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ひらいて
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ひらいての評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.79pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全57件 41~57 3/3ページ
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蹴りたい背中の時の絶妙なバランスがこの作品では崩れている。作者は意図的に崩している。主人公のやり過ぎとも思える行動が時に漫画的に見えてリアリティーがない。しかし作者の鋭い描写、人生に真剣に向き合おうとする文学的な感性は相変わらずで好感が持てる。商業主義的なもので溢れる現代において作者の上っ面なものには騙されまいとするそのスタンスこそ彼女の最高の才能かもしれない。 | ||||
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その人にとって手に入らないものというのは、実際にその中身を知ることができない。 ゆえに、想像することで補完する以外に方法がないのだと僕は思う。 よく分からないものに触れる場合で、僕が何かをつくろうとすると、つぎはぎになってしまう。 このふわふわとした地に足がつかない小説は、そういったことを含めて、白い、不完全な透明さ、という表現しづらい表現で仕上げられたように感じた。 不自然、とってつけたように感じるという意見、この話が元からそういうことを意識させるためにつくられたものだと考えることで、見方が変わるかもしれない。 この話の世界そのものが、そういったよく分からない何かに触れるときの感情、情景、速度だ。 天使は本来この世に存在しない。ならば、つくるしかないのだ。 壊れやすい 不安定 遠い場所 白 水色 透明 幻想 人ではない人 夢の中の男女 たとえ | ||||
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「インストール」「蹴りたい背中」のえもいわれぬ読後感が忘れられなくて、もう一度同じ感動を味わいたくて綿矢りさの作品を読んでいます。 しかし芥川賞受賞以降に前者2作に匹敵するような輝いたものはなく、ほぼ惰性で読んでいたのですが、この作品でとどめを食らった感じ。 つまらない。何も得るものがない。 時間を返してほしいと思う。 素人が余暇の楽しみのために小説を読んでいるだけで、およそ文学に対する造詣もなく、素人書評をわざわざネット上に書き込むまでもないと自覚はしているのですが、それでもあえて憤りを吐き出させていただきたい。 要素を詰め込みすぎ。 この短い小説の中で、一体いくつの要素を盛り込んでいるのか。しかも中高生が嬉しがって反応しそうな、思慮の浅い自虐的要素を。 主人公は拒食症気味?(そういう節の記述があるが、掘り下げもしない) 主人公の片思いの相手は毒親持ち(終盤になって唐突に出てくる。彼の父親を授業参観で見たエピソードも突然思い出して語りだす) 片思いの相手の恋人はI型糖尿病(病気に対する理解と表現が甘く、使い古された美人薄命の少女マンガのネタそのもの) このようなキャラクター造形の要素があるにも関わらずうまく消化されておらず、 その上で思いつきのような取ってつけた聞こえの良い引用を繰り返し、ますます消化不良。 主人公は毎朝聖書を読むという。 その数節をわざわざ引用していますが、主人公の退廃的行動と聖書を結びつけるとは、発想が中二病的であまりに考えが浅く、他宗教に対する作者の尊重の意思のなささまで透けて見えて幻滅しました。 しかも聖書の逸話を踏襲した物語になるのではなく、後がけの調味料のように聖書を引用しているので非常に味が悪い。 また唐突にオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」の引用も入りますが、 これもまたキリスト教聖人の逸話の中に、こんなエピソードをあることを知った、面白いから入れてみよう、と短絡的な意図が垣間見えて不愉快でした。 主人公は、冒頭の記述では予備校帰りに深夜12時までマクドナルドで友達とたむろし、彼女自身は喫煙しないけど、未成年でもタバコを吸う友達とつるみ、つけ睫をして通学カバンにはアクセサリーをジャラジャラ、そこそこ成績は良いけど適当に生きている"チャライ"女子高生だったはず。 そこを何故終盤になっていきなり感傷的な文学少女になっているのか。 矛盾をはらみ、初志貫徹できないキャラクター造形、浅い知識のままに引用してさも高尚そうに見せかけてくる宗教的素材。 作者の思い上がりまで感じられるのは言いすぎでしょうか。 読者はそこまでバカではない。 やたらと説明くさい登場人物の会話文も気になりました。 今時の高校生は、こんなに自分の気持ちを回りくどい比喩を用いて文学的に話し合うのか? もっとストレートな、下手な会話をして、察しながら人付き合いを作っていくものだろう?、と。 記述で足りない感情の説明を会話文で補っている印象がして、ますます滑稽で、現実味のないものになっています。 体育祭や文化祭の催し物の記述はリアルに、あくまでどこにでもありそうな普通の高校を舞台に描いていますが、 登場人物の会話がそもそも不自然なので、違和感をぬぐえないのです。 作家とは、もっと物知りで思慮が深く、読者に知識と新しい見解を与え、考えさせてくれる。そういう職業である。 そういうものだと思い込み、期待している自分がダメなのでしょうか。 とかく綿矢りさに関しては幻滅しかせず、時間を返してほしいと思います。 お金を返してくれ、なんて即物的な憤りではありません。 お金なんていくらでも稼ぎなおせる。 けれど時間は有限で、過ぎたものは二度と返ってこない。 金を返せというより時間を返せ、という方が冷徹で厳しい批判だと思うのですが、 今のところ私にとってそう言いたくなる作家は唯一綿矢りさだけです。 もう10年前の澄んだ感動は味わえないのでしょうか。 | ||||
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芥川賞受賞時の騒ぎなどもう知らない若い世代の人に、「綿矢りさ」を紹介すると、ネットで検索するらしく、直ぐ「とても綺麗な作家さんですね」という答えが返ってくる。この人の容姿の卓越ぶりは、10年近く経った今でも、他と隔絶しているようだ。 さて本作であるが、文化祭前の高校の甘酸っぱい空気なんか、相変わらず良く書けているなと思っていたら、「美」に関する哲学的な考察が出てきたりして、偉く真面目な訴えを盛り込んだ作品だなと思っていたら、近づいていった片思いの男子の相手の女子が自分の言葉を勘違いしたの逆手にとって、なんとレズに突入。このあたりのセックス・シーンの描写など、綿矢流の精細さで、エロ小説は今まで結構読んできたけど、このような描写はあまり経験ありません。奇想天外というか抱腹絶倒というか。前作の「かわいそうだね?」あたりから、綿矢さんの個性がのびのびと発揮されてきているように思います。プロに見いだされた若い才能が成長していくとはこういうもんなんだ、ということが同時代的に体験できます。 しかし、ラストの暴走ぶりはどうなんでしょう?処女作「インストール」に自分の部屋のものを全部ガレージにぶちまけるシーンがありましたが、本作でもそれと似たような印象があります。このような破壊衝動のようなものを、この作家さんは常に感じてられるのでしょうか?そういったことを描くことが、綿矢文学の通奏低音なのでしょうか? | ||||
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綿矢りさを読むのはデビュー作『インストール』以来、約10年振り。 17歳にしては、(エラそーながら)“読める”と思いましたがそれ以上のものは無く、2冊目を手に取るに至らず… 今回、どこかの書評で薦めていたのものの、あまり期待せずに読んでみたところ… 高校生を主人公としたいわゆる恋愛小説だが、ストーリーは突拍子もないというかハチャメチャでリアリティに欠き、その割にタイトルに込められたメッセージは、普遍的というかありきたり… でありながら、人間の毒や弱さ・優しさや強さが独特の表現や比喩でするどく織り込まれており、また、ラストに示される『ひらいて』の意味もなんでもない言葉でありながら、すんなりと心に入ってくる。“不思議と心に刺さる”に傑作だった。 『蹴りたい背中』が受賞したことにより、芥川賞が若さに媚びたなどと批判も浴びたが、やはりその才能は受賞に値したと改めて認識させられた。 | ||||
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主人公の愛さんの恋愛対象のたとえ君が、はじめてまともに喋るんです。それまでは確か朗読以外では二行以上、喋らないのですが(笑) 出だしはこのような感じです。「それがおまえの笑顔か! 乏しい!」と、怒っているといえば怒っているのですが、なぜか台詞が批評の域に昇華していらっしゃる(笑) この後に続く四行のセリフが練りこまれてます。戯曲か! というくらいに練りこまれ過ぎています(笑) 読者は舞台袖で役者さんの、素晴らしい演技を鑑賞しているのに近い感覚を抱くでしょう(笑) 主人公の愛さんは、この後にたとえ君から、人種的な括りで壮大な一喝を受けます。若さ故の過ちとか、そのような考慮は断じてなされずに、積年の恨みを込められた、天敵扱いの形で否定されます(笑) それはともかく、怒られて傷ついた愛さん、学校の図書室でワイルドの戯曲サロメを読み、預言者ヨナカーンを憎んでいるサロメさんの取った行動から、自分を省みるんです。それは偉いと思います。しかし、愛さんはそのようなサロメの一節と、自分を重ね合わせるような、知的な文学少女キャラではないんです(笑) 虚構内の愛さんは、行動力だけが強調されていますからね(笑) この小説は作家の角田光代が「まるで詩で紡がれた」などとお茶を濁していましたが、演出家の綿矢りさ本人がキャラクターの造形を歪めてまでも介入してきます(笑) 作品が詩で紡がれたせいか困ったことも起きます。糖尿病の美雪さんに、愛さんはたとえ君の「声」に最初に惚れたのだと話します。冒頭の朗読のシーンでたとえ君が、プリントを声に出して読み終えたあとに、愛さんは彼に完全に占領されたと確かに書いてあります。その後の十行くらいで、彼の声が過剰に誘い、その過剰さは悪だの退廃だのと連想していき、禁忌なものだと考え、いやいや怯えずに走ったろうと思い直し、熱いやじりが彼の方へ引き寄せられるという心理描写に行き着くわけですが、抽象的な語とか概念を並べて詩的に熱くなっちゃった! おかげで、肝心の「声」が、ぼやけて飛んでいっています(笑) キャラクターとしては美雪さんが秀逸です。インスリン注射を打ちつつ、プラトニックな手紙を作中で何度も開陳され、わけのわからない愛さんの求めに応じ、たとえ君と一緒に上京する予定と、八面六臂です(笑) 面倒な事は全部、美雪さんに押し付けられた感があります(笑) 本作品の出来が良いとは思いませんが、味わってみても損はないと思います。一日で読めます(笑) | ||||
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最近テレビのインタビュー番組に作者が出演していて、若くて可愛い方だなと思って、どんな小説を書くのか興味があって読みました。 三人の関係は推理小説さながらの面白さがあり、その展開に引っ張られて一気に読めました。 ただ逆にあらすじ主導なせいか、よくあるテレビドラマを観ているような安っぽさも感じられ、私の好みとはちょっと違いました。 主人公・愛は自分の内と外が一致しない悩みを抱えている繊細な女の子。内面描写が過剰なほど巧みに書かれているけれど、それがかえって力みすぎてキザに感じられてしまう。登場人物の行動は突飛すぎてついて行けない部分もあった。 それに高校生の大人びたセリフにも違和感があった。私の遠くの学生時代に比べてのことなので、今の高校生は実際に大人っぽいのかな。 アブノーマルにもみえる三人の関係。こんな展開あり得ないだろうと思うけど、覗いてみる価値はあるかも。 | ||||
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<ネタバレ含む> 綿矢さんの今までの作品の中で一番じゃないでしょうか。 綿矢さんってページ数が少ない作家さんだと思うんです。 なので初めは「半分以上読んでしまったけれど、こんなにめちゃくちゃで最後どうやって終わるんだろう?」と 不安になってしまいました。 それくらい今回めちゃくちゃなんですよね。 なのにまるで「折り紙を折った様に」ものすごく綺麗に終わるんです。 その素晴らしさと綿矢さんの才能に感動しました。 これが私を発売日に本屋へ走らせる理由だと思います。 今回もひとつひとつの文章がとても丁寧に綿矢さんらしく書かれています。 綿矢さんの作品には今後も注目していきます。 | ||||
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本屋で1ページ目を読んで衝撃が走りました。 なんて「たとえ」は私の好きな人に似ているんだろう!と(笑) まあ、恋してるときは自分の恋愛と本の内容を重ね合わせることってよくありますよね。 そんなわけで思わず衝動買いしてしまったわけですが、 自分が愛になったような気持ちで一気に読んでしまいました。 読んでいる間はたとえが愛おしくてたまらなく、 美雪が憎らしくてたまらなかったです(笑) 読み終わった直後の今もまだ、興奮の余韻から抜け出せてません。 ラストの愛に向けられたたとえのセリフにしびれた……! ほんとたとえみたいな男性好きです!(笑) いけてないのに実はSっぽい感じがつぼ!(笑) と、まあこれ以上暴走した感想を書き連ねるのは自重しましょう。 現実にはありえない話ですが、これもまた小説の醍醐味ということで 星4つをつけさせていただきます。 | ||||
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いつも通りさらさらと読みやすく、綿矢さんらしい作品だと思います。私はとても好きです。 「勝手にふるえてろ」や「かわいそうだね?」は、割と軽いタッチの印象で、そちらも好きでしたが、 今回の愛憎に満ちてやや重く暴走していくストーリーも好きでした。 また、高校生活が舞台の作品というのも、私には10年近く前の「インストール」や「蹴りたい背中」以来で、 そういう懐かしさもありつつ、新しい価値観が織り混ざって凝縮された今回の作品の良さがありました。 | ||||
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小賢しい描写が続くところで感じる不快感 結局馬鹿な小娘が暴走して周りに迷惑をかけるだけの話 セックス描写だけは興奮を覚えたので星ふたつ 「かわいそうだね?」のほうがよかった | ||||
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綿矢作品、出ているものは全部読んでいます。 綿矢さんは自分と同い年。芥川賞で大騒ぎになった時、私も大学生で、すごいなあと思い、読んだのがきっかけ。元々読書は好きで、現在、芥川賞選考委員をやっている作家の中に何人かファンの人たちがいて、みんな、褒めていたし。 今回の作品も、有名作家がべた褒めですし、レビューの評価も今までにないぐらい良くて、期待して、購入しました。 誰もが叶わない恋って経験あったと思うし、それが美人だろうがイケメンだろうが、皆、経験すること。 だから絶対共感できる自信もあった。 けど、だめでした。ゾクゾクしないんです。今までの作品の中で最も無難な印象だったんです。 世の中で、良いって言われるものって、やっぱり自分には合わないのかなあと、ショックでしたよ。 かわいそうだね?は、笑えて面白かったし、共感できる登場人物の馬鹿さがあったじゃないですか。現実に、あ〜いるいるって感じで。私は、綿矢さんこの路線かなって思ったんです。 今回は非常にまじめに丁寧に描いているんだけど。暴走が美しいって思うことができればそれまでですけど、中高生の恋だったら、もっと、行動しない思いの深さがあってもいいなあって思うんです。行動も出来ずに、思いを告げられなかった人が大半では? 主人公はめちゃめちゃ行動しますよね。はっきり振られるし。好きな人の彼女寝とるなんて、少女マンガじゃあるまいし。逆にリアリティーがなくなってしまって、ダメでした。 私は、ずっと読んできて気づいたんです。綿矢さんってめちゃめちゃ頭の良い作家さんなんです。だから、頭ですり合わせた感じがどうしても出てしまうんです。それを、人は美しい!って思うかどうかなんです。 美しい日本語、選び抜かれた言葉っていうのはある意味正しいけれど。言葉選びも、この小説に関しては嫌いです。あそこのことをゼリーとか。高校の描写も、深夜のマックの描写も飽きてしまう。 小説って、楽しいものなんだよ〜〜!!ほんとはね。疲れちゃう。 我慢して読んだって感じになってしまった。飽きてしまって。登場人物のだれも好きになれないし、綿矢さんの趣味かもしれないけど、「たとえ」が良い男に思えないし、父親とか、最後の鶴のところも唐突だし、昼ドラっぽい・・・ ずっと好きだったけど、これを機に読むのやめちゃうと思います。私は。もう私が読むのは最後です。 忌々しい気持ちで本を売るのは悲しいです。駄作とは思いたくないですが。 自分に合わないということで、片づけるしかないですね。 冥土めぐりを読めば良かった。そちらの方がゾクゾクしたかも。 | ||||
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設定は高校時代の恋愛問題で、 主人公が「たとえ」という男子生徒に 恋愛感情を抱きながらも、なかなか距離が 縮まらないはがゆさを描いています それにしても綿矢りさは、ギャグの天才ですね 主人公が好きになる男子生徒の名前が「たとえ」だと 読んだとき、おもわず心の中で爆笑してしまいました また、糖尿病でインスリンの注射を腕ではなく、 おなかを捲し上げてする同級生の女の子にも 笑わせてもらいました 綿矢りさは、自身が何歳になっても、高校時代の 甘酸っぱい恋愛小説を書き続ければ、売れ続けると 信じますよ | ||||
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新聞で角田光代さんが紹介されていたのを見て気になり購入してみました。 今まで綿矢りさの作品は「蹴りたい背中」「インストール」「勝手に震えてろ」を読んだことがありましたが、私はこの「ひらいて」を一番面白いと感じました。 舞台は高校ですが主人公の女子はお洒落で意志が強く、クラスの中でもいわゆる「いけている」人物です。その女子がクラスの「いけていない」男子に恋をしてしまい、ある夜学校に忍び込んでまで彼の机をあさると以外な事実が発覚し……といった話です。 話が二転三転していくので読んでいて飽きません。エンターテイメントの度では今までで一番高いのでは。そのうちにむき出しになっていく登場人物たちの心に胸が揺さぶられます。綿矢流の独特な比喩やレトリックも健在です。 | ||||
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目立たないが気になる男の子のいる教室風景。女子高校生の普遍的な光景から物語は始まる。 いけないとわかっているけど、他人の手紙を盗み読み。 さあてここから一気に物語は暴走する。 エキセントリックな登場人物が意味ありげに舞台に立ち、つられて主人公の過激な性格が発露する。 そうだよ。高校生の頃って、充実していても不満一杯でも、とにかく自分を中心に地球が回っているんだ。 練られた文章が、小説内時間の一瞬一瞬を結晶化している。 | ||||
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”大好きだ、大好きだ。こんな気持ち、恋とも愛とも呼んではいけない。彼を刺し貫く想いの矢だ。”(p.125) 「さびしさは鳴る。」にやられた人は、絶対おもしろいです。 (p.87の描写が『蹴りたい背中』を思い出す!) 今回も、最初のページから素晴らしい。 ”存在するだけで私の胸を苦しくさせる人間が、この教室にいる。 さりげないしぐさで、まなざしだけで、彼は私を完全に支配する。”(p.3) 普段生活している中でなんとなく感じつつも言葉にできない感情や情景、空気などを 日本語化する綿矢の技術には本当に舌を巻く。 『インストール』の解説で高橋源一郎に 「天才」、さらに、”綿矢りさは、この「時代」と「日本語」に選ばれたのだ。”と 言わしめた極上の日本語を今作でも充分に鑑賞できます。 内容に関しては、後半にかけての疾走感が圧巻です。 前半を呼んでるうちは、このあとどうなるんだろう?と 結末を予測、な〜んてしながらゆっくり読んでいたのが、 帯にもある、「人間の根源的な愛を問う」スリリングな展開にページを繰る手が止まりませんでした。 (ラスト10ページの出来といったら、そりゃあ、もう!) 美しい日本語と、描写の繊細さ。 小説を読みながら映画を観ているような、そんな素敵な時間を過ごせました。 間違いなく、おすすめです! | ||||
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新潮5月号に発表されて話題となっていた綿矢りささんの新作。雑誌発表時から著者の新境地と好評だったためか、解説など一切なく、そのままに単行本化された感じ。雑誌は入手しにくいので、このような早いスパンの単行本化は評価できる。内容は、著者が描く主人公にある、ひねくれた性格は健在だが、直接的行動に走る中に素直な愛情が感じられた。「夢を与える」「亜美ちゃんは美人」に、本作の兆しはあるのだが、著者の新境地というのは間違いないので、ファンにはより必読と思う。 | ||||
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