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両シチリア連隊



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【この小説が収録されている参考書籍】
両シチリア連隊

両シチリア連隊の評価: 4.00/5点 レビュー 3件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(5pt)

無限の鏡の反映のなかの中心なき迷路

<ミステリ>の体裁はかろうじて留めているものの、作家の主なる関心がダーツ遊びのような犯人あてや真面目くさった探偵ごっこにないことは、二元論神学への辛辣な揶揄が透けて見える導入の情景描写からも明らかだ。

それどころか、連続殺人の始まりを予感させる第一の事件の幕が切って落とされた後は、捜査の概要さえ圏外に放り出されてしまう。そして我々は、現代に生まれ変わったヘルメス・トリスメギストスの高説もかくやと思わせる、生と死、存在と時間、差異と反復、偶然と運命、肉体と悪魔(つまり魂!)、転生と変身、実像と虚像などトピックが多岐にわたる異端趣味満載の連続講義に付き合わされることになる。もしここに一貫したテーマがあるとすれば、その布石ともいえる身代わりと取り換え子、成り済ましの挿話では、筆者の語り部としての才能の片鱗を堪能することができる。

推理小説の典型からほど遠い、警句と諧謔、霊感と内省、憧憬と郷愁が綯い交ぜになった、叙述というよりは変幻自在な散文詩を思わせる文体。ジャンルの定石を逆手にとった記号遊戯の空騒ぎを期待する者は、きっと出会い頭にかんばせに唾棄されたような驚きと義憤を禁じ得ないだろう。

個人的には、アンチミステリの発案者として知られる某氏の代表作よりも、ジャンルの形式を換骨奪胎した『薔薇の名前』や『LAヴァイス』などのポストモダン文学のほうが親和性が高いと感じられた。
両シチリア連隊Amazon書評・レビュー:両シチリア連隊より
4488010369
No.1:
(5pt)

ミステリーは引き出しの一つ

引き出しの多い小説で、楽しく読めた。訳者解説で、訳者は本書が反ミステリーあるという説をと主張し、別の説として偽装ミステリーであるという多数説を紹介しているが、個人的には、ミステリーは引き出しの一つに過ぎないように思う。ミステリーと考えると、本筋事件と直接関連のない部分が多いこと、事件重要人物の出番が少ないこと、小説の主人公的人物がさっぱり謎を解こうとしないこと、展開も論理もかなり強引であることなどが気になるが、実際には、これらは本書の魅力を形成しているように思う。幻想小説、諷刺小説、哲学小説、運命小説、恋愛小説の引き出しもあり、受け身に終始しているように見えながら、直情的にもなる令嬢ガブリエーレも魅力的である。二重三重の「一人二役」行使も楽しい。
両シチリア連隊Amazon書評・レビュー:両シチリア連隊より
4488010369

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