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殺しのディナーにご招待
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殺しのディナーにご招待の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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不明にしてE.C.Rロラックという作家については全く知らなかったのですが、英国の古典的なミステリーといううたい文句から購入しました。この作品としては初の邦訳とりますが、1948年の出版なんですね。これはちょっとビックリしました。作者のロラックについてはおそらく多くの方がご存じではないと考えますが、巻末の横井司氏の解説に詳しいのでご参照を。 舞台は1946年(もしくは47年)2月、ロンドンのソーホー地区にあるフランス料理店ル・ジャルダン・デ・ゾリーヴ(フランス語で「オリーブ園」の意)。マルコ・ポーロ・クラブという知る人ぞ知るといわれる旅行家・文筆家クラブのディナーパーティーが計画され、そこに8人の新規会員が招待されます。ところがクラブのメンバーは誰一人現れません。客たちはクロークに帽子があったのに姿を見せないトローネというペテン師に一杯食わされたものと考え、憤慨するのですが、ディナーは堪能してお開きとなります。ところがその1時間後に、レストランの店主が配膳台の下で問題のトローネの死体を発見します。そして... 少しとっつきの悪い小説ではあると思います。というのもこれといった紹介もないままにいきなり何人もの登場人物たちが現れてあまりかみ合わない会話を初めてしまうのですから。実はこの混乱がまず作者の狙いなのですが、読む方としてはいささか面くらいます。しかしその後はさすがの筆力でぐいぐいと引き込まれていくのを感じます。 と、ここから本題の論評をしたいのですが、いつものことではありますが、ミステリーの書評はあまり踏み込んでしまうとネタバレになってしまい、ルール違反となりますので、漠然とした感想のみ。まずこういった殺人事件の場合、犯人の動機がこれだけこみいった事件を起こす程のものなのか、また犯人の人物像と合致するものなのかが重要になります。結論からいえば、(こういうミステリーにはありがちですが)トリックは面白いのですが、では犯人はなぜここまで凝った舞台設定をしなければならなかったのか?たとえ一流とまではいえないにしろどうして各界の有名人を巻き込まなくてはならなかったのか?なぜ自分の分を知っているはずのトローネが招きに応じたのか?特に最後の疑問は重要で、死んだトローネはインチキな男でしたが、大変な切れ者でもありました。自分がそうした会に招待されることに違和感を感じなかったのでしょうか。どうしても謎解き小説は謎解きのための舞台設定になってしまうという一つの例であるように感じられたと言ったら言い過ぎでしょうか。 解説にロラックという作家は情景描写などが大変巧みな作家であるとありますが、それならば第二次世界大戦が終わって間もないロンドンの雰囲気がもっと書き込まれていてよいのではないかとも思いました。ミステリーに要求するものではないだろうと言われるかもしれませんが、たとえば同時代のアメリカのロス・マクドナルドの『The moving target』などは特に細かな描写をするでもないのに、戦後の人心のすさみを巧みに描写しています。すこしいやな言い方をすれば、この辺が作家としての「格」なのでしょうか。 などとちょっと文句をつけるかたちになってしまいましたが、もちろん充分楽しめる作品です。時間のある方は手に取ってみて下さい。 | ||||
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