■スポンサードリンク
去年を待ちながら
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
去年を待ちながらの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.42pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全12件 1~12 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ハードで形而上的な作品が多い印象のフィリップ・K・ディックであるが、これはなかなか手強い小説だった。 舞台設定、状況説明が殆ど無いまま、様々な人々が現れ、複数の箇所に於いて話が進んでいくので、何が行なわれているのか、何を描こうとしているのか、作者の意図が掴み切れないまま読み進めた最初の約100ページ迄はちょっとキツかったが、段々と背景が読み取れてくると同時に、事件、異変が起きてきてのその後は、興味深いとも形容出来得る面白さを著してくれる。 エリック・スイートセントは、大会社の経営者であり、大資産家ヴァージル・アッカーマン付きの医者をしていた。彼の専門は人工臓器移植であって、アッカーマンは悪くなってしまった臓器を次々と人工臓器にすげ替え、長寿を得てきていたのだ。 或る日アッカーマンは、エリックに国連事務総長ジーノ・モリナーリを引き合わせ、彼を助けて欲しいと言う。 見るからに疲れ果てた、息も絶え絶えの様なモリナーリは、癌を含め、これまで幾度も重病を患いながらも生き永らえてきた。しかも、その度に病の痕跡をすっかり消してしまう。 2055年の地球では、リリスター星と友好条約を締結した為に、リリスター星と対立していたリーグ星との星間戦争に巻き込まれていた。 地球に破滅的な状況をもたらすかどうかは、リリスター星の代表との交渉にかかっている。モリナーリは絶対的最高権力者としてあらゆる体調の悪化と日々戦いながら同盟国に対応していた。 という、三星間戦争というものがまず舞台背景にあるのだが、派手な戦争の描写は無い。 もしろ物語はエリックと、不仲に陥っている妻のキャシーとのやりとりと、それぞれの思惑を軸に進んでいく。 キャシーは或る薬に手を付ける。それは中毒性を持ち、肝臓に致死に及ぶダメージを与える麻薬J J180だった。 引き続き飲まなければ確実に死んでしまう。絶望の境地で、二度目の服用をしたキャシーは不可思議な体験をするのであった。 交錯する時間と空間。何が真実か? 目の前に起きていることは現実か? 麻薬、幻覚、タイムトリップ、パラレルワールド、様々な現象の発現にエリックも巻き込まれていき、やがて自ら望んで行動を起こしていく。 様々な選択肢の多さに思い悩むエリック。 果たして星間戦争の行方は? エリックはキャシーを救うのか? それとも見放してしまうのか? そして夫婦関係はどの様な形に落ち着くのか。 結果的に言うと、予測を許さない展開の連続で、実に楽しめた。ディックの中期の傑作である。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
作中メタ不和は薬理的時空隔絶で思考実験。だが最終的悟りも自己に適用不可だった。邪な女性観が当時陥る状況を表す。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
舞台は星間戦争中の地球です。しかしこの本のメインテーマはうまくいっていない結婚生活のようです。 主人公と妻の間のトゲトゲしい会話にリアリティを感じました。 デックは自分でよくかけている小説と言っているように、とても面白いです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この作品、大枠を成すストーリーは星間戦争なんだけど、それでいて地球人&リリスター星人連合軍 vs リーグ星人の宇宙バトルシーンはありません。むしろ、政治的な駆け引きに主眼を置いて展開します。宇宙船同士のドンドンパチパチを期待して読むと完全な肩すかしです。 では本作の面白さは一体どこにあるかというと、それは何といっても登場人物たちのキャラが立っているところです!! 主人公の医師エリック・スイートセントとその妻キャサリン、エリックの上役ヴァージル・アッカーマン社長、モリナーリ事務総長、彼の顧問弁護士フェステンバーグ、超強烈ドラッグJJ-180の製造元の社長ヘイゼルティン、リリスター星首相のフレネクシーなどなど、いずれも個性的なキャラのオンパレードです。 惑星間の難しい政治的駆け引きと、キャサリン&エリック・スイートセント夫妻の痴話げんかが、作品の中で見事に融合している。星間戦争の先行き(すなわち地球の運命)と、スイートセント夫妻の夫婦げんか(夫婦愛?)の先行きが、作中のドラマを動かす二大原動力になっているところは見事としか言いようがないです。巨匠ディックここにありです。 傲慢で非情な同盟国リリスター星人との駆け引きの中で見せるモリナーリ事務総長の天才的(?)な珍プレーの数々には思わず笑ってしまいました。ディック一流のユーモアも冴えわたっています。 さらに、超強烈ドラッグJJ-180の服用によるタイムトラベルというアイデアが作品の中で素晴らしい効果を発揮します。タイムトラベルの結果、同一人物が同じ時空にふたり同時に居合わせるというパラドックスというか禁じ手を、ディックはあえて逆手にとって物語をみごとに面白くしています。 すったもんだの末に、最後のページにおいて、自律運動タクシーの言葉によってエリック・スイートセントが夫婦愛に目覚めるところは、思わずホロリとさせられました。 予想以上に面白い作品でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この作品、大枠を成すストーリーは星間戦争なんだけど、それでいて地球人&リリスター星人連合軍 vs リーグ星人の宇宙バトルシーンはありません。むしろ、政治的な駆け引きに主眼を置いて展開します。宇宙船同士のドンドンパチパチを期待して読むと完全な肩すかしです。 では本作の面白さは一体どこにあるかというと、それは何といっても登場人物たちのキャラが立っているところです!! 主人公の医師エリック・スイートセントとその妻キャサリン、エリックの上役ヴァージル・アッカーマン社長、モリナーリ事務総長、彼の顧問弁護士フェステンバーグ、超強烈ドラッグJJ-180の製造元の社長ヘイゼルティン、リリスター星首相のフレネクシーなどなど、いずれも個性的なキャラのオンパレードです。 惑星間の難しい政治的駆け引きと、キャサリン&エリック・スイートセント夫妻の痴話げんかが、作品の中で見事に融合している。星間戦争の先行き(すなわち地球の運命)と、スイートセント夫妻の夫婦げんか(夫婦愛?)の先行きが、作中のドラマを動かす二大原動力になっているところは見事としか言いようがないです。巨匠ディックここにありです。 傲慢で非情な同盟国リリスター星人との駆け引きの中で見せるモリナーリ事務総長の天才的(?)な珍プレーの数々には思わず笑ってしまいました。ディック一流のユーモアも冴えわたっています。 さらに、超強烈ドラッグJJ-180の服用によるタイムトラベルというアイデアが作品の中で素晴らしい効果を発揮します。タイムトラベルの結果、同一人物が同じ時空にふたり同時に居合わせるというパラドックスというか禁じ手を、ディックはあえて逆手にとって物語をみごとに面白くしています。 すったもんだの末に、最後のページにおいて、自律運動タクシーの言葉によってエリック・スイートセントが夫婦愛に目覚めるところは、思わずホロリとさせられました。 予想以上に面白い作品で、文庫本冒頭の内容紹介文に書かている「P・K・ディック中期の名編」というキャッチコピーは本当でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
☆の数は今回の新訳版に対するもので、創元SF文庫から出版されている寺地五一・高木直二訳による旧訳版は五つ星の面白さです。 翻訳については人によって感じ方が違うかとは思いますが、私にとって、本書の山形浩生による翻訳は、直訳的というか、なんだか読みにくい日本語が気になって、頭の中にスッと物語が入ってこず、素直に楽しめません。 訳者あとがきでは、山形浩生自身が、旧訳は「比較的優秀だと思う」とあるとおり、旧訳版はとても読みやすく、ディック作品の面白さがよく出ているように感じます。 また、旧訳版には大森望訳による「ディック、自作を語る1955~1966」が付録でついており、お得感があります。 これによると、「去年を待ちながら」は「じつに良くかけた小説だと思う。ほんとうに気に入っている作品だ。」とディック自身もお気に入りの作品のようで、全ディック作品の中でも上位にランキングできるできの良さだと思います。 それだけに、新訳版には期待が大きく、とても楽しみにしていたため、がっかり感が大きいです。 翻訳の違いを一つ比較してみますと (新訳) 「ラッキーストライクの箱です。しかも本当の年代物グリーン。1940年頃の、パッケージ変更の第二次大戦前のものです」 (旧訳) 「ラッキーストライクの箱ですよ。先生。正真正銘、時代もののグリーンのやつです。1940年頃の、つまり第二次世界大戦で包装が変わってしまう前のものです。」 「本当の年代物」とか「パッケージ変更の第二次世界大戦前」との言い回しにどうもなじめません。 このようなどこかおかしな言い回しが多数見受けられるのが新訳版です。 旧訳版「ヴァリス」もお気に入りの作品なのですが、早川文庫から出た新訳版は本書同様読みにくさを感じた覚えがあり、翻訳者を見ると、やはり本書と同じ山形浩生氏でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
フィリップ・K・ディックの小説です。わたしは、20代の頃から彼の大ファンでした。しかし、30歳から40?歳くらいまでは生活に追われ、本をじっくり読む暇はありません。仕事と家事と育児に追われる日々です。でも、彼の本だけは翻訳されるとすぐに買っていました。お金もなかったので、文庫本ですが。その時の言い訳は、「老後の楽しみのために」です。 という訳で、その老後が来てしまったんですネェ。ディックの本は30~40冊持っていますが、そのうちまだ読んでいない本が現時点で7冊です。『去年を待ちながら』が読めたので、あと7冊になりました。わたしは、若かった時の自分の「命令」で彼の本を読んでいると言うことです。この本を読んでいて、そんな状況が「似ているなあ」って思ったので、前文は蛇足ながら書いてしまいました。 いつもの如くの彼の作品です。つまり、精神を病んだ人とドラッグと未来と過去が入り乱れた世界が描かれています。今回はドラッグを飲むと、過去や未来に行ってしまうという設定です。過去の自分から情報を得て、現在や未来の世界を変えていくと言うような…。わたしは、過去のわたしに会ってはいませんが、過去のわたしの遺言を忠実に実行しているよなあ…、って感じです。 本の粗筋を書くと「なんと陳腐な」と思われてしまいそうですが、こんな感じです。 宇宙人が出てきます。リリスター星とリーグ星です。我々人類とリリスター星人は同じ祖先から枝分かれしたと言うことになっています。同じ、ホモサピエンスということ。リーグ星人は、違う種類の生き物で知能は高いが昆虫のような姿ということ。人類とリリスター星人は同盟関係です。そうして、リリスター星人とリーグ星人の戦いに人類が巻き込まれるという感じ。 この時の地球の国連事務総長はモリナーリ。彼が司令官となりリリスター星人と手を組み、リーグ星人との星間戦争に挑みます。このモリナーリは年齢不詳。臓器を入替え、入替えて、死を免れ戦い続けています。その人工臓器を移植する医師エリックが、主人公です。そして化学兵器として発明されたのが、ドラッグJJ180。このJJ180は、一度飲めば中毒になってしまい、常用しなければいけない破目に陥ります。そして、肝臓やら腎臓やらがぼろぼろになり、精神も異常をきたし死に至るという設定。 しかし、JJ180には大変な作用があるということがわかりました。人によっては、過去に戻ってしまう、または、未来に行ってしまう…。このドラッグはリーグ星人をやっつけるためにつくり出されたものでしたが、実は地球上で常態的に蔓延していたのです。 つまり、地球と同盟星人のリリスター星人は、人類と共に闘うという名目の下に人類を征服し奴隷化しようとし、このドラッグを地球にばらまいていたのです。これがこの作品のベースです。このベースで、モリナーリやらエリックやらエリックの妻やら、大実業家やら精神科医やら…、諸々の人々が入り乱れて話が展開していきます。 モリナーリは不死身でしたが、実は、JJ180を使用しており、過去の若々しい自分を入れ替わり立ち替わり連れて来ては、リリスター星人と戦っていたのでした(敵はリーグ星人ですが、彼はリリスター星人の思惑もわかっていて、彼らを出し抜こうとしていたのです)。医師エリックも、妻の悪巧みに乗せられてJJ180を飲んでしまいます。彼は、妻との関係やモリナーリとの関係、リリスター星人との戦いのため、過去へ未来へと八面六臂の大活躍です。 お話の終局を書いても良いでしょうか。エリックは、過去へ未来へのドタバタから何を手に入れたのか…です。 答えは、「何も」です。妻との関係も清算されず、リリスター星人との戦いも勝利を得られずと。「人生は辛く耐えがたいもの。しかし、生きていかなければならない。」と、――彼は、今まで通りの人生を生きて行くのであった~~~、という結論です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
英語の原文と読み比べてみると、原文はもっとあっさりしています。寺地五一氏の訳は、ディックの言わんとするところを確実にとらえて、しかも分かりやすく、優しさにあふれた日本語にしています。私もまた、この言葉を読むたびに、苦渋に満ちたつまらない私の人生も決して間違いではなかった、と思えるのです……(なんてね、笑)。 しかしまあ、ラストの事はまずは忘れて、いつもどおりのちょっと退屈なディックのうだうださ加減をがまんして、読み通しましょう。損はさせません。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
内容はいつものディック小説。ほかの方のレビューどおり。 しかしラストの主人公とある物との会話は、 何度読み返しても疲れた心に響く。 無生物を描かせてこの作家の右に出る方はいまだ知りません。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
1966年発表。この作品の以後に、「ザップ・ガン」、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」などが発表される。 2055年。地球はリリスター星と同盟契約を結んだ為に、リリスター星が敵対するリーグ星人との戦争に巻き込まれていた。この星間戦争を指揮する地球側の最高責任者は国連事務総長ジーノ・モリナーリという人物で、彼は病身で老骨な身体で過酷な任務をこなしているのであった。人口臓器移植医エリック・スイートセントはある日、モリナーリの専属担当医に抜擢された。エリックにはキャサリンという妻がいるのだが、二人の夫婦関係は不和状態が続いており、エリックは妻と別れるかのようにモリナーリの担当医スタッフに加わる為にシャイアンへ向かった。その孤独感からかキャサリンは禁断のドラッグJJ180を服用してしまう。JJ180とは軍事兵器用として開発された非常に中毒性の高い幻覚剤で、その幻覚とはドラッグ服用者を過去や未来へとタイム・スリップさせてしまうのであった。エリックは妻とは不仲であったが彼女を見捨てる事が出来ず、JJ180の中毒者となったキャサリンを救う為に、自らもJJ180を服用しながら危険なタイム・スリップを試みる。 タイム・トラベルによるパラレル・ワールドを描いたSF作品だが、主人公エリックの妻に対する愛惜感溢れる心情の方がストーリーの大部分をフィーチャーして描かれている。実際、タイム・トラベルを描いた部分や仕掛けにはご都合主義的で不整合さが若干感じられる。そもそもタイム・スリップの方法が特殊なドラッグを服用するというのだから変わった設定だ。その他、惑星間同士の戦争の隠された策謀を暴くというモチーフもあるにはあるが、なかなかスリリングだったその展開は最後の方まで生きてこない。それよりも妻の救済を重要視する主人公。それも別れたいけど別れられないという半分ウジウジした心情のままで。でも、それって実際の夫婦間のよくあるケースだからリアルな説得力を感じてしまったが。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
最近あった政治的なドタバタとめっさリンクしてるなぁと思った いやこっちが早いんだけどね とにかくSF読みは必読 陰謀論好きも必読 偉い人の仕事はいろいろあるんだよ 暗殺されたり病死したり というお話 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
彼の作品ではお馴染みの、受動型で流され易い(おまけに絶望している) 現代的ダメ男の主人公が、滅茶自分とリンクしてて好きです。 ディック本人、この作品を気に入っていたようです。 彼の作品の身内ネタ的な人間臭さが好きな人は、気に入るはず。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!