きいろいゾウ
- 奇跡 (159)
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『きいろいゾウ』(西加奈子著、小学館文庫)は、互いに「ムコさん」、「ツマ」と呼び合う若い夫婦の物語です。 夫・武辜歩(むこ・あゆむ)は小説家だが、収入を補うため、車で20分くらいの所にある特別養護老人ホーム「しらかば園」で仕事をしています。そして、毎晩、日記をつけています。 妻・妻利愛子(つまり・あいこ)は、小学3年生の時、心臓の病気で1年間入院したことがあります。ツマには、庭の木や草や花の声が聞こえるという特殊な能力があります。そして、密かにムコさんの日記を読んでいます。 二人が東京からこの村に引っ越してきて、そろそろ1カ月が経ちます。 「私たちは東京で、そう、壁の薄いアパートで、隣の人に聞かれるのも気にしないでセックスをしたのに。あっけらかんと、次の日外に出て行ったのに。今はこうやって、蚊帳の中で、声を潜めている。静かに、静かに、誰にも見つからないように、セックスをする。ムコさんが、今日の月みたいな目で、私を見る」。 「シャツを脱いだとたん、ムコさんの背中から、腕から、鳥が羽ばたく。黄色、緑、オレンジ、桃色、赤、朱、たくさんの色が私の目の前でちらちら揺れる。初めて見たとき、あんまり綺麗だから、私はほうとため息をついて、いつまでもそれに見とれてしまった。刺青、とゆうのを見たのも初めてだったし、こんなにたくさんの色を一度に見たのも初めてだった」。 「私がムコさんと出会えたのは、奇跡だ」。 「僕はツマに会えたことは奇跡だと思っている。そしてその奇跡を日常に出来たことを、本当に幸せに思っています」。 ツマは、ムコさんには忘れられない恋人がいるのを知っているが、知らん振りをしています。 ある冬の日、突然、ムコさんの昔の恋人の夫から、ムコさんに一通の手紙が送られてきます。今頃になって、なぜ、手紙が送られてきたのか――。 ムコさんとツマの関係はどうなってしまうのか――。 西加奈子の魅力がぎゅっと凝縮している作品です。 | ||||
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まだ読んでいませんがデザインがお洒落で購入しました | ||||
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書評高いので読んで見ました。 100ページくらいまで読んだが、途中でギブアップ。何が面白いんだろうという感じでした。 面白さが分からないのは、オヤジの証拠かも。 | ||||
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中学生で初めて読んだときは、性の表現や、ツマの無邪気すぎるところなどに気持ち悪さを感じ、嫌いな小説に分類していました。しかし、しばらく経ってなぜかこの本を思い出したのでもう1度読んでみると、あの頃とは違った感情を抱きました。人生の恥ずかしいところや、隠したいところ、忘れたいところなどを優しく包み込み、それでもいいんだよと言ってくれるように感じるようになっていたのです。中学生の頃の私は、完璧を目指し、失敗するたび二度と失敗しないように、と自分を厳しく叱っていました。そんな私だからこそ、いい歳になっても失敗し、子供のようなことを言っているツマに嫌悪感を感じたのでしょう。この本に嫌悪感を抱く人は、きっと自分に厳しい人なのです。完璧じゃなくていいと気づけたので、私はこの物語を受け入れ、愛すことができるのだと思います。 | ||||
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田舎に移住した若い夫婦の日常や内面と、周囲の人々との交流を描く長編小説。6章立ての480ページとややボリュームはあるが、細切れの会話文や童話パートも含み、実質的には一般的な長さの作品である。 ツマ(妻利愛子)とムコ(武辜歩)の新婚からまだ日が浅いらしい夫婦は、海からもほど近い山間の村に移住して一ヵ月になる(登場する商品名からは九州地方であることを匂わせる)。夫のムコは無名の小説家であり、地域の特別養護老人ホームの事務員としても勤務して生計を支えている。言動に幼さが目立つ20代半ばのややエキセントリックなツマは、動植物の言葉を聞き取ることができるという特殊能力をもち、本作の主な語り手にあたる。 かつてムコの亡き祖父が住んでいた田舎へと移住した夫婦が送るマイペースな日常のやりとりを中心に、両隣のアレチさん老夫妻、駒井さんと登校拒否で一時滞在している孫の大地君をはじめ、地域に暮らす人々との交流を徐々に広げつつ展開する。ちなみに、移住前は東京で暮らしていたらしい夫婦の日常の話し言葉は関西弁だが、二人の関西にちなむエピソードはとくに紹介されない。 構成面での特徴として大きくは二点があげられる。まずひとつは、物語の語り手がツマ→ムコの順で交互に視点が切り替わることにある。表現形式としてもそれぞれ、ツマの幼さも反映した話し言葉に対して、ムコは彼がしたためている日記と異なっており、ツマの語りをメインとしながら、ムコの視点によって補足や冷静なツッコミが入る。もうひとつの特徴としては、冒頭をはじめ各章間などに、作中作にあたる童話『きいろいゾウ』が挿入されることにある。小説自体のタイトルと同じこの童話は、ツマが幼いころに何度も読み返した絵本であることが、作品の早い段階で明かされる。 先に作品のマイナス面と思えた箇所にいくつか目を向けると、まず終盤にかけてムコの異変をきっかけとして夫婦に危機が訪れるのだが、普段から仲睦まじい二人の様子を見ていると破局にまで至るとは考えられず、試練としては弱かった。正直なところ、この危機を描く終盤三分の一よりもそれ以前のほうが面白く読めた。次に、ツマのもつ動植物の言葉を解する能力については不要とまではいかないまでも、消化不良なまま結末を迎えた感がある。また、キャラクターの造詣としても、ツマの「天然」ともいえるキャラや、逆に9歳にしてはあまりに大人びている大地の言動など、演出を過剰に感じるきらいもある。 とはいえ基本的には穏やかで読みやすく、ほのぼのとしてコミカルながら感動させるポイントも提供するエンターテインメント作品として読める。独特の人間性と特殊能力から、人と動物に慕われやすいツマの視点を中心にした本作の世界観を体験して、田舎暮らしに憧れを抱く読者もいるかもしれない。著者作品は初めてだったが、多くの人に支持される理由を体感することができた。余談だが、ヴィム・ヴェンダースのある映画のクライマックスを連想させるような、作中作の童話『きいろいゾウ』の結末に好感をもった。 | ||||
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