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ららら科學の子
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ららら科學の子の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.92pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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『あ・じゃ・ぱん!』に続いて本棚から引っ張り出し、時間をかけて通読した。タイトルは、テレビ漫画・鉄腕アトムの主題歌に出てくる一節。ただ、この長編小説のおしまいの方に少し出てくるだけで、メインストーリーとはほとんど無関係。というか、ストーリーをどんな狙いで組み立てたのかよく分からず、読みやすい半面、中身は難解というほかなかった。 作者本人を映し込んだ主人公は、1950年生まれの団塊世代。東京に生まれ育ち、進学した大学(東大または慶応?)で学生運動に関わり、バリケードの内側で起きた機動隊員に対する殺人未遂の罪で指名手配される。主人公は中国に逃げ、文化大革命のさなか、紅衛兵と一緒に南西部の農村に「下放」され、以来30年、ずっと山奥の農村で農業に励む。物語は、50歳になった彼が日本に戻り、浦島太郎の目で大きく変わった故国に目を見張り、街中をさまよい歩くというもの。全共闘時代の親友が世話を焼き、30年前に別れた妹を探し、ナゾめいた少女がまとわりつくというストーリーのアヤこそあるとはいえ、日本から脱出した「1968年」に対するノスタルジーと、彼自身の再生への模索を描くという展開で、これが込み入った情景描写や会話が重なって延々と。団塊世代のための長編戯作小説といったところだろうか。つまらなくはないものの、『あ・じゃ・ぱん!』よりはだいぶ落ちる読後感だった。 | ||||
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この作品は2003年に刊行されたらしい。もう10年も前だが、寡作の矢作俊彦にしては 比較的新しい方だ。そのためだろうか、以前と比べて作風に変化が感じられる。 まず、文章がまったくオシャレではないのだ。皮肉っぽい台詞も影を潜め、語彙もい つもの著者らしくない。ズボンのことはさすがにトラウザーというが、メルセデスと いわずにベンツだ。どこかちぐはぐな印象を受ける。それもこれも、主人公の素性の せいだろうか。いつもの探偵とかちんぴらではなく元学生運動の闘士で、30年も中国 の農村で蟄居していた、という過去を持つためか。 1960年代末の日本を逃れ、文革まっただ中の中国へ渡ったまま居着いてしまう日本人 というのは本当にいたのだろうか。下放政策や盲流の説明が細部まで詳しいので、全 体に説得力はある。ただ、今まで聞いたことがないので意外だった。そして彼は、30 年ぶりに祖国の地を踏むこととなる。 日本へ残した年の離れた妹への想い。かつて一緒に中国へ密航するはずだった旧友と の葛藤。30年の空白は埋めようにも埋められないまま、主人公は東京で漂泊をつづけ る。そもそも彼自身が一つの空虚と化している。空をもって空をあがなえるはずもな く、30年の年月は一切の弁解を拒み、また、説明を求めることもない。物語は再度密 航船に乗り込み、漂流を繰り返すほかなかった。 主人公は途中で、日本へ残した家族を思い出すことはあっても、その家族から思われ ることについては一切考えつかなかったことを反省している。人の思いにまとわりつ かれることの煩わしさを払拭するには、忘れるよりも思いつかないことだ。自らのエ ゴイスムの深淵をのぞき込んだ彼に、彼自身が与えた罰は、終わることのない放浪 だったのではないだろうか。 | ||||
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