確かなものの確かさは、必ずしも答えがなく完結もせず、また押し付けてもこない。 発声の出来ていない大根役者が台詞を言えば、演出家は客に伝える作業をするようにダメ出しをするかも知れないが、一流の役者はボソボソ喋ろうが客はその役者の台詞を追う。 淀みがなく洗練された文章の中に、心地よい不確かさが数多とあった。 才能のある作家だと思う | ||||
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以下ネタバレしています。読了後にこのレビューを読んで下さい。この作品で作者が試みたのは読み手に不確実感を与えることである。文体が読みやすくなったため引き込まれて読むことができた。いじめられて部屋に閉じこもった息子に、父親が扉越しに語りかけるという設定の物語だが、気味の悪いことに扉のむこうにいるはずの息子からは何の反応もない。最後まで物音ひとつたてない。にもかかわらず語りかける父親は、学生時代の妻の様子や妻とのやりとりについて話が及ぶと、嬉々として一人で盛り上がり、われわれ読み手に「この父親、少しおかしいんじゃないか?」というゴロリとした違和感を与える。違和感は解消されず、反応のない息子の存在に疑念を抱きつつ読了。読み手にとっては消化不良というかすっきりしないであろうが、その不確実感を読者に与えることが作者の狙いである。文句のない傑作といえる。 | ||||
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