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(短編集)

伝奇集



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【この小説が収録されている参考書籍】
ボルヘス「伝奇集」
伝奇集 (岩波文庫)

伝奇集の評価: 4.12/5点 レビュー 41件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.12pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全41件 21~40 2/3ページ
No.21:
(4pt)

円環の廃墟が良い

作家のための作家。もし「小説」(文学)に自分は興味があり、それなりに詳しいと自負するような人であるならば一読はすべきだろう。形而上学的な作品となるので、人によっては哲学書でも読んでるような気分になるかもしれない。

 解説より、
「すなわち神の探求であり、存在の究極的な意味のそれにほかならない。真偽の必ずしも明らかでない博識、シーリアスな象徴体系、知的なユーモア、エキゾチックな背景、神秘的な雰囲気といった、ボルヘスの短編の世界をつらぬく特質」
 とあるが、せいぜい10ページ(20枚弱)ほどの短編の中に、色々な要素が噴出し、物語世界は広がり、収縮する。小説とは、読者の中に現れる一つのイメージだと言えると思うが、ここには確実にボルヘス独特の小説世界がある。

*********

 円環の廃墟は、一般的には芸術家の創作という営為であり、生の探求と反復という隠喩だということだが、一番完成度が高いと思った。

「最初、夢は混沌としていたが、間もなく、いわば弁証法的なものとなった。よそ者は、焼け落ちた神殿にどことなく似た、円形の階段教室の中央にいる自分を夢にみた。黙りこくった大勢の学生が階段席を埋めていた。(中略)男は学生たちに解剖学や宇宙形状額、魔法などを講義していた。」
といった簡潔だが、特殊な文体で、失敗の先の成功、そして終わりという創造の営為が語られていく。
伝奇集 (岩波文庫)Amazon書評・レビュー:伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.20:
(5pt)

円環する幻の迷宮

(他の者たちは図書館と呼んでいるが)宇宙は、真ん中に大きな換気孔があり、きわめて低い手すりで囲まれた、不定数の、おそらく無限数の六角形の回廊で成り立っている。・・・という「バベルの図書館」の冒頭部分の、カッコでくくられた部分から「宇宙は」までを読んだとき、感動のあまり、なんだかしらないけれど、叫びたくなった。図書館や書籍に関するベストセラーは多々あるが、こんなに端的に書籍の魅力を表現した作家は他にいないのではないか?と思う。
ボルへス自身、本の魅力に取り憑かれた人で、幼年期は父の蔵書に囲まれて過ごし、晩年はアルゼンチン国立図書館の館長に任命された。これも果てのない(ように感じられる)巨大な図書館が登場する、ウンベルト・エーコ著『薔薇の名前』に登場する盲目の図書館長は、ボルへスがモデルだといわれている。図書の作家、書籍の作家、そんな印象が強い。

ミステリやSF小説において、結末で冒頭に戻されて、えんえん同じ小説を読み続けなければならない、という仕掛けは、現在では「ありがち」な結末の一つで、単なる仕掛けとしてパズルのように使われると「ああ、またこれね・・・」と、うんざり、まったく何の味わいもないのだけれど、ボルへスの短篇は物語が発する世界の空気が濃い霧のようにたちこめているので、読み始めるや一寸先も見えなくなってしまい、読者は美しい円環の迷宮に囚われて逃げられなくなってしまう。

ボルへスの小説の魅力は、一人で静かに読むのも、もちろん素晴らしい経験になるのだが、驚きの結末や迷宮のありようを、他の読書人に説明し「語る」とき、それがさらに輝きを増すという不思議さにあると思う。
多分、彼の小説は、読んだ者の想像力の箍を外してしまうのだ。そうして、千差万別、個人の脳の迷宮に入り込んで、アウトプットするとき個々の空想を知らずくっつけてくる。なので、語れば語るほど壮大に面白く感じられる、という「起爆的」な物語なのだ。

ネットでボルへスを調べていたら、「ボルへス会」なるものを見つけた。説明によるとこの会は「ボルヘスの知的で幻想的な作品に魅せられ、職業や関心事などのジャンルを越えたメンバーからなる異色の集まり」とのこと。
なるほど、と思った。そう、語り合いたくなるのだ。そして読者たちは「ボルへス」という円環のなかで永遠に幸福に迷い続ける。
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4003279212
No.19:
(2pt)

翻訳以前の問題

確かに鼓さんの直訳は読みにくい。日本語表記のおかしな点も散見される。

 哲学者マイノンクが「メイノング」になってるわ、「いかさまな者」って「いかさま師」のこと?
 「モーロ人」って普通「ムーア人」だろ。

 でも、本書の最大の問題点は翻訳以前の問題、つまりボルヘスの原作にあると見た。

 一言で言うと「固有名詞が多過ぎる」のである。殆どの日本人が聞いたこともないような南米やヨーロッパのかなりマイナーな人名や書名がやたらと引用されるのである。一種の衒学趣味なのかも知れない。小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』にも共通の悪趣味である。

 やたらと海外での評価が高いので、多くの日本人読者は読む前から名前負けしてしまうんでしょうなあ。

 確かに、20世紀前半に書かれたにしては相当時代に先んじていた作品群だったとは思う。でも、今じゃ純文学、SF、エンタテインメント小説を通じて、この人の影響を受けた作品がいくつもあるので、むしろボルヘスの手法が陳腐化したとも言えよう。

 例えば、同じ短編集でも読後のインパクトの強さでは、グレッグ・イーガン『祈りの海』の方がよほど上で、読み易さ、小説としての面白さも勝っていたと感じられた。

 結局、ボルヘスって、名前でコワモテしている歴史上の小説家と捉えるべきではなかろうか、と思った。
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4003279212
No.18:
(3pt)

人の格

ある本のコラムでボルヘスの「記憶の人、フネス」の一部を読んだ。そして、深い思いに捉われた。
それはこうだ。「しかし、私は彼はあまりものを考えることが出来なかったのではないかと思う。考えるということは物事の細かい違いを忘れることであり、一般化することであり、また抽象化することである。フネスの溢れるばかりの記憶の世界にはそれこそ実際にあったことほぼそのままの詳細しかなかったのである」。
そこで、全編を読みたくなり訳書を購入したが、インパクトが異なる。もう一つの訳書があったのでそれも購入したが、これも違う。
どうやら、コラムを書いた人が訳したようだ。
また、最近富士講六世食行身禄の伝記小説を読んだが知らないままがよかったという経験がある。
訳者、小説家が作家、人物の高みに達していないのだ。自己のレベルにおいてしか見えていない。
ジャック・ラカンもそのような状況にあると思う。ラカンの翻訳ものよりラカン派の秀でた日本人医者の著作のほうがよく解る。そういうものだろう。
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4003279212
No.17:
(5pt)

読者を迷宮に誘い込む魅惑的短編集

架空の書物・人物・事物の評伝という形式で作者自身の思惟を奔放に綴って読者を迷宮に誘い込む短編集「八岐の園」、練達した小説技巧でカミュ「追放と王国」を彷彿とさせる短編集「工匠集」の二部構成から成る作品。

「八岐の園」では、読み手が持つ宇宙観、哲学体系、時間の概念などを揺るがす。例えば、時間についてはその均一な連続性を否定する以下の様な言辞もある。

  「未来は現在の願望としてしか現実性を持たず、
   過去も現在の記憶としてしか現実性を持たない」

記憶、時間、循環性は繰り返し語られるモチーフである。本についての以下の言辞も面白い。倉橋由美子氏「スミヤキストQの冒険」を想起させる。

  「世界には唯一の(基底)本しか存在せず、全ての現存する本は
   その無限分岐の結果である」

叙述形式は古代伝承的でもあり抽象論理的でもありカフカ的でもあり幾何学的でもある。これらが渾然一体となって読む者を包む。輪廻など東洋思想にも触れている。

「工匠集」では、南米特有の狂騒的リズム感とシニカルな視線が混淆した世界が展開される。作者がポーやチェスタトンを読み込んでいるのは驚きで、小編の多くにミステリ的構成や計算が施されている。読み応え充分であり、読者を迷宮に誘い込む魅惑的短編集だと思う。
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4003279212
No.16:
(5pt)

世界の真実に切り込むボルヘス流千夜一夜

アルゼンチンを代表する現代作家ボルヘスの17の短編が収められ、彼の代表作といえるバベルの図書館や 円環の廃墟なども含まれています。 表紙の気難しそうなおじさんがボルヘスその人ですが、その顔に負けず作品もかなり気難しく少々とっつきにくい 面があるのも事実です。 ですが、ラテンアメリカ的でありながら古今のあらゆる題材 (哲学、宗教、寓話)を料理する手腕は緻密ですばらしく、 何度も読み返すとその幻想的な世界に引き込まれる事は確実です。 時代の変化に影響されない碩学の力を堪能できる一冊と言えると思います。
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4003279212
No.15:
(5pt)

破局しているのは確かだが、決して破滅はしない。

モザイクのごとく入り組んだ一冊。圧倒的な想像力と、読者を幻惑させるトリックの数々には舌を巻くばかり。そして、この作品の
底流に流れているのは間違いなく作者ボルヘスの文学・哲学・神学に通じた博識さだろう。
表面上は前衛的・実験的でありながら、諦観の側面では完成してしまっているこの一冊に触れると、文学の持つ無限の可能性、
飽くことのない哲学の追求、宗教の持つ美しさと胡散臭さを突きつけられる想いだ。
「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」での発熱するような知的好奇心、「円環の廃墟」においての絶望的な退廃感の
真偽、「バベルの図書館」で垣間見る有限・無限の解釈、作者自身が作中何度も名を挙げているチェスタトンのユニークで逆説的な
作風をより神秘的に特化した「八岐の園」や「死とコンパス」などの推理興味あふれる作品。
ひねくれた論理が独特な「ユダについての三つの解釈」......兎に角書ききれないが、すべての短篇が、時間と空間を歪曲させるような
奇妙な味を有しています。むしろわざと歪曲させることに一本気な信念で立ち向かっているような感じがしてしまってならないのが
率直な感想ではないか。
また魔術的な文体がそれを加速させる。それも手伝って何度読んでも新しい発見がある事実。それでいて、すでにそれさえ知っていた
ような懐かしさは一体何なのか?

永遠に循環する読み物がここにある。
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4003279212
No.14:
(3pt)

記憶の人・フネス

ボルヘスは難解だ。いや難解と言うより、作品自体の言いたいことがわからないときが多い。これは多分に読み手の無知に由来すると思ってみよう。この『伝記集』もこの20年来、版を変え訳者を変えて何度か読み返しているが、わからないものが少なくない。

本書中、やはり印象に残るのが「記憶の人・フネス」だ。フネスはほとんど世界文学界の象徴的登場人物、ラスコーリニコフやスタヴローギン、バートルビーやエイハブらに匹敵する存在感を示している。これを読むだけでも本書の価値はあろう。フネスは異常なる記憶力を持っているが、それは記憶力を絶対の武器とする『神聖喜劇』の東堂太郎とは異なり、記憶した物事を決して忘れることが出来ないという病的症状をもった人物なのである。「フネスの存在は何を意味するか?」などといった反応はひとまず措いておいたほうがよい。人間とは不可思議なものである。

倫理的・道徳的厳格を求める危ない教条に対しては、文学こそが生きる糧になるということを思い知ることが出来る。そういう(倫理的・道徳的教条を主張する)小説も決して少なくはないが・・・・。そうした事態をも指して『神聖喜劇』の作家は「俗情との結託」と述べたのであろう。
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4003279212
No.13:
(4pt)

膨大な書物の館の、短い物語。

'@神秘主義者たちの描く宇宙のかたち。
'A危機に直面する人々の脳裏にひらめく人生訓。

ボルヘスの文章には、'@と'Aが端から端まで敷き詰められています。これらが軽く流せる人でないと、この人の文章の本意を汲むことは難しいでしょう。
「作家のための作家」と呼ばれた所以です。

彼の書く、感傷にひたる暇もない簡潔な文体はチェスタトン的で、読むのに少々骨が折れます。彼の描く世界は広大無辺でありながら、自壊する運命をも内包しており、実に複雑なのですが、ボルヘスは物語の骨子を「膨大な知識の独り語り」によって表現し、様々な世界をほんの10-20頁で語り終えてしまいます。短編一篇一篇が、伝奇SF一冊に相当する密度の濃さです。
――――――――――――――――――――――――
想像から人間を創り出し、消滅するまでの過程を描く「円環の廃墟」
イスカリオテのユダの行為についての論考群「ユダについての三つの解釈」
ほとんど要約のようで在るために、形而上の部分に比重が傾く推理小説「死とコンパス」
ひとつの言葉に対する仮定から広がる解釈が、現実世界と相反し合うまでを描く「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」
アカシックレコードのような「無限に続く図書館」の言語の混乱を描く「バベルの図書館」
などを含む、全十七篇。
――――――――――――――――――――――――
下に示したボルヘスの宣言文から、彼の小説作法が簡単に理解できると思います。いきなり核心に迫る外国語の新語句が現れるところや、全体を'まないと意味が分からないところ、そして、全体が'めた瞬間になるほどと思えるところが。

「二つの美学が存在する。鏡の受動的な美学と、プリズムの能動的な美学。前者に導かれて芸術は、環境もしくは個人の精神史の客観的な模写となる。後者に導かれて芸術は、自らを救い、世界をその道具とし、空間と時間という牢獄から遠く隔たったところで、独自のヴィジョンを創出する。これが<ウルトラ>の美学である。その意思は創造にある。宇宙に思いもよらぬ切子面を刻むことにある」
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4003279212
No.12:
(5pt)

無限の迷宮

おそらくこの作家の短編集の中では一番、密度が濃い短編集だと思います。 一つ一つの短編が非常によくできていて何度も読むとさらに理解や発見が広がり一冊だけでとても長く楽しめます。 この作家の短編集は不死や連続といった無限性がテーマになっている作品が多いです。 ひとことであらわすと迷宮といわれる所以でしょう。
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4003279212
No.11:
(5pt)

未来を予言した本

何度となく読み返した短編集。 今までにこれだけ私に影響を 与えた小説はあったかろうか? この小説は未来をも予見した1冊とも言えます。 「バベルの図書館」は現在Googleが行なっているミリオンズ ブックサーチを想起させるし、「記憶の人、フネス」は 今流行の脳科学ブームの先鞭をつけた内容とも言えます。 また「バビロニアのくじ」は柄谷行人もそのアイデアを 評価しています。 短編小説としては難解な部類だと思います。 私も何度か再読して理解した短編もあります。 小説の内容を圧縮すると哲学に近づく。 そして文体は極めて詩的です。 最高の小説です。
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4003279212
No.10:
(3pt)

翻訳が……

原著が大傑作なのは本当。 間違いなくノーベル賞クラス(とってないけど)。 ただ日本語が…… 誤訳も多いけど、直訳的で文章になってない部分が多すぎます。 ボルヘスは詩人だから、単語レベルでリズミカルな所があって訳すのが大変なのは分かるんですが。 『幻獣辞典』の柳瀬さん辺りが新訳してくれればいいのに。
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4003279212
No.9:
(4pt)

小説のおもしろさ、読書の幸福

~エンターテインメント小説を読むなんて暇つぶしとしての意味しかない。何の腹の足しにもならない、人生の時間の浪費だ。
というような非常に荒んだ考え方にとりつかれてしまっていた私は、その頃数年、新書や選書、学術文庫などしか手に取らなかった。
しかし、たまたま気が向いて読んだこの本で、小説のめくるめくような面白さを思い出した。上質な愉悦の~~時間を過ごすことこそ人生の良質な使い方だということに気づくことができた。(齢をとったのかも知れないが。)
その後幸運にもG.マルケスやU.エーコをはじめ私を軽い酩酊感とともに素敵な異世界へと迷い込ませてくれる小説家たちに次々と出会うことができ、子供の頃感じていたような読書の楽しさが蘇ってきた。何度も読み返してみたい小説って、そうだ、あの~~頃もあったなあ。~
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4003279212
No.8:
(4pt)

難著ですが、それだけに本質に訴えかけてきます

■この本をお勧めできるのは・・・
物語をお求めの方にはお勧めしません。
『小説には哲学的、観念的なものがないと物足りない』と感じる方にはお薦めです。
■この本の構成
この本は、『八岐の園』と題された前半と、『工匠集』と題された後半に分けられていますが、前半に非常に難解な幻想的、観念的、記号的作品がかたまっています。後半は比較的わかりやすい今日の短編小説のスタイルに沿った作品で構成されています。
■本質を映す鏡として
前半の難解な作品群が、小説家としてのボルヘスの真骨頂であると思います。代表作『バベルの図書館』、『バビロニアのくじ』、『円環の廃虚』など、現代社会のどこか空虚な感じと現実感の薄さを象徴しているような作品は、メディアを通して入ってくる直接的な言葉による情報とは違い、また別の角度から現代社会全体(の本質)を認識させてくれるように思います。
個人的には、具体性のある設定と比較的物語性があるという点で、いちばん最初に収録されている『トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス』という作品がもっとも好みでした。
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4003279212
No.7:
(1pt)

翻訳の問題

「バベルの図書館」の冒頭、「24つの文字(letter)」の組み合わせとなる所、「24枚の手紙の組み合わせ」となっています。 これでは意味がわかりません。 もう少しいい翻訳でないとボルヘスがもったいない。
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4003279212
No.6:
(4pt)

ボルヘス入門書

難いイメージのあるボルヘスですが、意外と多彩で読みやすい本でした。 数多くの短編の中でも私のお気に入りは「トレーン~」「記憶の人、フネス」 着眼点が新鮮で面白く、目からうろこでした。 ミステリー性の高い「八岐の園」「死のコンパス」 特に「八岐の園」は、最後の一文を読んだ瞬間、「やられた」と思いました。 かなりオススメです。 真偽のほどの分からない引用や、哲学めいた言説の多さに 取っ付き難さを感じるかもしれませんが、 価格、入手しやすさ、内容から鑑みても、 ボルヘスの本の中で一番取っ掛かり易い本だと思います。
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4003279212
No.5:
(5pt)

落ち穂拾い

unoさんのレビューで、既にボルヘスの魅力は語り尽くされていそうなので、まだ話題にのぼっていない作品の落ち穂拾い(笑)
ぼくが特に好きなのは、「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」と「記憶の人、フネス」
「ドン・キホーテ・・・」は、現代において、ピエール・メナール氏が、ドン・キホーテをもう一度書く、という話。
パロディーにするわけでも、書き写すわけでもなく、一言一句まったく同じドン・キホーテを、新しく書く、わけです。
ただそれだけなんですが、作品の最後に『「キリストのまねび」をジョイスやセリーヌが書いたと思えば、その作品にはまったく新しい意味が生じる』といったことがサラっと書いてあってボルヘスの文学観が鮮やかに浮かび上がる仕掛けになっているわけ。
「記憶の人、フネス」は、一転して笑える悲劇。
落ち葉一枚一枚の葉脈の模様まで鮮明に記憶して忘れることができないフネス氏のお話。
このフネス氏、記憶力が良すぎて、昨日のAさんと今日のAさんを別人としてしか認識できない。皺の本数とかが違うからフネス氏にとってはまったくの別人なわけです。
もちろん、深読みしたいひとは、人間のパターン認識の精妙さとかに感じ入ったりもします。
などなど、ボルヘスの短編はどれもこれも何度でも読み返す価値のある傑作ぞろいなので、難解そうだと敬遠せずに、是非。
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4003279212
No.4:
(1pt)

何が面白いのか教えて欲しいところ

G.マルケスは文句なく面白く、ラテンアメリカ文学に目を向けた矢先、これには失望させられました、という個人的な記念碑ともなった作品集。 単なる観念論を書き連ねているだけ。 何が「バベルの図書館」だ。 知識があるのは分かったが、ボルヘスは人生を少しも理解しなかったんだな、という結論に達した。 これは小説ではない。 豆腐が崩れてしまった哲学書である。
伝奇集 (岩波文庫)Amazon書評・レビュー:伝奇集 (岩波文庫)より
4003279212
No.3:
(5pt)

ボルヘス印全開の代表作

ボルヘスの最もボルヘスらしさが凝縮された傑作短篇集。とても短い短篇のそれぞれに無限の宇宙が封じ込められている。ボルヘスの幻想はイメージ先行ではなく逆説的なロジックや観念から生まれてくるところに特徴がある。またその恐るべき博識は言うに及ばず、宗教や古典文学の題材が多いことから難解で学者的な印象があるかも知れないが、実はこの人の小説は徹頭徹尾遊びだというところに最大の魅力があると思う。縦横無尽に引用されるテキストやその出典は必ずしも真偽が明らかではないし、お得意の架空の小説の書評その他のメタフィクショナルな仕掛けもきわめて遊戯的。「数分間で語りつくせる着想を五百ページにわたって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である」というボルヘス世界の本衊??はその外観に反してとことん軽やかなのだ。
彼の小説は物語ともエッセーともつかないような体裁をとることが多いが、この短篇集には究極の幻覚的エッセー「トレーン」からポーを思わせる完璧な小宇宙「円環の廃虚」まで、典型的ボルヘス作品がずらりと並んでいる。すべてのボルヘス作品のメタファーのような「バベルの図書館」やもう一つのボルヘス的テーマである無法者の決闘を描いた「結末」も素晴らしいし、「死とコンパス」の超絶的幾何学ミステリも楽しい。読めば読むほど無限に広がっていく魔法の一冊。
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4003279212
No.2:
(5pt)

まずこの一冊

ボルヘスといえばまずこの一冊。 値段もお手ごろで収録されている作品も粒ぞろいです。 なかでも「死とコンパス」は必読。 ミステリー仕立ての味わい深い一品です。
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4003279212

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