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【この小説が収録されている参考書籍】
i(アイ)

iの評価: 3.23/5点 レビュー 82件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.23pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全82件 41~60 3/5ページ
No.42:
(1pt)

働け

とあるイベントの課題図書だから我慢して読了したが、途中で何度も投げ出しそうになった。以下、ネタバレ注意。

このストーリーに根本的に欠けているのは「労働」の観点である。主人公、親友の女の子とも裕福な実家から無尽蔵の援助を受けられる。旦那であるフリーのカメラマン、作中の描写では到底夫婦が食べていけるほど稼げているとは思えない。

どうやって金銭のやり繰りをするかは万人にとって重要なテーマだし、人は労働によって誰かの役に立っているという実感、すなわち自己肯定感を得られるものである。

だから労働しない主人公がグダグタ悩んでいるのを延々読まされても、全くリアリティを感じられないのである。「暇だね」としか言いようがない。残念。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.41:
(3pt)

想うだけでも意味がある

日常から離れて、生きるしんどさと幸せという矛盾を繰り返す日々に承認を与えてくれるような、西加奈子の世界観はやっぱりつい読み進めてしまいました。ただ、主人公のアイのような考え方はしないので、共感度は小さいかな。自分が直接関わらないような世界の出来事も想うことに意味があるというメッセージにひかれました。
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4591153096
No.40:
(4pt)

アイと同じ感覚があった。

前半の主人公アイの感覚は、私の中にもあったと思いながら読みました。

全く育った環境は違うけれど、同じものをみる思いで読んでいたので、どんな風にアイは成長し、受け止めていくのかなと思いながら読み進めました。

私の中では、言葉にならなかった思いを書き出すとこんな風になるんだという感覚です。

誰かに認めてもらわなくても、「自分の存在を自分で認める」というのは簡単なようで難しい。行きすぎたり、足りなかったり。傲慢になったり、自己卑下したりします。

『私はここだ!』今、ここに、アイ=私はいる。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.39:
(4pt)

iも愛も形のないもの。だから・・・

思うにアイは典型的なリケジョ。面倒な人間関係構築より学問(仕事)特に理論追及好む。だから友は
少なくとも良い。腹を割って話し合える親友一人いればよい。完璧でありたい、正解は一つでなければ
ならない・・・と。自分の名前と同じ発音の「i(アイ)」は数学で「虚数」という。「この世界に
アイは存在しない」と放った教師の言葉にアイの人生は縛られる。
「この世界に確かにアイは存在する!!」という「実数」、己のアイデンティティは見つかるのか?衝撃の
ラスト数ページは息のつけない程の風圧と内なる沸騰を感じる。「実数」の基本は「i」ではなく「愛」
なのかも・・・。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.38:
(2pt)

そんなに面白くは無い。

ギャグは一切ない。 自分探し、モラトリアムな話。 登場人物が暗くて、じめじめしている。
肉子ちゃんで西加奈子を読み始めた自分としては、その良さが分からなかった。
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4591153096
No.37:
(4pt)

われ思う、故に我あり。

いいんだよ! 幸せになっても、人生を楽しんでも、生きていても、豊かになっても、他人を愛しても、いいんだよ!

この世に生を受けたこと自体が奇跡に等しいのに、何を文句垂れることがある? 何を悔やむ? 何を悲しむ? 生まれてきてくれて、ただ、それだけでありがとう。

私は愛と光でいっぱいです。 我は光なり。 我は光と一体なり。

他人の苦しみ、悩み、痛みを正しく知ることはできないが、相手に思いをはせ、ともに分かちあおうとすることはできる。

私は、私であり、私以外の誰にもなることはできない、唯一無二の存在であるから、自分を愛し、許し、尊重し、尊敬しちゃっても、いいんだよ。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.36:
(4pt)

個人の力では何も変わらないかもしれないけど・・・

西加奈子さんが内面に抱える孤独感やアイデンティティがこの作品を書かせたんだと思います。
この人が書くからこそ説得力のあるテーマなのではないでしょうか。

不自由なく、幸福に暮らせることに罪悪感を持つ必要はありません。
では、何が大事かというと、たとえ何も行動を起こせなかったとしても、「知ること」「感じたこと」だと思います。
この感情はその人を形作るうえでとても意味のあることです。
個人の力だけでは、世界を変えることはできないけど、
こういう意識を持つ人がじわじわと増えていくことによって、世界はいい方向へ動くのではないかと信じたいです。

あと、本編とは関係のないことですが、又吉や中村文則に帯を書いてもらったのは失敗だと思います。
このへんのメンバーの仲良しアピール、もういいかげん食傷気味です・・・。
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4591153096
No.35:
(4pt)

実際の社会情勢との絡め方が見事

本作は「さくら」に出て来たリードや、「サラバ」で見上げた真っ青なエジプトの空のような、
私たちが見たことがなくとも鮮明に浮かび上がる景色には乏しい。なぜならアイは大半を日本、そして室内で過ごしているから。
さらに衝撃的な出来事を軸に描かれるわけでもない、あくまで前作までと比較してだけれど。

しかし読後は、じんわり、でも確かに力が湧く作品だと思った。

本作は世界中の事件事故が常に纏わり付いてくる。それらはノンフィクションだから、私たちが普段他人事のように、時に自分事として捉えざるを得なかった出来事たちだったりする。
目を逸らさずに受け止めるアイはシリア人の養子だけれど、誰より私たち日本人に似ていて、遠い存在だなと思う。
はじめはそんなアイが鬱陶しくもあるのに、
だんだん他人事に思えなくなってくる実際の社会情勢との絡め方が見事。
そして諦めかけたアイと読者を、きちんと救ってくれるんだなあ。
助け出してくれる、というより、立ち向かう力をくれる。
世界は決してよくなってなんかいなくて、
作品中で登場する世界情勢はむしろ悪化しているようにも思える。でも大丈夫なんだよね、目を逸らしていたそれらの現実を見ても、最後は目を逸らさずに肯定できる。

なによりこんな綺麗事でしかないことを言えちゃうんだから西加奈子の作品はこわいなって思うんですよね。

前作、サラバの衝撃や鮮やかな景色が印象的すぎて、読み終わった瞬間少々物足りなかったので星は4つだけれど、じわじわと効いてくる。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.34:
(5pt)

自己存在というテーマに真正面から取り組んだ力作

近代以降のあらゆる芸術作品は、アイデンティティーを根源的なテーマにしていると言っても、そう乱暴ではなかろう。
この作品は、アイデンティティーの問題と真正面から取り組んでいる。
これまでの西加奈子作品の魅力の1つは、ストーリー展開にあった。
しかし、この作品は、ストーリー展開ではなく、存在と心理描写で読ませる作品だと思った。
それは、作者の筆力がないと成り立たない。そして、西加奈子の圧倒的な筆力が遺憾無く発揮されている。
実の親を知らない、養父母と肌の異なる主人公の、自己存在への懐疑と葛藤。
私が最も凄みを感じたのは、主人公が子を産むことによってではなく、産まない結果を受容するなかで、自己を獲得していく点だ。
それによって、この作品は、普遍性を確固たるものにしたと言えよう。
称賛に値する小説だ。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.33:
(4pt)

答えは出ない

出自に関わらず、身の置き所のなさがついて回る感を持ってる人にはあるあるだろう描写多数。あんまり深く掘り下げて書いてるとは言えないし、親友に巡り会えたのは僥倖だろう。会えないんだよね、ふつう。いや、それなりに社会に溶け込み、家族も友達もいるんだけど。

いろいろ「ご都合」で話が進むからあっという間に読めるよ。なんか最後ちょっと残念だけど、西加奈子自身はやっぱりどうにもならない孤独を抱えてて、ひとつ答えを形にしたくて書いてみた、ような違和感がありました。とってつけたみたい。
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4591153096
No.32:
(1pt)

なんじゃ、この小説

この人の書く主人公には、共感を覚えたことがほとんどないが、この作品の主人公は特にそれが強い。どなたかが書いているが、偽善のかたまりである。読み始めたことを途中で後悔した。
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4591153096
No.31:
(2pt)

ハーフの人が生粋の国籍を持ちえない事にコンプレックスを持つように、

ハーフの人が生粋の国籍を持ちえない事にコンプレックスを持つように、小説の主人公であるアイはシリア人でありながら、アメリカ人の父と日本人の母に養子として育てられるが、血の繋がりがない事に自身のアイデンティティーを探し求めていく。そして経済的に恵まれている事にも罪悪感を感じていることから、ある意味、高尚ともいえる苦悩を、多感な時期を経ながら、実直に、そして不器用なまでに向き合っていく一人の女性の葛藤が描かれている。親友のミナがレズビアンであったり、アイの不妊問題や、そして通奏低音のように世界各地でおこる大量死者を引き起こす悲しい出来事が差し込まれ、意識しないと見落としがちな問題を読者に投げかけらているように思えた。実際問題、自分の身近に起こることが自分の限られた世界であって、メディアを介して悲しい出来事を認識することはできるけど、他人事になりがちな自分に何ができるのかを今一度考えてほしいってのが作者のメッセージではないのかな。
印象的なのは、アイが不妊治療や中絶を経験した時に最愛の人であるユウを男性であることに憎しみを一瞬でも抱いてしまうことだった。ユウがどんなに献身的にアイを尽くしても男である以上は、女性の苦しみは理解できないのだと、性別による絶対的な隔たりを感じた。
またこの小説はいろいろと新鮮なネタが多かった。まず、裕福な家庭の養子の苦悩はかなり斬新だ。学校生活の場面でも、同級生にイジメられるのかなと思いきや、むしろ異分子を受け入れようとするんだけど、慣れていないものだからうまく立ち回れない、同級生のよそよそしい気遣いが、アイへ精神的な苦痛をじりじりと与えていくという、現実的にありえそうな状況だとリアルな描写にのめり込める。親友となるミナもレズビアンであり、彼女がアイにあてたメッセージにも、とても真理を捉えた一文があった。ミナも男性との性交を経て子をもつのだがそれを中絶しようとする。しかし彼女は不妊治療をしている女性たち(もちろんアイも含む)に謝ることはしない、なぜなら自分の体は自分のためであって、社会や彼女たちのためではないからだという。

全体を通して、新鮮なトピックはあったものの、やはり根底的にアイの苦悩がいまいち共感できなかった。裕福な家庭に育てられることの罪悪感はなぜにそこまでにアイを苦しめるのかが推し量ることが難しかった。ただ数学の世界にのめりこみ、静謐な時間を愉しんでいる描写には自分は共感できた。何かに夢中になれる空間、時間は何にも代えられないほど幸せなものだから。西加奈子作は今回が初めてだが、徹底的に一人称であり、ときどき訳書なのかなとおもうようなクセのある文章タッチを感じた。ミナとアイの会話がそうだったが、対話での描写がとても繊細だったので女性作家ならではの着眼点だなと思えた。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.30:
(4pt)

戦争のある世界に生きる。。。

「i」とは何かを探す旅です。

自分は誰か?どこから来たのか?どこへ行くのか?

愛とは人間関係であることが分かる一冊です。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.29:
(3pt)

衝撃のラスト!

書店のポップで衝撃のラスト!と書かれていたのに惹かれて購入。
西加奈子さんの作品は初めて読んだが、まず思春期に人が持つ孤独感などの心理描写が非常に丁寧で、共感でき大変面白かった。またそこから成長して大人になってゆくとき恋をしたとき、その感情の変遷が手に取るように分かった。特に恋をしたときや友達を失いかけたときの不安定な心の描写には感動した。ここまで物語の主人公に自分を重ねられたのは久しぶり、西加奈子さんの文章力はすごい。
この時点でこの本を買って満足し、衝撃のラストまで楽しく読んでいた。
そして、ラスト数ページに差し掛かり衝撃のラストを想像させるような描写があった。結末を予測し、これは面白い!と興奮しながら読み進めた。こんな終わりがあるのかと!救いがなく!しかし幸福で因果応報で!すごい物語だと思った。

しかし予想に反して最後で衝撃でもなんでもない終わり方をした。運動した後に冷えたコーラだと思って飲んだら麦茶だった時のような気分になった。
ということで評価は三。途中の心理描写や場面転換は面白い。でもラストがあんまりだった。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.28:
(5pt)

直木賞作家

直木賞作家の本を読んでみようと思い購入しました。とても良い商品を購入出来ました。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.27:
(5pt)

プレゼント

妻のために購入しました。

とても面白くて大満足だったようです。
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4591153096
No.26:
(2pt)

西加奈子はどこへ行くのか?

アイは1988年シリアで生まれたらしかった。
主人公は養子としてアメリカ人の父、日本人の母に不自由なくニューヨークで育てられ、東京の名門私立中学校に入る。何不自由なく暮らし勉強も学年トップ。でもアイは「不当な幸せ」に心を痛めて内向し、世界中で起こる事件と死者の数をノートに書き込むようになる。

西さんがカイロ時代のことを語ったことが文章になっている。
―――――――――――――――
『エジプトは、小学1年生から5年生までいたので、記憶には残っていて、すごい楽しかったっていうのはありますけど。駐在員の娘として行ってて、まあ、向こうでは金持ち。まわりには、みすぼらしいエジプシャンのこどもたちがいて…。その子らとうちは遊ぶんですけど、どこかにずっと羞恥心というか、罪悪感があって。「なんでこの子らはみすぼらしいのに、うちは金持ちなんやろ?」と。うちは何にもしてないわけじゃないですか、親ががんばっただけ。「何やろな?」という違和感と、「恥ずかしいな」という恥の意識みたいなのがずっとありました。それはいまもありますね。
うちもいやらしいこどもやったんです。「そういうみすぼらしい人たちとも平等やから一緒に遊ばな」という気持ちがあって…。エジプシャンの子と手繋いだりしながら「汚いな」と思ってるんです。それを「そんなん思ったらあかん」って小さいながらに、思いこもうとしていたんです。でも、みんなで遊んでいるときに、日本人のおとなが来て、そしたらエジプシャンのこどもたちがわーって寄っていったんです。そしたら、そのおとなが「汚い。あっちに行け」って言ったんです。それを聞いたときに「はっ」として、「この人、めっちゃ心きれいな」って思ったんです。ほんま思ったまま、言ってる。言ってることは最低なんだけど、でもこどもを前によう言えるなっていうか…。それを素直にできて、悪者になれる根性というものがすごいなって。うちはなんて姑息なんだろうって。ほんまの平等って何なんやろうなっていうか…』
――――――――――――――
その時感じた罪悪感を主人公のアイに投影させたのだろうか。
転機は2011年の震災。そしてそのあとシリアに起こる惨劇。

この小説は賛否、好き嫌いがはっきり分かれる。帯に書かれているような感想を持つ人もいるだろう。しかし私には馴染まなかった。虚数を語った「この世界にiは存在しません」という数学教師の発言をずっと心に持ち続ける、アイが初めて恋をする相手がユウ(IとYou)といったチープな展開はまあいいとしても、アイの正義感はうわべだけでリアリティがないし、海岸に打ち上げられたシリア人少年の名前を繰り返し強調するところは、こっちが恥ずかしくなる醜悪な偽善に本を閉じたくなった。その前に読んだ「舞台」はニューヨークを旅行する青年の心の中をどんどん掘っていくのだが、ちっとも響いてこなかった。「まく子」も同様だった。

西さんの文学の魅力は肉感が実体をもって迫ってくる身体性にあった。「ふくわらい」の鳴木戸定、「サラバ!」の貴子、「円卓」のコッコ、「さくら」のミキ、漁港の肉子ちゃんのような。この2年間の小説にはそんな人物に代ってひたすら内向する若者が登場する。大阪弁の寅さんの闊達さは、去年の芥川賞「コンビニ人間」が広く読まれる社会の閉塞感に取って代わられている。エッセイや対談などでの西さんは変わっていないが、小説の作風は明らかに変わった。孤独な内面を抱える人を描くことで社会を反映させているのか。その試みは昇華への途上なのかもしれないが、いまのところ成功していない。

西加奈子はどこへいくのだろうか。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.25:
(1pt)

低劣な質のマンガでしょう

初めてこの人の本を読んで驚くことが多々ありました。日を追うごとに、憤懣が昂じてきたので記します。

1.文章のひどさ
さらさらさらさらと書かれていますが、文章のひとつひとつが「メモ書きか?」と思いました。これはブログ小説とか、携帯小説とか雑誌記事程度のレベルの文章であって、けっして単行本として出版されるような「文学」ではありません。文章に、味わい、深み、含みが少なすぎて、ずっと居心地が悪い思いをした。この人は、文章というものを真剣に学び直したほうがいいと思う。

2.ご都合主義
偶然を呼び寄せる必然がない。
たとえば、主人公は、ひどく醜いほどに太っていたのが、突然痩せて、とんでもない美人になったりする。そんなのマンガでしょ。
たとえば、主人公の高校時代の初恋(片思い)の相手と、主人公のレズビアンの親友がニューヨークで出くわしたりする偶然も、あまりにテキトウで、これもまるでマンガ。しかも、レズビアンの親友は、ここでいきなりベッドインしてしまい、妊娠してしまう。あまりに茶番だ。
もちろん、話を進めるには、「偶然的出来事」がある程度は必要なのだが、あまりにも都合が良すぎる。そこには、「出来事」を生む必然がない。必然性がないから、「偶然」は感動を呼ばない。説得力がまるでない。というか、こんな行き当たりばったりのことをさせて、作家自身が生み出した登場人物に対して、失礼だと思わないのかな、この作家は?
設定がレズビアンである必要がどこにもない。というより、設定を自ら安易に崩してしまう。レズビアンに対しても失礼だろ、こんな描き方は。
不真面目な小説です。そう、すべては「見せ掛け」なのです。悲劇への同情も、いろんな苦しみも。誰かも書いていたけれども、薄っぺらい。いや、薄っぺらいというより、すべてがインチキなんです。本質的なものがどこにもない、間違った認識に立脚したインチキな虚構の世界。

3.エゴイズムと偽善
この本を評するもう一方の言葉は「偽善」です。
シリア人で、養子で、バイリンガルで頭脳は極めて優秀。ならば、国連とか「国境なき医師団」とかで働けばいいじゃん。世界で起きる悲劇とその人数をノートに書き付けるような気があるんなら、世界に対してそれなりの苦痛を感じているのなら、それを昇華させりゃいいじゃん。
それなのに、結局は、恵まれた環境の中で、この主人公が体現し拡張していくのは、単に「エゴイズム」と「甘え」です。ものわかりのいい両親、親友、旦那。その中で「甘え」だけを増長させていく。世界の悲劇も苦しみも、結局は、「自分が子どもを産めない」現実の前に消え去ります。ならば、世界の悲劇を登場させて欲しくはない。それらは小説を飾るための単なる小道具でしかありません。不真面目でしょう。世界に対して。死んだ人に対して。苦しんだそぶりを描くのは「偽善」そのものでしょう。
「産めない体」の主人公は、親友が行きずりの一夜で妊娠し、その子を堕胎すると言ったことに対して、狂ったように怒り、その親友との関係を閉じてしまう。しかし、自暴自棄になった主人公が最後に頼るのはこの親友なんですよ。どこまで身勝手なんでしょ。究極の「身勝手小説」。そんな「甘え」と「身勝手」を、友人もふつう許しますかね。現実的ではないでしょう。なんだか知らんが、主人公は親・友人・旦那に激しく愛されるのだが、こんなに魅力に乏しい主人公は珍しい。なぜに愛されるのかがわからない。人物造型に完全に失敗してますよ。
作家の人間観が浅薄なんでしょうね。だから、人物がリアルなものとして立ってこない。

要は、「自由」とか「個性」を間違って尊重し叱りつけもしないようなバカな親が子を育てると、どれほどグロテスクな人間に育つかということでもある。ここにいるようなバカな親がどこにいるのかと、作家に問いたい。この作家は、そういうバカな親を良しとしているとしか思えないんですけどね。

文章のひどさからはじまって、道徳心のなさ、誠意のなさ、不真面目さ。最後はそこに行き着きます。
作家というものは、良識と道徳心を持っていなければならないということを痛感しました。もちろん、この作家にはそのどちらもない。
要するに、読んでいいことがひとつもありませんでした。
こんな本を大量に作って、まさに資源の無駄遣い。

宮本輝の『流転の海』が100点だとするならば、この作品は0点です。いや、不愉快になった分マイナスか。みなさん、『流転の海』を読んでみてください。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.24:
(2pt)

存在の耐えられない…寄る辺なさ

たよりないにもほどがあるけど、世の中のあれこれに、それなりに悩んでるんです、という気分に波長が合う人は多いでしょう。でも、自身が格差社会を生きる答えにはなっていないです。

西加奈子さんがこれを上梓なさってから、トランプ大統領が誕生。主人公の両親のような、世界の不公平にまっすぐな正義感を持つ人達に、アメリカファーストを突きつけて当選。その背景には、この主人公のように、シリア難民もハイチや、世界のあちこちの紛争も、災害も、正直、よく分からない、という戸惑いもあるのかも。

トランプほど極端じゃないけど、正義感に燃えてどんどん行動しようって人達にもなんだかついていけない。勿論、不公平だと言われたら胸は痛むけど…。そのあるがままです。

でも、漂うことなく、どう立ち向かうか、の答えは出ないです。帯で絶賛しているピース又吉の芥川賞受賞作『火花』のように、もう自分の生活だけで手一杯なところで、それでもカッコ悪く生きて行く方が、実は「深いところで」共感できる人になるんじゃないでしょうか。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096
No.23:
(4pt)

一気に読みました。

初めて西加奈子さんの本を読みました。

面白くて、読みやすくて、一気に読みました。

感想としては、第一に、あんまり、というか全然数学関係なかったなぁでした。物語にとって数学は、iが存在しないっていうフレーズだけに必要なファクターで、そのフレーズの重要さを増すために主人公が数学が好きって設定にした感じがしました。てっきり読み始めは数学が彼女を救うのかと思いましたが、iはアイ自身であり、自分を指すIであり、愛であるという文系感があふれる感じのオチでした。(別にいいんですが)。

またアイ、ユウ、ミナというわかりやすい名前も少し気になってしまいました。アイってカタカナの名前に最初びっくりしましたが、彼氏のユウにはさらにびっくりしました。ネーミングには、わかりやすいような意図的なような安直なような適当なような印象を抱いてしまいました。

あとは、登場人物たちの性格が似てて、そりゃ優しくて内向的な人ばっかりだし、内面の変化も起こりにくいわな、って思ってしまいました。本心を中々表さない、慮る、繊細で多感、それで内向的。なんとなくみながこんな感じの印象でした。色ならパステルカラーみたいな優しい性格の人ばっかりです。

でも主人公がずっと悩んでる感じはよくわかったし、私だったらどう感じるんだろうとか、色々考えさせられながら読めて、それは面白かったし、よかったです。

アイは結局、アイは存在しない、という言葉が自分にまとわりついていること、自分自身でいることへの不安や罪悪感などは誰にも共有せずに終わりました。まだ一人の世界にいるのかなと思いましたが、そこはまた読み直して考えたいです。

また感動もあり、ストーリーとは関係ない表面的なところに若干ひっかかってしまいましたが、トータルとしては読んでよかったなぁという感じでした。再読してみたいです。

他の作品も面白そうなのがあるので、また読んでみようと思います。
i(アイ)Amazon書評・レビュー:i(アイ)より
4591153096

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