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渇いた季節
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渇いた季節の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.44pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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面白く読むが癖が有り好き嫌いが分かれるでしょう、私は面白かった | ||||
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アラン・バンクスならなんと言ってくれるだろう、とこのごろよく考える。それほどに、私にとっては実在するも同然の人となった。長寿のシリーズ。作が進めば進むほど、誠実であるがゆえに公私にわたって苦悩を深めてゆくバンクス。そんな彼に訴えたなら、匿名で遊べる「おもちゃ」を手に、千人にも化け、つきまとってくる者がいると訴えたなら、なんと言ってくれるだろう。撒き散らされ、半永久的に残される言葉の汚穢。他者のなす邪悪の前に、人はなぜ、無力でしかいられないのか。痛みのわかる人だから、「無視することが大人のふるまい」「おまえひとりの苦しみ」とは口にしないだろうけれど、こんな時代に生きることが私にはもう厭わしい、とこぼしたなら、「甘えるな」と言うかもしれない。ヨークシャーへ訪ねていって、クイーンズ・アームズ亭でくつろぐ彼の、おだやかな笑顔が見たい。 | ||||
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理不尽で身勝手な動機からではなく、自分の愛する人を傷つけたくない、不幸にしたくないという思いから犯した過去の罪…。それが結果的に、現在まで続く罪の連鎖の入り口になるという筋には、皮肉なリアリティがあります。「あの時、もし自分がああしていたら」あるいは「ああしていなかったら」今頃は…事件から半世紀近くが経ち、関係者もほとんど残っていない。自分自身も年老い、人生残りわずかだと思われる小説家の、決して逃れることのできない後悔と苦悩が、切ない余韻と哀愁を残します。 誰にでも過去はある。しかしそれは、自分にとって一体何なのか?それを真剣に問いかけてくれる作品です。「過去とは、異国。作法が違う。」という、本の最初に載せられた詩も、物語の中身とは直接関係はないものの、本を読んでいる間中、重く心に響いてきました。 過去の登場人物も現在の登場人物も実に魅力的で、彼らが抱える個々の苦悩を、よくここまでうまくリンクさせたと思います。日本語訳もナイスで、特に警察のことを「刑事」ではなく、「おまわり」などと呼ぶところも心憎いです。 物語は現在と過去を交互に進行させ、霧に覆われたような、かと思えば渇いた暑い日差しに照りつけられているかのような、形容しがたい叙情性を帯び、罪という深い海の上に浮かんで、さざなみに揺られているかのようにゆっくり進行していきます。そのためミステリー小説によくある、迫力たっぷりの急展開、スリルたっぷりの緊張感は、この小説にはそれほど感じません。欲を言うと(個人的には)その点が少々物足りなかったのですが、叙情性と現実味が見事に調和した、味わい深い傑作です。一読をお勧めします。 | ||||
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40代の首席警部アラン・バンクスは、この本で、いままでになく十代のころをさかんに振り返っている。同年代の息子ブライアンより、回想のなかの若いバンクスに、僕は自分を重ねて共感した。手記で語られる戦時中の話も寂しくてじんとくるけど、僕にはバンクスの内省のほうが面白かった。続きが読みたい! | ||||
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訳者(野の水生氏)の丁寧な翻訳に魅せられて、1冊1冊読み進むうちにファンになってしまったバンクス・シリーズですが、本書は私にとって文句ナシのNo1です。40年も前に起きた殺人事件にいどむ首席警部のバンクスは、私生活でも奥さんに去られるなど苦境にさらされます。今までのシリーズではいわば人生の夏を謳歌していたバンクスですが、今回は秋を通り越して厳しい冬に直面してしまったよう...。全編を通して、晩秋から冬にかけて感じる寂しさやはかなさのような印象を受けましたが、それは決して不快なものではなく、私にはもうすぐ来る幸せのための準備期間のように感じられました。どんな厳しい冬もやがて春の訪れを迎えるように。ミステリ-としてのおもしろさも言うまでもなく、人間ドラマとしても深い味わいがあるこの一冊、ぜひおすすめです。 | ||||
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イギリスの夏は短い。そんな短い夏の異常な猛暑が、貯水池に沈んでいた村を地上に出現させ、また、過去の殺人を浮かび上がらせる。村の暮らし、現在と戦争中の村の人々の様子が生き生きと描かれて引き込まれる。自分に無いような自由奔放さを持つグロリアに魅力を感じる人々もいる一方、もし私のそばにグロリアがいたら、こんな女には振り回されたくない!と思ってしまうのでは。まあ、人物描写がそれくらい生き生きしているということでしょう。ミステリ、そして心理劇の両方を楽しむことができる満足度の高い1冊。 | ||||
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同じ作者の『誰もが戻れない』がおもしろかったので、最新作『渇いた季節』も求めました。主要人物のグロリアという女性がそれはそれは魅力的です。物語の「時代」がイキイキと目の前に甦る感じ。読後、なんともいえない切ないリリシズムを感じる作品でした。「渇いた季節」というタイトルが秀逸だと思いました。(「乾いた」ではダメなんです!)この作者のほかのシリーズ作品も全部読んでみたくなったのですが、残念ながら在庫切れとのこと。ぜひ刊行してください!! | ||||
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作者の本領がいかんなく発揮され、W受賞もS・キング絶賛も納得の傑作。丹念な人物造形と情景描写はもとより、過去と現在を同時進行させながらクライマックスへと導く構成が見事。特に、手記の形で語られる水没した村の過去(戦時中)の描写は、ミステリーの枠を超えた奥深さに哀しみさえたたえて、叙情派とも評される作者の面目躍如たるものがある。それでいてミステリーの醍醐味である犯人探しも最後まで読者を引き付け楽しませてくれる。訳者はそうした原作の妙味を、吟味された言葉と表現で余すところなく伝え、読者をぐいぐいと物語に引き込んでゆく。 千円ちょっとでこの楽しみを手に入れられる読者は幸せである。 | ||||
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