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プラハの墓地
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プラハの墓地の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.87pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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聖書に次いで広まったとも言われた「シオン賢者の議定書」という偽書にフォーカスをして描かれた内容になっている。▼主人公以外はほぼ実在の人物であるという。小説でありながら、まさしく事実よりも事実らしい内容に仕上がった内容になっているが、それこそが著者の狙いである。▼なぜ偽書ができるのか、偽書が歴史に登場するのはどうしてなのか、そして偽書が歴史を作るのかといったことについて考えさせられる内容である。▼19世紀以降の近代そして現代の歴史を考えるうえでも含蓄のある一冊である。 | ||||
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読み応えのある娯楽小説といった趣きで、面白かったです。 ヘイトクライムの起こる背景、起こす人間の心情など、日本人として生まれるとあまり接することのない価値観に触れられるのも興味深かったです。 内容に関しては他のレビュアーさんのレビューを見て頂くとして、この本は翻訳文によるストレスがなかったのがすごく助かりました。 「薔薇の名前」の翻訳で挫折してしまった方も、ぜひこちらを読んでみて下さい。 翻訳文に引っ掛かり、そこから原文を推測して、頭の中で翻訳し直す…という作業なしで読めます。ウンベルト・エーコは面白いです。 ただ書体を変えているところはすごく読みにくいので、そこは普通にするかもっと読みやすい書体にしてほしい。文字を追っても内容が同じスピードで頭に入ってきません。 薔薇の名前も新訳で出し直してほしいなぁ… | ||||
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Amazonで購入させていただきました。 ペダンティックなミステリ『薔薇の名前』で有名なーーあるいは記号論学者として有名なーーウンベルト・エーコ(1932-2016)の最後から2番目の小説。 主人公はカピタン・シモニーニという文書偽造家なのですが、彼はダッラ・ピッコラ神父という人物と二重に人格が分裂しています。 いまでいう解離性人格障害を呈したシモニーニは失われた記憶を取り戻すため、本作にも登場する精神分析医・フロイドの自由連想法よろしく日記にありのままに書きつけ、それを<語り手>が再編成した、というのが本書です。シモニーニとピッコラ、そして<語り手>の三者がーー字体を変えてーー1つの物語をそれぞれの視点から語ることによって、陰謀に彩られた歴史が立体的に立ち上がって来ます。 「イタリア統一、パリ・コミューン、ドレフュス事件……、/そしてナチのホロコーストの根拠とされた史上最悪の偽書『シオン賢者の議定書』/それらすべてにひとりの文書偽造家が関わっていたとしたら?」と帯の惹句にありますが、本書はそのような陰謀論に対して物語の力で立ち向かおうとしているかのようです。 なぜ偽の情報が本物としてまかり通ってしまうのか。シモニーニはこう述べます。 「スパイが未公表の情報を売るには、どんな古本市でも見つかるような話を物語ればいい」(p.127) シモニーニが悪党だとしても、フロベールが「ボヴァリー夫人は私だ!」と言ったように、いつ何時デマゴギーを流してしまう側になるかもしれないぼくたちも「シモニーニは私だ!」と言うべきかもしれず、実際<語り手>はシモニー二のような人物は「実際には、今でも私たちのあいだに存在している」 (p.516)と述べています。 また、登場人物の一人であるベルマガスキ神父はの「今の私は陰謀は大嫌いだ。君のおじいさんの頃は、すべてがもっとはっきりしていた。炭焼き党員があっち側にいて、私たちがこっち側にいた。誰が敵でどこにいるのかわかっていた。今はもう昔のような時代じゃない」(506)ということばは、シモニーニは「実際には、今でも私たちのあいだに存在している」ということばとともに、現代に生きるぼくたちを戦慄させずにはいられません。 ちなみに、「プラハの墓地」というタイトルは、ユダヤ人が世界征服を企む会議を開いたとされている場所のことです。 | ||||
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代替の真実、世論を誘導する、影の組織の隠謀?過去の話なのかはたまた現在の状況なのか? エーコの独特の雰囲気! | ||||
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ウンベルト・エーコ著。 「薔薇の名前」の長さをものともしない複雑怪奇な物語で重い作家と思ってはいたが、 この本の重さは、中身の詰まり方が文章以外のものまで含めすごい。 『シオン賢者の議定書』という、世紀の問題書を中心に据えて構築された小説。 主人公シモニーニ以外は、ほぼ実在するという奇妙な「歴史小説」でもあるらしい。 とにかく、悪意が満ちている。 主人公シモニーニの姑息なのに、重用される悪者ぶりに圧倒される。 冒頭から、フランス、パリ、フランス人、ドイツ人、ユダヤ人にしても、キリスト教にしても、ほとんどのものを悪意に満ちた視線で書かれている。 斜め目線というか、憎まれ口というか、罵詈雑言ではないのだが、とにかくひねくれた感情の中での表し方が、歴史を見つめている作家の深さを感ずる。 何度も前のページに戻り、前の章に戻りしつつ読み終わった。 読後も、いろいろと考えさせられるちょっと苦い素晴らしい物語。 内容は、もっとすごい。 | ||||
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偽書は多くあるが、人に直接かつ膨大な害をなしたものは、ユダヤ人の有害性を説いた「シオン賢者の議定書」を凌ぐものはないと思います。 架空の人物であるシモーネ・シモニーニがこの偽書が書いた様を、19世紀後半フランス社会の事件(主人公以外は全員実在の人物である)を通して描かれる、読み応えのある本です。 ただ、私のような一般の日本人の知識では背景を理解するのが精一杯で、張り巡らした伏線が逆に困惑を招いてしまうので、末尾の年表や 訳者あとがきを読むくらいの予備知識を入れておかないと、「当時の世相・思考」を知る面白さは感じても、「小説」としての本書を堪能するにはちょっと厳しいかな、と思います。 正直、反則的なレビューですが、再読までは。。。(再読する価値はありますが)という方はご参考にしていただければ。 | ||||
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記号学の大家にして、ミステリー小説「薔薇の名前」で世界的ヒットを飛ばしたエーコの6冊目の小説である。明確な主題を秘めつつ技巧を凝らした、19世紀のヨーロッパ史を俯瞰する壮大な物語である。本書の翻訳版の刊行に前後してエーコの訃報が飛び込んできた。 イタリア北部で生まれたシモニーニは、ユダヤ人を憎悪する祖父に育てられ、大学を出たのちに公証人事務所で働き、文書偽造の技術を習得する。シモニーニのその技術は各国の諜報機関の目の留まり、彼はヨーロッパ各地でさまざまな謀略活動に従事することになった。カリバルディのイタリア統一、1848年の革命、ナポレオン三世の独裁、普仏戦争、パリコミューン、そしてドレフィス事件である。1800年代中期以降のヨーロッパ史の裏側で、彼は文書偽造を武器にして目覚ましい悪党ぶりを発揮したのである。そして、偽書の極めつけと言うべき、ユダヤ人ラビがプラハの墓地で世界転覆を企てた証拠書類「シオン賢者の議定書」をデッチ上げたのだった。 本書においてエーコは幾多の工夫を施している。まず、物語の語り手にはシモニーニとその分身のピッコラ神父と語り手の3者を揃えている。これによってストーリーを複数の視点から俯瞰できるようにした。次いで、シモニーニとピッコラッ神父以外の登場人物にはほとんど実在した人物を配した。政府高官や秘密警察幹部のみならず、デュマやバルザック、フロイト、プルーストなど文化人の俗っぽい素顔が描写される。実在した人物を動かして実際に起きた事件や争いや陰謀を描くことによって歴史の再現を図る。それに加えて、イエズス会やフリーメーソン、ユダヤ人等の謀略を専らとする秘密組織、黒ミサの儀式、死体を隠す地下水道とおどろおどろしい舞台装置を用意する。合間にシモニーニの唯一の道楽である美食のメニューの数々を詳細に述べることも忘れない。最後に、語り口を当時人気のあったのウージェーヌ・シューやデュマの大衆小説そっくりに真似た上で、当時の風俗を描いた銅版画を多数挿入すれば各ページから19世紀が匂い立つ、という凝った構成である。したがって、この諧謔精神に富む精緻に組み立てられた小説は自ずと読者を選ぶであろう。私は読むのに時間を要したが、存分に楽しめた。ただし、最初に「訳者あとがき」を読むのが理解を助けると後で気づいた ヨーロッパにおける反ユダヤの歴史は古いが、ユダヤ人が世界転覆を企てているとの陰謀論が歴史の中で肥大して、ついにはナチスのホロコーストに行き着いた。その際に重要な役割を果たした偽書「シオン賢者の議定書」の成立過程をシモニーニという人物を置くことで解明しようというのが著者の意図である。エーコ自身はこれまでに何度もこの偽書を取り上げて批判してきたが、より効果的に否定するために本書を書き下ろしたのである。「虚構(フィクション)に対して物語(フィクション)で対抗するのがエーコの狙いではないか」と訳者の橋本勝雄氏は述べているが、その意図の見事な成功に私は感嘆する。 最後にエーコが差別主義者の本音を暴露している部分を引用したい。 「民衆に希望を与えるためには敵が必要です。愛国主義者は卑怯者の最後の隠れ家だと誰かが言いました。道義心のない人ほどたいてい旗印を見にまとい、混血児はきまって自分の血統は純粋だと主張します。貧しい人々に残された最後のよりどころが国民意識なのです。そして国民のひとりであるという意識は、憎しみの上に、つまり自分と同じでない人間に対する憎しみの上に成り立ちます。市民の情熱として憎しみを育てる必要があります」(402ページ) これは19世紀の物語であるが、いまの世界も虚構の中に憎しみを忍ばせるような言説が横行しているのではないか。それゆえにエーコは現代人への警鐘としてこの物語を書き残したのであろう。理性の力で虚構を打ち破ることに賭けたエーコの挑戦に私は敬意を表したい。私たちは惜しい人物を失った。 | ||||
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主人公シモニーニの「超悪辣な」半生を通して、19世紀後半ヨーロッパのダークサイドを描いた、大変に読み応えのある歴史小説です。税抜3,500円、小説としては決して安い値段ではないですが、特にエーコのファンではない私にとっても、3冊分くらいの楽しみ方ができたので、「お得」との見方もできるかもしれません。 まずはミステリー小説として、興味深く、どんどん読み進められます。物語の舞台(主人公のパリの住居やその近所)描写に始まり、自分が誰なのかよく分からない60代の主人公が登場します。シャルコーや若き日のフロイトが登場する暗示で、どうやら彼は二重人格のようである。その裏にトラウマがあるらしいと読者に想像させます。では、彼に一体何があったのか?少年時代からの記憶を再生しつつ、謎解きが進み、最後の最後に彼を二重人格に追い込んだ衝撃的な出来事の全貌が種明かしされます。第一人格のシモニーニ、第二人格のピッコラ神父、第三者の語り手の3者がリレー形式で、物語を継いでいきます。 次に、ナチスのホロコーストの根拠にされた、悪名高き「シオンの議定書」なる偽造文書がどうして書かれたのか、という知的興味・関心に応えてくれます。主人公シモニーニはフィクションだそうですが、それ以外の登場人物や事件は、全て史実に基づくそうです。その創作過程のトンデモぶりたるや、唖然。ほらね、陰謀論って、こんなにしょうもない人種が、しょうもない動機で書いているんだよ。嫌というほど印象づけられます。 第三に、19世紀後半のヨーロッパを覆う空気、特にダークな面に触れ、彼の地のメンタリティと日本のメンタリティの違いを、とことん味わうことができます。絶対神を持つ風土において、カトリック教会の権威や階層秩序中心の社会から、「自由・平等・博愛」の普遍主義、個人主義に社会が移り変わる19世紀ヨーロッパの、二項対立のすさまじさたるや、いかに。変化に抵抗する人々の、行き場のない恨み、怒り、憎しみがふきだまって、人種的偏見に形を変え、「シオンの議定書」に結晶したとも言えます。シモニーニという架空の人物は、この時代のネガティブな感情を擬人化したもの、と捉えました。憎しみと偏見が手を結ぶのは人類共通ですが、それにしても、日本でここまで策謀するか?そのスケールに気圧されてしまい、やや呆然としています。 主人公が救いようのない悪人のため、ほっとする場面は全くなく、気分が落ち込んでいるときに読んではいけない本です。美食家の想定なので、食べ物がレシピと共に詳しく描写されており、作ってみようかと思わせるほどなのですが、美食は究極のエゴとの噂もあり、それさえ段々と気持ちが悪くなる。登場人物がやたらに多く、100人を優に超えるのでは、というほどなので、途中で「主要人物関係図」を書いておけばよかったと後悔しました。カタカナで似たような名前が出てくるので、混乱するんですよね。 ちなみに、プラハの墓地という題名は、「シオンの議定書」で、長老たちが策謀を話し合う“舞台装置”として選ばれた場所のことでした。著者自身が選んだ数々の挿絵が、読者がこの世界に入り込むのを助けてくれます。 | ||||
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偽書「シオンの賢者の議定書」をめぐる膨大な知識の蓄積に裏付けられた圧倒的な物語。著者は主人公以外は実在するというから、イタリア統一運動、普仏戦争、パリ・コミューン、ドレフェス事件についての一応の知識がないと楽しめないと思う。また、物語の設定で主人公の二重人格というのがよくわからない。挿絵がいい。 | ||||
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