渇いた季節
- 白骨死体 (98)
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面白く読むが癖が有り好き嫌いが分かれるでしょう、私は面白かった | ||||
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アラン・バンクスならなんと言ってくれるだろう、とこのごろよく考える。それほどに、私にとっては実在するも同然の人となった。長寿のシリーズ。作が進めば進むほど、誠実であるがゆえに公私にわたって苦悩を深めてゆくバンクス。そんな彼に訴えたなら、匿名で遊べる「おもちゃ」を手に、千人にも化け、つきまとってくる者がいると訴えたなら、なんと言ってくれるだろう。撒き散らされ、半永久的に残される言葉の汚穢。他者のなす邪悪の前に、人はなぜ、無力でしかいられないのか。痛みのわかる人だから、「無視することが大人のふるまい」「おまえひとりの苦しみ」とは口にしないだろうけれど、こんな時代に生きることが私にはもう厭わしい、とこぼしたなら、「甘えるな」と言うかもしれない。ヨークシャーへ訪ねていって、クイーンズ・アームズ亭でくつろぐ彼の、おだやかな笑顔が見たい。 | ||||
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アンソニー賞、バリー賞を同時受賞、スティーブン・キングが絶賛と来れば読まずにはいられないと勇んで買った本作品。しかし、出だしから理解を苦しむ表現につまずき、堪能しきれなかったというのが本音です。例えば、153頁の、主人公バンクスが警察の制服デザインに対する感想をもらすシーンでは「なんだこりゃ、のあだっぽさ。」。頭脳はあるが教養にかけると自覚アリ、マッチョとフェミニズムに板ばさみにされたいまどき40-50歳代イギリス人男性とのセリフにしては、フェミニンすぎやしないか。さらに、191頁の主人公とその妻がどんなにお金がなかったかを示すくだりでは、「出産給付金もなかったころだ。サンドラのやっていた歯医者の受付係には、とにかくなかった」とあり、そもそも何を言いたいのか意味不明!と頭を抱えることもしばしば。日本語の文書の背後にある、英語の文章も全く想像がつかなかった。まあ、唯一の収穫は、原作を読んでみたいと切に思ったことでしょうか。 | ||||
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理不尽で身勝手な動機からではなく、自分の愛する人を傷つけたくない、不幸にしたくないという思いから犯した過去の罪…。それが結果的に、現在まで続く罪の連鎖の入り口になるという筋には、皮肉なリアリティがあります。「あの時、もし自分がああしていたら」あるいは「ああしていなかったら」今頃は…事件から半世紀近くが経ち、関係者もほとんど残っていない。自分自身も年老い、人生残りわずかだと思われる小説家の、決して逃れることのできない後悔と苦悩が、切ない余韻と哀愁を残します。 誰にでも過去はある。しかしそれは、自分にとって一体何なのか?それを真剣に問いかけてくれる作品です。「過去とは、異国。作法が違う。」という、本の最初に載せられた詩も、物語の中身とは直接関係はないものの、本を読んでいる間中、重く心に響いてきました。 過去の登場人物も現在の登場人物も実に魅力的で、彼らが抱える個々の苦悩を、よくここまでうまくリンクさせたと思います。日本語訳もナイスで、特に警察のことを「刑事」ではなく、「おまわり」などと呼ぶところも心憎いです。 物語は現在と過去を交互に進行させ、霧に覆われたような、かと思えば渇いた暑い日差しに照りつけられているかのような、形容しがたい叙情性を帯び、罪という深い海の上に浮かんで、さざなみに揺られているかのようにゆっくり進行していきます。そのためミステリー小説によくある、迫力たっぷりの急展開、スリルたっぷりの緊張感は、この小説にはそれほど感じません。欲を言うと(個人的には)その点が少々物足りなかったのですが、叙情性と現実味が見事に調和した、味わい深い傑作です。一読をお勧めします。 | ||||
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40代の首席警部アラン・バンクスは、この本で、いままでになく十代のころをさかんに振り返っている。同年代の息子ブライアンより、回想のなかの若いバンクスに、僕は自分を重ねて共感した。手記で語られる戦時中の話も寂しくてじんとくるけど、僕にはバンクスの内省のほうが面白かった。続きが読みたい! | ||||
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