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歌うクジラ



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歌うクジラの評価: 3.60/5点 レビュー 72件。 Eランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.60pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全45件 41~45 3/3ページ
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No.5:
(4pt)

移動し、出会い、生きていくこと

まず本を手にされた方は、目次を見てみられるといいです。
さまざまな場所に移動し、動き続け、または歩き続け、人と出会う物語です。

この小説の面白いのは、100年後の日本を村上龍さんの想像力で描かれているため、その世界を肌で感じることができるところです。たくましすぎる想像力で、近未来の世界が構築されていて、そこを私は面白く読みました。
なかにはグロテスクであったり、性的であったりするシーンも多いですが、さまざまな世界を旅するという意味では、必要だったと思います。

読み終えて感じたのは、理想を求め、理想に裏切られ続ける人間の姿でした。
理想とは、たとえば歌うクジラであり、その歌うクジラにも最後裏切られてしまいます。

ただしその裏切られたという思いは、私自身の感想であります。
というのも、歌うクジラのエピソードに惹かれこの小説を読み始めた私にとっては、最後に訪れると期待していたポジティブなものが弱すぎると感じたからです。

移動し続けること、出会い続けること、理想を求め続け、グロテスクにも生き続ける人間を包み込むような芯の強いようなポジティブさが最後に示されると感動的であったと思います。
風の谷のナウシカの漫画版のような、最後のポジティブなメッセージがあってよかったと思います。
なぜなら私は、文学とか良く分かりませんし、明日生きるために小説を読み、読むことで生きようとしているのですから。
歌うクジラ 上Amazon書評・レビュー:歌うクジラ 上より
4062165953
No.4:
(5pt)

もちろん万人向けではない

SFである。未来の話であり、とんでもない物語である。しかし、現在の人間社会に既に存在するある種の傾向、線分、ある特異な点の集団を延長し、強大化し、増殖させた時に「あり得る」と思わせるリアリティが恐ろしい。
これは「父親」から秘密を運ぶ任務を遂行しようとするタナカアキラの冒険物語、旅物語であり、荒唐無稽とも言える場を踏破していく。途轍もない想像力によって構築される時空は読む者を引きづり込んでいくが、メモリアックの働きと特異な言語活動は思考を錯乱させる。
真の旅が、人に多数多様な光景を見せるのではなく、人を多次元多様体に変えてしまうものならば、それこそまさに「歌うクジラ」である。
いわゆる「アイデンティティ」が崩壊しそうになるのは恐ろしい。しかしそのスリルに魅力を感じる人もいる。
どんなに手に汗握ろうと自分を安住の地に置いておきたい人、すぐに意味が理解できることばで書かれた本を読みたい人はそれはそれでよいだろう。
またエクリチュールの流れに酔い痴れたい人もそれはそれでよいだろう。
しかし「歌うクジラ」は覚醒しているが自己を失い、断絶を越えていくが明晰なままである。それを体験したい人が読めばいいのだ。
歌うクジラ 上Amazon書評・レビュー:歌うクジラ 上より
4062165953
No.3:
(5pt)

歌うクジラ

この小説を読み終えた後、「何故自分は小説を読む必要があるのか」
ということと、「小説を読まなくてもいいように暮らしていくためには
どうすればいいのだろう」というようなことを考えました。
村上龍さんの書く小説は自分にとってとても異質で、そういうものを
必要としているからかもしれないと考え、一方で、こんな凄い小説を
読まずに過ごせるならそれはそれで越した事はないのではないかとも
考えたのでした。
矛盾していますが、そういうことを考えたのはこの小説が初めてで、
とても新鮮でした。
歌うクジラ 上Amazon書評・レビュー:歌うクジラ 上より
4062165953
No.2:
(5pt)

「DAED SPACE」を凌駕する描写が想像力を麻痺させる!

「i pod」先行配信の為か、比較的短いパラグラフが一行の空白を挟んで連続する構成になっている。喫茶店や地下鉄で読んでいても簡易にキリがつくところで栞を挟めると思う。ケータイ小説は読んだことがないから、すでに試みられているストラクチャーなのかも知れないがユーザーフレンドリーだなと思った。私はいつも本を読むときはカバーと帯を外しているのだが、そのときに「なんて凝った装丁なんだろう」と気がつきました。詳細はご自身でお確かめください。本書は近未来の日本を描いた作品で、一瞬椎名誠の「アド・バード」の世界が蘇った。ただSFというよりも、政治経済をシミュレートした作風なので、「やっぱり違うか」と思いながらもSF的色彩が濃い場面になるとやっぱり彷彿された。「5分後の世界」や「半島」とは異なりミリタリー部分はあまり特化されていない。一番最初に書こうと思って忘れていたけれど、もう村上龍は小説を書かないんじゃないか・・・という寂しさを10年近く抱いていたので、本書の刊行はすごく嬉しい。あるところで生理的精神的に非常に読むのがしんどくなった。それなりの耐性がないと投げ出しちゃうのじゃないかと心配になるほど。それだけ村上龍の描く狂気の場面は想像力を倍増させてスパークさせる。「デッドライジング」のボスみたいな人物を書かせると本当に村上龍は絶品だなと改めて思った。村上春樹のように小説を執筆し続けて欲しいと切に願う。最後に「確かに想像力が本当な恐ろしい」。
歌うクジラ 上Amazon書評・レビュー:歌うクジラ 上より
4062165953
No.1:
(4pt)

生きる上で意味を持つのは,他人との出会いだけだ。そして移動しなければ出会いはない。移動がすべてを生み出すのだ。

人類がついに不老不死のSW遺伝子(Singing Whale)を発見した22世紀の世界。
 SW遺伝子は限られた一部の選ばれた人間に応用され,その反作用として犯罪者には急激に老化を促進させる方法が取られた。
 文化経済高率化運動により,食事や笑顔や敬語が害悪とされ,人々の徹底的な住み分けがなされた日本。
 もっとも最下位の層の犯罪者が住む九州北西部の新出島で暮らす15歳の少年アキラは,死の直前の父のため,SW遺伝子の秘密が入ったマイクロチップを,ある人物に届けるため新出島から出ることを決断する・・・・。
 この設定だけでもワクワクしてしまう村上龍の新作は,i-Padで先行発売され話題になったが,i-Padを持っていない私は,本が出版されるのを今か今かと楽しみに待っていた。
 その圧倒的な戦闘の描写力は,「五分後の世界」や「半島を出よ」同様すさまじく,目を覆いたくなるような残虐なシーン,嫌悪感を感じる描写もあるが,100年後の日本が舞台であり,リアリティーある造形物の描写やその想像力には驚かされる。
 そして,なによりも個性ある登場人物が多く登場するところが,この作品の魅力だ。
 15歳の少年アキラと行動を共にするサブロウさんは,クチチュと呼ばれる突然変種の人間だ。耳の後ろに小さな穴があり,触ると死に至るような猛毒の液がそこからにじみ出ている。
 アンという女性は,反乱移民メンバーの子孫で,グループのメンバーともに助詞をむちゃくちゃにした日本語をしゃべる。敬語が禁止されて長い日本において,敬語が使えるアキラは貴重な存在としてメンバーに受け入れられる。
 飛行自動車の運転手ネギダールは,猿と中国人のDNAを組み合わせて生まれた女性だ。
 少年アキラは,いろいろな人物と出会い,別れ移動を続ける。
 15歳という年齢は,移動を開始するのにもっとも適した年齢なのかもしれない。(そういえば,村上春樹の傑作「海辺のカフカ」でも15歳の少年が移動することによって物語が始まりましたね)
歌うクジラ 上Amazon書評・レビュー:歌うクジラ 上より
4062165953

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