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無垢の領域
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無垢の領域の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.76pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全25件 21~25 2/2ページ
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桜木紫乃は、いずれ「直木賞」を受賞するに違いない、あるいは獲るべきだと思っていたが、受賞作が『ホテルローヤル』になるとは。 『ホテルローヤル』は、以前レビューした通り桜木紫乃の作品の中では、その“らしさ”が今一歩伝わってこない厳しく言えば凡作だ。 直木賞受賞のニュースを(これが桜木紫乃だと思わないでほしいと)複雑な想いで目にしてから約四ヶ月、果たして受賞後に初めて刊行された長編の出来や如何に。 結論から言えば“らしさ”を充分に味わえると共に従来のテーマからの拡がりを感じさせる傑作だ。 まずは、作者の鋭い感性と強い拘りを感じさせる“シャープで研ぎ澄まされた文章表現”が戻ってきた。 冒頭、物語の舞台となる釧路を表現する『幣舞橋と黒い川面は、墨絵に似ているといつも思う。』という風景描写。 あるいは、 『伶子が秋津の左腕を持ち上げ、時計を見る。人前でそんなしぐさのできる女だった。』という書道家「秋津龍生」の個展を訪れた妻の人物描写。 いずれも何気ない表現ながら、物語の舞台や登場人物の心象風景や心根を鮮やかに切り取っている。 一方で、ここぞという時には 例えば、同じ個展で目玉とも言える作品に対する「純香」の 『この幅からでてこないの、この字』というセリフの様に、ズンと心に響く表現が放たれる。 そして、このセリフは、思わず唸るラストのエピソードに繋がる“書道家”としての「秋津」を、一言で見事に表現している。 読み始めて十数ページで既に“シャープで研ぎ澄まされた文章表現”が巧みに散りばめられており、以後も“らしい”表現が満載である。 一方、ストーリー/テーマはどうか? 彼女の作品は“北の大地に根差した理不尽な重荷を受け止める女達の凛とした靱さ”が共通とも言えるテーマだと思う。 本書においても「龍生」や図書館長で純香の兄「信輝」そして純香の書道教室に通う「嘉史」登場する男たちが皆各々の“重荷”に押しつぶされ (かけ)ていて、ある種の脆さを抱えているのに対して、「純香」「伶子」「里奈」「沙奈」そして「龍生の母」は、皆自らの道を自らの想いで選び 取っていくという意味において“靱い”。 しかしながら、その靱さは、(高校生“沙奈”を除いて)必ずしも“凛とした靱さ”といえるものではなく、ある種の諦念や狂気に支えられている。 主人公とも言える「純香」においては『無垢』に。 大人の辛口恋愛集とも言える短編集『ワンモア』を“大団円”に締めくくった“甘さ”は見られず、 “重荷”を抱えながらもそれでも生きていくとした長編『ラブレス』の健全な“凛とした靱さ”からそのテーマを拡げ、 やるせない人間の“業”を“人間模様”をしっかりと描き分けていく。 従来も作品からもう一段深みが増した、いずれにしても直木賞作家にふさわしい傑作と言えよう。 | ||||
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書道家(秋津)その妻(怜子)、秋津の母、そして図書館の館長(林原)その妹(純香)、林原の恋人(里奈)の心の描写が、非常に良く書けている。たぶん心の描写を書かせたら今一番の作家ではないだろうか。この心の描写力があるから、この作家の本は読んでいて飽きると言うことがないのだと思った。秋津の母と秋津、その妻とのの複雑怪奇な関係はなかなか書けるものではない。この関係を書けているからこそ、最後のオチも納得が行った。もっと最後を膨らませて、殺しの犯人は実は、○○と言うところまで含みを持たせれば、立派なミステリーに仕上がったと思う。 直木賞の「ホテルローヤル」でこの作家を評価しないで欲しい。他の長編で評価して欲しい。そして「無垢の領域」もこの作家の評価を上げる作品の一つであると思う。最初☆1つを上げている人が居たので、読むのを止めようかと思ったら、最後まで読んで正解であった。決して☆1つの作品でなない。 | ||||
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サスペンスもあり最後まで飽きさせないストリーと創造出来ない意外な結末です。 | ||||
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選考委員と読者の評価が著しく異なる「芥川賞」作品よりも、こちらの方がよほど安心して読める。飛び切りの傑作だとは思わないが、中年男女の心理描写や北海道東の自然など、なかなか上手く描けている良作だと思う。正直に言うと、「直木賞」を受賞するまで、この作家の本を読んだことは無かった。その意味で、○○賞といって出版社などが騒いだりすることも、決して悪くは無いのかもしれない。個人的には、いま売れている『ホテルローヤル』等の短編集よりも、いくつか出版されている長編の方をお勧めしたい。 尚、当然のことながら、本書は小説(フィクション)であり、障がい者や高齢者を、家族や社会がどのように介護すべきかを論じたハウ・ツー本ではない。作中で彼(女)たちを貶めるような発言があったり、殺害されるような事件が起こったからといって、作者の品格をどうこう言うのは筋違いだろう。これだけの作品で、星一つはあり得ない。 | ||||
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ネタバレあり。 新潮社「波」が到着すると、期待しながら最初に開くのが「モノトーン」という題名だった本作である。というのも、美人で書道の達人だが障害のために社会生活がひとりではできない純香と面倒を見る図書館長の兄の生活が、純香と同世代の障害者をかかえる我が家を彷彿とさせ、いったいこの先、この兄はどうやってこの苦難を乗り切っていくのか、作者はどう描くのがが楽しみだったからである。一方の主人公の売れない書道家宅は母親の介護に追われるというこちらは多くの人がこれから抱える課題をもって登場する。 しかし、物語の終盤で作者はこのふたつの障害をとんでもない方法で解決してしまう。介護が必要な母親は仮病であることが発覚し、障害者の純香は障害者ゆえの正直な発言に逆上した子供に殺されてしまう。 それからは二流の不倫小説・・・・。 作者は介護や障害と生きる人たちを描きたかったのか、それとも個人の努力ではどうにもならない邪魔者を消し去っても不倫の苦悩?を描きたかったのか。不倫の話のツマにされたのでは、本当に介護をしている人も、障害者と生活している家族も報われない。こういう物語を「直木賞」受賞作以降に書けるのは、彼らを社会の不適格者と作者が潜在意識で認識しているのだろうか、それとも品格の問題だろうか。 | ||||
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