湖の男

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湖の男の評価:

4.30/5点 レビュー 27件。 B ランク

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平均点4.30pt

Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全33件 21〜33 2/2ページ
No.13
(5pt)

冷戦時代のヨーロッパ史への誘い

アイスランドについては世界史でも地理でもほとんど習うことがない。地図で北極圏に近い小さな島国だとわかる程度である。
しかし、冷戦時代、この国には米軍基地が置かれ、アメリカの対ソ戦略上重要な場所であった。核廃絶に向けたレーガン・ゴルバチョフ会談がレイキャビクで行われたことを覚えている人もいるだろう。
小説は冒頭の干上がった湖の底で発遣された白骨から一挙に冷戦時代に遡り、アイスランドから旧東ドイツへの留学生グループの物語が並行して語られ、それが白骨をめぐる捜査と巧みに絡められて展開される。
翻訳もよく、小説それ自体で楽しめるが、できれば冷戦時代の東欧史をざっとでも概観した方が、小説を深く理解できると思う。
1950年代のハンガリー、60年代のチェコ、そして70年代のポーランドと続いた東欧社会主義国の民主化運動と弾圧の歴史なしに、あのベルリンの壁崩壊はなかった。
ただ、東欧民主化運動の求めたものは「人間の顔をした社会主義」だったが、冷戦崩壊後はソ連型の官僚社会主義への反動から一挙に資本主義化したのは歴史の皮肉というほかない。
(単行本レビューから転載)
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.12
(5pt)

冷戦時代のヨーロッパ史への誘い

アイスランドについては世界史でも地理でもほとんど習うことがない。地図で北極圏に近い小さな島国だとわかる程度である。
しかし、冷戦時代、この国には米軍基地が置かれ、アメリカの対ソ戦略上重要な場所であった。核廃絶に向けたレーガン・ゴルバチョフ会談がレイキャビクで行われたことを覚えている人もいるだろう。
小説は冒頭の干上がった湖の底で発遣された白骨から一挙に冷戦時代に遡り、アイスランドから旧東ドイツへの留学生グループの物語が並行して語られ、それが白骨をめぐる捜査と巧みに絡められて展開される。
翻訳もよく、小説それ自体で楽しめるが、できれば冷戦時代の東欧史をざっとでも概観した方が、小説を深く理解できると思う。
1950年代のハンガリー、60年代のチェコ、そして70年代のポーランドと続いた東欧社会主義国の民主化運動と弾圧の歴史なしに、あのベルリンの壁崩壊はなかった。
ただ、東欧民主化運動の求めたものは「人間の顔をした社会主義」だったが、冷戦崩壊後はソ連型の官僚社会主義への反動から一挙に資本主義化したのは歴史の皮肉というほかない。
(単行本レビューから転載)
湖の男 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: 湖の男 (創元推理文庫)より
4488266061
No.11
(5pt)

何故殺さなくてはならなかったのか、罪を犯す人の心にも迫る悲しささがいつもある

この作家の作品は、事件を解決するだけでなく、そうせざるを得なかった状況に迫り、人間性も追求するような内容です。温かみがあります。
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.10
(4pt)

ミステリーで知るアイスランド戦後史

エーレンデュルシリーズはハラハラドキドキの謎解きミステリーではなく、アイスランドでなければ成立しない社会背景、歴史背景が鍵を握る重厚なストーリーが魅力。
訳者あとがきによると、アイスランドはワシントンとモスクワを結ぶ最短直線経路の真下に位置していて、冷戦中はアメリカ軍がアイスランド全土に駐留していた。
登場人物の1人は、アイスランドの政治家はアメリカの操り人形で、アメリカの軍隊がアイスランドの土地を汚していると憤り、社会主義が理想の社会だと信じている。
沖縄基地を巡る問題と似ているところがある。
1作目のあとがきだったか定かでないが、著者が「その国のことを知るにはミステリー小説は優れたガイドブックだ」みたいなことを言っていて、その通りだと思う。
どうして刑事が料理ブックを出版するの?とツッコミを入れつつ、アイスランドではそんなに滑稽な設定ではないのかもしれないと無理やり納得。
ハードな話の中で唯一ホッとできる場面でもある。
読み応えは十分あるが、犯人に意外性がなく星1つマイナス。
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.9
(4pt)

またアイスランドについて一つ賢くなりました

勿論、東西冷戦を知っている世代です。
 ①アイスランド人は、人口が少ない事もあり、同郷人がすぐ仲良くなり、お互いの事をベラベラ喋り過ぎてしまうので、スパイに向かないとの事。 ふむふむ。
 ②現在のアイスランドのドイツ大使館員は、「誰が好き好んで、こんな最果ての地に赴任するの!」的なお言葉。 確かに、どこかSF的な風景を見に観光に行くのはいいけど、一年を通して天気が悪く寒い国に住みたくはないかも。

 エーレンデュル捜査官シリーズは、アイスランドと言う国を知るにはよい本だと思います。
 
 本作では、いけ好かないけど、何故か応援したくなるキャラのシグルデュル=オーリーが更に困難に巻き込まれ、しかも、ハングアウトで終わります。 シグルデュル=オーリー、頑張れ!
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.8
(5pt)

<苛酷な運命>に翻弄された人々の姿を中心に、監視社会の恐怖や形而上学的問題をも扱った文学作品とも言うべき傑作

「エーレンデュル」シリーズの第四作。個人的に、本シリーズを含む北欧系のミステリ作家の作品は謎解きが主体というよりは、時代・社会を映す鏡という印象を抱いているのだが、本作もその例に漏れない上に、扱っているテーマが重く、シリーズ中では一番読み応えがあった。

水位が下がった湖の底から数十年前に殺害されたと推定される男の人骨が発見されるという発端はミステリ的には平凡。当然、この被害者の身元特定と犯人捜しとが物語の軸となる。しかし、エーレンデュル達の捜査と並行して、犯人の独白・回想談がカットバックで挿入されるので、早々に被害者・犯人の素性(途中から犯人の名前まで)が読者に分かってしまうので、作者が謎解きを目指していない事は明白である。だから本作が詰まらないという訳ではなく、全く逆で、この事件が起きた背景・過程をジックリ描く事が狙いだったと思う。一言で言えば、本作のキーワードは「****」で、この「****」に翻弄された犯人達の苛酷な運命を描く事が作者の主眼であろう。私は「****」におけるアイスランドの位置付けを全く知らなかったので、意外性と監視社会の恐怖とを覚えた。「1984年」にも似た意匠である。

この他、第一作から描かれ続けるエーレンデュル父娘の確執(本作では息子も加わる)、多様な男女の愛の形の提示、自分が掛けた電話のタイミングによって妻子が自動車事故に巻き込まれてしまったという"偶然"を自己責任として苛めれ続ける男の話(完全に独立したエピソードだが印象に残る)、失踪した(と信じている)男を何十年も待つ女性の悲哀と子供の頃の家族登山中に弟を亡くした(実は失踪したと信じている)エーレンデュルの喪失感・責任感とを重層的に描く事によるエーレンデュルが失踪事件に拘る理由付け、といった多彩な話題を織り込んでおり、最早、ミステリというよりは形而上学的問題をも扱った文学作品とも言うべき傑作だと思った。
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.7
(5pt)

惨めな人ばかり出てくる話に引き込まれる

アイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンの小説の邦訳4作目「湖の男」。原題Kleifarvatn(クレイヴァルヴァトゥン)は首都レイキャビクの南に位置する湖。地質学的な原因で水位の下がったその湖底から男の白骨死体が発見され,主人公エーレンデュルらが捜査を進める。
日本のメディアでアイスランドが取り上げられるときは,氷河と火山と温泉とオーロラと地球の割れ目ぐらいだが,これまでの3作同様この小説にはそうしたものは一切出てこない。描かれるのはレイキャビクとその近郊および作中人物が青春を過ごした東ドイツのライプツィッヒでの出来事や人間模様である。
また,この作者の小説には幸福な人がほとんど出てこない。正義のヒーローもいない。惨めな人生の中である者は罪を犯し,それを追いつめる主人公たちもそれぞれにつらい事情を抱えている。登場人物たち一人ひとりの人物描写をおろそかにせず,それぞれのキャラクターが引きずる過去を説明的でなく描き出している。
作者インドリダソンは以前の作品でも登場人物の行動を社会的な大きな問題と絡めて描き,例えば「湿地」ではアイスランド全国民を対象とした遺伝子と家系のデータベースをこの小説で起きた悲劇的事件の一つの要因とした。今回の「湖の男」は東欧の社会主義の悲劇というさらに大きな問題を扱っている。過去の行方不明者の捜査によって1950年代に東ドイツに留学し現在老境を迎えている人たちが浮かび上がる。社会主義に希望を見いだした青年たちが現実の社会主義国家によってどのように裏切られ失意のうちに帰国し,その後の人生をどう過ごしたか…こうした事にもかなりのページが割かれる。
現実に存在した社会主義体制に対する告発は鋭いが,留学体験者の一人に資本主義国の福祉制度等に与えた社会主義の影響を語らせるなど,著者の目はあくまで公正である。

読みやすく速やかなストーリー展開が心地よい。これは勿論原作者の力量によるものだが,訳者の柳沢由実子氏の功績も大きいと思う。また,エーレンデュルが娘のエヴァ・リンドに毒づかれる場面など,“この日本語はどのようなアイスランド語に当てられたのだろうか” と想像してしまうほど登場人物や状況ごとに多彩な俗語が駆使されている。私たちがこの遠い国の物語に親しみを感じながら読み通すことができるのも翻訳者のこうした配慮のおかげだと思う。
なお,「訳者あとがき」に「社会主義と共産主義は厳密に区別されずに書かれている」が「原文通りに,統一せずに訳したことをお断りしておきたい」とされているが,これは賢明な判断だと思う。私の読んだ限りでは原作者はほぼ正確に「社会主義」と「共産主義」を使い分けているように思われた。
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.6
(5pt)

残された女

暗く陰鬱でありながら非常に味わいある文章でこのシリーズは読み終わるたび深い余韻に浸らせてくれます。とはいえ次作までの待ち時間を考えると寂しいんですけどね。
今回も素晴らしかったです。ミステリー自体としては直球というか犯人はだいたい予想はつきますし。
小説は事件の核となる冷戦時代と現在を交互に描くことで進んでいきます。
どちらの時代にも悲恋が出てきます。
行方不明になった恋人を忘れられずにいる女性の切なさについ思いを馳せてしまいます。若い頃から苦労が多かったことが伺える彼女の人生でその恋は掴みかけた唯一の幸せだったのではないでしょうか。
失踪した際に残されていた車についての話が出てきます。彼女は車は売ってしまったと答えます。理由はお金のためです。いつもお金が足りなかったから。切ない理由だと思いました。恋人の写真も持っていない彼女にとって車は恋人との幸せを形として残しておける象徴だったはずです。車を購入した時の彼女はとても幸せだったでしょう。これからの生活、将来への期待。それらの幸せが突然消えてしまう。
ほんの短いシーンですが胸にぐっと詰まるやりとりでした。

次の作品はいつごろ出るんでしょう?どんな作品なのか。楽しみにしています。
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.5
(5pt)

推理小説であり、すぐれた歴史小説

アーナルデュル・インドリダソンの小説を読むのは、『湿地』、『緑衣の女』に続いて3作目(エーレンデュルシリーズとしては4作目であるが)。『湿地』、『緑衣の女』には痛めつけられ、傷つけられる女性が出てきて読むのがつらかったが、その点では『湖の男』にはDVされる女性は出てこないので読みやすいとは言える。だがインドリダソンはなかなか簡単に読ませてくれない作家だ。やはり別な点で胸を締め付けられながら読んだ。
 私はこの小説の大きな軸は「時」だと思う。ストーリーは干上がった湖の底で発見された白骨から始まる。壊れたソ連製の盗聴器が体に結びつけられていることから、自殺にしろ、他殺にしろ、三十年くらい前の事件であろうと思われる。日本でなら時効が成立して捜査は始まらずに終わってしまうかもしれない。だが、エーレンデュル捜査官は地道で丹念な捜査を始める。それはアイスランドには時効がないからでもあるが、彼自身が過去の傷を今もずっと抱えているせいでもある。また捜査の過程で三十年前の失踪事件に行きあたるが、失踪者を今もずっと待ち続けている女性がいる。ストーリーはまたある男の六十年代の東ドイツでの回想を語る。
この小説で描かれるのは過去と現在という時であり、日々の生活、家族の生活という時であり、年代であり、時代であり、歴史である。希望や夢や理想や信念が「時」の中で失望や、落胆や挫折や裏切りに変わっていく。「時」に翻弄される人々の姿をインドリダソンは詳細に描く。それを読むのはとてもつらい。だが、読み続けずにはいられない不思議な魅力がある。『湖の男』は推理小説でもあるが、すぐれた歴史小説でもある。読み終わって溜息をつくのが必至、その溜息が犯人が分かった満足から出るものか、あるいは「時」の残酷さに戦慄して出るものか、それは読者次第である。
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.4
(4pt)

ヘイドムルクで試し撃ちをしたから銃弾は減りました

お話の中に登場する東ドイツの相互密告システムにより人々が周りの人間に対し疑心暗鬼に陥るなど気持ち良く読めるお話しではなかった。
謎解き自体は以外にあっさりしていたなという印象です。
それよりも主人公の元に新たな親族が現れるなど、彼の子供や恋人などの人間関係がこの先どうなるのだろうということのほうが気になってしまいました。
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.3
(4pt)

誰か教えてください

「湿地」には及ばなかったが、まあまあ面白かった。
トーマスが拳銃で自殺する場面ですが、父親からもらった時には数個あった銃弾が一つしか残っていなかったのはなぜですか?。彼がそれまでに拳銃を使ったことを意味しているのかな、P273にも拳銃に触れた箇所があるんですが、何か意味があるのでしょうか?
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.2
(5pt)

東西冷戦時代の悲劇

かつて存在していたソ連による圧力下で東ドイツを始め東ヨーロッパでは多くの悲劇を繰り返した。その影響は西側にも当然及びアイスランドという小国も例外ではなかった。本シリーズでは共産主義をあたかも不磨の大典のごとく信じアイスランドから東ドイツ・ライプチッヒ大に留学した元学生の独白を挟み,偶然干上がった湖で発見された遺体の男の身元をエーレンデュルのチームは追う物語と並行して進む。その過程で遺体の男が何者か明らかになると共に元留学生の話とリンクする。元留学生はハンガリーから留学した女性と恋仲になるも悲しい運命を辿るのである。そして遺体の男もしかりである。このように本作は警察小説の形を借りて冷戦時代の矛盾国民の苦悩を描いている。最近北欧の作家によるミステリーが多く翻訳されているのもこのような題材を使うからだと思う。
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709
No.1
(5pt)

冷戦時代のヨーロッパ史への誘い

アイスランドについては世界史でも地理でもほとんど習うことがない。地図で北極圏に近い小さな島国だとわかる程度である。
しかし、冷戦時代、この国には米軍基地が置かれ、アメリカの対ソ戦略上重要な場所であった。核廃絶に向けたレーガン・ゴルバチョフ会談がレイキャビクで行われたことを覚えている人もいるだろう。
小説は冒頭の干上がった湖の底で発遣された白骨から一挙に冷戦時代に遡り、アイスランドから旧東ドイツへの留学生グループの物語が並行して語られ、それが白骨をめぐる捜査と巧みに絡められて展開される。
翻訳もよく、小説それ自体で楽しめるが、できれば冷戦時代の東欧史をざっとでも概観した方が、小説を深く理解できると思う。
1950年代のハンガリー、60年代のチェコ、そして70年代のポーランドと続いた東欧社会主義国の民主化運動と弾圧の歴史なしに、あのベルリンの壁崩壊はなかった。
ただ、東欧民主化運動の求めたものは「人間の顔をした社会主義」だったが、冷戦崩壊後はソ連型の官僚社会主義への反動から一挙に資本主義化したのは歴史の皮肉というほかない。
湖の男 Amazon書評・レビュー: 湖の男より
4488010709